スペースクルーザー ランディール
第27話 万魔殿を穿つ魂のコンチェルト（協奏曲）
バヤマーレ時間 ＰＭ８：００
ミカ「・・・・ここからだよ、何かいやな気がするの」
ジョディ「ミカちゃんも感じるのね・・・この瘴気を」
タイラー「ここがアルカディア総本部ビルか・・・・」
ランディールを降りたタイラー達の前に巨大な暗黒が高くそびえ立つ。
首都バヤマーレの都心部、かつてバヤマーレの塔とよばれた遺跡や天空にあった旧
ランディール王家の居城エアャッスルを取りこみ建築された1300ｍを超える六つの超
高層ビル群は中世風の城塞のような豪華な装飾と未来的なデザインとが合わさる美
しき外装からかつてここにあった天空の城にも並ぶ人類の英知の結晶とも呼ばれて
いた・・・・。
しかし・・・対消滅反応の猛烈な光が大気に影響を与えているためか周囲に紫と真紅
が入り混じった暗雲が立ち込め雷が外壁を照らすその巨大な影は、今やそこから滲
み出る圧倒的な邪気と合間ってまさしく悪魔の城・・・万魔殿と呼ぶに相応しい。
あまりにも禍禍しい巨城の威圧感にハルは腰が引けていた。何度もおまじないのよう
に自らを奮いたたす言葉を口にするハル。
ハル「怖くない・・・・怖くないんだ」
アレス「おいおい大丈夫か、足元なんていまだに震えているじゃねえかよ」
口では軽口をいうがアレスもこの圧倒的な邪気に心穏やかではないらしい。
ハル「ボ、僕は震えてなんていないよ！！」
タイラー「し、お喋りはここまでだ。どうやらやっこさんのお出ましらしい。」
タイラーの表情がキっときつくなり仲間達が戦闘態勢に構える。
エントランスの上にある巨大なバルコニーに続々とアルカディア最高幹部がテレポート
してきた。悠然といならぶ五つの影・・・・・・。その中の1人赤装束の紳士が前に出て
ＶＩＰを迎えるように静かに一礼をする。何時の間にタイラー達の周囲にも黒服の者達
が現れ取り囲んでいる。
ファーグ「ようこそ、アルカディア総本部ビルへ。お客人の方々のご来訪をお待ち申して
おりました。申し遅れましたが私はファーグと申す者。あなた方を地獄へとご案
内する真・邪神天王の筆頭でございます。」
アレス「地獄だってか！！・・・・てめえら俺達を歓迎するんじゃなかったのかよ」
アレスがファーグの慇懃無礼な態度に食って掛かるが彼等はそれを楽しむかのように
シェイドは踊り、ロウは葉巻をふかしながら大袈裟に手を広げ宣言する。
ロウ「むろん歓迎しようではないか。君達の絶望を祝ってね・・・。ではまずオードブルと
して余興を楽しんでもらおう」
シェイド「そう題して血と嘆きのオペラ、第１楽章は戦争の軍靴と共に幕を開けるわ〜♪
巻き込まれるあなた達はコンダクターである私達の指揮に従わなければああ、
哀れ戦場の露へと消えてしまうの〜♪さあ役者達、舞台にお上がりなさ〜い♪」
シェイドの歌声に誘われるように本社のエントランスから、近隣のビルの玄関から、また
道路からせり上がるポットの中から次々と現れる者達。サラリーマン、軍人、科学者と業
種は様様だが一糸乱れぬ動きと只ならぬ殺気から彼等がただの人間ではない事がわかる。
先ほどまで無人だった大通りはたちどころに一万人を超えるアルカディア構成員の大軍
勢に埋め尽くされた。そしてその中の一部にハルは意外な者達が並んでいるのを見て顔
が次第に青ざめていった。
何故なら・・・・・
彼等の顔は皆が同じであり・・・・そしてハルとも容貌がそっくりだったのだ。
ハル「あ・・・・な・・・・なんで僕と同じ顔がいるの・・・・」
湧き上がる恐怖の思いにハルは立ち尽くす他なかった。それはタイラー達とて同じだ。自
分の仲間と容姿が同じ人間が何人もいる事にどう対処していいのか考えあぐねていた。
ただミカだけが何かを勘付いたようだ。自分の胸に手を当て悲しみと憐憫を含んだ瞳で
ハルを見つめていた・・・。
ミカ「・・・・・」
タイラー「これは・・・・何の悪ふざけだ！！ロウ」
ようやく息を落ち着かせたタイラーがロウに激しく詰め寄る！！それに対しバルコニーに
いる邪神天王達は、我関せずと無表情のライダーク以外、全員が悪意に満ちた含み笑い
を浮かべていた。
ロウ「ふふふ、悪ふざけではないぞ。おや、ハル君、君は気づかなかったのかな。自分の
身体の秘密に・・・・」
ハルは自分の全身の血が凍てつくのを感じた。彼等がどうして自分を見て笑っているの
か理解できなかった。いや、本当はもうわかっているはずなのにそれを理解したくなかっ
たのだ。
ハル「僕の・・・・秘密？」
そう言いながら身体が小刻みに震えるハルを見てついにイマージュが我慢できず吹き出
し爆笑する。
イマージュ「うひゃははははは、あーひゃはははははははあ・・・はあはは、はー苦しい。
こりゃあ傑作じゃわい。おまえさんは今日この日まで科学者でありながら自分
の遺伝子の異常に気がつかなかったと見える。教えてやろうかのう・・・おまえ
さんは我等の器となるべく造られたクローン、人工生命体じゃよ・・」
ハル「う・・・嘘だよ・・・・僕が、僕が・・・人工生命体だなんて・・・僕は人間だよ！！！」
