スペースクルーザー ランディール
エピローグ 〜未来への手紙〜
ＡＷ１２８９年
〜フォーレン…
今日は僕が君を作る前のメモリーを伝えようと思う…
あれから数年の月日がたった。
ユーシスさん達の活躍で地球人の陰謀を潰すことはできたけどアルゴル
太陽系はマザーブレインが破壊されて以降、今までのインフラが完全に
使用できなくなり その後の混乱や惑星パルマの崩壊で人口は１割にま
で減ってしまったらしい。
でも人々は希望を失わず、今も生きようと頑張っている。
僕も今は、人工衛星ゼランでアルゴル再生プロジェクトに従事している。
このゼランとクランが完成すればこれからアルゴルに待っている環境の
激変を少しでも緩和してくれる手助けになるはずだ。
困難な仕事だけどそれだけにやりがいと誇りを感じているよ。
それでも、仕事に煮詰まった時、ふと…あの宇宙を共に駆け巡った頃の
仲間達の事を思い出すんだ。
宇宙要塞ノアからユーシスさんを救い出した後も、数ヶ月間レジスタンスの
復興活動に協力していたけどある日、突然海賊をやめるといった時は僕を
はじめみんな、反発していたっけ…。
でも艦長が「これからはそれぞれの得意分野でアルゴルの未来を作って
欲しい」と説得されて、渋々従ったんだ。
今も、あの時、何故、艦長が突然やめると言い出したかわからないけど、
きっとこれからのアルゴルの未来を考えての決断だったと思う。
みんなからの手紙も最近の混乱もあってなかなか届かないけどそれでも
返信があるととても嬉しいよ。
アレスはミカと一緒に、モタビアでハンターを続けながら、かつてアレスが
殺してしまった人の遺族に謝罪する旅に出ているらしい。きっと相当辛い
旅なんだと思う…〜
後に大崩壊と呼ばれる大異変から５年、緑豊かなプラント惑星だった、モタ
ビアの環境は激変していた。アメダスの停止により降雨量が減り徐々に大地
は砂漠化しつつあった。
また、マザーブレインネットワークの崩壊によるインフラの停止や、セキュリ
ティポリスの機能停止により治安が悪化、各地で暴動や強盗団が暴れまくる
など人々の暮らしは次第に悪化していった。
砂埃が舞い瓦礫に覆われた廃れた街並みをマントを身に纏ったモタビアンと
その横にピタリとピンク色のジャコウ猫が共に歩いている。
一人と一匹はハンター稼業を続けながら、ある目的を持って旅をしていた。
目的の家に辿り着き、トントンと扉を叩き、中の人に事情を説明するとある者
は怒りに震え、ある人は泣きながらそのモタビアンを罵倒を浴びせ追い返した。
「帰れ！！このテロリスト！！」
「こんな混乱する世界じゃなかったらあんたなんか警察につきだしてやるのに！」
「出て行け！！」
中には銃を持って撃ってくる人もいるが、モタビアンは頭を下げるのみだった。
…モタビアンはアレス、ジャコウ猫はミカだった。
二人はアレスがテロリスト時代に殺してしまった犠牲者の家族の所を回って
謝罪をする事を繰り返していた。
この日も石を持って追い払われ、血を流すアレスを少女の姿になりドヒールで
回復していたミカが頬をふくらませ、プンプンと怒っていた。
ミカ「何よ！！アレスが必死に謝っているのに、」
そう言い、先ほどアレスに無碍な扱いをした家の方角にあっかんべーをする
ミカをアレスが嗜める。
アレス「そうされても仕方が無い罪を俺は犯したんだ。元より許してもらえる立場
じゃない」
アレスは木陰で俯きながら自分の手を見て、自責の念を感じながら寂しく呟いた。
ミカ「でも！！…やっぱり悔しいよ。アレスだってこんなに苦しんでいるのに…」
そんな落ち込んだアレスを見て、ミカが悔しそうに拳を堅く握り締め震えている。
ミカには手に取るようにアレスの不安に揺れる心がわかる。それなのに何も出来
ないことが悔しかった。
アレスはミカの気持ちを知ってか、精悍な顔に自嘲の色を浮かべ目を細める。
アレス「いや、家族を失った悲しみと比べればこんなのは苦しみでもなんでもない…
