スペースクルーザー ランディール
第１８話 偽りに縛られし咎人よ
巨大なコロニー郡や大型艦が上下左右に均等な間隔を保って
配置された錨泊空域を小廻りの効く小型艇などが無数に駆け
巡る中、戦艦ランディールはゆっくりと誘導ビーコンに導かれ
進んで行く。
やがて目の前に大きな獣の口を思わせるようなゲートが
見えてきた。巨大コロニーアリサ３世の玄関口宇宙港
パイロッタ。上面には逆紡錘形の大型管制塔が行き交う
様様な機種の船の管制を行っていた。
管制官「オセロトレーディング社輸送船団は第４貨物ブロック
より出港します。各員最終チェックしてください。」
「巡洋艦ミトラ後２０分で第１６埠頭に入港します。
整備班はセクションＢの指示に従い、
スケジュールを変更してください。」
ジェリコ「こちら、アリサ３世パイロッタ、第一宇宙港管制
戦艦ランディール進路そのままで、Ｄブロック第３埠頭に
入港願います。」
管制官ジェリコの指示に応答しながら着艦のための最終
チェックに入るジョディは相対速度などの修正値を入力
しつつインターフェースとにらめっこしていた。
ジョディ「了解、ランディール、これより着艦シークエンス
に移行します。管制コントロールコンピュータと
データリンク。速度、軌道を現状のまま維持、
誘導感謝します。・・・・・
ふー、艦長これでようやく落ち着くことができますね。」
一息ついたジョディは手で汗を拭いながらようやく少女らしい
爽やかな笑顔を見せる。
タイラー「ああ、ここに来るまでにいろいろとあったからなあ。
クルーも心身共に疲れているだろうしここいらで休憩が
必要だな。」
艦長席にもたれかけ今後の算段を思案中だったタイラーも
ジョディのに向き直り笑みを返した。
艦の中が久々の開放感に包まれる中アレスだけが憮然とした顔付で
不満をぼやいた。
アレス「・・・全くおまえらは呑気でいいぜ。俺は今すぐにでも
戦いてえ！！ミカをあんな目に合わせたアルカディア
グループ全部ぶちのめしてやりてえのによ。」
心の底から湧き上がる不満に思わず両手を叩き合わせ壁を足蹴にする
アレスを嗜めるようにアベルは肩をすくめた。
アベル「だったらレジスタンスの他の戦艦にでもいますぐ乗り込めばいい。
調べてみたんだがレジスタンスは惑星パルマを滅ぼす可能性の
ある軍事衛星などを破壊する作戦を取っているらしいからな。」
悪戯っぽい表情でアレスを唆すアベルにジョディは思わず席を立ち上がり
むくれた顔で声を上げた。
ジョディ「そんな艦長の許可無く勝手に物事を進めないでください！
それに、ついさっきここに着いたばかりなのにレジスタンスの
現状を把握出来るなんて・・・・・まさか」
いやな予感を感じ尋ねるジョディに対し、
アベル「何、先程データ回線を接続した際幽霊ワームを少しばかり
放っておいたのだよ。」
ネットワーク社会において犯罪行為にあたるクラッキング行為を
平然と認めるアベル。
アレス「よっしゃ！！たまにはおめえの悪知恵も役に立つな。」
素直に喜ぶアレスを尻目に他の乗組員は
”いくらなんでもやばいだろう、それは”
と心の中で突っ込んでいた。
だが次にアベルは真剣な表情に戻すと艦橋の窓を指差す。
アベル「もっともあの巡洋艦ミトラの様子を見ればいくら
脳みそ筋肉な君でも気づくはずだ・・・・・・
敵の強大さを。」
指差された先にドッグに入港する大型艦ミトラの姿があった。
だがその外観はまるで巨大な爪で抉り取られたかのように
大きく捻じ切れ、外壁は残骸をばら撒きつつ内側から破裂した
かのように糜爛しケーブル類もあちらこちらで断線し火花を
噴く様は呪われた幽霊船を思わせた。
アレス「・・・・こいつはひでえ。」
さしものアレスもミトラの惨状に息を詰まらせる。
タイラー「外部からの破壊じゃないな・・・」