震える声で必死に自分は人間だと叫ぶハル。目に涙を浮かべながら彼は何度も何度も
その言葉を繰り返していた。言い続けないと自分が信じていた全てが足元から壊れるよ
うな気がしたのだ。だがハルの最後の拠所をロウは彼の名前ではなく製造番号を呼ぶ
ことで完膚なきまでに打ち砕く。
ロウ「ふふふハル君、いや認識ナンバーＨ−５５７よ、ではその証拠を見せてやろうでは
ないか。」
冷笑を浮かべつつロウが指を鳴らすと同時に・・・・人間の姿をした物達が耳障りな異音
を立てながら変貌をし始めたのだ。ある者は身体から体毛が生え、またある者は肩から
下が溶け落ち不気味な幽体エビルサイドと化した。それでも人間の特徴を残しているの
はまだいい方で中にはライオンの身体に人の顔を持つマントゴーアのような獣としか呼
べない姿に変貌するものや、眼球が飛び出て翼が生えた独立した生命体ゴールドレンズ
になるもの、さらには中の皮と内蔵が捲れ落ち、正体不明の骨の塊カーマインヘッドと化
す者まで現れ始めていた。そしてハルの姿をした者達も顔がみるみる皺だらけとなり手に
した金属の仮面を被ると・・・・異界の魔道士カオスソーサラーへと禍禍しく変貌したのだ。
ハル「そんな・・・、嘘だあああああああああああああああああああ！！」
残酷な真実を見せ付けられハルはガクっと肩を落とした。
ウォーレン「マスター！！」
ウォーレンは倒れそうになる彼を手でささえ安全な壁際まで寄せ、彼を座らせる。目から
生気が失われまるで糸の切れた人形のようにうな垂れるハル、その背中に黒い影が乗
り移ろうとしていた・・・・。
ハル「ああああ・・・・僕は・・・・・・・・・ソウカ、ボクハ人工生命体、ボクハ・・・・魔族ノ器二
スギナインダ・・・」
だがハルの小さな囁きを近くにいるウォーレンですら気づく余裕がなくなった。辺りに無数
の異形の者たちが溢れ出すと共に大きな地響きに大地が揺さぶられ道路を砕きながら
１０ｍを超える巨大な百足状の生命体デ・ロル・レがタイラー達目掛けて襲いかかってきた
のだ！！
それを合図に他の魔族も軍団となって一斉に襲いかかる。タイラー達が手に武器を取りつ
いに魔族との戦闘が始まった！！
デ・ロル・レの触手が一撃、二撃、三撃、四撃と道路を貫き砕きながらタイラー達に迫る！！
それをぎりぎりの間合いで交わしアレスが豪腕に溜めた全ての力をこめて斧の一撃を振り
下ろす、だが甲殻生物の堅固な殻はアレスの一撃を受け付けず逆にアレスの方がその反
動で吹き飛ばされる。
アレス「畜生、なんて硬い殻をしてやがるんだ！！」
タイラー「アレス、敵の構造をよく考えるんだ！こういう体が堅固な鎧で護られている奴は目
や感覚器官をどこかに出している筈だからそこを狙っていこう！！」
だがタイラーの忠告よりも早くデ・ロル・レは身体を天高く伸ばすと髑髏にも似た頭殻から強
烈な生体ビームをタイラー達にむけ、吐き出した。
ミカ「アレスお兄ちゃん！！」
ビームの光がタイラー達の影が次々と飲み込まれていく様にミカは自らの命も顧みず、駆け
寄る。だが心配は杞憂だったようだ。光の残滓が薄れていくと同時にアレスの罵声が聞こえ
たからだ。
アレス「ば、ばきゃろう！！・・・百足がビームなんて吐くんじゃねえ！！」
道路を深くえぐるデ・ロル・レの生体ビームに少しびびりながらもアレスはタイラー達とともに
武器を取ると立ちあがり再び戦いの場に戻って行く。安心したミカが残るハル達の様子をみ
ようと振り向いたそのとき、レーザーの光の最後の残滓がハルに取りつこうとする黒い影を
浮かび上がらせた。それをミカだけが捉えたのだ。
ミカ「ハル、それに身をゆだねたら駄目だよ！！」
ミカは駆け寄りながらハルに強く呼びかける・・・・・だがハルは薄ら笑いすら浮かべその黒い
影に身を委ねようとしていた・・・・。ミカは意を決して手に持ったシルバータスクを素早くハル
と黒い影の接点に向け切り裂いた。ほんの数ミリずれていたらハルを傷つけていたかもしれ
ないそんな僅かな点・・・しかしそこが急所だったらしく黒い影は絶叫をあげながら霧散した。
いまだに人形のように動かないハル・・・・ミカは必死に彼の身体を揺さぶりながらハルに呼
びかける。
ミカ「ハル！！！しっかりしてよ！！あいつ等の言う事に惑わされちゃだめだよ！！」
ミカの必死の呼びかけにもかかわらず未だ正気の戻らぬハル。共に造られた者としての悲
しみを共有するミカにはハルが苦しむのを見るのが耐えられなかった。ミカはハルの心に
訴えるように優しく語り掛ける。
ミカ 「あのね、聞いてハル、あたし達は身体は造られたものかもしれないけど心はちゃんと
あるんだもん！！この胸の奥にあるんだもん！あたしだって・・・・・造られた命だけど
・・・この胸の奥の思いだけは自分の大切なものだってわかっているから・・・だから負
けちゃあだめだよ！！」
ハル「・・・・・・・ミカちゃん」
呆然自失となっていたハルだがミカの呼びかけにようやく正気に戻った。だが安心するのも
つかの間地獄の猛獣マントゴーアに跨った灰色の背むし男モソロフが口から大量の含み針
を噴いたのだ。迫り来る針の切っ先に恐怖のあまり目を閉じるハル・・・だがすぐに来るはず
