スペースクルーザー ランディール
第４話 ＤＥＡＤ ｏｒ ＬＩＶＥ
タイラー「ジョディ・・・・君は一体？」
さっきまで怒りに我を忘れていたタイラーはジョディが緑色に光輝く
様をみて正気を取り戻した。
アベルは驚きのあまり落ちようとした眼鏡を手で押さえ
あくまでも冷静な声で
「君は・・・エスパーだな。それもかなり特殊な」
その問いかけにジョディはふっと一瞬寂しげな表情を浮かべその問いに
答える。
「はい、そうです。いままで黙っててごめんなさい。でも私あの人の本当の心
を知ってしまったから・・・・・艦長、今あの人は誰かに感情を
コントロールされているの！！あれは本当の彼じゃないわ！！」
彼女の指摘で冷静さを取り戻したタイラ−、さっきまでは気がつかなかったが
確かにディスプレイに写るジェリコの顔はまともじゃなかった。
ジョディ「こんな力本当は使いたくなかった。でもあの人をほおっておく
ことはできないわ・・・・・父さんの言いつけ破ることになるけどごめんね」
彼女はペンダントの中の両親の写真を見つめそしてジェリコの顔を
キッと睨み、
「テレパス！！」と叫んだ。と、彼女のオーラが、ディスプレイを通り超えて
ジェリコを包み込んだ。
「うふふふふ、かかったわね、さあいよいよ悲劇はクライマックスよ〜」
踊りながら残虐な笑みをたたえるシェイドミラージュ
ジェリコ「ぐ・ぐわぁぁぁぁぁぁ！！！」
ジェリコは緑色のオーラに包み込まれたとたん苦悶の表情を浮かべる。
同時に彼の周りに放電が起き今まで画面の影に隠れて見えなかった
コードやケーブルがうねうねと蛇のように動いた。そして、それは
彼の後頭部から突き出しているように見えた。
アベル「ジョディ、やめるんだ！！奴らの企みに乗るんじゃない！」
アベルはジョディの力に驚きつつ第二ディスプレイに写るメカノイド達の
動きもしっかりと見つめていた。
アベル「メカノイド達は彼が苦しみ出した瞬間からこのランディールに向け
動き出している。私としたことが迂闊だったよ。これは彼の大脳皮質系を
使った生体コンピュータシステム。今まで擬似人格で安定していたシステム
系統がジョディ君の力でそのバランスが崩壊、いや、あらかじめ
組みこまれていた、これはそのバランス崩壊を逆手に取った罠だよ！！」
ジョディ「・・・・そんな！！」手を押さえ涙を浮かべるジョディ。
自分のやった行為が返って事態を悪化させてしまうなんて、
その時だった。
ジェリコ「ジョ・・・ディさん・・・ありが・・・とう・・・君が・・・
悩むことなんてない・・よ、これは俺が招いた・・・過ちなん・・・だから
・・・それより・・先輩・・・早くこの船を破壊して・・ください。」
タイラー「なぜだよ・・・お前はあの時自分の命が大事だから仲間や
故郷の人を売ったんだろう。そのお前がなんでそんな事がいえるんだよう！」
タイラーは叫んだ。あの時自分の目の前で死んでいった仲間達のことを思うと
とても許す気にはなれない。その気持ちを知ってかジェリコは寂しげに
こう答える。
「そう・・・ですね。俺にそんなこと・・・を言える資格は・・・ないですよね。
・・・・でも、もし家族の・・・・命だけは助けて・・・やる・・・ていわれたら
・・・・どうします。あの時・・・奴、ロウから・・・その話しを持ちかけ・られ、
俺・・正直迷いまし・・・た、けど・・・母さんのこと・・・・思うと・・・・だけど
結果は・・・・」
タイラー「お前の家族も皆殺しにされた・・・・・」
いつのまにか２人はさめざめと涙を流していた。お互いの立場を理解できたのだ。
だが、運命は２人に涙を流す暇すら与えてくれない。
オペレータ席にいたアンドロイドウォーレン301が緊急状況を伝えてきたのだ。
「現在、ランディールの周囲に幾重にも渡り、メカノイドが取り囲み
周回運動をおこしています。」
アベル「く、敵は我々の逃げ道を断つつもりか！？」
シュバルツ型メカノイドはぐるぐる周回しながら、電磁パルスを両手から
