ファンタシースターオンライン

「お〜、強え〜強え〜、感動するぜ・・・・」
ラーディスは血塗れで笑っていた。圧倒的な強さ、ホーリーレイをもってしても傷一つ
つけられない。何十発と撃ち続けたが命中するどころか掠めることさなかった。
「この程度か・・・少しは楽しめるかと思っていたが、もう死ね！」
「ケッ、まだまだこれからだぜ！」
ラーディスは更にホーリーレイを MASTER OF RUIN に向かって放ち続けた。しかし尽く
避けられ、放たれた光の矢は空しく壁に突き刺さるだけだった。
「せっかくの武器も宝の持ち腐れだな、相手にする気も失せた、消えろ！」
ゼルディは右手に魔力を溜め、ラーディスに突き付けた。その瞬間、ラーディスは死を覚悟した。
「そこまでだ！」
その言葉とともにゼルディの腕は貫かれた。声のした方角を見るとその目に希望を宿した
ゼクドが立っていた。

「ようやく来やがったか・・・・」
「・・・・・ゼクドか、何をしにきた？。友人が死ぬところでも見にきたのか？」
ゼクドはゆっくりと答えた。
「唯一の親友とお前を救いにきた」
ゼクドの言葉にゼルディは高らかに笑った。
「ククク・・ハハハハハハハハハ！美しい友情というわけか？、滑稽だよ。それに我を救う
　だと？、愚か者め！」
ゼルディはゼクドに向かってギバータを唱え、数多の氷河をゼクドの上に降らせた。しかし、
ゼクドは一切無駄のない動きで流れるように降り注ぐ氷牙を避けた。
「ほう・・・ラーディスよりは楽しめるようだな、おもしろい・・・」
「ラーディスは俺より弱いわけじゃない、今のいままで俺を救うためにその精神の半分を
　俺に送っていたのだからな！」
ゼルディは振り替えるとそこにラーディスの姿はなく、いつのまにかゼクドの隣にいた。
「よう、迷いはねぇな？」
「ああ、お前のおかげだ、さぁ、ゼルディを救おうか」
ゼクドはラーディスにレスタを唱え、ゼルディの背後に回り込んだ。
「ククク・・・多少手勢が増えたところで何が変わるというのだ？」
ラーディスは笑みを浮かべながら答えた。
「全然違うさ、全開で戦えるし、俺達は二人で最強なんだよ！」
ラーディスがホーリーレイを放ち、攻撃に注意したと同時にゼクドが背後からグランツを
放った。グランツによる光の矢が直撃すると、まるでそれに答えるかのようにホーリー
レイの矢がゼルディに突き刺さった。

「・・・・ほう、人間にしては少しできるようだな。だが所詮は人間か・・・・」
ゼルディの身体が赤く光輝くと、部屋全体に轟音とともに大爆発が起きた。ゼクドも
ラーディスも受け止めきれず吹き飛ばされ、壁に激突した。
「グガッ！・・・」
「ぐおッ！・・・」
ゼルディは高らかに笑った。
「これが神の力だ、人間ごときにかなうはずがあるまい」
ゼルディはゼクドに止めをさそうとゆっくりと歩み寄った。しかしその時、一人の少女が
二人の女性を連れて現れた。後ろに付き添うように立っている女性は一人は腕がなく、
もう一人はかつてのダークファルスだった女性だった。

「フェリシア！お前・・・・」
「リコ＝タイレルまで・・・」
「お前は・・・・エレンディラ・・ぐおおおおおおお！？」
エレンディラの姿を見ると同時にゼルディは頭を抱え苦しみはじめた。
「私はもう大丈夫だから、もうやめて、お兄ちゃん！」
「グウオオオアアアア！？、エレン・・・ディラ？、ウウ・・・邪魔をするなら、キサマも
　死ねぇ！！」
ゼルディは巨大なフォイエを放った。しかしエレンディラに当たる直前、炎はかき消された。
消えた炎の前にゼクドとラーディスが立っていた。
「女は傷つける者じゃねぇ、守り抜く者だ！」
「もう、だれも殺させはしない！」
ゼルディは激しく暴れはじめた。
「邪魔だ、邪魔だ、全員まとめて死ねぇ！」
ゼルディは自分の頭上に黒く輝く巨大な炎を作り出した。ラーディスやリコが備えようと
するがゼクドが無防備に近寄っていった。
「キサマから死にたいのか！、ならば死・・・・・」
ゼクドはゼルディの口をつかみ持ち上げた。
「兄貴ってのが、一番初めに生まれる理由を知っているか？・・・・後から生まれてくる
　妹や弟を守るためだ！、殺すためなんかじゃない！！」
ゼクドはゼルディを地面に叩きつけた。その瞬間、ゼルディの作り出した黒き火球は消え
さった。ラーディスにはゼクドが自分自身に言っているように聞こえた。