の針のささる痛みがこない。そっと目を開けるとミカが美しき翼を持つジャコウネコの形態を
取り、マントゴーアの身体を押さえ首を噛み千切っていた。その衝撃で落ちたモソロフにウォ
ーレンのナパームショットが火を噴きモソロフをこの世から完全に消し去った。戦闘を終え駆
け寄るミカとウォーレン。ウォーレンには針が無数に刺さり内部機械が所々放電していた。
ハルの危機にウォーレンは身を呈してかばったのだ。その姿があまりにも痛々しくハルは目
に涙を浮かべる。その涙をウォーレンはそっと優しく指で拭った。
ウォーレン「マスター、あなたは確かに遺伝子の上では造られた存在かもしれません、でも
ミカ様のいわれた通りあなたには自分で考える意思があるではありませんか・・・
それは心の持たぬ私が見ても明確に認識できる事象です。私のプログラムはあ
なたの思いから生まれました。私はそれを誇りに思います。」
ハルにそう諭すウォーレンの表情はもう機械ではなく人間そのものだった。ハルは胸の中に
熱いものがこみ上げるのを感じた。冷静になった頭で周囲を見渡すと・・・・・・・・・・・みんなが
命を賭して魔族と戦っていた。
タイラーはデ・ロル・レと、ジョディはカーマインヘッド達と戦っている。中でもアレスは体長が
五メートルもある巨人に猛然と戦いを挑んでいたのだ。青銅色の巨人タロスが手に怪力を
込めアレスを押しつぶそうとするがアレスは苦痛に顔を歪めながらも必死に耐えハルに向
かって叫んだ！！
アレス「そうだぜ・・・お前はあそこにいるでくのぼうの化け物達とは違うんだ！！それに男
なら自分で自分の証ぐれえ立てて見やがれ！！」
そう叫ぶとアレスはタロスを上回る怪力でタロスをねじ伏せ、他の魔物の方へと投げ飛ばす！！
そうして懸命に戦うタイラー達の姿を見てハルの目に生気が戻ってきた。・・・ポケットの中
から小型の銃を手に取りゆっくりと立ちあがるハル。目の前には少し前まで自分と同じ容
貌だったカオスソーサラーが手に妖力を込めハルに目掛けてその力を放とうとしていた。
ハル「僕の意思・・・・僕の証・・・・ウォーレン、アレスさん、僕、頑張るよ・・・・自分が自分で
いられるために！！僕は戦う！！」
カオスソーサラーから強烈な炎のマジックフレエリが放たれる！！その火球がハルを飲み
込もうとするがハルは手にした銃に素早く弾を装てんすると火球目掛けて狙いを定める！！
手がガタガタと震えるがハルは意を決して弾丸を撃ちはなった！！！弾に込められた周囲
の空気熱を奪うテクニックバータと氷結のマジックフローゼの連動エネルギーが火球を中和
しなおも進みながらカオスソーサラー達やその後に続く魔物達を凍らせて行く。ミラー博士と
共同で開発したテクニックやマジックのエネルギーを弾として撃つ銃コラボレーションガンだ。
その冷気がデ・ロル・レの地面から出ている節を凍結させた！！その場から動けなくなった
デ・ロル・レが辺り構わず生体レーザーを掃射する。魔族が巻き添えを食らい消滅する中、
タイラーが隙をついてデ・ロル・レの頭殻の隙にある急所の目に手にした剣を突き刺した！！
絶叫を挙げ暴れながらデ・ロル・レはビルの壁に自らを叩きつけその場に倒れこんだまま動
かなくなった。
タイラーはデ・ロル・レの頭部から飛び降りるとコラボレーションガンを撃った反動でひっくり
返ったままのハルの手を取り立ちあがらせ、ハルを見て笑顔を浮かべた。
タイラー「やれば出来るじゃないか！！ハル、これからも頼りにしているぜ！！」
ハル「え・・・・うん！！艦長、僕もがんばって援護するから早く本社ビルに急ごう！！」
タイラー「ああ、こんな所でいつまでも足止めを食っている訳にはいかないからな！！消耗
戦になる前に奴らの頭を叩く！！行くぞ！！みんな！！」
全員「おう！！」
意気が上がるタイラー達とは対称的にデ・ロル・レを倒された事により魔族達の間に混乱が
生じていた。そこにバルコニーから眺めていた邪神天王達からの冷たい視線と言葉が投げ
かけられ、魔族達は恐怖に縮み上がる。
シェイド「うふふふふ、偉大なる闇の軍勢の者達がこんな事で負けちゃうなんて恥じだわあ♪
・・・そんな無様な演技をしちゃう大根役者達には後で熱〜い抱擁をしてあげる・・・・♪」
ライダーク「貴様等はそれでも御方様に仕える騎士か！！資格なきものは私が切り伏せる！！！」
魔族達「ひ！！は、はいすぐに抹殺してごらんにいれましょう！！」
真・邪神天王達から最終宣告を受けた魔族達は死にもの狂いでタイラー達の行く手を遮る。
山羊頭の怪人ゴートマン達が手にした槍を突き出し巨大な邪竜アーキードラゴン達が砲台
の様に灼熱の炎をタイラー達にから吐きかけた。爆炎が近隣のビルを壊していく中瓦礫に
混じってゴートマン達がミカとアレス達に襲いかかる。その槍が鉄の豪雨となってあどけない
少女の身体を貫こうとしていた。だが・・・・・・・・・・
ミカ「どこを見ているの、こっちだよ！！あっかんべー」
魔族の猛攻にも怖気つくことなくミカがゴートマンの槍を残像技イリュージョンで交わし動きを