正直言って俺の自己満足なのかもな…」
既に彼の顔には濃い疲労感があった。
胸にわだかまる罪悪感に今でも苛まされているアレスを見ているのがミカにと
ても辛かった。
ミカ「…アレス…」
彼女がどうしたらいいのかと考えあぐねていた時
ぐーーーー
っと彼女のお腹が鳴った。
ミカ「あ…」
空腹のあまり鳴った自分のお腹をミカは恥ずかしそうに見つめる。
アレス「……ミカ、お腹がすいているなら早く言えって！」
アレスは驚いたように目を瞬かせるが、何ともバツが悪そうに、口を尖らせる。
ミカ「もう！！アレスったら本当にデリカシーがわからないんだから！」
ギシャアアア！
ミカはあまりの恥ずかしさに顔を赤らませ爪で、思いっきりアレスの顔を引っかき、
ぷいっと背けてしまった。
アレス「うが！痛え！！爪で顔引っかくな馬鹿猫！！……、ほら！この干し肉を
食えよ」
相当痛かったのか、その場で悶絶していたアレスだが、落ち着くとぶっきらぼう
にマントの中の手提げ袋から干し肉を取り出した。
ミカ「でも、それじゃあアレスの分が…」
アレス「俺なら二、三食抜かしても平気だ！！」
と申し訳なさそうに遠慮するミカに、意地になって干し肉を押し付けるアレス。
彼が気遣っているのはわかるがあまりの強引さにミカの目じりが吊りあがる。
ミカ「だーめ、食べないと身体によくないよ、はい半分こ」
そう言うと彼女は、手で干し肉を半分に千切り、アレスに押し付け返した。自分
をじっと見つめるミカの真剣な視線に受け取らざるをえなくなったアレス…。
アレス「…てめ…ちっわかったよ…」
彼女の無言の威圧にアレスは毎度のごとく舌打ちするが、溜息をつくと仕方が
なく干し肉を口に頬張った。
そして二人が少し腹を満たした時、
ひゅーーーーーー。
町を流れる風向きが変わった。
少し水分を含んだ風が吹き始める。
ミカが鼻をひくひくさせその事をアレスに教える。
ミカ「…アレス、風の流れが変わった。もうすぐ砂嵐が来るよ」
アレス「そうだな…ミカはこのローブの中に隠れてろ」
風が強くなるとともに空は徐々に暗くなる。気がつくと数キロメートル先に、赤茶
色の砂の柱が渦巻いていた。
アレスはミカを自分のマントの中に寄せた。
ミカ「アレス…私たちいつでも一緒だよね…」
マントの中で身を寄せたミカがおずおずと顔を赤くして尋ねる。
その声にアレスは力強く応えた。
アレス「ああ、死が二人を分かとうと俺達の絆は切り離せない。さて砂嵐が酷くな
る前に、行こうか」
吹きすさぶ風の中、二人は寄せ合って、次の目的地に向けて荒野に足を踏み出
した。
嵐の前兆である暗雲の中に光明が差し込み二人を照らした。
アレスとミカは空を見上げふと、かつての仲間達の事を思い起こし呟いた。
アレス「あいつらはどうしているだろうな…」
ミカ「きっと大丈夫だよ、みんなこのアルゴルで精一杯生きて頑張っていると思うよ」
〜アベルさんはスタージェーンと一緒に、モタビア各地で阿漕な商売を始めてい
るらしい…。その戦略をもう少し増しな方法に使ってもいいと思うんだけど〜
世の中が大きく変わると情報が一番の宝になる。強盗団やマフィアなどの悪党が
たむろする酒場は格好の情報交換の場所だ。アベルとスタージェーンは酒を飲み
ながらこれからの商談の計画を練っていた。
スタージェーン「しかしいいのかい！？あたしみたいな悪党の片棒をかついで」
大酒を煽りながら絡んでくるスタージェーンに、アベルは少し辟易しながらも皮肉
をきかした言葉で返した。
アベル「君が悪党なら私はアルゴルを滅ぼそうとした大悪人の残党という事になる
な…」
その言葉に幾分かの自虐の色を感じたスタージェーンはアベルの背中をどんと
叩き
スタージェーン「またそうやって自分を卑下するんだから」
っと彼に多少、呆れながら嘯いた。
しかしアベルは大して気にする事もなく、酒場の中に流れる裏社会の情報を頭の