「エレン・・・ディラ・・・・ううう、うわああああああああああああ！！」
ゼルディが叫び出すとともにその身体から黒い霧のような飛び出した。黒い霧はダーク
ファルスの本体だった。
「ヌウウウウウウウ、アトスコシデ、コノセカイヲワガモノトデキタモノヲ！。
　キサマラァァァ！！」
ダークファルスはラーディス達の方に向かっていった。
「ヘッ！、化け物が、調子にノってんじゃねぇ！！」
「私は、あなたを許さない！！」
「滅びなさい、ダークファルス！！」
ラーディスが、フェリシアが、リコが渾身の力をこめたグランツを放った。放たれた
三本の光の矢はダークファルスを貫いた。
「グオオオオオオ！！、ナラバコノオンナニトリツイテクレル！」
ダークファルスは目標をエレンディラに絞り、その霧上の身体でエレンディラを覆うと
した。しかしその瞬間、メギドがダークファルスを包み込んだ。
「もう、もう貴様の思い通りにさせない、エレンは俺が守る！」
「幸せを奪ったその報いを、人々の苦しみを受けなさい！」
正気に戻ったゼルディとエレンディラがダークファルスに向かってグランツを唱えた。
強大な魔力に光の矢ではなく、まさに光の柱がダークファルスを包み込んだ。
「グギャアアアアアアア！！ワレガシヌトイウノカ！？、カミデアルワレガシヌトイウ
　ノカァァァァ！！！！」

「お兄ちゃん！」
「エレン！」
二人はお互いを抱き締めあった。見ればラーディスとフェリシアも寄り添っていた。
「終わった・・・か・・・・」
ゼクドの言葉とともに風が吹いた・・・・

数日後、ゼルディの裁判が行われた。操られていたというものの肉親を失った遺族からの
訴えによるものである。
「奪った命は余りにも多く、その罪は万死に値する！」
遺族側の主張である、淡淡と語りつつもその声から深い憎しみが感じられた。遺族や友人を
失ったもの達から賛成の声がゼルディを激しく追い詰めた。

しかし彼を庇うように立ちはだかる三人の姿があった。ゼクド、ラーディス、そしてリコの
三名である。
「命を奪ったのはダークファルスであり、ゼルディではない。よって有罪とは思えない」
ゼクドは遺族側に向かって怯むことなく答えた。その言葉に更にリコが続いた。
「ダークファルスに取り付かれていた私にはわかります。彼とて人の命を奪いたくは無かった、
　けれど私もダークファルスに取り付かれていた時は自分の意志で動くことなどできなかった。
　彼に罪があると言うのならば私にも同じ罪があるはずです！」
リコの言葉の直後、遺族側のハンターズは沈黙した。彼女の＜レッドリング・リコ＞の名は全
ハンターズの憧れの的であるといっても過言ではない。その彼女の言に偽りはなく、ゼルディが
死刑とされればリコも同じく死刑にされるおそれがあるからである。
そして更にラーディスが続いた。

「ゼルディが罪人だったらテメェらはどうなんだよ？、ゼルディが取り付かれてかなわないと
　知った時、テメェらは妹であるエレンディラをも殺害しようとしてたじゃねぇか！。アイツに
　罪は無い、なのにテメェらは殺そうとした。ゼルディよりもテメェらの罪はどうなんだよ！」
その言葉には激しい怒りがこもっていた。幾度となくエレンディラは暗殺されそうになっていた、
しかしラーディスの人望は厚く、彼の集めた友人が幾度となくエレンディラを守っていた。

ラーディスの言葉の後、誰も有罪の言葉を発するものはいなくなった。そして裁判官が判決を下した。
「被告人、ゼルディ＝クリアクトの起こした事件はダークファルスによるものであり、彼自身が
　起こしたものでは無いと推測される。さらに、ダークファルスを倒せたのは彼の功績による
　ものが大きいと考えられる。そして遺族側の家族を巻き込む行動は卑劣極まりないとし、
　被告人ゼルディ＝クリアクトは無罪、遺族側は賠償金１０００万メセタの支払いを命ずる」

この後、ゼルディは賠償金の支払いは無用であると訴え、静かに暮らさせてもらうことを要求した。
この事が功を奏したのか遺族側からの恨みは徐々に失われて行き、彼を英雄扱いするものさえ出て
来た程である。

その後、ゼルディとエレンディラはハンターズを辞め、軍の未開地探索部隊として働いた。

半年後、二人は惑星ラグオルを離れ、かつて滅びた母なる大地の復興に行くこととなった。
見送りにゼクドとラーディスが分かれを告げに来ていた。
「ま、せいぜい死なねぇ程度に頑張んな！」
ラーディスはゼルディの背中を叩いた。ゼルディは快く答えた。

「辛くなったら俺達も呼ぶといい、お前達は俺の大切な兄弟だ」
エレンディラは笑顔で答えた。
「辛くなんてありません、お兄ちゃ・・ううん、

そして二人は旅立った。

数年後、ゼクド達は二人から招待を受けた。送られた書状には１枚の写真が入っていた、幸せ
そうな笑みを浮かべた一組の家族の写真。ゼクドは彼らのいる星に行く途中、静かにつぶやいた。

「セレナ・・・、人は必ず幸せになれるんだね・・・」
ゼクドは一人の女性と寄り添っていた。彼が永遠の愛を誓った女性と・・・・・

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