乱している間にアレスの強烈な横薙ぎの一閃スィーピングがゴートマン達を含む多くの魔族
を切り裂く。
ミカ「やったね、アレスお兄ちゃん！！」
アレス「はしゃぐな、まだまだ敵はたくさんくるぜ！！」
ミカとアレスの華麗なるコンビネーションに負けじとハルとウォーレンも手にしたガンや特殊
装備を迫り来る魔族達に向け標準を定めた。
ハル「いくよウォーレン！！コラボレーションガンフレエリ弾と君のフレアショットによる合成
技！！」
ウォーレン「了解！！」
ウォーレンの目のレンズから照射された熱線にハルの銃から放たれた炎の弾丸が螺旋を
描き絡みつくと炎の竜巻となって魔族を穿ち焼き尽くす。
ハル「名づけて、フレイムサイクロン！！ってね☆」
さっきとはまるで別人のようなハルの勇姿にジョディが思わず歓声をあげた。
ジョディ「見て下さい！！ハル君は今自分の迷いを完全に立ちきって私達と戦ってくれてい
ます！！私テレパシー能力を持っていて今日ほど嬉しいと思ったことはありません！！」
心の奥から伝わるハルの勇気に涙ぐむジョディに邪竜達の炎が連続して迫る。
タイラー「ジョディ！！炎に気をつけるんだー！！」
ジョディ「ええ、わかっています艦長！！けれどこんな炎なんて紅龍王さん達の炎と比べた
ら楽勝です！！」
ジョディは手から紫紺の防壁を出しアーキードラゴン達の炎を完全に防いでいた。無論口で
言っている程余裕ではないのだがジョディはタイラーに心配をかけまいと微笑みを見せる。
邪竜達は尚も炎を吐こうと口を大きく広げるが
タイラー「この瞬間を待っていたぜ！！」
その隙を付きタイラーが飛び出した。
ハル「あのドラゴン達は冷気が弱点みたいだよ！！今から対応するフローゼ弾を撃つから、
艦長は上手いことそれを剣に纏わせて！！」
タイラー「おいおい簡単にいってくれるなあ・・・けどそれはナイスアイデアだ！！」
ハル「じゃあ行きます！！フローゼ弾シュート！！」
ハルが放った冷気の弾がタイラー目掛けて突き進む。それに合わせてタイラーは手にした
剣に空気中の水分を多く集めながら弾をぎりぎりのところでかわす。対する目の前のアー
キードラゴン達は顎を広げ灼熱の炎をミサイルランチャーの様にタイラーに向け集中的に
放った。灼熱の炎がすじを引いてタイラーの直前まで迫ったその時フローゼ弾が閃光と共
に冷気をぶちまけ炎と相殺して行く。同時にタイラーが水を纏わりつかせた剣を横薙ぎに
大きく薙いだ。
タイラー「アクアンカトラスＬＶ２！！」
横薙ぎの衝撃に乗って大波と化した水流がフローゼ弾の冷気を伴い邪竜にぶち当たる。
ダイヤモンドダストの輝きが舞いとび邪竜たちを指揮していた魔族共々凍てつき粉々に
なった。
ハル「・・・す、すごいです。僕とミラー博士の発明が予想以上の効果をあげている。僕は
今猛烈に感動しています。」
発明の想像以上の威力にはしゃぎまわるハル。だがその背後数百ｍに巨大な土偶のよ
うな化け物インディベルラとダークベルラが列をなして巨大な豪腕をタイラー達に向けロケ
ットの様に放ち始めたのだ。遠くからひゅるるるると風を切る音がして振り向いたハルは
巨大な腕がつぎつぎと襲いかかる様に金縛り状態になった。
ハル「うわああああああああああ！！」
アレス「てめえ、死にたいのか！！！ほらとっとと逃げるぞ！！」
間一髪アレスがハルを肩に担いでその場からぎりぎり逃げ出すことができたが次々と壁
にぶち当たる豪腕にみるみる小さなビルが瓦解していき最後には完全に倒壊する。ビル
の影に隠れていたタイラーだがその倒壊にたまらず転がり落ちる目の前に無数の豪腕
が迫っていた！！
アレス「なんちゅう破壊力だ！！」
ジョディとミカがワーラとデバンドで障壁をつくるがつぎつぎとぶち当たる豪腕に二人とも
つらそうだ。
タイラー「ジョディ大丈夫か！！あまり無茶をするな、」
ジョディ「大丈夫と言いたいところですけど・・・このままだと無理みたい。はあ、はあ、でも
たとえこの身体がこなごなに砕けても三人とも守って見せます！！」
ミカ「ジョディお姉ちゃん、何弱気になっているの！！と言っても・・あたしもふらふらしてき
たけど・・・・諦めちゃだめだよ。みんなでこんな戦い終わらせてるために頑張ろうよ、
ね☆」
ミカも苦しくすでに人間の姿を保てず猫に戻りながらも懸命になって結界を張っている。
そのミカから励ましの言葉をもらってジョディは弱音を吐いていた事を恥じた。
ジョディ「そうね！！諦めなければ希望があればなんとかなるよね！！ミカちゃんごめん
なさい！！この戦いが終わったらみんなと今度こそ平和に暮らしましょう」
アレス「そうだなこんなくそくだらない戦いそろそろおしめえにしたいぜ、畜生このパンチに
一秒でも隙があればあの土偶モンスター全部俺がやっつけられるのによ！！」
そういってアレスが攻撃をかける隙をうかがっていた時・・・・・・
？？？「古よりシークと契約を結びし守護竜・・・北に住まう雷神黒竜よ」
抑揚のきいた澄み渡った呪文が聞こえてきた。青年と女性のハーモニーにも似た声を
タイラー達は知っていた。
アイナとオハリオ「願わくば、汝の雷の力をこの刃に宿らせ敵を撃つ力を与えたまえ」