艦長として冷静にミトラの被害状況を確認するタイラー。
だが心の奥底で動揺しているせいかいつもの明快さが見られない。
アベル「ああ、明らかに内部から強力な力で捻じ曲げられた
痕跡が見受けられる。しかもこれは爆弾やレーザーなどの
単純な物理攻撃じゃないようだ。放射能汚染なども
見られない。未知の力による作用とでもいうべきか・・・
”知彼知己、百戦不危”
戦闘に関してだ・け・は詳しい君なら判るはずだ。
相手の力も知らず戦うことの無謀さをな・・・・・」
黎明な策士の鋭い指摘に返す言葉もないアレスは
アレス「ち、わかったわかったよ！！」
拗ねた顔で腕を組んで声を荒げるとシートに座り込んで
押し黙ってしまった。完全な敗北である。
その様子に呆れつつタイラーとジョディは
互いに顔を見合わせると溜め息と苦笑を浮かべた。
タイラー「ふう、なんとか丸くおさまったようだな」
ジョディ「ええ、ところでもうまもなく第３埠頭に
接岸しますので皆さん降りる準備をお願いしますね。」
ジョディが慎重に操舵しながらランディールをドッキングポートに接岸させた。
無事ドッキングを完了させ一同はドッキングゲートに降り立った。
気密のための二重扉を潜り抜けると向こうの壁が霞んで見えるような
大広間にでた。
さしわたし１キロメートルもある大広間を、埋め尽くす人、人、人の群れ。
別のドッグからも輸送船団から降りてきた市民達がひっきりなしにその
列に加わりさらに混雑を加速させていた。
アレス「うわ、なんだものすごく混んでいねえか。」
ジョディ「パルマからの避難民の方々みたいですね・・・・。」
足の踏み場も無いほどの人の渋滞にたじろぐアレス。
一般人「おい何時までここで待たせるつもりだ！！」
「市長が避難訓練っていうから来てみれば
こんなサービスポート一つないところに
閉じ込めるなんてセキュリティに訴えてやるわ！！」
「パルマやモタビアにビジフォンが
通じないけどこれってどういう事！？」
近くにいる係員に駆け寄りここに連れてこられた理由を
詰め寄る者。不安げに顔を見合わせ噂話に興じる者。
ドーム入管を待つ人々は口々に不平不満を言い合い
ながらそこにたむろしていた。
彼らの奥底の不安を感じ取り一同に説明するジョディは
少し疲れた表情を浮かべていた。
ジョディ「皆さん何も説明も無くここに連れてこられて
不安や・・・・苛立ちを感じているみたいですね。
・・・・・フウ」
タイラー「しょうがないさ・・・真実を公表しても政府に
もみ消されれるか、もし伝わったとしても
パニックをおこすだけだ。」
ジョディ「ええ・・・・・・・そう・・ですね。」
先程より疲弊した顔のジョディに駆け寄り支えるタイラー。
タイラー「ジョディ、おい大丈夫かきつかったら横に
なっていた方がいいぞ」
タイラーの肩を借りながらも心配をかけまいと無理に
元気だとアピールするジョディだが
ジョディ「・・・・私なら平気、ただこんなにも多くの
人達の不安が流れ込んできてちょっと疲れた
だけですから・・・人の考える事がわかって
しまうというのも困り者ですよね」
やはりタイラーには無理を見透かされていたようだ。
近くに担架を運ぶ看護婦が見えたので呼び止める。
タイラー「やっぱり休んだ方がいい。丁度担架も
着たことだし。おーいすまないがのせてって・・・・う」
担架に乗せられた負傷者を見て言葉を失うタイラー達。
身体に爛れた黒班や水泡が現れ斬られた部位から腐敗してゆく
その様に周りにいた市民達も恐怖に慄きながら道を開ける。
その中をただ負傷者の悲痛な叫びだけが木霊していた。
負傷者「化け物だ・・・あいつら化け物だ」
アレス「あ、あれはさっきのミトラの奴だよな。俺もいろんな
戦場渡り歩いたがあんな負傷見たことねえぜ」
