スペースクルーザー ランディール
第２話 セピア色の悲劇
-武門の名家であるオーレスン家。かつて伝説の英雄アリサと共に
戦ったタイロンを祖に持つこの家で彼は生まれた。
幼い頃母をなくした彼に、父タイロス中将は厳格な教育を施した。
そのため遊びたい盛りに遊べず同年代の友人もできなかった彼は
父に反抗するようになる。16歳の時、父が斡旋する、仕官の話を
断り、廃止寸前の危険な前線部隊に志願したのも父に対する
反抗心が原因だったのかもしれない。−
タイラー「そんな俺が皮肉にもこうして親父が作った戦艦を指揮
する立場になるとはね・・・」
暗黒の宇宙を進む戦艦ランディールの前には
駆逐艦5隻、巡洋艦3隻、そして黒い5本足のイカを思わせる
異形の大型戦艦ゴルゴン級「エウリュアーレ」が上下左右に
開いた十字に陣形を展開していた。
メインディスプレイに映し出された陣形をアベルは紅茶を
すすりながら静かに観察し
「故人曰く-十なればこれ則ちこれを囲み・・・か。間違いない。
これは包囲殲滅陣形だ。まもなく端にいる駆逐艦から動き出しぞ。
ランディールを押し包むように包囲し逃げ場を無くす。
戦術の基本だな。さぁてどうする？タイラー君」
アベルの言うとおり、駆逐艦隊が動き始める。だがタイラーは
「そんな基本的な戦法でやられるかい。あのくそ親父が精魂
こめて建造したこの船が。敵さんがそうくるなら、ジョディ、
操縦コンソールを俺に回せ！機動力で敵を振り切り、外から
攻撃を加える！！さあ戦闘開始だぜ！！」
ジョディ「了解！」
ジョディがコントロールパネルを操作すると、艦長席の前に
ホログラフィックコンソールが光彩を放ちながら姿を
顕わした。
−入隊以後彼な素晴らしい感の良さと持ち前の反射神経で
半年後にはエースパイロットとして活躍していた。だが
反マザーブレイン組織と戦う内に彼らの純粋な信念を知り
タイラーは思い悩んでいた−
ジョディ「敵駆逐艦から高エネルギー反応探知！！来ます！」
数本の光条がランディールに殺到する。が、ランディールは
巧みにこれをかわすと、駆逐艦の5倍もスピードで
ランディールは包囲陣のわずかな隙を抜け出した。
ミカ「やるぅ。さすがタイラーお兄ちゃん！！」
タイラー「ミカ！！今度はお前の番だ！腕前たよりにしてるぜ！！」
タイラーからにこっり微笑みかけられ一瞬顔を赤くしたミカだが、
すぐに火器コントロールパネルに指を走らせる。
「日頃からシューティングゲームで鍛えたあたしにとって
あんたたちが何処へ行こうかなんて予想済みだもん。」
ディスプレイに映し出される敵に小刻みにロックオンし、
ミカ「まだよ・・・まだまだ・・・・・いまだ！えい」
駆逐艦隊が集中から散開に向かうその特異点を見逃さず、
ランディールから自動追尾レーザーが発射され、駆逐艦隊を
撃破した。
ミカ「やった〜！！全弾命中！！ねえ、ほめてほめて！！」
アレス「まだ戦闘は終わっちゃいねえ・・・・
まったくおこちゃまはこれだから」
ミカ「ミカ！子供じゃないもん！！」
言い争いを始める両者の横でジョディがが敵の第二陣接近を告げた。
「敵バンリーダーならびにシュバルツ型飛行メカノイド大挙して
ランディールに向け高速で接近中です！！」
タイラーは整備室にいるハルに呼びかける。
「ハル！！このタイプに対するウイルス弾は準備できているのか」
ブラウンの髪の気弱そうな青年がおずおずとした表情で答える
「う・・・うん、このタイプならＡＷ1273年型のウイルス弾が
効くと思うけど・・・」
タイラー「よし、それを急いでミサイルに装填してくれ」
ハル「なんとか・・・・やってみるよ。」
1分後。
