スペースクルーザー　ランディール

第１５話　双龍の激闘

対峙する黒と白の戦艦。それは向かい合う
双子の龍のようにも見える
緊迫した空気が両艦のブリッジを暗く覆う。
ごく、だれかが息を飲んだ。それを合図にしたかのように２匹
の龍は絡み合うように戦いを始めた！！
黒き戦艦”ダークランディール”が先制攻撃を掛けてきた。
ライダーク「まずはおまえの実力を見せてもらおう！！」
ダークランディールから矢継ぎ早に放たれる収束弾がランディールに
唸りを上げ襲い掛かる。
ジョディ「敵艦から収束弾95％の割合で回避成功！残り5％も
バリアフィールドで防ぎました！！」
その報告にアベルが顔を曇らせる。
アベル「・・・まずいな」
ハル「どうしてまずいんですか。敵の攻撃はバリアフィールドで
ほとんど防いでいますよ。いつもよりちょっと回避率が低いだけで
別にあわてなくてもいいんじゃ？」
ハルのその答えにハルを除くブリッジクルー全員が顔を曇らせる。
ハル「え？僕何か悪いことでも？」
思わぬ反応に慌てるハルにアベルが説明した。
「確かにこれまでの相手だったらそうだろうな。
だがこれは剣の世界でいう達人同士の戦いだ。剣の戦いにおいては
腕も互角、剣も互角の戦いにおいてほんのちょっとした差が
生死を分かつことになるのだよ。」
その間にも2発が着弾する。
タイラー「ジョディ！今の敵の状況を子と細かく知らせてくれ
どんな些細な瞬間も見逃すなよ！！」
ジョディのディスプレイに移る黒き龍はまるで鷹が獲物を狙うとき
のように華麗に反転し猛スピードで交差した瞬間集中的に
アクティブレーザーを放った。
アクティヴレーザーは光る毒蛇のように動き、着実に
バリアフィールドの盲点に食らいかかる。
紫電が渦巻きバリアフィールドを消し去ってゆく。
ジョディ「信じられません！！敵のレーザー着弾により、バリアフィールド
のエネルギーが50％に減少しました！！」
アレス「おい、あの大型戦艦エウリュアーレのレーザー着弾時の時だって
8％しか減少しなかったのに、50％だあ！！あいつ改造していやがるのか！？」
アレスがその内容に腰を抜かしている横でガンツが職人の目で
見た意見を述べた。
「いや、ちがう！！２号と１号の差はほとんんどありゃしねえ！
レーザーの色からもその威力がわかるってもんよ。だが、
あの野郎はこちとらのバリアフィールドのエネルギー収束点の
もろい部分だけを狙ってきやがるんだ。こんちくしょう、
残念だがあいつの腕認めねえ訳にもいくまい。」
ぐるぐると旋回しもみ合う黒と白のランディール
黒き戦艦のブリッジでライダークがコンソールに意志を伝える。
まるで黒き名馬とその騎手のように息のあった攻撃が
確実にランディールの光の盾を打ち貫いてゆく。
「どうした！！逃げてばかりでは話にならぬぞ！！それとも奇策を
ねっているとでもいうのかな！？」
ついに光の毒蛇が白き龍の脇腹に噛み付いてきた。
ジョディ「左舷被弾！！格納庫に被弾しました！」
振動がブリッジにも木霊し、艦内にいる全クルーに緊迫感が増す。
黒き龍の口から光の雨が放たれそれが１直線にランディールの傷口に
ハイエナの様に群がる。
ミカ「ジョディお姉ちゃんがんばって！！」
ミカの励ましに笑顔で答えるジョディが敵の残りの攻撃を巧みな操舵裁き
で交わし今度はミカに応援を頼んだ！
ジョディ「ミカちゃんの腕だけが頼りよ。いつものシューティング
の腕前を見せて！！」
タイラーもミカの目を見て合図を送る
タイラーの意図に気が付いたミカが二人に笑みを返し
ミカ「うん、あたしにまかせて！！さっきの戦いで少しコツを
掴んだし、それに今はジョディお姉ちゃんや皆の援護があるんだもん！！
今度こそ大丈夫だよ」
ミカの動体視力が黒き龍を捕らえ猫が鼠を狙うように素早い動き
でコンソールにその指令を打ち込んでゆく。
光の爪が黒き龍目がけて押し寄せる様はさしずめ竜虎相打つという感じ
であろうか。
ライダーク「その攻撃見切ったわあ！！」
宇宙に煌く無数の光芒をすべて交わしてゆきながら黒き戦艦は急速
上昇し鋭角に切り込み幾本もの光条をランディールに向け発射
しかしそれを予測したミカがそれら全てを対照にレーザーを
撃ち全てを相殺してゆく。
ミカ「やっぱり、ゲームのようにはいかないか！！」
思わず舌打ちするミカ。だがその顔から余裕は失われはいない。
再び無数の光が交差し宇宙を明るく照らし出す。」
既に幾本かはランディールの白銀の肌に深い傷を抉り出していた。
タイラー「このままでは埒があかない！あれをやるぞ！」
アベル「あれをやるのか！だがもし失敗したら。・・・・ふ、
お前達にその言葉は無駄だったな。」
その場にいる全員がもうとっくに覚悟を決めていた。
次の瞬間が決着の時だと。
毒蛇と虎の爪がお互いを切り合い食らい合う様は幻想的な美しさ
さえ秘めていた。その光の爆発の中を黒き龍が旋回しながら
突き抜けてゆく！
だが目の前に白き龍ランディールが同じように飛行しながら向かってきていた。
ライダーク「何！！」
ライダークが驚くのも無理はない。向かってくる白き龍は光のベールを
纏い、先端に黒い重力特異点が渦を巻いていたのだ。
ミカ「お兄ちゃん行くよ！！自動追尾レーザー重力特異点に向け一斉発射。」
ジョディ「レーザー収束率50・・・70・・・90・・・・100％！！」
タイラー「よーし！！！バーニア最大出力！」
全員「行け〜〜〜〜〜〜〜！！！！」
グンニグルの槍が軍神の力を借り勢いよく黒い龍に向け放たれる。
ライダーク「ふ、グンニグルの槍が自分達だけのものと思ったのか！」
黒き龍も光を纏い闇の邪神の力で猛然と食らいかかる。
タイラー「あんたが、それを使うことも予測済みさ！だが俺は
このランディールを信じる！！こいつは俺達にとってかけがえのない
仲間だからな！！」
ライダーク「ふん、くだらんな！！しょせんこれは武具にすぎない！！
武具とは己と一体化して初めて意味をなすものよ！！お前のように
擬人化しているようでは真の一体化とは呼べぬ！！」
黒と白の光のベールが激突し激しい光の明滅がお互いを照らし出す。
やがてぶつかった中央部の重力特異点が重なり合い小さな
ブラックホールが誕生し黒と白の龍を交互に引き寄せる。
ライダーク「く！ブラックホールだと！！おのれ貴様の魂胆に
のるものか！！」
ダークランディールがブラックホールのシュバルツシルツ半面を全力で抜け
、黒い重力の帯筋を引き破り、ダークランディールは外へと
飛び出した。
ライダーク「哀れな・・・・己が策に溺れ墓穴を掘るとはな・・・」
ライダークが鎮痛な面持ちで暗黒の空間の歪みを眺める。
おそらく重力場に押しつぶされ生きてはいまいそう思った矢先
「勝手に殺すなよ！！俺達はまだ生きているぜ！！」
覇気のある声がダークダンディールのブリッジに響くと同時に
三次元の歪みを突き破り白き鋼鉄の翼を持つ龍
宇宙戦艦ランディールが宇宙の闇を引き裂く刃と化して
黒き龍に向かってゆく！！
ライダーク「何！！重力を利用した高速移動だと！！」
ランディールの超高速のスピードに驚愕するライダーク。
その光の速さに近い超高速はいくら慣性中和システムを働かせていても
ものすごい衝撃を100％吸収することは出来ず全クルーに
圧倒的なＧがかかっていた。
アベル「ブラックホールの・・・大質量の重力を利用し中心の進行背面
を遠心力を使って加速する。・・・・前から準備企画していたとはいえ
いきなり本番となると・・・・さすがに、きついな！！」
ブリッジにいる全員が全方向から巨大な力の壁が迫ってくるような
プレッシャーに耐えながらそれでも各々が役割しっかり果たす
クルー達。
ミカが少しでも苦しくないように圧力が強い面に立ちミカを守る
アレス。
「どうだ・・・ミカ・・・苦しくないか！！」
ミカ「もう、アレスッたら！！そんなことやっても意味ないよう！！
・・・・・でもありがとう」
ミカ、アベル、ハル、ジョディがそれぞれ、ダークランディール
の損壊を最小限に食い止めるための最適の突入角度を計算し敵の行動予測から
最適の飛行軌道を割り出してゆく！！
ジョディ「艦長コース設定完了しました！！」
タイラー「みんなの努力は無駄にしないぜ！！ようし行くぞ！！！」
超高速で迫る白き戦艦を交わそうとしてあわてて体勢を立て直そうとする
ダークランディール。だが交わし切れずついに2艦は衝突した！
ぐごおおおおおおおおおおんんんん！！
激しい閃光とともに白き龍が黒き龍の腹に喰らいついたのだ！！

