スペースクルーザー ランディール
第１３話 絶望を運ぶ狩人
人工的な光りに変わり、アルゴルの自然の光が街をうっすらと
明るく照らし出す。
昨日の夜から行方不明になっていたミカをタイラー達はいまだ
見つけられずにいた。
タイラー「そっちにはいたか？」
タイラーの問いかけにハルは首を振り
「だめだよ、どこにもいないよ。一体どこにいったのかなあ？
ミカちゃんは。」
タイラーと一緒に行動しているジョディも自分のテレパシー能力を
使いミカの思念を必死に探していたが
「だめ全然捕らえられないわ。それにおかしいですよ。
街全体にオブラートを架けたように、人々の思念が
聞こえにくくなっているんです。」
ジョディは困惑気味に答える。街の中で静かに何かが蠢き出して
いるのであろうか？
そこに人ごみに紛れアベルとアレスが走ってきた。
アベルは腕時計を見てタイラーに忠告する。
アベル「今午前9時20分だ。10時から円卓会議が始まるが、
もしそれまでに来られなければ、マフィアグループが
私たちに不利な提案を出してくるかもしれない。
どうする、タイラー。」
タイラーはしばし思索した末に
「よし俺とアベルは会議の会場へ向かう。アレスとジョディ、
他のメンバーはもう一度街を隈なく探してくれ！！」
ジョディがアレスと共に行こうとすると当のアレスが
彼女を止めた。
アレス「ジョディ、とりあえずあんたはタイラー達と一緒に行ってくれ。
何故かわからねえが、今あんたをミカに会わせたらいけねえような
気がするんだ。気分を害したのならすまねえ。だがこれは戦士の勘
ってやつなんだ。」
しどろもどろになってぶっきらぼうに説明するアレスにジョディは
微笑みかけ
「わかりました。アレスさんがそういうなら私は信じますよ。」
こうしてジョディを加えた3人は円卓会議会場に急いで
向かうのであった。
会議場に到着した時、そこには反マザーブレイン組織の重鎮を
初めお忍びでやってきた政府の中の反イアム派のメンバー、
各界の著名人、そして最近までアルカディアの配下
であり切り捨てられ行き場を失ったマフィア幹部などが集まっていた。
ジョディ「なんとか間に合いましたね。」
タイラー「ああ」
そそくさと空いていた席を見つけ座り込む3人
会場を見渡しタイラーは感心したように小声で呟いた。
「こうやって見ると、結構いるもんだな。マザーブレインの幻想に
毒されない人間は、アルゴルもまだ捨てたもんじゃないってことか。」
アベルが眼鏡に指を当て冷ややかに答える。
「さあ、どうだか、獅子身中の虫-この中のたぶん何割かは
アルカディアグループの手先だと思うのだが。」
会場がざわつき3人に緊張が走る。
会場の奥の壇上にアイナとオハリオが現れた。
アイナは静かに壇上に駆け上がると満員の聴衆の前で静かに口を開いた。
「今日お集まりの皆さんに重大な発表が2つあります。
まずは悪い知らせを、アルカディアグループの真の狙いが
わかりました。」
その言葉に会場からどよめきがおきた。
それをものともせずアイナはゆっくりと衝撃的な内容を
話し出した。
アイナ「”PROJECTＡＲＣＡＤＩＡ”こう名づけられた計画を我々は
多くの同志を送り調査しました。ただ、これを調べるために
私たちは多くの犠牲をしかざるおえませんでした。でも彼らの犠牲は
無駄ではなかった。計35回に渡る調査により恐るべき計画の全貌が明らか
になったのです。
敵アルカディアグループの行おうとしている
計画その実態はアルゴル太陽系第1惑星パルマの破壊です！！」
会場が一瞬静まり次の瞬間蜂の巣をつついたように
騒ぎがおきた。
「偽情報だ、偽情報に決まっている！」
「そんな事を言ってもし本当だったら責任をどう取るのだ。」
「だから我々は対策を協議するべく」
「これはもう政治の問題ではないのか？」
「今は彼らを刺激するべきではない。」
「逃げ場所はあるのかね？」
「いたずらに社会混乱をあおるのは。」
会議会場は異様な興奮に包まれていた。
その頃、会場の周囲はオセロファミリーの屈強な戦闘員が会場に通じる
道路をや地下通路を封鎖し2000人態勢で警備していた。
