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幽閉された総督のいる建物の前に一人のレイマーが立っていた。全身傷だらけで、特に
肩から斜めに斬り裂かれた傷跡と、傷つけられてまだ新しい銃弾の痕が痛々しい。
しかしレイマーは痛がる様子もなくただ立ち尽くしていた。ある一つの決意とともに・・・・

そのレイマーの前に一人の別のレイマーが現れた。狂気に染まった笑みを浮かべ、その
右手には黒い玉のような物が握られている。

「何の用だ？ラーディス・・・」
「お前を殺しに・・・・」
ラーディスはいやみたらしい笑みを浮かべるゼクドに対し、銃を構えた。しかしその手は
わずかに震えている。
「なぜだ・・・なぜこんなことができる・・・・。お前の目的は哀れな子供達を救うのでは
なかったのか？」
「子供を救う・・？ああ、そうだよ、俺は子供達を救う。だからそこを退いてくれないか？」
「ふざけるな！」
激しい炸裂音と共にゼクドの頬から一筋の血が流れた。

「なにが、子供達を救う、だ！お前のやってることは虐殺じゃねぇか！」
「ふむ・・・説明が必要のようだな。ならば教えてやろう・・・俺の計画を」
ゼクドはラーディスに自分の計画を説明し始めた。対ダークファルス、完全に捕縛する方法、
そしてこれからのことを・・・
「・・・・そしてこの黒い玉がゼルディごと封印したダークファルスだ。総督を助け、そして
多大な恩賞を受け、そして今まで以上の子供達を救うんだ」
「ッざけんな！、黙って聞いてりゃあ良い気になりやがって、ガキの一人や二人救うどころか
生け贄にするような奴に子供が救えてたまるか！！」
再び乾いた炸裂音が鳴り響き、ゼクドの腕を貫いた。ゼクドはもっていた黒い玉を落とし放心
状態になっていた。

「救う・・・子供達を・・・セレナのように・・・救えない・・・誰一人・・・皆死んで逝く・・・
俺には救えない・・・」
ゼクドは震えだし、奇声を上げながらラーディスに斬りかかった。

「クッ！」
ラーディスは銃で剣を受け止め、ゼクドを蹴り飛ばした。
「一体何があった？ゼクド・・」
ゼクドはその場で膝をつき、少しづつ語り始めた、果てしない絶望を・・・

「最初に孤児院を建て、そこに人を雇って孤児を集めて育ててみた・・・、だがある日俺が
出稼ぎから帰ってくると全員殺されていた。外道共によってな・・・。次はそんなことがない
ようにガードマン達を雇ってみた、ところがそのガードマン達が子供を殺し陵辱の限りを尽くして
いやがった・・・。それでもめげずに信用する者達に頼んで護衛団をつくった、ところが疫病が
流行って次々に死んでいった・・・。いまでもそうだ、いくら金を稼いでも事故、病気、事件に
巻き込まれたり、外道に殺されたり・・・、いつまでたっても何をやっても俺には誰も救えない
・・・いくら救おうとしても俺にかかわれば皆死んで逝く・・・」

ゼクドはフラフラと立ち上がり、まるで力の入らない状態でラーディスに問い詰めながら斬りかかった。

「なぁ、ラーディス・・・俺は呪われているのか？それとも、俺は呪いの元凶なのか？教えてくれ
　・・・ラーディス・・・」
「・・・・・・・・・」
ラーディスは何も答えることができなかった。限りなく続く絶望にいつしか心は濁り、もはや
自分を保てなくなったゼクドに何も言えなかった。もし自分が同じ事にあっていたのなら、
同じ事をしていたのかもしれないと言う疑惑に包まれ・・・
「ゼクド・・・・一つだけ答えろ。お前はまだ、子供を救う気でいるのか？」
「子供を救う・・・そうだ、俺が生きる理由はそれだけだ・・・いや駄目だ・・・俺は不幸を呼ぶ
・・・誰も救えない・・・俺が全てを殺して行く・・・そう・・・ゼルディもエレンディラも俺が
殺した・・・俺には何も救えない・・・セレナのようになれない・・・俺ができるのは壊すこと
だけ・・・俺ができるのは・・・俺のすることは・・・破壊だけだ！」