中で整理し、アルゴルに潜んでいるかつての同胞『地球人』の陰謀に対抗する手立
てを思索していた。
アベル「我が同胞は全て滅んだと思ったがどうやらアルゴルにスパイとして入り込ん
だ地球人が、今も裏で暗躍しているようだ。こういう裏業界のほうがやつら
の動向をつかめると思ってね。」
その眼差しに宿る闘志に彼女は安堵しつつ、無茶をしないよう釘を刺す。
スタージェーン「まったく無茶はよしてくれよ、そんなあんたに付き合っている私も私
だけどね…」
溜息交じりにそう言っては見るが心のどこかでスタージェーンは、アベルの何か
を成し遂げそうな器の大きさに期待していた。
彼女の思いを知ってかアベルは紅茶を飲みながら二ヤリと笑った。
アベル「袖触れ合うも他生の縁 、君にも大金が入るんだ。ギブアンドテイクだろ」
〜ミラー博士とライラさんはアイナ様やオハリオ様と共に脱出船団でアルゴル太
陽系から新天地へと旅立った。脱出船団の全人口がアルゴルに戻ってもこれから
気候が激変する二惑星には彼らを養う余裕はないとレジスタンス首脳部が判断し
たからだ。あれから５年、今頃博士達はどこまで遠くへ旅を続けているんだろう…〜
無限に広がる大宇宙
悠久に広がる星々の海…
アリサ３世のブリッジ上部にある天体観測室の窓から宇宙の無限の広がりを悲
しげに眺めるアイナとオハリオ。二人は数光年先に離れつつある故郷の方向をじ
っと見つめていた。
アイナ「もう恒星アルゴルがあんな遠くに離れてしまった…海の彼方から私たちを
照らしていたアルゴルが今では瞬く星の一つに過ぎないのね…」
かつて自分達の青春の日々を明るく照らしていた恒星アルゴルが最早、無数の
星々の瞬きの一つに過ぎないのを見て自分達がいかに遠くまで来たかを改めて
思い知らされたアイナが感傷に寂しく呟いた。
オハリオは弱音ともとれる言葉を黙って聞いていたが、彼女を奮い立たせるため
にきつい言葉を投げかける。
オハリオ「アイナ…、僕たちはもう二度とあのアルゴル太陽系に戻ることはできない。
母なる星パルマは破壊され、モタビアやデゾリスにも人々を全て受け入れ
ることは無理だとはじめからわかっていた…。だから僕たちは永い旅に出
なければいけなかったんだ…」
アイナにはオハリオの投げかける辛い言葉の裏に秘められた労わりの気持ちが痛
いほどわかっていた。しかし、この胸にわだかまる未来に対する不安をどうすることも
出来ない。
何故なら、彼女達は『真実の書』の深奥に至った時、これからおこりうる未来の可能
性の中で、
『４００隻いた船団が最終的には二隻しか残らない未来』
を垣間見てしまったからだ…。
アイナ「一体、私たちはこれから何処へ行くのかしら…今から千年後、船団に憑依し
たダークファルスが復活し多くの犠牲者が出ると知っていながら、私たちは
人々を安心させるためにずっと嘘をつき続けなければならない…。私たちが
選択した未来は本当に正しかったの？」
それが無数に分岐する未来のひとつに過ぎないとしてもその光景がアイナの心に
暗い影を落とす。
不安に押しつぶされそうになり、必死に堪えていたアイナが思いの丈を絞るように
吐き出した。オハリオは自分に寄りかかり嗚咽を交え想いをぶつけるアイナの声を
聞きながら彼女の不安を拭い去る事すらできない…自分の無力さを痛感していた。
それでもオハリオはアイナを奮起させようと気丈に声をかける。今、自分達が絶望
に屈していては、人々を確かな未来へ導くことなどできない。
オハリオ「元気を出せ…恐怖は奴らの糧となる。僕たちが運命に怯えていては未来
はあの記憶の通りになってしまう」
お互いに沈痛な面持ちで見つめあう二人…。
そこにお邪魔虫のように、隠れて立ち聞きしていたミラー博士が、彼等の横にまで
歩くと、宇宙を見上げながら希望的推測を述べた。
ミラー博士「それは君達が真実の書で垣間見た脱出船団の内２隻しか残らないとい
