皆様，始めまして．私はナルバスの管理アンドロイド，フレナと申します．
私は，ルディさんたちと旅をする324年前にマスターフォーレンによって作られ
ました．私は，マスターに作られ，ナルバスの管理を司る使命を受けた．．．確かに
そうですわ．でも，時折，私の記憶に思い浮かぶものがあるのです．一体何なので
しょう．これは，人間の見る夢というものなのかしら．
「マスター，アンドロイドも夢を見るのでしょうか？」
　マスターに聞いても，微笑んで不思議そうになさるだけ．．．

私がマスターと始めてあったのは，メンテナンスベッドの上でした．目を覚ますと，
初めて会った殿方のアンドロイドが私の顔を覗き込んでいらして，
「お目覚めですか．貴女のお名前を教えて下さい．」
　と，おっしゃったのです．そのとき，私は自分の名前だけは覚えていて，答えました．
「私はフレナともうします．貴方は．．．．」

マスターは，モタビアにシステムのメンテナンスにいらした折りに，先史時代の
遺跡で私を見つけたそうです．私はぼろぼろになった紺のワンピースに白いエプロンを
着けていたそうです．もとのボディは既に劣化して使用不能になっていて，生き残って
いた頭部を修理して現在のボディに接続したのだと教えていただきました．
時折，思い出すのです．それはおそらく失われた私の過去の記憶．といっても，頭部
にも多少の劣化と損傷があったので，マスターに修理とバージョンアップをして頂いて
います．ですから，それが定かな記憶とは言いかねますが．．．

私はあるお屋敷で奥様とお子様方のお世話をしていました．奥様はご病弱な方で，私は
炊事などの家事をしながら，お子様方にお勉強を教えておりました．奥様はお優しい
方で，私を家族の一員として大切に扱ってくださいました．お子様は確かお二人．
お嬢様とお坊ちゃまでした．私はお子様方にとりわけ，宇宙のこと，星の話しをする
のが好きでした．幼い時から遥かな星空へ夢をはせることができますように，私という
AIを通して，パルマの栄光である科学技術について良い第一印象を持てますようにと
思っておりました．

その後のことは記憶がはっきりしないのです．理論的に考えてみると，私は大崩壊前
のパルマで家庭教師兼家事アンドロイドとしてある一家に仕えていたのでしょう．
そしてパルマ滅亡の時に，パルマを脱出しましたが，数百年の間にAIとともに記憶も
ボディも劣化して眠っていたのでしょう．

それにしても，ぼろぼろになった姿の私がマスターの腕に抱かれて運ばれたなんて
．．．考えるだけでも恥ずかしいですわ．

過去はどうあれ，私はフォーレンをマスターと選びました．そして，今のこの姿と
機能に誇りを持っています．確かにマスターは人間ではないけれど，私に生命を
与えてくださいました．それに，今私に与えられた仕事に満足しています．

「フレナ，シャトルシップのメンテナンスをしましょう．いらっしゃい．」
　あら，お話が長くなってしまいましたわ．早くマスターのお手伝いに行かなくては．
それでは，皆様ごきげんよう．