スペースクルーザー ランディール
第41話 紫紺の灯火は映す 破滅のマズルカ（舞曲）を
バヤマーレ時間ＡＭ６：００
最終作戦を開始する直前の緊迫したダークランデイールの艦橋。オペレーターが
各艦と通信を遣り取りしながら、作戦の進捗状況、各艦と本艦の配置状況などを
モニターに投影させる。
士官「各部隊配置終了」
「全艦迎撃準備完了しました！！」
アベルはモニターの内容を確認すると索敵の観測結果の報告を促した。
アベル「敵の様子は」
指示されたオペレーターがメインスクリーンの表示を切り替える。眠っているかの
ように活動を止めた”闇”の機械竜と雲霞の如く押し寄せる無数の黒い影”魔”の
大軍勢が水平線を覆い尽くす光景が映し出される。それを見たスタッフ達に怯え
にも似たどよめきがおきた。
士官「”闇”にいまだ動きは見られません。魔族は１億にまで増えました！全天を
覆っています！こちらに接触するまで後２時間を切りました！！」
データ通信で配信されたその映像を見ていたルオンも唸るほかない。
ルオン「壱億か・・・もはや絶望すら生ぬるい数だな」
アベル「だが、この作戦が発動すれば一瞬で全てが終わる、そう、２時間の差で
我等の勝利だよ」
しかしアベルはさして気にせずモニターの観測データを逐次見比べ作戦の開始
時間を待った。
ダークランディールに設置された電子デジタル時計が刻々と運命の時を刻んで
行く。
士官「現在時、バヤマーレ標準時ＰＭ３時５９分５０秒。カウント開始します。９…
８…」
「全電力系統異常なし。送電準備完了」
オペレーター達が全ての作戦準備が完了した事を告げる報告をする中アベルは
司令席から立ちあがり緊迫した面持ちでメインディスプレイに映し出された衛星軌
道上に３６機設置された電磁誘導式マスドライバー「メテオドライバー」を見上げる。
「４…３…２…１…０！作戦発動予定時刻す！」
そしてオペレーターチーフとなったジェリコがカウントダウン終了の報告を行うと同
時にアベルは声のあらん限りに叫び号令を下した！！
アベル「作戦コード「未来に飛翔する流星」発動する！！」
アベルの号令の元一斉にオペレーターがコンソール上に指を走らせ各機器に指
令を送る。
士官「ジェネレーター始動」
「各コンデンサ電力供給開始」
「磁場安定」
「標準敵中枢部、射角修正よし！！」
バリバリバリバリ！！
起動コマンドを受け取ったジェネレータも電力を生み出し始めた。コンデンサに電
荷が充電され、磁性塗装を施された数百ｍクラスのコロニーの残骸に放電が走る。
誘導レール内の特殊コイルにジェネレーターが生み出す大電力が供給され、電界
と磁界に垂直な方向に力場が生じさせた。
照準が眼下にいるバヤマーレ都心部に座す深遠なる闇に合わせられる。そして・・・
ジェリコ「タイミングを同期させるっす！！射撃用意・・・・３、２、１・・・・メテオドライ
バー発射！！」
ジェリコの入力に従いレールに注ぎこまれた莫大な電力は磁界をより増幅させ地球
で言うところの『フレミングの左手の法則』・・・つまり『ローレンツ力』を発生させ凄ま
じい力に押し出されたコロニーの残骸は音速を楽に超えるほどの加速を得て３６の
方向から次々と打ち出された！！
シュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ！！
大気圏に猛スピードで突入したコロニーの残骸は大気圏との摩擦熱で輝きながら
目標へと向かう。それはさながら流星のようだった。
暗雲の下、エネルギーを溜め続けていた深遠なる闇は、衛星軌道上より放たれ急
速に近寄りつつある質量兵器を察知し、上空を興味深げに見上げる。
深遠なる闇「ほう、童よ、石飛礫で遊ぶか・・・・・いいだろう、足掻き続けるがよかろ
うよ。汝達のもがき足掻く姿は常に我を楽しませてくれる・・・・・」
深遠なる闇が顔を上に上げ、顎門を大きく広げた。周囲から赤黒い瘴気が紫電と
共に絡み合いながら巨大な闇の渦を作りあげていく。
シュグァアアアアアアアア！
３時間程前にパルマの南半球を焦土と化した荷電粒子の奔流・・・・恐るべき”シャド
ウブレス”が暗黒の軌跡を引きながら、空へと駆け上がる。解き放たれたシャドウブ