マフィアA「まったくこれだけ警備員がいればどんな敵が襲ってこよう
と大丈夫だろうに。」
マフィアB「そうだな。これで攻め込んで来る奴はよほどの馬鹿か自殺
志願者ぐらいだろうよ。」
銃を持ち歩きヒマそうに車庫のゲートを警備している二人、
だがその背後に何か透明なものがすっと近づいてきた。
二人はその気配に気づきもしない。
マフィアA「まあ、これが終わればゆっくりバカンスとしゃれこもう・・・」
突如、彼の首筋から血が噴出した。
マフィアB「な、なんだ誰かいやがるのか？」
手に持ったマシンガンを発砲したが次の瞬間彼の額に穴が空き彼は倒れこんだ。
透明な迷彩服に覆われた男がゲートのドアを開き
中から200人以上の同じ格好をした特殊部隊がゲートをくぐる。
それと時を同じく街の数箇所で爆発が起きた。
巻き込まれた多数の市民が負傷し、アンジェリカコロニー
全体が混乱に巻き込まれていく。
爆風からのがれたアレスは黒焦げになった顔をこすりながら
アレス「ふう危ねかった。あと5センチ横にいたら爆風でお陀仏って
ところだぜ。だがミカは大丈夫だろうなあ？畜生
あの猫どこいきやがった。」
そうやって街の裏路地に入った時彼はついにミカを発見した。
だが彼女の表情は乏しく、どこか異様な雰囲気をかもし出していた。
ミカ「帰ろう・・・・ランディールへ。」
会場はアイナの発言に上や下やの大騒ぎと化していた。
いろんな思いから錯綜する声にオコーナーは立ち上がり
オコーナー「まだ何もおきておらんというのに少しは落ち着いて考えたら
どうかね！！君らの中には市民を守らねばならぬ立場の者もいるはずだ！！
そこが混乱していては、対策も立てられず、手遅れになった時
どう責任をとるおつもりか！！」
怒声が会場内に響き渡り彼の1渇で場内は静かになった。
タイラー「さすがだな。オコーナー総督は、伊達にモタビアの総督を
10年続けているわけでもないか。」
アイナはふうとため息を付き説明を続ける。
「皆さんの中にはこれに大いに不安を感じている人も大勢
おられると思います。ですが、安心してください。
今我々は、この恐ろしい事態に備え大脱出船団を組織しようと
しているのです。」
彼女がTVモニターに目を移すと
そこに巨大なコロニー郡が浮かび上がった。黒髪の青年が説明を続ける。
オハリオ「これらは500年前のモタビアとパルマが交差するという現象
「合」に備え作られたコロニー郡です。我々はこれをすでに極秘で確保
改造を加えているところです。」
聴衆から驚嘆の声が沸きあがった。
オハリオからアイナに照明が変わりアイナは高々に宣言した。
アイナ「ですから、皆様にはこれら脱出船団にパルマに住む
10億の同胞を乗り込ませる手伝いをお願いします。
私たちはただマザーブレインに言われるがまま死を待つ存在では
ありません。敵アルカディアグループが対応できないほど
迅速に行動し、出来ることなら惑星パルマも守ろうではありませんか。」
会場全員が喝采を送る。タイラーやジョディも拍手を送っていた。
だが、喝采が静まり具体的な協議に入ったところで問題がおきた。
トニーGを初めとするマフィアグループがタイラーを名指しで
非難しはじめたのだ。
トニーG「確かにその計画は素晴らしいことです。ですが内部に
裏切り者がいれば計画は瓦解することになる！なあ、タイラー君」
ほら来た。タイラーは予想通りの行動にうんざりするほか無かった。
同時刻通路の周囲では銃撃戦が始まっていた。
通路の方々に額を貫かれた死体が散乱し
進入してきた特殊部隊に百戦錬磨の猛者が次々と撃ち殺されていく。
マフィア「どこだ、どこにいったんだ」
「だめだ、第5防衛線まで突破された。ボスの指示を仰ぎたい」
爆発がまた数名の命を奪う。
「通信が一切きかないぞ。くそ、ジャミングか！！通信制御室は何を
やっているんだ！！」
なぜこの騒ぎは会場までつたわらないのか？
惨状を伝えるモニターが虚しく周囲を照らし出す。
すでに通信制御室は管制官の血の匂いがべっとりと付き
生きているものは誰もいなかった。
何の感慨もなく、ゴーグルの中から冷たい瞳を輝かせ
次々とマフィアを撃ち殺す特殊部隊は会場に迫ってきていた。
