時の果てに
第４話 『拡大する戦火』
とある場所にある会議室のような一室で、数名の男女が談義をしていた。その内容とは、クラグに２度
あまり日を置かずして量産型ＤＦが現れたという事について、だった。もしかすると、また現れるかも
しれない。そう考えた彼らは、この村には量産型ＤＦを引き付ける何かがあるのかもしれないという
結論に至り、誰が調査するかを検討していた。
「私は、あまり長い間ここを離れる訳にはいかないわ。」
ベルセリアは、ここでは実質全ての管理をする役割を持っているため何かあった時に居なくては満足に
出撃も出来なくなってしまう。
「俺は・・・ちょっと目立ちすぎるしな。変装するにしても体格に無理がありすぎる。」
そう言ってラーガルードは自分の背中に取り付けられている大型の銃を見た。ラーガルードは砲撃戦を
得意分野とするため、それに見合った銃や装甲をしているため他のと比べると、かなり大きな体をして
いる。
「・・・ファルトガイス、やってみる気は無い？」
「断る。体格的にはラーガルードよりはマシだが・・・。」
ファルトガイスは接近戦を目的として作られているため、身長などは常人より少し大きい程度なのだが
機動力を高くするために、バーニアが体の至る所に付いている。
「それに、変装すると言ってもローブ等で体を隠す必要があるしな。下手に動くとローブが燃える。」
「スーラホルドは・・・。」
「やっても良いけど・・・。」
「危険ね。」
「危険だな。」
「危険すぎ。」
「危険…。」
「なぜだ・・・？」
スーラホルドは偵察を目的として作られているが、それはあくまでも対機械兵用の事だ。各種センサーに
かからないようにできているため、相手が機械兵ならば透明になる事もできる。だが、それ以外ならば
大した効果が無いのだ。
「・・・あぁ、その村には機械兵とかは居ないのか。ならいいや。」
「・・・・。メイランは？」
「んー、アタシ行って良いの？」
「他に誰も居ないしな、って俺は最初からお前に行ってもらう気でいたんだが。」
「なら、なぜ最初にメイランに言わないんだ。」
「愚問だな。キャラ紹介を兼ねているからに決まっているだろう。」
「誰に言ってんだよ・・・。」
見た目的には普通の人間と変わらないメイランをクラグに送りこむため、ベルセリアは裏工作を開始した。
見た目の年齢的には学生なので、適当に手続きを行い、周辺のアパートを借りたりと色々行った。
必要な資金は…何処からか調達してきている。何処から調達したのかはベルセリアは答えなかったので
謎だが。
「何か、久しぶりに学校へ来た気がするなぁ。」
アインは教室の窓から外を見つつ、そう呟いた。教師が何か言っているが、アインは特に聞いていなか
った。今まであった事を考えつつ、これからどうするかを考えていた。
結局先日の鎧は勝手に消えてしまった。どうやって出したのか、どうやって消えたのか。全然わからない
ままだ。量産型ＤＦが、また襲ってくる可能性もあるため鎧は自在に出せるようにはなっておきたいの
だが、練習しようにも練習方法が思いつかない。
「足の怪我も何時の間にか治ってたし・・・俺の体、一体どうなってるんだ・・・。」
「どうかしたのか？アイン。」
考え事をしているとフォードが突然話し掛けてきた。どうやら授業は既に終わっていたらしい。
「いや、実は・・・。」
素直にあった事をフォードに言おうかどうか、思わずためらってしまう。いくらフォードでも、こんな
事を話しても信用しそうにないからだ。
「・・・いや、何でも無い。」
「なんだよ・・・。何でも無さそうには見えないな・・・。喧嘩か何かか？」
「まぁ、そんな所・・かな。」
「それなら、これを使えよ。」
そう言ってフォードはアインに金属で出来た筒状の物を渡した。いつもの爆薬かと思ったが、導火線も
見当たらず、また爆薬にしては妙に重い。
「フォード・・・これ、なに？」
「ほら、そこにスイッチがあるだろ？押してみろよ。」
フォードに言われるままスイッチを押すと筒の先端から光が伸び、剣となった。
「ビームサーベルってヤツだ。」
「・・・・・何でこんなのをフォードが？」
