クロスオーバーストーリー
ルディ達が謎の少女と遭遇した頃、遠く離れた地で別の異変が起こっていた。
「……っててて……。どこだ？ここ……。」
ひび割れた大地がむき出しになっている荒野に、また異世界から飛ばされてきた者達がいた。
「神殿の中じゃないみたいだな……。」
彼らの中の一人が頭をさすりながら呟く。
「どうしたんだろうソニック？」
不安げに、青いハリネズミに訊ねる二本のシッポの狐。
「俺に聞かれても分かるわけないだろうテイルス。ナックルズ、お前はどうだ？」
「いや、俺にもわからない。」
ナックルズと呼ばれた赤いハリモグラは、肩をすくめて見せた。
（ソニック・・・本名ソニック・ザ・ヘッジホッグ。「音速のハリネズミ」の異名を持つ青いハリネズミ。
本来は冒険家なのだが、カオスエメラルド、またはＤｒ.エッグマンがらみの事件に度々首を突っ
込んで、活躍している。）
（テイルス・・・本名マイルス・パウアー。二本のシッポを持つ子ギツネ。二本のシッポのため、「テ
イルス」とあだ名され、いじめられていたが、ソニックに憧れ、一緒に行動するようになった。機
械に精通し、様々なメカを操る。）
（ナックルズ・・・本名ナックルズ・ザ・エキドゥナ。古の戦闘民族の末裔の赤いハリモグラ。カオス
エメラルドを守る使命を帯びており、エメラルドを狙うＤｒ.エッグマンを、ソニックと共に何度も倒
してきた。ただし、人にだまされやすい性格のために、エッグマンにだまされて、ソニックと敵対
したこともしばしば。巨大な拳を用いて戦う。）
「なあ、それより「カオスエメラルド」は？」
ソニックの何気ない一言で、ナックルズは我に返り、辺りを見回した。
「ない！カオスエメラルドが！」
ナックルズは必死になってキョロキョロと辺りを見回していた。しかし、周りには何も、それこそ不
毛の大地以外の何も存在していなかった。しかし、彼らは運に恵まれていたようだ。
「ねえ！あったよ！」
テイルスの呼ぶ方へ行くと、三つの宝石が輝いていた。
「これだけか？他には！？」
「いや、これだけだよ……。」
「くっそう！」
ナックルズは拳をぶつけて悔しがった。本来七つあるはずのカオスエメラルドが三つしかないこと
が、彼をいらだたせた。カオスエメラルドとは、七つの力の宝石の事で、すべて集めれば無限の
力を発揮すると言う物である。つい先ほどまでは七つすべてがそろっていたのだが、今ここに残っ
ているのは三つだけだった。ナックルズは、そのいらつきを「暴れる」事で発散していった。
「なあ、ところで、俺たちどうなったんだ？」
ナックルズが落ち着きを取り戻すのを見計らって、ソニックが口を開いた。
「さあ……。カオスエメラルドが光ったのは覚えているんだが……。」
「ああ、神殿でエッグマンと戦ったのはな……。」
ソニック達は、「異変」が起きる直前の事を思い返し始めた……。
事の発端は、すべてのカオスエメラルドがそろい、本来あるべき場所の「ヒドゥンパレス」に返され
た事だった。七つのカオスエメラルド、そして、それらを統べる「マスターエメラルド」が収められ、
ソニック達は安堵していた。
しかし、「またもや」行動を開始したＤｒ.エッグマンが、すべてのエメラルドを手に入れる好機と見て、
手前のロボット軍団を引き連れて、ヒドゥンパレスを強襲してきたのである。
（Ｄｒ.エッグマン・・・世界征服を目論む、悪の天才科学者。IQ３００の頭脳を持ち、様々な兵器を開
発し、カオスエメラルドを度々狙うが、毎度のごとくソニック達に敗れ去っている。ただし、世界の
脅威となる敵が現れた場合、ソニック達と共同戦線を張る場合もある。）
ソニック達がエッグマンを迎え撃ったが、今回はエッグマンも本気らしく、大量のロボット軍団に次
第に押されていった。ところが、突然八つのエメラルドが光り始め、光に飲まれてソニック達は気
絶してしまい、気がついたときには、この場所に飛ばされていたのだ。
「……で良かったよな？」
「ああ……、俺もそこまでしか覚えていない。」
三人とも、エメラルドの光を見たことしか覚えていなかった。思案に暮れるソニック達の下へ、別の、
ソニック達の良く知る人物が現れた。
「どうやらお前たちも飛ばされたようだな……。」
「！？」
突然声をかけられ振り向くと、ソニックにそっくりな、黒色のハリネズミが立っていた。
「シャドウ！お前……。」
（シャドウ・・・本名シャドウ・ザ・ヘッジホッグ。Ｄｒ.エッグマンの祖父、Ｐｒ.ジェラルドの、究極生命体
開発計画「プロジェクト・シャドウ」によって生み出された究極の戦闘兵器。詳しい過去は不明。
ソニックと同等のスピードを持ち、さらにカオスエメラルドの力を引き出しての戦闘を得意とする。）