う記憶かい。大丈夫、未来は我々の行動如何でいつでも変えることがで
きる。既に君達は未来を観測しているんだ。量子論的にはこの影響は
結構でかいのではないだろうか。常に変動する事象から未来を勝ち取る
のは君達にかかっているよ」
それは、普段は他人の事など大して気にしない様に見えるミラー博士…彼なりの励
ましの言葉であった。
彼の楽観的な天然振りが今の二人にとってはとてもありがたかった。アイナはミラー
博士の思いやりに微笑んで、感謝の気持ちを伝える。
アイナ「そう言っていただけるとありがたいです。」
無限の可能性から未来を勝ち取る…ミラー博士のこの言葉に、意義を見出したオハ
リオが迷いを吹っ切るようにアイナに語りかける。
オハリオ「全てはこれからの僕たちの行動にかかっている…か…アイナ、前へ進もう！！」
アイナ「オハリオ…はい」
お互いに堅い決意を再確認し頷きあう二人…。
そして覚悟を決めたアイナとオハリオは郷愁に振り返ることなく…前を見据え歩き始めた。
彼等の子孫たちの旅はやがて数千年の時をかけて数千光年の彼方…
幸せの妬む神のいない新天地へと辿り着くに至ったと云う。
そして最後に…。ハルはメンテナンスベットに横たわり眠るフォーレンにメッセージを送ろ
うとしていた。
その時、携帯電話が鳴った。僕が出ると大音響の怒声が耳に飛び込んでくる。
？？？「ばっかもーん、いつまで待たせやがるってんだ！今日は午後１０時からの内部
設備の点検作業があるっていってたろうが！早くこんかい！！」
ハル「げ、もう９時３０分！うわあ、急がなくっちゃ。ガンツ整備主任今からそっちに向か
います」
〜ガンツ主任に怒られて僕は取り急ぎ、整備服に着替える、慌しい毎日だけど君の調整
中にこの戦いであった出来事を君のメモリーに伝えていくよ。
そして４歳の誕生日おめでとう。
ウォーレン、いや…フォーレン
ＡＷ１２８９・１２・２０・ハルより〜
第３惑星デゾリスの巨大廃坑の断崖の近くに小さいながらも開拓民の町ができていた…。
大崩壊時、パルマから脱出した人々の１割は治安が悪化しつつもまだ住める環境にある
モタビアへの移住を期待していたが全てを受け入れるにはどうしても無理がでてくる。
そこで、やむ終えず厳冬の惑星、デゾリスへの入植にアルゴルに残ったレジスタンス組織
は力をいれたが、ただでさえ 厳冬期は、氷点下３０度にもなろうかという極寒の地。その上、
先住民のデゾリアンと移住するパルマ人との衝突も懸念された。
誰もが困難にしり込みする中、一人立ち上がったのが他ならぬタイラーだった。
タイラーは既にデゾリアンとの交流があり、なおかつ、宇宙海賊時代に磨かれた統率力を
生かし多くの人々を率いると、デゾリスへの入植を開始した。
開拓事業は苦難の連続だったがタイラーの固い信念と統帥力で漸く、人々が何とか落ち
着いて暮らしていける礎を築くことができたのだ。
かつてアルカディア艦隊に襲撃され崩壊した基地跡の近くに町が建設された。人々は彼
の偉業を讃えその町の名前に『タイラー』と名づけた。
そして人々が漸く、デゾリスの暮らしに馴染んできた頃、タイラーはまだ若いのに、何故か
町の外れに自分の大きな墓を立てた。
墓所から続く洞窟の奥でかがり火を持ったタイラーが感慨深げに呟いた。
タイラー「ようやく出来たか…俺の墓が…」
そう呟くタイラーに横にいた白髪の老人ルセロが揶揄する。
ルセロ「しかしこんな方法でランディール号を隠すとはお前も粋な事を考えるな」
ルセロが言うようにその墓は宇宙戦艦ランディール号を地下深く隠すためのものだった。
自動工廠、滑走路、回復施設、そこには千年後でもランディール号を飛ばせる施設が隠
されている。
動乱の時代はもうすぐ終わる…。人々は時代の変化にも対応し、したたかに生き続ける
のを見届けた今、最早…戦うための船は必要なかった。
しかし、タイラーは千年後、確実に訪れるであろう『闇の目覚め』…星の危機に対し、最善