レスは紫電を迸りながら、メテオドライバーより発射された直径２００ｍクラスの残骸
を皮きりに、次々と質量兵器を飲みこみ誘爆させていく。
ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーー！！！
首をしならせ闇の光条で質量兵器を薙ぎ払う機械竜を、ランディールのクルーは息
を呑み見つめていた・・・・。しかしその中で、タイラーだけが冷静に行動に移すタイ
ミングを窺っていた。
そして闇の機械竜が首を最大限に曲げ残りの質量弾をシャドウブレスで薙ぎ払うた
めに首を再び大きく振るおうとしたその時、タイラーはここぞとばかりに気迫の篭っ
た声で命じた！！
タイラー「今だー！！スラスター点火！！加速１００％限界速度までスピードを上げ
突撃する！！」
ミカ、ジョディ「了解！！」
突然のタイラー艦長の指示に、クルーは、的確に対応し各種エンジンを、最大出力
に立ち上げる。白いスラスター光が唸りをあげ、一気に最高速度の加速力を得たラ
ンディール号は深遠なる闇を強襲すべく凄まじい勢いで駆け出していく。
ダークランディールにいたアベルも後を追うように号令を下した。
アベル「こちらもランディールの援護体勢に入る！！エンジン最大！！」
スタージェーン「こうなりゃあやけだよ！！すっとこどっこい！！」
スタージェーンは、やっけぱちになりながらランディールの後を追うよう操舵士に命
じた。
白と黒、最大加速で並走する二隻、深遠なる闇はシャドウブレスを吐き続けながらも、
横目で強襲してくる二隻の船を確認すると微かに嘲笑を浮かべつつ
深遠なる闇「ふ、上と下か・・・・・・挟みうちのつもりであろうが・・・・下らぬ戯れを！！」
下半身で蠢く無数の触腕にエネルギーを行き渡らせ撓らせた。そして自らに向かって
くる愚かな挑戦者に対し鋼鉄の触腕を走らせる。
ゴギュオオアアアア
次の瞬間、数キロの距離を踏破して深遠なる闇の触腕が押し寄せてきた！！
ジョディ「触手直上より接近！！ランディール、ダークランディール両艦を狙っていま
す！！」
触腕が視界に入るより先にレーダーで探知したジョディが声を上げた。
タイラー「下げ舵２０！！」
矢継ぎ早に指示を送るタイラー、艦首を下げ隔壁ごしに触腕の猛攻を辛うじて回避
するランディール
タイラー「対空ミサイルA１からA８まで射出後、上げ舵２０で触手を振りきる！！」
ミカ「了解だよ！タイラーお兄ちゃん！！」
甲板上部のハッチが次々と開きミサイル発射管から白煙を噴き上がらせながらミサ
イル群が一斉に射出され襲いかかる触腕に命中し破砕していく！
ドンドンドドドドドドドド！！
ミサイル命中の衝撃波にランディールの艦橋は僅かに揺さぶられるが、それに構
わずランディールは艦首を急に上げ爆煙を突っ切った。
しかし破砕を免れた触腕に加え、新たに左右から数多の触腕が波打ち、うねり、突
風を巻き起こしながら迫ってきた！！
ジョディ「２時と１０時の方角から新たに敵触腕が来ます！！」
ミカ「ミサイルB１からB８、第１、第２アクティブレーザーいっけい！！」
ミカが目まぐるしい速度でコンソールに指を走らせ、対応するレーザーやミサイルで
目前の触腕群を焼き尽くすが触腕は分裂しながらまるで人の髪の毛のように蠢く鋼
鉄のミミズの大群となってランディールを突き刺そうとする！！いくら撃墜しようと尚
も増加する触腕にミサイルの装填が追いつかなくなった。
ミカ「お兄ちゃん！！ミサイル装填が追いつかないよ！！」
ミサイル装填が完了しない現状にミカが悲鳴じみた声をあげる！！速度を増し、ま
さに無数の触腕群と相対しようとする白銀の竜
アレス「おおいおいおい！！大丈夫なのかよ！！」
差し迫る触腕が白銀の竜を貫こうと鎌首をもたげたその時、後方から放たれたレー
ザー砲が触腕群を貫き焼き尽くしていく。
ビューーーーーーーーーム！！
若干、後方に出遅れていたダークランディールの援護攻撃。ランディールのサブモニ
ターにアベルからの通信映像が送られてきた。
アベル「やれやれ君の無謀ぶりにほとほと呆れさせてくれる」
タイラー「信じていたぜ！参謀殿！」
アベル「だがそれが君達のいいところ・・・虎穴に入る勇気を示せる馬鹿でなければ