「飛ばされたって……シャドウ！お前はここがどこだか分かるのか！？」
ソニックの問いに、シャドウは答えた。
「ああ、ここはどうやら異世界らしい。」
「何！？」
よもや「異世界」という単語が出てくるとは思っていなかったのだろう。三人は驚きを隠せなかった。
「お前達の言うエメラルドが光った時間とほぼ同じ頃だと思うが、あの瞬間、世界の数箇所で時空
が歪むのが確認された。僕にもよく分からないが、第二波に飲み込まれてしまったようだ……。
気がついた時、僕は……このカオスエメラルドを持っていた。」
「なっ！」
シャドウが取り出したエメラルドを見てナックルズが声を漏らした。しかし、短気なナックルズには珍
しく、すぐには飛び掛らなかった。いや、飛び掛れなかった。
「カオスコントロールで元の世界に戻れぬかと試してみたが、だめだった……。」
（カオスコントロール・・・シャドウのカオスエメラルドを使った技の一つで、時空を歪める技。主に瞬
間移動に用いるが、時間を短い間止める、自分以外の物体を瞬間転送する、などの応用もでき
る。）
「そして、カオスコントロールで色々見て回ったのだが、分かったことが二つ。」
「……。」
三人は、最早息も潜め、シャドウの話に聞き入っていた。
「一つは、この世界そのものの次元が不安定で、僕達以外の世界の人間もこの世界に迷い込んで
いると言う事。そしてもう一つは……」
シャドウの口調が、歯切れの悪いものになっていく。ソニック達にとって、最悪の知らせがもたらされ
ようとしていた。
「……ドクターもこの世界に転移していて、すでにカオスエメラルドを二つ押さえている事。」
「何だと！？」
シャドウの話を聞いて、驚きの声を上げるのはこれで何度目だろう？ソニック達にとって、もっとも
ショッキングなニュースだった。
「急いだほうがいいぞ。すでにドクターは本拠地も構えている。ご自慢のロボット軍団もな……。」
「待てシャドウ！！」
立ち去ろうとするシャドウを、ソニックが呼び止めた。
「お前、これからどうするつもりなんだ？」
当然、といったようにシャドウは答えた。
「元の世界に返る方法を探す……。とりあえずドクターが持っているカオスエメラルドを奪い、行方不
明のもう一つのエメラルドも探す……。その上で、お前達が持っているエメラルドも合わせれば、も
しくは帰れるかも知れん……。」
それだけ言うと、シャドウは突然消えた。カオスコントロールで跳躍したのだ。去り際、シャドウが空を
見上げぽつりとつぶやいたのを、ソニック達は気づかなかった。
「この世界にいるのは僕たちだけじゃない……さあ、どうする？ドクター……。」
「ソニック……シャドウの言ってた事……。」
「ああ、エッグマンはほっとけないな……それに元の世界に帰る方法、俺達も探さなきゃな。」
「エメラルドもだ！ぜってーに奪い返してやる。……とりあえず、俺達も行くか？ここにいても仕方が
ない。」
「そうだね。ソニック。行こう！」
「そうだな！……ハン！面白くなってきやがったぜ！」
ソニックは、久しぶりに冒険心がたぎるのを感じながら、テイルス、ナックルズと共にその場を後にした。
一方その頃、ルディ達は……。
「あれ？何だこれ？」
「どうしたのルディ？」
謎の少女、そして、レイを仲間に加えて行動を再開したルディとファルが、ふと道端で、怪しい輝きを
放つ宝石を見つけたのだった。
「なんだか、すごい力を感じるわ……。」
シャドウの言っていた、行方不明の最後のカオスエメラルド。それが、偶然にもルディの手に渡ること
になった。
ソニック達が走り去った後の荒野。ソニック達は、自分を見ている存在に気がつかなかった。
「フフフ……ソニック共よ、お互い妙な世界に飛ばされたようだが、ワシにとってはかえって好都合……。」
上空からソニック達を見下ろしていた偵察ロボット。そのモニターの前で、Ｄｒ.エッグマンはほくそえん
でいた。
「ドクター。俺は何をすればいい？」
脇に控えていたロボットがエッグマンに問いかけた。
「やつらに「アイサツ」してくるがいいわ。最も、お楽しみはまだ先じゃがな。」
エッグマンの言葉に返事もせず、ロボット……メタルソニックは部屋を出て行った。
（ソニック……！今度こそお前を倒す！ドクターから預けられた「この」カオスエメラルドに懸けて……！！）
（メタルソニック・・・ソニックに対抗するため、エッグマンが開発したロボット。純粋なスピードだけなら、
ソニックをも上回り、過去数回ソニックと死闘を繰り広げた。）
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