の状態でランディール号を送り届けるべく封印を決断したのだ。
タイラー「俺もジョディもいつかは死ぬ。だが俺達の残した意思はいつか未来に受け継ぐ者
がいると俺は信じているからな。闇は再び目覚めるかもしれない。でも俺達の仲
間であるランディール号がきっと、彼らの手助けをしてくれるはずさ！」
そう語るタイラーの目は今まで苦楽を共にした船との…仲間との別れにどこか寂しげだった。
その横で今は彼の妻となったジョディが寄り添いながら墓を見上げていた。
ジョディ「そうですね、私はあの戦いの後、テレパシー能力を失ったけど、これから生まれる
新しい命に、何かを伝えることはできます」
彼女はそう言うと身重になったお腹を優しくさすりながら、自分の中に宿っている小さな命を
見つめ呟いた。
そこに身重の彼女の体を心配した、ラガンが咳を切って駆けつける。
ラガン「こら！ジョディはもうすぐ出産なんだから寝てねえと駄目ずら！！」
ジョディ「…すいません。でもランディール号との別れにいても立ってもいられなくて…」
出産間近の一番大事な時に無茶をする患者に医師であるラガンが怒るのは当然だった。
しかし仲間との今生の別れを見届けたいという彼女の意思も無碍にすることもできないの
でラガンは仕方がなく立会いを認めた。
ラガン「しょうがないずらな…じゃあ墓所の封印が終わったらすぐにベットに戻ること！！
いいずらね」
ジョディ「はい！ラガン先生」
そう悪戯っぽく笑いながら答えるジョディを、タイラーは愛しげに見つめていた。
タイラーはデゾリスに身を落ち着けた後、クローニング処理で生身の身体に戻っていた。
今、ジョディのお腹の中に宿る命は二人の愛の結晶だった。
タイラーは自分の子供の誕生を心待ちにしながらこれから生まれる子供達の未来に安寧
があるように心の底から願った。
タイラー「…これから生まれる新たな命か…もうすぐ俺達の子供も生まれる。出来ることなら
俺達の子孫が幸せに暮らせる未来が来るといいな」
感無量にそう願うタイラーに同意するように、ジョディも一緒にこれからの未来の平穏が来
る事を祈った。
テレパシー能力は失ったが代わりに新たな命を生み育てるという生命にとってもっとも大切
な喜びを知ったジョディが実感を込めて、ランディール号を見上げながら答える。強く確信に
満ちた表情で…。
ジョディ「きっと来ます。私たちの思いが受け継がれていく限り、人は闇にも時間にも負けない
逞しさを持っているから…」
そしてついに別れの時が来た……。
ルセロ「そろそろランディール号へ通じる洞窟の入り口を閉じるぞ」
ラガン「おらが後で特定の人物以外開かないよう封をしとくズラ」
ルセロが多くの若者と一緒に墓所の地底洞窟の蓋を閉じ、ラガンが印を結び、千年後まで
誰も入らないよう封を閉じる。
タイラー「じゃあな…ランディール号、千年後の俺達の仲間をよろしく頼むぜ！」
扉がゆっくりと閉じられる中、タイラーは隙間から見えるランディール号との最後の別れを惜
しみつつ…信頼を込めてニコリと笑いながら見送った。
………………。
墓の蓋は閉じられ、永い月日をランディール号は暗い空間で待ち続けた。
何年の月日が立っただろうか…外から声が聞こえる。
少年「偉大なる指導者、タイラー ここに眠る」…『我に触れよ…我が声を聞け…その身をゆだ
ねよ…』？？ギュナは この墓をよく調べれば、って言うけど…何もないよなぁ…
こんなプレートがあるだけで… うわっ！？プレートが引っ込んだ！？」
青年「そうか！ ルディ、プレートを もっと押し込め！」
少年「よしっ！」
金色の髪の少年により運命の扉は開かれ、白銀の龍は今再び、大宇宙へと羽ばたいた！！
闇を乗り越え新たなる未来へと！！
アルゴルの大地に眠るタイラー達の想いがその軌跡をいつまでも眺めていた…。
スペースクルーザーランディール 〜完〜
投稿の広場に戻る
トップページに戻る