照射し、そしてそれは幾重にも重なる五旁星を形成した。
ハル「このままじゃ身動きすらできなくなっちゃうよ！！」
アレス「ちくしょー！俺たちに打つ手はないのかよ！！」
アベル「勝兵は水に似たり。夫れ水に至っては柔弱なるものなり、然れども
触るる所の丘陵、必ず為に崩れる。」
アベルこの言葉にみんなキョトンとなる。
アレス「おい、お前何言ってんだ！ついに気でも狂ったか！！」
だが、アベルは落ちついて
「この言葉は私の故郷につたわる本の一説だ。みんな、負けるという
固定観念に囚われてはいけない、水のように柔軟に物事を考えれば勝機は
必ず訪れる。ハル君！！今から私が伝える指示を実行してくれ。」
ハル「う、うん」
ハルはアベルの言われた通りにコンソールに指を滑らせた。
エウリュアーレからの砲撃が開始された。五本の黒い触手状のレールガン
から幾重もの光条が放たれ、動けないランディールに向け殺到する。
バリアフィールドで防御しているとはいえいつまでそれが持つのか。
ジェリコ「先輩・・・・もう時間がない・・・早く・・・・・・
俺ごとこの戦艦を撃ってくれ！！！」
タイラー「バカヤロウ！！そんな事いわれて撃てるほど俺は
冷酷になれはしないんだ！くそ！どうすればいいんだ！］
そう言っている間にもバリアを抜けたレールキャノンが船体を揺るがす。
レッドランプが点り船体の損害状況が映し出される。
ジョディ「右舷被弾！戦闘への影響軽微！！」
ジョディが涙を流しながらも必死で結界の僅かな隙間の中でビームを避ける。
アベル「いいか、ときに指揮官というのは冷酷に物事を処理しなければならない。
そうしなければ、味方の被害はふえるばかりだ。冷酷になれ！！タイラ−！」
その言葉にだがタイラーは「ごめん。俺は冷酷にはなれない。
なんとかしてあいつを助けてやりたい。ふ、まったく艦長失格だな。俺は」
アベルはそれを聞くと溜息を付きながら
「ああ、そのとおり艦長失格だ。だがな、その優しい性格が私は好きだよ。
ハル！！準備はできたな。」
ハル「うん、敵の中枢システムに潜入成功！間もなく攻撃が止まるはずだよ」
その言葉通りエウリュアーレの攻撃が止まる。
タイラーは呆気にとられた。彼の行動はアベルの予想通りだったようだ。
アベル「さあ、こうして私が時間を作ったんだ。白兵戦を掛け、今苦しんで
いる彼を救ってやれ。ぐずぐずしている暇はないぞ。それとこれは貸しだからな」
タイラー「サンキュー。助かったぜ。ようしこれより、反撃を開始する！！」
アレス「待ってたぜ！！艦長！！くう、野郎ども行くぜ！！」
レーザーアックスを手にアレスは部下を連れて、転送装置からエウリュアーレ
内部に向かった。
タイラーも行こうとするとジョディが、涙を吹きつつ呟いた。
「かならず、返ってきてね。」
タイラーはガッツポーズをとりそして転送装置でエウリュアーレ内部に向かった。
巨大な2足歩行ロボ、ヘビーソルジャーの重火器が火を吹く。タイラーは手に
持ったライトサーベルで横に薙ぎ、ヘビ−ソルジャ−を破壊するが彼の後方
にバンブードールが迫ってきていた。バンブードールがタイラーに電磁波
を浴びせようとした刹那巨大なレーザーアックスがそれを叩き潰す。
「後ろががら空きだ。気をつけろって前からいっているだろうが」
アレスの怒声が響く。だがそれはタイラ−の事を心配しているからこそである。
ーこれでも２人は10年前までは敵同士だった。タイラーは政府軍、アレスは
モタビアンゲリラとして、だが戦場で何度か戦ううちにお互いの気心がわかる
ようになり、タイラーが政府軍を抜けた時いち早く、タイラーの仲間になったのも彼であった。ー
タイラー「こうやって戦っていると昔のことを思い出すよな。」
タイラーのライトサーベルがミゾランガンマの頚部を切り落とす。
アレス「ああ、まあ、俺がいつもギリギリ勝っていたがな！！」
アレスのレーザーアックスがこっそり近づくシーカーを叩き壊した。