カジノ入り口を守っていたマフィア100人は戦況が掴めずいらいらしていた。
「ちくしょう、周りの情報が一切はいらねえ。
一体どうなっちまっているんだ。」
タバコをぐりぐりと踏みつけ緊張していた。近づく者があれば
すぐに殺す構えだ。
ー男が立っていた。
いつから目の前にいたのだろうか、その銀色の髪の男の
猛禽を思わせる冷徹な目がそこにいる全ての者を凍てつかせた。
「び、びびるな一気に撃ち殺せ！！」
次の瞬間には男は挽肉にかわるはずだった。
だが男は目にも止まらぬ速さで弾丸を交わし、1人また１人と手に持った
ライトサーベルで切り裂いていった。
会場はマフィアを中心にタイラーに対する非難が集中していた。
アベル「夫れ、呉人と越人相悪むも、其の舟を同じくして済りが風に遇う
に当たりては其の相救うや左右の手の如し
まったくこういう切羽詰った時こそこの詩のようにお互い
助け合わねばならぬだろうに。」
そういって彼は非難されているタイラーを見ると
彼とジョディは強烈なプレッシャー
を感じ取っていた。汗が浮かび体が震えている。
それはアイナやオハリオも同じらしい。
タイラー「何かが来る！強烈な殺気を伴った何かが。」
そして、エレベーターを降り招かれざる招待客が現れた。
ライダーク「ご機嫌麗しゅう。レジスタンスの諸君。」
銀色の髪を棚引かせ、黒いライトサーベルを持った剣士。
それはジョディやアイナ達の家族を連れ去ったあの男だった。
数名のマフィアが銃を持って彼の前に立つ
「オセロの所の者は何をやっていやがる？たった一人の場違いな野郎すら
止められねえとはよ。おい！ここはお前の、来る所じゃねえんだよ。」
マフィア達は余裕の顔で手に持ったビームガンを構える。
だが銃が引き金に掛かる前にマフィア達の体に数本の光が輝き
彼らの体はばらばらになった。
会場に悲鳴があがり、混乱した場内外に我先にと逃げ出そうとする人々。
だがその前に黒い迷彩服の特殊部隊が立ちはだかり、
逃げようとした人々を容赦なく撃ち殺していく。
一方マフィアの幹部数名は彼に命乞いをしていた。
トニーＧ「頼む。俺たちはイアム様の命を受けて
こいつらを監視していたんだ。ライダークさん、だから見逃してくれ。な。」
だが、ライダークはそんな命乞いをする彼らを一閃で切り伏せた。
ライダーク「ふん、見苦しい、我等に寄生するだけの愚かな虫ども
もうお前たちの役目は終わったのだ。」
何の感慨もなく冷静にいってのけるライダーク
その黒い刃がトニーＧにまで及ぼうとした時
タイラー「やめろー！！」
タイラーとジョディそしてオハリオとアイナがそれぞれの武器を持ち
銀色の男の前に立ちはだかった。
ライダーク「ふ、どうやら少しは使える奴と戦えそうだ。」
助けられたトニーＧは呆然とタイラーを眺めた。
トニー「な、なぜわしを助けたんだ？お前らの命を
狙ったこのわしをよ。」
タイラー「さあな。ただ俺たちは弱いものが無残に切り裂かれる所を
見捨ててはいられないってところだ！！いくぜ！！」
タイラーは手に持ったライトサーベルでライダークに切りかかった。
渾身の一撃
だがその刃は巧みに交わされ次の瞬間高速の蹴りが何度も何度も何度も
タイラーを襲った。最後に強烈な回し蹴りを受け吹き飛ばされるタイラー。
ジョディは手に持ったナイフで彼に近づく。
幼い頃父を奪われた怒りが彼女を動かしていた。
ライダークに向かい突きあげるナイフをだが彼は防ごうともせず
片手で止めそのままジョディごと放り投げた。
オハリオ「よくもシーク家を、僕とアイナの家族を連れ去ったな！！」
オハリオが黒い剣を握り締め、素早く幾本もの剣撃を放ち、アイナ
が矢をライダークの頭部に向け放った。
だが剣撃はライダークの残像すらかすりもせずライダークは目にも
止まらぬ速さで壁を駆け上り冷たく言い放った。
「遅い！遅い！遅すぎるぞ！！」
アイナの放った矢も彼は交わそうともせず、剣を回転させ全て
落とした。
ライダーク「退屈しのぎぐらいにはと思ったが期待はずれもいいところだ。
生きていれば敗北の惨めさに苦しむだろう。だから、私が
引導を渡してやろう。」
強い。
強すぎる。