その声明に従いオハリオの持つ黒い刃に電光が纏わりつく。ようやく気がついたインディ
ベルラ達が豪腕を上に向け狙いを定めようとするが
オハリオ「シークに伝わる奥義が一つ！！黒雷竜撃剣！！」
オハリオは地を蹴りインディベルラ達の豪腕を空中で華麗にかわしながらすっと真中に降
り立つと黒き剣を大地に付きたてる。付きたてられた大地が激しく揺れ次の瞬間、竜の形
を取る雷撃が幾多も地を砕きながら現れインディベルラを含むその場にいた三百体の魔
族を瞬時に消し去った。
タイラー「ひゅう、今の一撃は凄かったぜ！さすがシークの頭首という肩書きは嘘偽り無し
だな・・・・だがあまり無茶するんじゃねえぜ」
オハリオの剣技のすごさに感嘆するタイラーだがアイナの少し憔悴した様子に気づき釘を
刺すことを忘れない。
オハリオ「ふふ、ご心配には及ばずとも僕もアイナもまだまだ戦えるよ。・・・・・・・それより
君達の方がぼろぼろだと僕には見えるけど」
タイラー「それはお互い様だろ・・・・俺達にはランディールで俺達を待ってくれているクルー
がいるし、アイナさん達も親と慕ってくれる子供達がいる・・・・お互い死ぬことは許
されないんだ。な 」
その言葉に二人の脳裏にリーク城で二人を待つアレク達の姿が思い浮かんだ。使命と子
供達への愛情の間で二人は言葉を失ってしまう。
オハリオ、アイナ「・・・・・・・・・」
そんな二人の悩みを知ってか、タイラーは優しく声をかける。
タイラー「俺達には残すべきもの・・・伝えなくてはいけない思いがたくさんある、その為の
時間を俺達は生きて作るべきだと俺はおもうぜ。」
アイナ「・・・伝えるべき思い・・・・・・・確かに作らないとなりませんわね。後を継ぐ子供達の
ために・・・タイラー提督そのための力貸してくれますか。」
タイラー「ああ、喜んで貸すさ！！さて敵さんが大挙して来るぞ」
アイナ達を含めた合計八人の前に敵の第二陣である千体以上の魔族が立ちはだかる！
だがタイラー達は恐れず魔族の軍勢に突き進んだ！！
タイラー「行くぞーーーおりゃあああああ」
一方雷撃に照らされるアイナ達の姿を見て五人の邪神天王に初めて怪訝な表情が浮かんだ。
シェイド「・・・・・出番の早いイレギュラーな役者のご登場のようね！！脚本の手直しが必要
かしら〜♪」
ロウ「その必要はないが・・・・よもやここまで早くここにこようとはな！！シークの巫女と剣聖め！！」
ライダーク「ふ、どうやらそれだけではないらしいな・・・・・。」
ライダークはつまらなそうに天空を見上げると雲の隙間から黒い戦艦ダークランディールに
率いられたレジスタンスの艦隊が次々とバヤマーレに降りたとうとしていた。
ＰＭ９：２０
ダークランディールを旗艦とする地上突撃艦隊「山の騎士団」は大気圏を抜けた後バヤマーレ
上空を滑るように降下して行く。距離を縮めるにしたがって肉眼でもバヤマーレ市街がくっきり
と見えるようになった。
ダークランディールのメインモニターには市街に陣取る大艦隊の威容とそれに立ち向かうラン
ディールの白銀の輝きが見えた。その輝きを見て艦長席に座るアベルはほっと胸を撫で下ろす。
海賊「アベルの親分！！バヤマーレに突入成功しやした！！」
アベル「ふ、ご苦労様、さあ、到着してすぐだが各艦に伝達をお願いしたい。フォーメーションＪ
を発動する。各艦は事前に艦長に渡されたファイルに従い行動を開始！敵艦隊と相対
して距離をおきつつ対消滅反応がおこっている光球へと移動を開始して欲しい。」
アベルは参謀として冷静に命令する。
だが航宙士は指定されたポイントを見て愕然となる。無理もない。指定された対消滅反応の光
球に近づくことはある意味太陽に近づくことと同じ、いやそれ以上に危険だった。
急速な時間加速現象から外されているため危険区域は光球から半径１.５ｋｍと制限されている
がそれでも噴きあがるγ線などの電磁波はいくら対EMP装備を施された艦隊とはいえ電子機器
にどのような影響があるかはわからない。ましてや表面温度は太陽と同様の莫大な熱量を持つ
光球に近づく事は自殺行為とさえいえる。
海賊「でも、それじゃあ、敵と対消滅の熱と電磁波との挟み撃ちになってやばいんじゃねえんで
すかい！？」
焦る航宙士に席の横から艶やかな女性の声が聞こえてきた。肩に紅の猛禽を乗せた女海賊頭
首であり「山の騎士団」提督でもあるスタージェーンがこの状況を楽しむかのようににやりと笑っ
た。
スタージェーン「ふん、アベル参謀にはなにか考えがあるんだろうさあ。あいつが悪巧みする時
は必ず何かしら手を動かしているんだよね。・・・・・・・ポーカーの時にそのくせが
出たらどうなにあたしがいい手札を揃えても結局負けてしまうのさ。だから・・・・・・
今度も逆転のいい手、あるんだよねえ」
雌豹のように不敵なスタージェーンの笑みにアベルは含みのある笑みを浮かべて返す。
アベル「・・・・・さあ逆転の一手かどうかはわからないが少なくとも負けない戦いをするつもりだ・・・。
後はこの手札がうまくいけばいいのだが・・・・ふ、もしかするとこれも敵の思惑通りかも知れ
ないな。だが、今はやるしかない！！」