タイラー「そうか！？まあ、いいさ、今はこうして共通の敵相手に戦っている
訳だしな。」
アレス「そういうこと！！目の前にでか物が来た、いくぞ！！！」
２人は目の前に現れたトレーサーベース向って刃を振り上げた。
ついに彼らはブリッジの手前まで差し掛かる。先行して待機していた
ウォーレンがドアのロックを解除する。その時中からコード類がタイラー達に
向かい襲い掛かってきた。間一髪、これをかわすタイラー達、目標を失った
コードはぐるぐる絡み合う。
タイラー「助けに来たぞ、ジェリコ！！」
だがジェリコは泣きそうな表情で大声で叫ぶ。
「なんで・・・・なんで、きたんだよう！！俺は先輩の仲間や父さん母さん
まで見殺しにしたんだ！！・・・・俺なんか死んじまったほうがいいんだ！」
タイラーはそれを聞いた後泣き叫ぶジェリコの頬を思いっきり殴った。
「甘ったれるな！！お前が死んで仲間が生き返るならそれでもいいさ！！
だがな、お前が死んだところで死者は生き返りはしない。それをやって
喜ぶのは元凶たる奴らだけだ！！」
そういってタイラーは倒れたジェリコを優しく担いだ。後ろのコード類は
ハルの指示でウォーレンが慎重に取り外している。
タイラー「だがな、生きてさえいればいつかは罪を償えるときも来る。
少なくとも俺はそう思うんだ。さあ、行こうぜ。」
ジェリコ「・・・・先輩。」
「ふふふ、いい三文悲劇を見せてもらったぞ。タイラー君」
取り外したコードがぐるぐる絡み合い人型を作った。
タイラー「貴様はロウ＝ブリンガル！！」
タイラーは手にしたライトサーベルでロウの人型を真っ二つに切り裂いた。
「ふふふ、あいかわらずいい憎しみだ。君達が見せてくれた三文悲劇の礼金
を支払おうと思ってね。私からのプレゼント気にいってくれると
いいのだが。」そういうとロウの人型はばらばらに崩れ落ちる。
と同時にエウリュアーレの先端部が帯電を始めた。ものすごい荷電粒子が
先端部を飛び交い一つに集約していく。
「いけない！」ハルが驚愕の声をあげる。
「これは、陽電子を加速させ敵にぶつけるポジトロンボルト！！こんなの
食らったら対消滅で僕たちの船なんてひとたまりもないよう！」
アベルは転送室のスタッフに指示を出す。
「急いで艦長達を転送し緊急離脱しろ！！」
スタッフ「だめです！！陽電子のせいでパターンバッファが特定できません。
転送は不可能です。」
その知らせにミカが泣き出した。
「うぇええええん、おにいちゃ−ん！！」
ジョディもがっくりと肩を落とし泣き崩れた。
タイラー「まだ、あきらめるのは早いぜ！！アベル、グンニグルの槍
用意出来るか！！」
アベルをはじめブリッジにいる一同驚愕の声をあげる。
「待て！！あれは危険だ！」
タイラー「今以上に危険なことなんてあるもんか！！肉を切らして
骨を絶つ。これしか手はないんだ、みんなたのむぜ！！」
アベル「成功率30％だぞ、だがそれにかけるしかないようだな。参謀アベル
がコード0083において承認する。グンニグルの槍発動！！」
ハル「ランディ―ル前方にバリアフィールドエネルギー集中開始」
ミカ「お兄ちゃん必ず助けるからね！自動追尾レーザー重力特異点に向け
一斉発射。」
ジョディ「レーザー収束率50・・・70・・・90・・・・100％！！」
タイラー「よーし来い！！！バーニア最大出力！」
全員「行け〜〜〜〜〜〜〜！！！！」
グンニグルの槍：それはランディ―ルの前方にバリアフィールドを集中
その中心に重力特異点を発生させ、そこにレーザーを集中し最大船速で
ぶつかる必殺技である。
同時にエウリュアーレからポジトロンボルトが発射された。が、それを
突き破り光に包まれたランディ―ルが、エウリュアーレの先端部を崩壊
させていく。
アベル「まだ、バッファは安定しないのか！」
スタッフ「あと少しです！！」
光の槍が、タイラーのいるブリッジに近づいた。
タイラー「く！」
スタッフ「パターンバッファ安定！！ただちに転送します！！」
そして、光の槍に貫かれた大型戦艦エウリュアーレは大爆発と共に