「あぁ、倉庫にいくつかあったから一本持ち歩いてるんだ。」
「どうでもいいけど・・・さ・・・。」
「ん？なんだ？」
喧嘩なら、とビームサーベルを渡してくるフォードの神経が理解できなかった。対人戦で、こんな物を
使えば相手は間違い無く両断されるだろう。
「あぁ、そうか！ビームのエネルギーの事だな？安心しろ、一日３時間の充填で１００時間くらいなら
ビームを出せるから。あ、念の為予備のエネルギーパックを渡しておくな。」
「いや、そうじゃないんだけど・・・まぁ、いいや・・・。」
今まで気がつかなかったが、周囲のざわめきがいつもより小さい事に今になって気がついた。今まで
ずっと考え事をしていたから気がつかなくても当然かもしれないが。一体何があったのかと、フォードに
たずねた所、転校してきた人が居るという話だった。名前はメイラン・・・という事以外は知らないらしい。
「見に行ってみるか？」
「いや、いい。」
それだけ言うとアインは次の授業に備えた。
放課後になると同時にフォードは突然席を立った。
「悪い、アイン。俺はまだ死にたく無いんだ。」
訳のわからない事を言うと、フォードは窓から外へ出ていった。ちなみに、この教室は四階にある。
普通なら落ちたら怪我などするかもしれないが、フォードは地面に着地後全力疾走して何処かへ
行ってしまった。
「・・・どうしたんだ、フォードのやつ・・・。」
「ねぇ、アイン。フォード知らない？」
後ろから話し掛けられ、ようやく自体が飲みこめた。声の主はレミィ・ラドダル。きっかけは覚えて
いないが、だいぶ前に知り合った女性だ。彼女の話では、今日はフォードに借金を返済してもらう
予定だったらしい。
「・・・それで逃げたのか。」
「そう・・逃げたのね。」
それだけ言うとレミィはアインの腕を掴んで引っ張る。
「・・・なんで俺をひっぱる？」
「決まってるでしょ！フォードの家に行くからよ！」
「一人で行けよ！」
「場所知らないのよ！」
「それで、俺に案内しろ、と・・・。」
「そういう事ね。」
「別に明日でも良いだろう。」
「明日じゃ遅いのよ・・・。」
「・・・まぁ、細かくは聞かない方が良さそうだな。」
「貴方の身のために、ね。」
「・・・・。」
（フォード、すまん・・・俺も命が惜しいんだ・・・。）
無事にレミィをフォードの自宅まで送り届けたアインは、何事も無かったかのように立ち去ろうとした
のだが・・・。
「フォード、居ないみたい・・・。」
「居留守・・・じゃないのか。フォードが行きそうな場所に心当たりは無いからな。」
「・・・。」
残念そうにレミィは肩を落として何処かへ行ってしまった。恐らく帰ったのだろう。最後にレミィが
何かの雑誌がどうの、と言っていたのが聞こえた気がした。
「こうしてみると、やっぱりあの事が夢みたいに思えるんだけどなぁ・・・。」
と思いつつぼんやりして歩いていると、誰かが喧嘩している所へ突っ込んでいた。良く見ると路地裏に
迷い込んできていたらしい。
（入る前に気がつけ俺！）
などと思っても、もう遅い。既にアインも巻き込まれていた。とはいえ、喧嘩は弱いアインは殴られっ
ぱなしになっていた。フォードから貰ったビームサーベルを使うわけにも・・・と思いつつも気がついた
時には振りまわしていた。ついでに爆弾を投げつつ。
「なんだ、こいつは！？」
などと言われているが、やってしまったものは仕方無い。このまま全滅させようと思ったが、相手の
一人が銃を取り出した。
「へ、へへへ・・貴様がそうくるなら俺はこうだ！」
震える手で無闇に発砲し始めた。狙いを定めている訳では無いので当たる訳では無いが、危険な事に
変わりは無い。
「このままじゃ・・・。」
そう思ったと同時にアインの体に白い鎧があらわれていた。どうやって身につけるか、何となくわかって
きたので、次ぎはこの鎧を着けた状態での戦い方を試してみようと思った。
ふと脳裏に左肩の翼の使い方が浮かび上がってくる。後は考える前に体が自然と動いていた。
「ウィングニードル！」
羽が槍へと姿を変えて飛んでいく。一発は銃を持っていた男の肩に、もう一発は流れ弾に当たっていた
男の左足に、それ以外は地面や壁に当たっていた。