アベルが深く考えながら凝視しているホログラフィックモニターをスタージェーンも横からひょいっ
と見つめる。モニターには「山の騎士団」の一部が極秘に別働隊として分かれながら光球の脇を
周回する様が見て取れた。その動きを敵に察知されないよう「山の騎士団」主力艦隊が巧みに
陣形を変えつつ覆い隠している。
スタージェーン「へえ、別働隊ねえ・・・・敵の艦隊が目の前にこれほどいるのに手勢を割いて大
丈夫なのかねえ」
その動きに感心しつつマニュアルにはない艦隊の動きにスタージェーンが揶揄を交えつつ疑問を
投げかける。スタージェーンの見定めるような視線をアベルは軽く受け流すと紅茶を手に取り飲み
始める。
アベル「それはもうすぐわかるさ。それよりさっき依頼した件なのだが・・・・・」
アベルにはぐらかされたスタージェーンは拗ねたように顔を向けて言った。
スタージェーン「あんたの艦長の援護をしろってかい・・・わかっているよ！！全くタイラーも敵の言
う通りにしなくてもいいのにさそれでいつも貧乏籤を引くのはあたしらだよ。」
アベル「それはすまない。でも君にとってもこれは損な話じゃないはずだ。すでに血の気の早い人
達がアルカディア総本部ビルに向かっている。その中には君のボス、ドン・オセロの名もあ
った。」
自分のスポンサーであり親代わりでもあるドン・オセロの名前が出てさしもの女傑にも悲痛な表情
がよぎる。だがそれをアベルには見られまいとわざと肩を竦めて強がるスタージェーンをアベルは
優しく見つめた。
スタージェーン「お互い血の気の多いボスを持つと苦労するさあね。じゃあ、あたしは行って来るよ
！！おまえたちも生き残りたけりゃあアベル参謀の命令どおりに働きな！！それと
アベル、ポーカーの借金帳消しの件約束だからね！！」
アベルの優しげな視線を見て僅かに頬を紅潮させたスタージェーンは軽く溜め息をつきながら部下
に指令を下す。それを見たアベルは再び作戦の現状を確認するためモニターを凝視し頭の中で思
索を続けた。だがアベルも彼女の次の行動までは予測でできなかったらしい。唐突にスタージェーン
がアベルの前に立つと強引に彼の頬にルージュに染まる唇を重ねた。
海賊「「あ・・・・姉さん」
アベル「・・・・・・」
予想外の彼女の行動に海賊たちは唖然となり、さしものアベルも言葉を失い固まってしまった。
スタージェーン「そのキスマークが約束手形だよ！！さあティアーラおまえの出番だ！！飛ぶよ！！！」
それを見てスタージェーンはしてやったりと満足げに笑う。そしてダークランディールの艦橋に急遽、
増設されたハッチを開けると肩に乗った猛禽スカイティアーラが翼を広げ足で彼女の手をしっかり
と掴み大空へ飛翔してゆく。
海賊「姐さん！！気をつけて」
海賊達が涙を（もしかして失恋か？）浮かべながら彼女を見送る。その様子を見つめながらアベル
は頬に今も伝わる唇の温かさにまんざらでもない笑顔を浮かべた。
アベル「ふ、借金帳消しか・・・・合縁奇縁・・・・お互い生きていたらその約束を守ろう。」
呆然としていたオペレーターが目視で敵の動きを察知しレーダーで確認する。
海賊「敵艦隊に動きあり、こちらに向けパルスビーム砲を向けています！！」
敵の陣形が紡錘形から地球で鶴翼の陣とよばれる陣形へと変わる。だが敵は何故か主砲では
なく威力を弱めたパルスビームしか撃ってこない。
アベル「よし、各艦バリアフィールドを展開！！各自距離を維持しつつ後退する！！ＥMP効果の
及ばない範囲で敵を引きつけてくれ」
アベルは敵の動きをすでにほぼ把握していた。予測どおりの敵の動きにアベルは落ち着いて号
令を下す。宇宙と地上二つの空域での艦隊戦にパルマ市民の運命が委ねられることとなる。
パルスレーザーの撃光がすぐ側を霞めるがスタージェーンは動ずることなく大空への飛翔を続
ける。夜風に長い髪を棚引かせると心が高揚感に満たされて行く。
スタージェーン「ふう、風が気持ちいいねえ、ええとタイラー達は・・・・おうおう戦っているねえ！！
よしティアーラあそこに向け飛んでおくれ！！」
スタージェーンはアルカディア総本部ビルの前で戦う無数の異形の群れとタイラー達を見つけて
歓声をあげた。そしてスカイティアーラにアイコンタクトで合図を送るとタイラー達の元へ滑空を
始める。
ＰＭ９：３０
あれから一時間以上激闘はいまだ続いていた。タイラー達の足元にはすでに幾百もの魔族の
紫色の血が道路を染めていた。それでも魔族は次から次へとまるで湧き上がる様に現れていく。
今も黒い表皮を持つ形容不明の化け物ディメニアンが大量に出現し両手の刃でタイラー達に切
りかかる。
アレス「く、総本部ビルが目の前だっていうのによ！！倒しても倒してもこれじゃあ切りがねえぜ
！！どうするタイラー！！」
ラ・ディメニアンの刃を鉄甲でなんとか防ぎ、斧の鋭い横薙ぎで十体以上の魔族を切り裂いた。
だがさしものアレスも息があがり、身体には無数のかすり傷が痛々しく滲んでいた。それはタイ
ラーとて同じだ。ディメニアン達を指揮する大型の黒い異形ディルディーの鋭い鍵爪を刃で防ぐ
のが精一杯だった。