あまりの異様な光景に茫然としつつ、ようやく息を整えた
アレスが何とか言葉を吐露する。
？？？「それらも含めて皆さんにお話があります。」
タイラー達が現実を認識するのを待っていたかのように
声をかける金髪の淑女。
周りにエシル家の頭首ルオンをはじめとする護衛隊員を
引き連れ現れるレジスタンスのリーダー、アイナ。
タイラー「アイナさんか・・・すまないがジョディを医務室
まで頼む。それとまだ礼がまだだったよな。
あのCDのおかげで助かったよ。」
ハッとしたタイラーは肩につかまり憔悴したジョディを女性
護衛隊員に預けるとアイナに頭を垂れ基地脱出の際の礼と
ジョディの看護の依頼をした。
アイナ「お役に立てて光栄です。ジョディさん以外の方は
会議ルームまで御同行お願いします。」
タイラー「ああ」
医療室に運ばれるジョディを見送りつつ
アイナ達の後を歩くタイラーとその一向。
だがアベルだけが深く考え込みその場に佇んでいた。
アベル「あの傷は・・・ダークフォトン（黒い波動）の影響
パターンに酷似しているが・・・・・・・・・・・
まさかな・・・」
先程の負傷者の様子に見覚えがあるかのように類推する
アベルにルオンの怒号が飛ぶ。
ルオン「何をしている！！一箇所に立ち止まるな！！通行
整理の邪魔だ。会議ルームに駆け足で行くが良い！」
ルオンの怒声にびびりながらもアベルに駆け寄るハル君
ハル「は、はいいい、アベルさん・・早く行きましょうよー」
アベル「ふ、考える暇さえ与えてくれぬとはあの武人かなり
ご立腹のようだ。さては幽霊ワームの件がばれたかな」
先を行こうとしたルオンは小声で呟くアベルに苛立ちながら
向き直り睨み付け詰め寄った。
ルオン「当然だ！！後でたっぷり絞ってやる。覚悟をして
おいた方がいいぞ」
大広間の近くの会議場に案内されたタイラー達を迎える
アイナとオハリオ。
アイナ「脱出船団の中核アリサ３世にようこそ。
戦艦ランディールの皆さん。いかがですか船団の
壮観を見た感想は」
感想を聞かれタイラーは素直に自分の心情を答えた。
タイラー「ああ、正直凄かった。５００年前にこれを作り上げる
なんて当時の人はバイタリティ溢れていたんだなあ。」
その言葉に頷きながら物憂げな顔つきで呟くオハリオ。
オハリオ「そうマザーブレインが現れるまでアルゴルの
人達は自分の知恵と活力を出し合って幾度も
難局を乗り越えてきたんだ。そして千年毎の災厄も」
「千年毎の災い」という言葉に過敏に反応したルオンは慌てて
オハリオを諌めた。
ルオン「オハリオ殿！！その事は・・・・」
オハリオ「わかっている。とにかくアルゴル人は幾度も
問題を自力で解決して来た・・・・・・
あのマザーブレインが現れるまでは」
鎮痛な面持ちのオハリオをただ見つめていたアベルは
それを首肯するかのように口を開いた。
アベル「・・・・先程も見てきたが今やマザーブレインとの
通信回線が開けぬだけでまるで女王蟻を失った働き
蟻のように人々は不安に襲われる・・・・・・・
所詮はただの機械なのにな・・・・・・」
一瞬重苦しい雰囲気が漂う。
それを振り払おうとタイラーは話題を変えることにした。
タイラー「ところで、政府軍の厳重な監視網を掻い潜って
どうやってパルマの傍までこれほどの大船団を
牽引出来たんだい。」
タイラーの疑問に答えるかのようにドアが開いた。
？？？「それについては僕からお話しましょう。」
中に入ってきたのは青い髪の眼鏡をかけた
穏やかな人柄の科学者だった。
ハル「あれ・・・・あの人は？」
ハルは中年の科学者をどこかで見たよな
デジャビュウを感じた。会議場の壇上に立ち上がると
？？？「ここ一帯は今”不可知領域”と呼ばれるエリアに
入っています。」
科学者が壇上でコンソール弄りながらそう説明した。
アレス「ふ、ふかち？何なんだよそのみょうちくりんな言葉は」