「上手く的に当たらないもんだな・・・。って、当ててどうするんだ！」
相手は生身の人間である。こんな攻撃が当たれば間違い無く死ぬだろう。
その後、羽を回収したアインはそのまま空へ飛び去っていった。思うことは一つ・・・。
（空を飛んでいる時に鎧が消えないように・・・。）
飛んでいると突然激しい衝撃に襲われ、そのまま地面に落ちた。
「な、なんだ？」
態勢を立て直していると、横から何かが出てきた。
「ぎょえぇぇぇ」
やる気の無い悲鳴と共に量産型ＤＦが左腕の大砲を向けている。
「またラムス・・とかいうヤツが俺に差し向けたのか・・・？」
アインは羽を一枚取り剣に変えて、量産型ＤＦに対して構えた。
だが、次の衝撃は後ろから来た。何事かと振り向いてみると、そこにはもう一体別の量産型ＤＦが、
更に別の場所からも同じく出てきて、合計６体となった。
「さすが量産型・・・。」
などと関心しつつアインは羽を全て切り離しビットとして量産型ＤＦに向け射出した。
「行けぇ！メッサーシュミット！」
その身を刃と化した羽と量産型ＤＦが戯れていると、頭上から別の羽が槍となりそれぞれの量産型ＤＦを
貫いた。
「く・・手応えが無さ過ぎる・・・。これだけいれば一体くらいは本物かと思ったが・・・。」
頭上から聞こえてくる声は何処かで聞いた事があるような声だった。
「あの・・アナタは・・？」
何よりも疑問なのは自分と似た鎧を着けている事である。色と翼の位置は違うが、それ以外のデザイン
などはそっくりだった。
「・・・なんだお前は。」
相手も同じ疑問を持ったようだ。だが、どちらかがその答えをより先に別の声が割って入った。
「さて、思った通りお二人とも着ましたね。」
「ラムス・・・どういう事だ。」
「ふふっ・・それはですね・・・。」
突然ラムスは瞬間移動をし、そして元ラムスが居た場所に巨大な剣が降ってきた。
「ち、外したか。戻れ！」
その声に反応し巨大な剣は大きさを小さくしつつ、黒ずくめの男の手元へ戻った。
「アルバートさん、危ないじゃないですか。それにいきなりすぎますよ？」
「俺はお前の邪魔をすると言ったじゃないか。」
「あぁ、もう時間が・・・。」
「時間？」
そうアインが聞いた時だった。突然、村の中心部・・・ラムセイドビルが爆発した。
「なんだ！？」
「まさか・・・ヤツか？」
「えぇ、ヴァルスさんの待ち焦がれていた人ですよ・・・。」
「ふふふ・・貴様らと遊んでいる暇は無くなった！」
それだけ言うとヴァルスは空高く舞い上がり、ラムセイドビルへ向けて飛んでいった。
「アイン君は行かないんですか？」
「・・・俺は帰って寝ます。」
「いけないな、ちゃんと現実を見ないと。」
「アルバートさんの言う通りですよ、ほら早く行ったほうがいいですよ。」
何を言っても行こうしないアインを見て業を煮やしたラムスはアインの肩を掴み瞬間移動し、強制的に
ラムセイドビルへと連れてきた。
そこは惨事となっていた。量産型ＤＦが数十体と、それよりも大きい見るからにボスランクのＤＦが、
当たり一面を破壊していた。
「こ、こいつ・・何処から沸いてきたんだ・・！？」
「今までこんなヤツ居なかったぞ！！」
などと生存者達の声が聞こえる。
「・・・さぁ、アイン君。貴方も戦いなさい。」
「ラムスは戦わないのか？」
「いえ・・・私は『傍観者』でして、ああいうのとは戦えないんですよ。支援はできますが。」
「良くわからないけど・・まぁ、いいや。」
アインは左肩の翼を大きく開くと同時に、高速で地面すれすれを飛びＤＦに向かって行った。
続く
ラムス「補足版ですが・・・今回は特に必要なさそうですね。」
次回予告
アイン「ペース速いなぁ・・・。」
ラムス「まぁ、急いでますし。」
アイン「なんで？」
ラムス「・・・聞かないで下さい・・・。」
アイン「それはそうと次回でラストになるのかな？」
ラムス「あー、私の計画はまだ終わりませんよ。」
アイン「最終回にはならないって事か・・・。」
ラムス「そうなりますね。」
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