スペースクルーザー ランディール
第３話 裏切りの代価
-それはタイラーがまだ政府軍に所属していた頃
戦争の最前線では前線に立たされる者達の仲間意識が強くなるといわれる。
それはタイラーの場合も例外ではなく、彼の義侠心と陽気な性格に惹かれ
多くの仲間が集まっていた。
「タイラー先輩、待ってくださいよ。」
黒髪のパッとさえない青年ジェリコは40ｋｇの荷物を持って険しい山中を
行軍していたが途中で疲れ果ててしまった。タイラーが呆れながら
「おいおい、もう疲れたのか？こんな楽な道でへばってたら後が
もたないぞ。」
ジェリコ「えー、こ、これで楽なほうなんですか！？でも
俺もうだめです。ハアハア、一歩も動けません。」
タイラーはしょうがないという顔で彼の荷物を半分だけ持つと
「ほら、これでもう大丈夫なはずだろう。もうみんなは先に行って
俺たちのことを待っているぜ。よし、元気だして行くぞ。」
ジェリコ「ハアハア、先輩すんません、人々を守るために軍にはいったのに
こんな初っ端から弱音をはいちゃカジコにいる両親に笑われますよね。」
タイラー「お、なかなか言うようになったな。その調子でがんばろうぜ！」
ジェリコは特にタイラーを慕っておりよく、カジコにある彼のの実家に招かれた。
ジェリコの母「何にもないところですけどゆっくりしったてください。」
ジェリコ「先輩遠慮しないでどんどん食べてください。」
緑豊かな田舎の風土料理は母のいない彼にとって心温まる一時だった。
だが、
そんな穏やかなカジコはある日大企業アルカディアグループに強制的に
買収された。当然地元の住民は反対運動をおこし政府に陳情した。
だが、それに対する政府の答えはあまりにも非道極まりないものだった。
タイロス「君は無辜な市民を犠牲にしてまであの施設を作るつもりなのか？」
ロウ「ふふふ、タイロス中将これはマザーブレインが下した絶対的な
命令なのですぞ。我々軍はそれに従うべきでありそのためには下らぬ愚民
どもがいくら死のうと・・・・」
タイロスはロウを思いっきり殴ると
「軍上層部がそこまで腐敗しているとは思わなかった！もういい！私はこの
事を市民に公表する！！そして政府軍も解散だ。守るべきものの無い軍などに
存在価値は無い！！！」
ロウ「どうぞご自由に、最も公表できればの話だがね」
その数時間後、彼の乗った車は爆破される。息子のタイラーに１本のテープを
遺して。この内容を聞いた彼は決意し、そして仲間を集めた。
カジコ殲滅計画を阻止するために。
特にジェリコは「俺たちの行動により故郷を守れるんだったら俺、俺なんでも
します。だから先輩たち、どうかカジコの人々を護ってください。お願いします。」
彼は涙を流しながらみんなに頼んだ。
完璧に手筈を整えた作戦だった。だがそれは一人の裏切り者により脆く
崩れ去った。周りをロボット兵に囲まれた仲間たち。目の前には司令官
ロウが嘲るような笑みを浮かべたっていた。
「ふふふ、君は優秀な部下を持っているようだ．私は羨ましいよ、特に
ジェリコ君は政府のために自分の故郷を捧げるそうだ。なかなか愛国心
あふれる青年ではないかね。」
そういって葉巻をふかすロウの横にはジェリコが生気の無い顔でたっていた。
タイラー「なぜだ・・・・お前みんなの前で泣きながら故郷を護ってくれって
頼んだじゃないか！あれは嘘だったって言うのか！」
だがそんなタイラー熱い叫びは銃声と仲間たちの悲鳴によってかき消され
カジコは軍によって紅蓮の業火に包まれた。
「あはははははは、憎悪という素晴らしい感情のこもったいい叫びだ！！
いいぞ、もっと吼えろ、泣け、喚け、そして死ね！！それこそがあの御方の力となるのだ！！
うわっははははははははははははははは！！！」
ロウの哄笑が薄れ行く意識の中に木霊する。その時みたジェリコの顔は
いまにも泣きそうな表情だった。-
そのジェリコが今ランディールのディスプレイに映っている。
「先輩のあの時の表情よかったなぁ。無力さに苛まされる先輩。
あぁ、その表情が見たいがために両親を故郷を俺は売ったんですよ。
うふふ、そうですよ、私は自分が助かりたいがためにみんなを
政府に売ったんです。そのおかげで今や俺はこの戦艦の艦長ですよ。
どうです。素晴らしいでしょう！いひ、ひゃーはははは」
タイラー「・・・・・・てめえはそんな理由で俺の仲間や
実の両親まで殺したというのか！！許さないぞ、ジェリコ！！！」
ータイラーは怒りに我を忘れ彼が正常な心理状態じゃないことに気が付いていないー。
ジョディは心配そうに二人の会話を聞いていたが、ふとジェリコを見あげた
時、彼の顔が笑っている顔と泣き顔にだぶって見えた。
そして彼女の心の中に今にも消え入りそうな声が聞こえてきた。
・・・・お・・れ・・・を・・・・殺し・・・て
彼女はその声が今狂ったように笑っているジェリコの本当の
感情であることに気が付いた。
そして彼女は意を決したように手を組むと彼女の体は緑色の光に包まれた。
第３話 -終-
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