タイラー「さすがに一万体以上の大軍はきついな！せめてこの数を分断できればあそこまでいく
道が作れるんだが、アベルが俺達に気がついているかどうかが鍵だな。だが・・・・・もし
気がついてくれていたとしてもそれまで俺達の気力が持つかどうかぎりぎりの展開か・・・・。」
何とかディルディーをソードクロスで切り裂くタイラー。ミカとジョディが二人を援護しギサレスタで
仲間達の体力を回復させる。レスタの光が傷を治していくのを身体で感じながらオハリオとアイナ
もいい連携を見せる。彼が袈裟懸けで魔族たちを切り裂くが幽体であるドルージュが転移してオ
ハリオの背後に向け呪力を放とうとしていた。
オハリオ「アイナ後ろは任せた！！」
アイナ「わかっているわ！！」
それを見越したかのようにアイナの破魔の矢が紫紺の悪霊を撃ちぬいていく。その間にもジョディ
のフローゼとハルの放つギザン弾がブリザードを巻き起こし即死性のガスを放とうとしていた妖花
デルリリーの群れをを凍らせていた。それでも敵は減るどころか増える一方で際限がなかった。
仲間達は満身創痍となり徐々に追い詰められていった。タイラーは空に現れたレジスタンスの艦
隊を見て希望を見出すがそれでも弱音をはかずにはいられなかった。その時空から豪快な女性
の声が聞こえてきた。タイラー達は声の主に聞き覚えがあった。上を見上げると紅の猛禽スカイ
ティアーラが翼を大きく広げ着地体制に入ろうとしていた。魔族がその気配に気づき翼の生えた
蝙蝠のような改造バイオモンスター、カイトデビルやゴールレンレンズが雲霞の如く襲いかかる。
だがスカイティアーラは嘴を大きく開けると咽頭を激しく振るわせ超音波を発っする。その超音波
に魔族達が弾き飛ばされる中、鞭が俊敏に動きながら魔族達の急所を穿った。華麗なる鞭のさ
ばきを見せるのはたったいま降りてきたばかりのスタージェーンだった。
スタージェーン「おやおやアルゴル一の宇宙海賊が何泣き言言っているんだい。」
タイラー「援軍の一番乗りはやっぱりおまえだったな、スタージェーン！！」
威勢良く声をかけるスタージェーンに挑発的に返答を返すタイラー。その間にも魔族は続けざま
に襲ってくるが、スタージェーンの鞭と紅の猛禽の連携攻撃そしてタイラー達の奮戦により撃破
されていく。
スタージェーン「あたしだけじゃあないさ。見てごらん！！奴らの後方が慌しくなってきたみたい
だよ！！」
芝居の口上のように威勢良く捲くし立て指を闇の軍勢の後ろに指し示すスタージェーン。そこに
はトニーGやオセロを始めとするマフィアの荒くれや歴戦のレジスタンスのつわもの達がそれぞ
れ武器を手に加勢しに駆けつけてきていたのである。
トニーＧ「おらおら行くぞ！！おめえら今日はうちの自慢のチート（違法複製）品の大盤振る舞い
よ！！ヤミノミコフシリーズにブレイブパス、攻撃力の高い名品フォトン弾を奴等の○○
○に食らわしてやれや！！」
ドン・オセロ「ここは俺達にまかせるんだな！！てめえらはとっとと大将首を取りにいけ！」
ルセロ「お前達の戦いは、ミラー博士から聞いているぜ！！俺達は元デゾリス開発屯田兵団、
団長のルセロだ！！アルカディアグループ、星を出て行かざるおえなかった俺達の悔
しさ思い知れ！！俺がこの日の為に改造した究極の破壊兵器ミサイルパッドを食らっ
てよ」
ミサイルパッドから無数の誘導ミサイルが魔族目掛けて襲いかかる。数カ所で巻き起こる爆炎
の中で魔族に動きに乱れが生じ始めていた。
大混乱に陥る魔族たちの一方レジスタンスにはさらに多くの仲間達が加勢に参戦する。モタビ
アンの同志を引き連れるパルマ人の青年ハック、エスパー達が様様なマジックで魔族を駆逐し
デゾリアンの僧侶達も法力でレジスタンスの援護をする。
ミカ「うわああ、みんなすごいよ！うん、これなら絶対何とかなるよ！！」
ミカがその光景に感動し喝采をあげた。
気がつけばタイラー達を中心としたアルゴルの勇気ある者達の一軍が結成されていた。それは
タイラーやアイナ、オハリオ達があらゆる苦難から逃れる事無く乗り越えてきた証でもあった。
タイラーやアイナ達の胸には集ってくれた仲間達に対する感謝と熱い想いがあふれていたので
ある。
だがバルコニーにいる邪神天王達にはあいかわらず憎憎しい冷笑が浮かんでいた。それは己
の策に対する絶対の自信か、それとも・・・・・・・・。
ロウ「ふふふよくぞここまで持ちなおしたものだ！！だが忘れてはおるまい、お前達は六人しか
ビルに招待されてはおらぬのだ。もし約束を破れば・・・・どうなるかはわかっているだろう。」
慇懃無礼なロウの態度にアレスが怒気を込めて食って掛かる。
アレス「てめえらは平気で約束を破っていながら俺達には約束を守れってか随分自分勝手な言
い分だな！！」
アレスの怒声にタイラー達も頷く。だがオハリオ達は現状の味方の不利を告げる。
オハリオ「だが、主導権はまだ敵にある。残念ながら僕達には奴らの言うとおりにするしか手が
ない・・・・。」
残念ながらオハリオの言う通りだった。敵に対消滅反応という切り札がある以上こちらがいくら