聞きなれない言葉にまた頭がパニックになるアレスを
差し置いてアベルが要約してみせる。
アベル「不可知領域・・・おそらく一切の電磁波や可視光を
遮断もしくは吸収する領域のことだろう。
先程ビジフォンが通じないといった事もおそらく
それが原因だろう。」
会議場の中央にアルゴル太陽系の星図がホログラフィとして
投影される。星球儀の下半球第一惑星パルマの下に脱出船団が
現れた。その周囲を緑色の不可知領域と表記されたゾーンが
覆っていく。不可知領域は脱出船団を中心に2000万kmの範囲に
広がっていた。
？？？「その通り。シーク家の文献によるとこの現象は千年に
一度だけこの辺りで見られるらしい。」
よく見ると不可知領域は時間が経つに従いアルゴル太陽系を
縦に交差する惑星のように公転してゆく軌道を見せた。
？？？「おそらくアルゴルを公転するなんらかのあらゆる波動を
遮断する暗黒物質が関与しているものと推測されるんだ。
科学者としていろんな分野に手を染めてきたがこれほど
興味をそそられるものは早々無い。まあ、サテライト
システムの引力バランスに影響を与えているから喜んで
ばかりもいられないがね。」
タイラー「じゃあどうやって外部との連絡を取っているんだい。
まさか戦艦による手紙の郵送とかじゃないよな。」
実際、惑星間を結ぶような超高速通信は全て媒介はレーダー波
などの電磁波でありそれらが吸収されれば連絡が取れなくなるん
じゃないかと思うタイラーの疑問も当然であろう。
アイナ「惜しいですわ。今までレジスタンスではパルマを破壊
できると思われる反物質エンジンを積んだ衛星などを
破壊するため多くの軍艦を派遣してきました。まあ、
アベルさんはご存知のようですね」
アイナの軽い言葉による牽制にアベルは落ち着いて答えた。
アベル「・・・・・・まあな」
アイナ「そのついでに軍艦を中継してデータを増幅し外部との
連絡を取り合っているという訳です。でも今度から
連絡の中継が第一目的になりそうですね。」
淡々と答えつつも一瞬顔を暗くするアイナ。
タイラー「やはりあのミトラの事が原因でなのか。あの負傷者を
見てなにか恐ろしいことがあった事は分かったけど、
それは・・・・・」
アイナの表情の陰りから彼女の思いを悟ったタイラーは思わず
言葉を濁す。たとえ一兵士であっても仲間があんな目にあって
落ち着いていられる訳がないのだ。オハリオが彼女に代わって
説明を続ける。
オハリオ「ミトラはある重要機密を受け取るために派遣されたが
そこで彼らはあってしまったんだ。奴らに」
オハリオがポケットから光素子記憶カードを取りだしコンソールに
セットするとホログラフィには忌まわしき惨状が映し出されていた。
血に塗れた外壁、山のように詰まれた惨たらしい大量の死体、阿鼻
叫喚の地獄絵図がそこにはあった。
周りには数百人のベレー帽を被った重武装の兵士達に混じって緑色の
せむし男、ナメクジ魚のような浮遊生物、黒い外皮に発光器官のついた
両手が刃の生物、周りに数多くの目玉を持つ球体などこの世のものとも
思えぬ生物が映っていた。そして死体の上で冷笑を浮かべる者達、
五人の邪悪なる者、アルカディアの最高幹部がそこにいた。
タイラー「ロウ！！それにライダーク・・・・・」
ロウやライダークを睨み付けるタイラー。ロウ達はそれが判っている
かのように周囲に向けて大袈裟に語り掛ける。
ロウ「ふふふこれを見ているであろう愚かな鼠の諸君
君達がいくら無駄な足掻きを見せたとしても」
シェイド「私達が華麗に幕を下ろしてあげましょうね〜♪封印という
巣から抜け出した哀れな蝶は握り潰してさしあげましょう♪
この巡洋艦や他の軍艦のように〜♪」
イマージュ「蟻のように無駄な努力を重ねるがいいぞい。だがそれが