そこにいる誰もがそう思った。
だがタイラーはふらふらになりながらも立ち上がる。
「だからってはいそうですかって訳にはいくかよ。
俺はあがく、足掻いて生き残ってみせる！！」
そうして手に持ったサーベルでまた切り駆る。
向かってくるタイラーをライダークは口元に笑みを浮かべ迎撃の
構えを取った。
「その心意気や良し！！行くぞ！！」
其の時、ミカ達はランディールのブリッジに向かっていた。
だがミカの表情の醸し出す雰囲気にアレスは違和感を感じていた。
ブリッジのドアが開きミカが一番乗りで入る。
だが後を追うアレスたちはブリッジに入ることが出来なかった。
ドアが勝手に閉じてしまったからである。
ハル「だめだよ。制御コマンドを一切受け付けないよ。」
ガンツ「そんな事あるものかってんだ！！何度でも打ち込みやがれ。」
ハルとガンツが原因を調べようとコンソールの修復を急ぐ一方で
アレスは呆然としてそこに立ち尽くした。
アレス「・・・・ミカ、おめえどうしちまったんだよう。」
彼はミカの異常な行動を見てしまったのだ。
席に座ったミカの手から何か得体の知れないものが放射され
それと同時にドアが閉まった。その刹那に垣間見たミカの表情は
普段のミカの笑顔からは考えられぬ狂気と悪意に満ちた笑顔を
アレスに向けていた。
エンジン音が艦内に響き渡る。
ガンツ「えれえことだ、こいつは！！ミカの奴、このまま、アンジェリカ
コロニー内に突っ込むつもりだぞう！！」
親父の怒声は高まったエンジン音にかき消され
ランディールを係留する構造物が音を立てて崩壊していく。
アクテイヴレーザーコロニーの壁を突っ切り、大きな穴が開いた。
ランディールが動き出し、街の中心へとゆっくりと飛翔してゆく。
ミカ「敵がいる。・・・その敵を撃てば、タイラーお兄ちゃんは
ジョディなんか捨ててあたしの所に戻ってくる。そうよ。
きっとそうだもん。」
ライダークの黒いライトサーベルが唸りを上げる。
一撃、二撃激しく光の刃が激突し、お互いの視線が火花を散らす。
だがライダークはまだその力の半分も出してはいない。
一方で着実にタイラーは押されていた。
アイナ達がテクニックで援護しようとするが、
ライダークはそれを見抜くと素早く動き、柄で術者の腹部を打ちつけた。
そして返り座間、切りかかったタイラーに猛烈な多段蹴りを浴びせ掛ける
血を吐き倒れこむタイラー。
ライダーク「どうした！！先の蛮勇は嘘だとでもいうのか！！
それしきで終わるようではレジスタンスもたかが知れたということよ。
もう良い！！これしきの戦いで参るようではこれから先生き残る
ことは不可能だ！！せめてもの情けだ！！ここで潔く死ぬがよい！！」
黒いライトサーベルがタイラーの頭に打ち据えられようとしたその
時、轟音が響き、一瞬彼に隙が出来た。
タイラーはその一瞬に全てを掛け、手に持ったライトサーベル
で全身全霊を込めて一撃を放つ。
気が付いたライダークが交わせずそれにを剣で防ごうとする。
だが、激しくぶつかった剣撃にライダークのライトサーベルの
柄が耐え切れずひび割れそして粉砕した。
剣を失ったライダークは不敵な笑みを浮かべ
跳躍し後ろに引き下がる。
そこにスタージェンとルオンが駆けつけた
スター「私達を無視するんじゃないよ！！」
ルオン「アイナ様には指一本手出しはさせぬぞ！！」
スタージェンの鞭とルオンのスライサーがライダークの退路を断ち
動きを封じる。
だがライダークは不敵な笑みを崩さぬまま、
右腕を高く上げた。
すると会議場の床が割れ、その下方より黒きランディールが
現れた。
彼と会場の特殊部隊はそれに飛び乗ると、黒きランディール
”ダークランディール”はコロニーの外漆黒の宇宙へと飛び出してゆく。
コロニーの隔壁が閉じる寸前ライダークの声が高々に響き渡った。
「途中で余計な邪魔が入ったが、お前達の力を認めよう。
だがお前達もこのままでは納まりがつくまい！！それは
私とて同じこと！！さあ、来い！漆黒の大宇宙でこの熱き
闘いの決着を付けようぞ！！」
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