突然ゼクドは虚ろな目から狂気の目に切り替わった。

「俺にできるのは死を与えるだけ・・・そしてお前も死んで行く」
ゼクドのもっていた玉が黒く輝き、ゼクドを覆った。その直後ゼクドの体は黒く染まり
奇妙な模様が入っていった。

「ゼクド、お前・・・」
ダークファルスが媒介とするもの、優秀な肉体、そして負の感情。ラーディスは決断を
迫られた、唯一の親友を殺すのか、それとも生かし続けるのか。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお！！！」
ゼクドはラーディスに斬りかかった、もはや人間の動きではない。
「クッ！」
間一髪のところで避けたが、銃をまっぷたつに斬られてしまった。残された武器はセイバー
のみ、そしてゼクドがもとに戻る気配はない。ラーディスは決断を下した。親友を殺害する
という決断を・・・

「ゼクド・・・・いま楽にしてやる・・・・」
「ぐるおおおおおおおおお！」
ゼクドは更にラーディスに斬りかかった、ラーディスは剣で受け止めるも圧倒的な力とスピードの
前に防戦一方だった。ゼクドはさらに黒く染まっていき、その度にゼクドは人間ではなくなって
いった。ダークファルスの侵食は更に進み、ゼクドは変貌するとともに能力が跳ね上がっていった。

「うがあああああああああああ！」
もはや人間の感知できるスピードを越え、ラーディスはまるで光と戦っているような気がした。
とらえ切れないスピードの前にラーディスは何度も切り刻まれ、その体を真紅に染めていった。

「避けることができないのなら・・・向かえ討つのみ！」
ラーディスは剣を構え、真っ直ぐに突進するゼクドに突きをはなった。その瞬間、ゼクドの剣が
ラーディスを突き刺し、ラーディスの剣は避けられていた。さらにゼクドは止まること無くその
ままラーディスを壁に叩きつけた。

「グハァッ！！」
ラーディスは大量の血を吐いた。その血がゼクドの目にかかり一瞬怯んだ。
「グ・・・ギ・・・」
「うおおおおおおおおおお！」
ラーディスは左手でゼクドを抱き締めるように捕まえ、右手の剣で自分ごとゼクドの心臓を貫いた。
「ぐぎゃああああああ・・・・・あがああああ」
ゼクドはそれでも死ななかったが大きなダメージを負った、その場に膝をつき、身動きがとれなく
なった。
「あばよ・・・・親友・・・・グランツ！！」
ゼクドの体を巨大な光の柱が貫いた。ゼクドはそのまま体が消え、残ったのは陰だけだった。
ラーディスは立っていることもできずその場に座り込んだ。虚ろな目でポケットの中のペン
ダントを見た。ペンダントの中には一人の女性の写真が入っていた。
「・・・・すまねぇな・・・・お前と共に暮らすことはできないようだ・・・」
貫かれた胸からは血が止まること無く流れ続け、ラーディスの体は冷たくなっていった。そして
それはラーディスであったものになっていった。

ダークファルスの驚異から逃れ、人々には歓喜の表情が宿っていった。そしてこの平和を決して
失わないことを誓う。しかし人々はいつしかその平和であり続けるということを放棄するように
なる。それは人間が平和を求める一方で己の欲望を満たすことに執着しているからである。
流れた血は大地に染み込み再び自分達の首を締めることになるだろう。もしかしたらそれが望み
なのかも知れない、心の奥底では平和よりも、欲望を満たすことよりも、死を求めているのかも
知れない・・・・・・・・・

そして繰り返すのだろうか・・・死に染まった歴史を・・・・・・・・・・・・・・・

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