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ふらふらとおぼつかない足取りでメディカルセンターに向かう一人のレイマーがいた。全身血塗れで両腕両足を貫かれ、
動くどころか生きていることさえ不思議な状態である。憎悪の力によって忌まわしきダークファルスを滅ぼし、その憎悪が
故にダークファルスに取り付かれ狂った英雄ゼルディとの決闘で重傷を負った。しかし彼の目には後悔の淀みはない。
自分の選んだ選択を信じ、過去に誓った約束のためだけに生き続けている青年、ゼクド。

メディカルセンターで治療をした後、再び約束のために金を稼ごうとする。しかしそれを遮る者がいた。メディカル
センターの前に立っているゼクドにとって唯一親友と呼べる者、ラーディス。彼はゼクドにレスタを唱えた後、銃を渡した。
「聞かせてくれ、お前は確かに言っていたな、哀れな子供達を守ると・・・」
「ああ、それが俺の生きる理由だ」
「ならばお前がいま殺した者は一体何だ？」
「恐らく最も哀れな者、だがそれと同時に生かすことのできない者だ」
「お前は救おうとしなかったな？」
「救える手段などない、生かしておけば全てが滅ぶ」
二人の間に徐々に、しかし確実に緊張が高まっていった。

「お前は世界を救ったことになり、多大な報酬を手に入れる。その報酬は一体何のために使う？」
「いまだに残る哀れなる者達を救うためだ。金さえあれば救える、金がなければ誰一人救えない！」
「金だけで救われると思っているのか？」
「そうだ。金さえあれば人は幸せになれる！」
ラーディスはゼクドの頬をかすめるように銃を打った。ゼクドの頬から一筋の血が流れた。ラーディスはゼクドを睨み
ながらゼクドを否定する。
「お前は間違っている」
「なにが間違っていると言うのだ？」
「人は金だけで幸せにはなれない！」
その言葉発したと同時に二人は銃を向けあった。ためらいの表情はない、二人とも目の前にいる者を敵として認識して
いるような目になる。

「哀れな者を殺した金で人は救えない！」
「質実実直が全てだ、結果があれば過程など不要！」
二人の銃撃戦が始まった。銃声が止むこと無く鳴り響き、二人とも相手の急所のみを狙って打ち続けた。ゼクドは
ラーディスの次の行動、方向を先読みしことごとく避ける。ラーディスはゼクドの打つタイミングを読み、物陰を
利用して避ける。

ラーディスの説得により、再び自分の道に光が見え、生き抜き、そして償うことを決意したゼクドは再び戦場へ
戻ろうとする。しかし重傷を理由にラーディスに止められ怪我が治るまで休暇を取ることにした。自分の家に
入ろうとした瞬間、殺意が感じられた。ゼクドはため息をつき、ドアを開けた。その瞬間、一人の少女が飛び出し、
手に持ったナイフでゼクドの腹を突き刺した。

「よくもお兄ちゃんを・・・・」
兄を殺された悲しみ、憎しみに顔を怒りに歪めたエレンディラだった。ナイフがゼクドの腹から抜かれると血が
流れ、赤く染まったゼクドの服をさらに赤く染めた。
「アナタが殺したのよ・・・お兄ちゃんを、お兄ちゃんを返して！」
エレンディラはゼクドの心臓に向かってナイフを振り下ろす。しかしゼクドの腕によって阻まれた。突き刺された
ゼクドはナイフを取り上げ床に捨てる。
「死んでよ・・・死になさいよ・・・死んで償いなさいよ！」
エレンディラは涙を流しながらゼクドに言い放った。
「俺はまだ・・・死ぬわけにはいかない・・・・」
「よくもそんなことが言えるわね、私からお兄ちゃんを奪っておいて・・・」
エレンディラの目には憎しみしかなかった。ゼクドはそれ以上何も言わず寝室へと歩き、残されたエレンディラは
その場に泣き崩れた。
「お兄ちゃん・・・・・・・・」

夜になってもエレンディラの殺意は薄れることは無かった、再びナイフを手にゼクドの寝室忍び込み、今度こそ
心臓に刺そうとする。振り下ろした瞬間、突然ゼクドの体が光に包まれナイフを弾いた。そしてゼクドの上に
うっすらとしたゼルディが現れた。

「お兄ちゃん・・・なの？・・・でもどうして？、どうしてそんな奴を庇うのよ！？そいつはお兄ちゃんを殺したのよ？」
「エレンディラ、俺はダークファルスに取り付かれた時からすでに俺は俺ではなくなっていた。残虐の限りを尽くし
意識はあっても止められなかった。ゼクドさんはそんな俺を救ってくれたんだよ」
「でもあの時お兄ちゃんは元に戻りかけてたじゃない、元に戻れたかも知れないのに・・・それなのにこの人は・・・」
「いや、あの時戻れたのはお前の声が聞こえたからだ、それでも俺は自分を止め切れずお前でさも殺そうとした。そんな
　俺をゼクドさんは止めてくれたんだよ」
ゼルディの影は優しくエレンディラを抱き締めた。

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