実を結ぶ確立はずばり０％じゃ。低脳な猿君でもそれ
ぐらい解るじゃろうて。うひゃははははは」
ライダーク「弱者達よ・・・これ以上命を粗末にするな。」
ファーグ「皆様の作戦は全て我らにはお見通しにてこれ以上逆らっても
あなた方の勢力が弱体化されるばかりかと。その邪魔な宙域
から抜け出し誘拐した市民を解放すれば見逃してさしあげ
ましょう。いかがでしょーか？」
赤装束の不気味な紳士が馬鹿にするかのように首を傾げるところで映像は終わった。
アレス「ちくしょー！！ふざけやがって！おい、まさかこいつらの
いう事鵜呑みにするんじゃねえだろうなあ。」
アレスが憤りのやり場がなくアイナに怒気を露にした。
ルオン「貴様アイナ様に向けてなんと無礼な！！」
ルオンがアイナを護るために手にしたスライサーで
アレスを攻撃しようとするがアイナがそれを制した。
アイナ「いいのです。無論従うわけには行きません。
彼らが約束を守るとは思えませんからね。
ですがあの・・・・銀髪の男の言う通り、これ以上
犠牲を出すわけにも行きませんからね・・・・・・」
複雑な心境のアイナを支えようとするオハリオ。
オハリオ「アイナ・・・けれど今回の命がけの派遣で
僕達は逆転の切り札を手に入れたんだ。」
アベル「逆転の切り札・・・・？」
その言葉に初めて怪訝な表情を見せるアベル。
オハリオ「ああ、ナイトクロウがその切り札を手に
手に入れたらしいんだ。これを見てくれ。」
オハリオが新たに手にした光素子記憶カード。
ディスプレイに情報屋のナイトクロウが投影された。
ナイトクロウ「えへへ・・・・いや、すまねえ。ちょっと
祝いの酒を飲んでいたところなんだ・・・
この前知らせたとおりついにマザーブレイン
への直接アクセスコードを手に入れたぜ・・・
えへへへ、これを使えばマザーブレインに直結
している全てのシステムをコントロールする
ことも可能なはずだ。ちょいと複雑な暗号が
組み込まれているがそれも後２０日程すれば楽勝よ・・・・
まあ、逐一報告するからよ・・・楽しみに待っていろや
・・・・えへへへ」
もし、ここでジョディがいたら彼の心の異常に気がついたの
かもしれない。
もしここでアベルが冷静だったら部屋中に描かれた赤い
落書きの中にファーグの装束と同じ紋章があることに
気がついたのかもしれない。
タイラー「なるほどね。・・・気に食わないがマザーブレインを乗っ取る
事が出来れば奴らの計画を挫くことも可能だしな。
くそ親父やお前がいう戦略論から見ればそれが最善なんだろう。
なあ、アベル。」
マザーブレインが関わるのが気に食わないのか、タイラーは皮肉を込めて
アベルに意見を求める。だが・・・・
アベル「・・・・・・そんな、馬鹿な・・・・・」
タイラー「どうした。アベル浮かない顔して？」
アベル「・・・・・すまないが一人にしてくれ・・・」
アベルは虚ろな表情のまま立ち尽くしていた。
彼の顔から血の気が引きタイラーの言葉も上の空で
アベルは会議場から出ようとした。
それは今まで見たことの無いアベルの姿だった。
ルオン「こら！！貴様にはまだ詰問が残っているのだ！！
部屋から出てはならぬ！！」
怒声を発しルオンが部屋を出ようとするアベルの
肩を掴み取る。
アイナ「ルオン！よい。放っておきなさい。」
だがアイナが再びルオンを制した。
ルオン「ですが！・・・・は、わかりました・・・。」
一度は命令を無視しようとするがアイナには
逆らえずルオンが手を離すと
アベルは足取りもおぼろげに会議場を後にした。
アベルの尋常でない様子にタイラーはただ
困惑するしかなかった。
タイラー「アベル・・・・一体どうしたんだ。」
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