頭が痛い・・・・だが行かなければ・・・・胸が苦しい・・・・立ち止まることは
許されない・・・・どこまで行けば償いきれるのか・・・・
償われるはずがない、いや償われてはいけない・・・・片腕が無くなってしまった・・・・
まだ僕は動ける・・・・また誰かが泣いている・・・・
助けなきゃ、もう泣き顔を増やしてはいけない・・・・いつになったら悲しみのない
世界は来るのだろう・・・・僕に涙を消せるのか・・・・
どうであっても止まることは許されない、僕は兄弟を殺した大罪者だ・・・・この罪は
消せないの？・・・・消してはいけないそれが罪だ・・・・
僕は幸せを求めてはいけない、成功も求めてはいけない、失敗は許されない、やすらぎも
許されない、求めてはいけない、許されてもいけない。
「僕は・・・・許されない・・・・決して・・・・この身が朽ち果てても・・・・
永遠に・・・・」
目を開けるとそこは真っ暗だった。光のない世界、何もない世界、誰もいない世界、あるのは
闇と孤独だけ・・・・
「ここが僕の世界なのか・・・・そうだよな・・・・罪に塗れた僕が存在できるのは
ここだけなのだから・・・・」
上の方から少年が降りてくる、幼く、そして未来のある少年だ。見覚えがある・・・・
あの少年は・・・・そう思った瞬間、少年の首が斬り裂かれた。
「僕の弟・・・・僕が殺した・・・・・」
さらに双子の少女が降りてくる、可愛らしく幸せな未来が待ちうけているだろう。見覚えが
ある・・・・この少女達は・・・・そう思った瞬間、双子の少女の額を槍が貫いた。
「僕の妹・・・・僕が殺した・・・・」
幼い子度達に囲まれた女性が降りてくる。幸せそうな子供達、優しい笑顔を絶やさない女性。
見覚えがある・・・・この人達は・・・・そう思った瞬間、子供達と女性は惨殺された。
「僕の所為だ・・・・僕が存在しているから・・・・」
死んでしまいたい、死んで償いたい、僕は存在してはいけない、僕の存在は不幸を呼ぶ、
僕は死神だ、僕は死を運ぶ、消えてしまいたい、いや駄目だ、もう遅い、罪を犯して
しまった、死なんかじゃ償いきれない、僕は生きても死んでもいけない、僕に許された場所、
それは一切の光のない生き地獄の世界。
炎のように赤い光に包まれた青年が近づいてくる、ラーディスだ、来ないでくれ、君が
いると僕は幸せになってしまう・・・・白い純白の光に包まれた二人の兄弟が近づいて
くる、ゼルディとエレンディラだ、来ないでくれ、君達がいると僕はやすらぎを感じて
しまう・・・・
ゼルディが黒い闇に包まれる、僕の所為だ、僕に力が無かったから、彼を狂わせたのは
僕なんだ・・・・もうわからない、生き地獄にすら僕はいられないのかも知れない・・・・
不意に僕を優しく暖かい光が僕を包む、やめてくれ、僕には光が眩しい、でも・・・・
なつかしいな・・・・光に包まれた女性が僕を抱き締めた、彼女は・・・・セレナ・・・・
なぜ僕を・・・・抱いてくれるんだ・・・・
「もう自分を苦しめないで、何もかもあなたの所為じゃないのだから・・・・」
「嘘だ、僕が・・・僕が皆を殺したんだ・・・僕が不幸を運ぶんだ、皆そう思っている・・・・」
僕を抱き締めたセレナは涙を流しながらよりいっそう僕を強く抱き締めた。
「たとえ誰があなたを戒めても、私はあなたを許します。あなたは私のかわいい子供なの
だから・・・」
「・・・・本当は辛かった・・・・許されたかった・・・・僕は救われたかった・・・・」
赤い光が僕を包む、やめてくれ、僕には凍り付いている方がお似合いだ・・・・でも、
暖かいな・・・・誰かが僕の腕を引っ張って行く、彼は・・・ラーディス・・・・いつも
君を巻き込んでいるのに・・・・
「何でもかんでも自分だけで背負うなよ、二人だったら重い荷物も運べるさ」
「なぜ君はいつまでも僕のそばにいてくれるんだ・・・・僕には何もしてあげられないのに・・・」
ラーディスは僕の肩を組んできた、屈託のない笑顔で僕に笑いかける。
「俺はお前といるだけで楽しいんだぜ、親友のお前がいるからな」
「・・・・恐かった・・・・いつかは君が離れていくかも知れなかったから・・・・」
二人が僕の腕を引っ張り、前へ前へと進む。向かっていく先には光が見える。
「私はあなたの罪を許します。幸せになれるまで見守っていますよ」
「どんな罪も俺が一緒に償ってやる、俺はお前の親友だ」
光が僕を包んで行く、暖かい、優しい、僕は幸せを求めても構わない、希望をもっても
許される、さあ行こう、僕は希望に満ちている、僕はまだまだ罪塗れだけど二人は僕を
許してくれるのだから。
目覚めるとそこは病室だった。隣にはエレンディラが眠っている。
「今度こそ、今度こそ守って見せる！」
僕はゼルディのもとへ向かっていった、今度こそ兄弟を守り抜くために・・・・
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