〜夢幻之星学園番外編〜
第二部 ケン・ミラー博士
序章とファンタジア〜記憶の彼方に〜
かつて、こういう登場キャラクターがいたということを皆さんは御存じであろうか。
朝から晩までままも食わずに、ひたすら社会に対してあまり貢献していないような
数々の珍発明をしていた男を。
そう、ケン・ミラー博士その人である。
かつて「ちから・もりもりん」なる奇特な名称を持つ装置を発明。その発明を元に
バロン所長と死闘を演じたプレーヤーもいらっしゃったのではなかろうか。
しかし、そのことは１０数年前のことであって、すでに忘却のかなたへ置き去りに
なっているかもしれない。
その彼の奇特かつ、なにげない日常を描いてみる。
第一話 追憶と油断と経緯
あの熾烈を極めたバロン氏との戦闘から何年経っただろう。
今日も朝から、何かとわけわからん謎の装置を作りながらケン・ミラーは振り返る。
バロン氏はあの戦いの結果、二目とは見られぬ姿へと変貌し、いずこかへと消えた。
もちろん、社会からも抹殺されて、人々の記憶から忘れ去られていることであろう。
ぱちぱちっ
ばちぃっ・・・。
ふと、我に返る彼。つまらぬ過去にふけって油断していたのか、装置の配線がショー
トを起こしている。
「ま、まずっ・・・」
彼は慌てて止めようとしたが、ショートした配線はますます絡み、しまいには煙を
上げついには燃え出した。
「水、みずぅぅ〜〜っ（泣）」
慌てふためく彼。
と、その時大量の水が降り掛かって来た。
「ちょっと?ミラ〜さん。困りますがな」
どきっとして振り返ると、近所のばーさん（ラボのあのばーさん：友情出演）が青
ざめた顔を近付けて言う。その後ろに大きなバケツを持ったライラの姿が。
「す、すみません」
「もぉ、困った人だね。まったく・・・」
ばーさんがそう言いながら、床に散らばっている配線の被覆くずだの針金の切れ端
だのをかたづける。
彼の場合、いつもこうである。
しかし、気にしていない彼ではある。
「ところで、ばーちゃん。何の用ですか？」
濡れたままの彼が聞く。
「煙が上がってたからね。いつもの事と思ってきてみただけさ」
ばーさんがムスッとした表情で答えた。
いつものこと。
それは、ここにやって来てからがそうだ。
度重なる奇妙な実験に失敗して、屋根を吹き飛ばしてみたり、火事になりかけてみ
たりといろいろとある。
その辺だけは近所でも有名になっているほどだ。
しかし、不思議なことはこのばーさん以外に苦情を言う人はいない。もしかしたら
とうに忠言など無駄だろうと諦めているのかもしれぬ。
たとえ来ても、
「先生。ラジオが壊れた。直してくんねぇかな」
と、たまに修理を頼みに来るぐらいなものだ。
とどのつまりは、便利な修理屋さんというところだろうか。
そんな要求にも答える彼は、発明のためなら、といとも簡単に引き受けてしまう。
それも、発明狂の彼ならではのことかもしれない。
ばーさんが帰った後、彼はしばらく煙を上げてしまった例の物体の残骸を見遣りつ
つ、今現在進めている発明品の計画を考え直していた。
この得体の知れない謎の物体であるが、夢を映像化するための装置であり、大きさ
はビデオデッキ、もしくはDVDデッキぐらいであろうか。
火を吹いた部分は、奇しくも電源部のトランスと入力コード付近だった。
ぼんやりと見つめていた彼は、気を取り直すまでもなく再び作業にとりかかったの
だった。
〜第一話 完〜
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