逆転しようとも時間を元に戻されれば一環の終わりである。
タイラー達が歯噛みするのがさも面白そうに邪神天王達は愉悦を浮かべる。筆頭のフォーグが
最高級の客人を迎えるような仰々しい礼を見せるがその口上には人を見下す悪意がありありと
見えた。
フォーグ「はい、オハリオ様の言う通りでございます。パーティ会場にあのような狼藉者が乱入さ
れてはせっかくの宴の楽しみも興ざめというもの・・・くれぐれも約束を違えることなきよう
・・・・・では地獄の迎賓館にて六名様のお越しをお待ち申しておりますよ。ふふふ」
見るものに不快な感情を残し、冷笑を浮かべる邪神天王達は次々とテレポートしながらその場
から消えていった。
アレス「ち、ふざけやがって、けどよお、どうする、六人で行くとしても待っているのは罠とあの最
強の六人との戦いだぜ」
オハリオ「だが要求をのまなければ彼等は時を元に戻すだろう。そうなればこの星共々人々は
滅びる・・・・。今ここにいるのは八人、後二人、誰かがここに残らなければならないが・・・」
敵の言うとおりにしないといけない現状にやるせない想いに駆られるタイラー達。しかし早くしな
ければ時間のエントロピーが暴走しアルゴル太陽系に壊滅の危機をもたらすことは明らかだっ
た。残り二人をこの激戦の地に残さねばならぬ苦汁の選択をタイラー達はしなければならなか
った。だがその結論はすぐに出た。ハルが自ら志願したのだ。
ハル「・・・・僕が残ります！！」
ハルの意外な回答にタイラーは外の激闘を指差し一喝する。
タイラー「駄目だ！ハル、おまえだけをこの激闘の中に残せるものか！！」
ハル「大丈夫です・・・この銃の威力はみなさんご存知でしょうし、それに僕にはウォーレンがいます。
・・・・僕はもう逃げないって決めたんです。魔族の器にされた兄弟達の苦しみを終わらせるため
にも僕は彼等の痛みを背負ってここで戦うと決めました。」
それでもハルは戦うと決意した時と同じいやそれ以上の強い決意を込めて答える。造られた者である
悲しみを乗り越えたその想いをミカは一番理解していた。ミカは必死にハルの願いが叶うようタイラー
達に頼み込む。
ミカ「・・・・ハルの言う事わかるような気がする。タイラーお兄ちゃんお願いだよ。ハルの願いをかな
えて上げて。」
ミカとハルの強い想いにしばらく考え込むタイラー。そしてハルに今一度その決意の程を確認する。
タイラー「・・・・・ハル、それがおまえの決意なのか。」
だがハルの顔にもう迷いはなかった。一時間前とは見違えるほど彼は心の成長を遂げていたのだ。
ハル「艦長、ここでただ敵の言うなりになるなんて悔しいじゃないですか。だから僕はここで別れた
後この地下にある中枢システムへのラインを見つけ出します。敵の中枢システムに直結して
いるラインにアクセスしさえすれば必ず逆転出来るはずです！！」
彼の心の成長がタイラーにとっては嬉しかった。ハルの頭に手を当て後ね繰り回すタイラーには子
供の成長を喜ぶ父親の笑顔が浮かんでいた。
タイラー「そうか・・・・お前も言うようになったな。」
ジョディ「ハル君も強くなったよね・・・・でもあまり無茶をしたら駄目よ。」
ジョディがまるで母のように心配そうにハルを見つめる。ハルは自分の事を本気で心配してくれる
ジョディの優しさが身にしみた。そのお陰か不思議と足の震えも止まる。彼は自分の胸を強く叩い
た。
ハル「平気です。僕だって男ですし、いざとなれば魔族二十体や三十体ぐらい・・・・ってやっぱり少
し怖いですけどね。それよりこの銃をどうぞ。これはジョディさん用にカスタマイズしたコラボレ
ーションガンです。」
そう言ってリュックの中から先ほどの銃といくつかの弾丸を取りだしジョディに差し上げるハル。少
し申し訳なさそうに銃を受けとるジョディにハルが木漏れ日のような眩しい笑顔を向ける。
ジョディ「いいの・・・・これを貰っても」
ハル「ジョディさんは今までナイフしか扱ったことがないでしょう。でもこの銃なら安心です。なんた
って全くの初心者であるこの僕ですらあそこまで戦えるんだから、ジョディさんのマジックとコ
ラボレーションすればそれこそ無限の応用法があるはずです。」
ハルの気持ちに答えようと銃を手に取るジョディ。そのグリップは見事にジョディの手にフィットして
いた。そしてそこには何よりハルの仲間を想う気持ちが込められていたのだ。
ジョディ「上手く使いこなせるかどうかは判らないけど私やってみる。ハル君の分まで頑張るから！！」
ハル「信頼しています！！」
後に残るハルとウォーレンはエントランスに向かうタイラー達にサムズアップのサインを送る。それ
に対しタイラー達も信頼を込めてサムズアップのサインを送ると励ましの言葉をかけた。
タイラー「ハル、死ぬんじゃないぞ！俺はお前を信じているからな！！じゃあ行
くぜ！！いよいよ決戦だ！！」
ＰＭ９：５０
ついにタイラー達はアルカディア総本部ビル、エントランスへあらゆる悪意と悲しみを生み出す万魔
殿へと突入する！！
第２７話 -終-
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