先ほどの激闘が嘘のように静まり返るダークランディールの艦内で
二者は相対していた。
ライダーク「さすがだ・・・一見無謀とも思える行動で
　私の予測を覆すとはな・・・・・・・」
タイラー「へん、１対1の喧嘩では無茶した方が勝つんだぜ。」
ライダーク「ふ、艦隊戦を喧嘩に例えるとはつくづくお前は面白い男だ。
　タイラー・オーレスン、貴公の名この胸に刻み込もう！！
　だが今度合間見える時そのときこそ決着をつけてやる！！
　それまで誰にも倒されるなよ！では、さらばだ！！」
そういうと銀髪の男ライダークと特殊部隊は闇の中に姿を消した。
静まった宇宙空間には最小限に食い止めたとはいえぼろぼろ
になったダークランディールと自分の兄弟を取り戻したランディール
のみが残った。
ガンツ「こいつらも派手にやられたもんだ。まさに宇宙の中で
繰り広げられたド派手な兄弟げんかってところか。
へへへ・・・・・2号を救ってくれてありがとよ！！」
ガンツが黒ずんだ両艦の船体を労わるように擦るとタイラーが
背中をポンと叩き、
「まあ、２号の方はアイナ達の工廠で徹底的に直してもらうとして
俺達は自分の家に帰ろうぜ！！」
ミカ達がランディールから飛び出し、タイラーの方に駆け出した。
ミカ「お兄ちゃーん。あたし達やったんだよね！！」
ミカが笑顔でタイラーに駆け寄る。
タイラー「ああ、それもミカ達ががんばったからだぞ。」
ミカを抱きとめようとタイラーが両手を広げた。

だが
その両手にミカは飛び込んでこなかった。
バタ！！
ミカはそのまま倒れこみそのまま体を痙攣させ出したのだ
それは普通の免疫拒絶反応とは明らかに違っていた。
虹彩が狭まり、全身から黒い汗が噴出していたのだ。
「ミカーー！！！！！」
その言葉を誰が叫んだのであろうか・・・・・・・。

第１５話　-終-

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