宇宙の藻屑と消えた。
シェイド「あぁ、あたしの描いた華麗な悲劇がくだらない屑役者に、
覚えておいで！！！」
ロウ「まあよい、時間稼ぎはさせてもらったからな！！」
二人の怪人は闇の中に消えていった。
パルマ地熱研究所の警備は手薄でタイラー達は簡単にその中枢部に入る
事ができた。その中で見たものは不気味な生体装置が地底奥深くのマントル層
に深く突き刺さる異様な光景だった。
ハル「これは、地核にエネルギーを送りこむシステムみたいだけど・・・。」
タイラー「これをどうみたらいいと思う」
アベル「わからない。だがメモリー上のデータ―からこれがアルカディア
の楔であることに間違いないようだな。」
タイラー「アルカディアグループめ、何を企んでいる。・・・・・
よしここを破壊しよう。」
ランディ―ルが飛び立つと同時にパルマ地熱研究所はマグマの中に沈んでいった。
パルマ首都、バヤマ―レ地区数百メートルのビルが立ち並ぶ摩天楼
その中でも最高の高さを誇る高さ1300ｍのビル
アルカディアグループ総本部、その地下奥深くで幹部が集結していた。
踊りながら現れるアルカディアグループ女会長シャルルゴーニュミラージュ
（シェイドミラージュ）
「私の描いた完璧なシナリオが失敗するなんて、あぁとても残念だわぁ」
？？？「ふ、貴様の小ざかしい細工などでやられる奴等ではないな」
シェイド「なんですって、どういう事よ！ダークライダー！」
陰よりすばやく現れたのは秘密警察警視長官ライダーク・セイバー
（ダークライダー）「奴を倒すならこの私一人で充分という事よ。」
シェイド「きぃいい」
？？？「うひゃはやひゃひゃひゃ、まあまあお二人ともそういがまずに」
二人を止めたのは科学技術庁長官イマージュ・マージス（イマジオメイジ）
そして最後に現れたのは軍司令官ロウ＝ブリンガル（カオスブリンガー）である。
４人の奥には玉座に座る一見して優しげな男が座っていた。
パルマ政府第3執政官イアム・ラフェ―ル（ダークファルス）である。
イアム「して、アルカディア計画の方はどうですか。」
イマ「うひゃ、計画は既に第3段階に移行し、人間の脳を使ったテクニック
増幅システムはほぼ完璧に」
シェイド「私の方ではすでにモタビアのバイオモンスターの個体の深層心理
に潜入し、扇動を行っているところですわ。」
ロウ「すでに反乱軍の大体の規模をつかみ最終計画発動までにはこれを
消去できまずぞ！」
ライダ「ランディ―ルの末裔の捜索はほぼ特定済みです。後シーク家について
は二人を除きすでに全員捕獲完了」
イアム「みなさん、上手くやっていますね。それでいいですよ。ただし
失敗したときはわかってますね」
その言葉に一同びくと体をビクと震わせる。とその時、
ファーグ官房長官「御方様のお成りです。」
6人の幹部は一斉に頭を下げる。周囲の空間が歪み、邪悪な気が部屋に立ち込める。
おぉおおおおおおおおおおお・・・闇が叫びを上げ、
巨大な紅い３つ目が不気味な蒼い髑髏達を引き連れ現れた。
イアム「母上、まもなく、まもなく計画は最終段階に達します。それまで
今しばらくのご辛抱を。」
”滅ぼせ、
人を滅ぼせ
命を滅ぼせ
動くもの全てを滅ぼし尽くせ”
ジェリコはデゾリアンの医師、ラガンの手で元に戻ることができた。
そして別れの日
ジェリコ「先輩、俺自分なりにこの罪をいつか償いたいと思います。
そしていつか先輩の力になれる様頑張りたいとおもいます。」
タイラーは優しげな眼差しで彼の肩に手をかけ
「ああ、いつでも俺はまっているぜ」と声をかけた。
ジェリコはその言葉に泣きそうになりながら力強く新たなる1歩を踏みしめる。
ジョディ「いいんですか。艦長、」
タイラー「人にはそれぞれ考える時間が必要だ。それは俺達にもいえること。
さあ、みんなの所に戻ろうぜ！」
ジョディ「はい！」
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