外は既に飛行メカノイドが取り囲んでいた。
バリアフィールドを展開しているとはいえ、バンリーダー
のレールガンや、ジュバルツのツインクローの猛攻にいつまで
耐えられるか。その時、ハルから装填完了の合図がブリッジに
送られてきた。
タイラー「ジョディ、バリアフィールド解除、ミカ、アクティブミサイル
全弾一斉発射！！」
「了解！」ミカとジョディに声がはもり、一連の動作がすばやく実行される。
甲板ハッチが開き、中から小型ミサイルが発射され、飛行メカノイドに
ぶつかり、爆発せず・・・・・ブリッジの全員が成り行きを見守る中、
動きを止めていた飛行メカノイドは方向転換し敵巡洋艦にむけ攻撃
を開始した。
ブリッジから歓声が上がるなか、タイラーはメカノイドの破壊行為
を見て昔の悪夢を思い起こしていた。
−マザーブレインと大企業アルカディアグループによる軍に対する干渉に
よりパルマ政府軍は非人道的な作戦が目立つようになり、敵ならば
女子供とて容赦しないその非道振りにタイラーは疑問を持つようになる。
やがて彼の元に父タイロス中将がなにものかによって暗殺されたと
言う知らせが入る。新指令長官に着任したロウ＝ブリンガルはタイロス
の霊前の前で暗殺を行ったのはカジコ再開発に反対する地域住民の
仕業だと高だかに演説するが、タイラーはそうは思えなかった。
彼の後輩、ジェリコがここの出身でそのため何度もカジコを訪れたが
人々は優しく気さくな人ばかりでとても暗殺などできはしないはず。
そう思ったタイラーは政府のシステムに侵入し、恐ろしい事実を
知るのだ．タイロス中将を殺したのは政府の公安機関であり
その指令こそ、ロウ＝ブリンガルだったのだ。−
メカノイドの攻撃により次々と大破していく巡洋艦。
それを見ながらアベルは不安を感じていた。
「おかしい、さっきからゴルゴン級戦艦がまったく動きを見せないの
は何故だ。なにか我々の知らぬ策が敵にはあるというのか・・・」
戦いを遥か彼方で冷ややかに見つめる二つの影があった。
漆黒の闇の中銀色に怪しく光る女性が踊りながら恍惚とした表情で呟く
「さあ、始まる。始まるわぁ。美しい裏切りと友情と言う名の悲劇がねぇ。」
もう一方の人物は軍服姿の男性だが雄牛のような角が頭に生えていた。
それは苦笑しながら答える
「ククク、その御代が駆逐艦8隻に巡洋艦2隻とは随分と高い
観客席だな。シェイドミラージュよ。」
シェイドミラージュは男性に絡み付くように踊りながら耳元で囁く
「あらぁ、酒と女と観客席は高いものほど上質なのよ。さあ
この宇宙という名の劇場で繰り広げられるセピア色の悲劇を心ゆくまで
楽しみましょう。」
巡洋艦を全て大破させたメカノイドが「エウリュアーレ」に近付いたその時
エウリュアーレから眩い光が放たれた。その時
ディスプレイで様子を見ていたジョディが驚きのあまり叫んだ
「大変です。メカノイドに感染したコンピュータウイルスが次々と
デリートされていきます。」
ハル「そんな・・・・僕の作ったウイルスはそう易々とデリートできる
訳ないのに。」
タイラー「一体何がおきているんだ・・・・。」
ブリッジに静寂が流れるなか急にディスプレイにある男の姿が映し出される。
それはタイラーの良く知る、そしてもう2度と会いたくない男だった。
あの日、燃え盛る炎の中で哄笑する男ロウの傍で黙ってこっちを見つめていた
ジェリコ、仲間をそして故郷の人を軍に売った裏切り者が
今タイラーの方を笑いながら、見下ろしていた・・・・・・・・・。
第２話 -終-
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