あの触腕群を突破することは不可能という訳だ。」
アベルは苦笑混じりにこめかみを抑えるがその瞳にはタイラーに対する信頼の情が
あった。
タイラー「そういう事！！」
会話している間にも触腕はさらに押し寄せる！！
ゴヴァア！！ドン！！ドオオオン！！
しかも触手はまるで蛇のように鎌口を広げ、炎や氷のブレスを吐きかけてきたのだ！！
スタージェーン「あんた達おしゃべりしている暇なんてないよ！！ちゃちゃっと終わら
せておさらばしないとこっちがやられてちまう！！」
火炎弾がぶつかる時の、衝撃にスタージェーンは二人に罵声を浴びせかける。彼女
に言われるまでもない。まもなく深遠なる闇の攻撃も終わろうとしている。 深遠なる
闇がこちらにシャドウブレスを向ける前に敵の懐に入らなければならない。タイラーと
アベルは互いに顔を見合わせると
タイラー「アベル、ランディールとダークランディール二艦のフォーメーションによる強行
突破を行うぞ」
アベル「ふ、黒翼の竜と白銀の竜の乱舞か・・・無謀だがベストな判断だな」
スタージェーン「え！？一体なんだい？」
不敵に笑う二人をいぶかしむスタージェーンにジョディからテレパシーが送られてきた。
ジョディ”スタージェーンさん、操舵士さんこのイメージ通りにフォーメーションを組むこと
はできますか！”
ジョディからの懇願と共にフォーメーションの動きのイメージを送られたスタージェーン
は一瞬、考えるが凄みのある笑みを浮かべると大声で嗜めた。
スタージェーン「・・・・・ふんお嬢ちゃん、この天空の猛禽の通り名を持つあたしをなめ
てもらっちゃあ困るねえ！！」
そう言うとスタージェーンはホロコンソールを立ち上げ指を走らせていく！！スタージェ
ーンの声に後押しされるように、黒い竜は兄弟である白銀の竜とフォーメーションと組
むと互いに切りもみあうように旋回しながら猛スピードで飛翔する。かつて互いの艦が
敵同士であった時に偶然行われたフォーメーション
今度は互いが対となり、ミサイルとビーム砲を乱射しながら疾駆していく。上下左右
あらゆる方向から押し寄せる触腕の群れを身をよじらせ、僅かな隙間を通り抜けな
がら撃墜していく！！まさに双子のように息のあったコンビネーション！！
驚くほど軽やかな動きに目を見張りながらもルオンは号令を下した！！
ルオン「よし、タイラー提督の攻撃で活路は開かれた！！各艦に通達、先行する二艦
の援護体勢に入る、全艦砲撃開始！！」
ルオンの苛烈なる号令の元、二艦を援護するように後方のレジスタンス艦隊からも援
護射撃が行われた。
ズオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ！！
全３００隻以上の軍艦による一斉砲撃・・・・その凄まじい熱量で双竜に襲いかかる触
腕は、一挙に焼き尽くされ霧消した。虹色に輝く灼熱の攻撃はそのままの勢いで深遠
なる闇に直撃しようとしていた。
だが・・・・
バッシュ！バッシュ！バッシュ！バッシュ！
深遠なる闇「人は・・・いや全ての命は生き続けようともがき足掻く。滅びの前の命の
輝きの光という事か」
深遠なる闇は巨大な鋼鉄の左腕を素早く動かすと閃光の槍を次々と手で受け止めた
のだ！！
深遠なる闇「なれど滅びの闇の前に全ての光は無常に消ゆる・・・・輪廻の片隅で滅び
し・・・とある我が半身のように」
ルオン「ば、馬鹿な・・・あの攻撃を手で全て受け止めたというのか！！」
さしもの剛毅なるルオンもモニターに映し出される敵の行動に息をのんだ。
深遠なる闇「さてこのか細き光が汝等のもがき足掻きし末の力だとでもいうのか？これ
では永劫の輪廻の彼方で闇を防ぎしあるもののふ達の方が抗する力を持
ちしなり・・・返すぞ・・・汝等の未熟なる力を、汝等は愚かであるが故に自ら
の力で滅ぶのだ！」
深遠なる闇は、侮蔑を込めた眼差しで手から発する見えない断層の中で乱反射するレ
ーザー砲の光を見つめていた。そしてそれをレジスタンス艦隊に返そうとしたその時・・・。
タイラー「俺達の絆の強さを侮ってはこまるぜ！！深遠なる闇！！」
触腕の蠢く隙間を低空飛行で潜り抜けたランディール号が一気に急上昇しながら飛び
立った。自滅プログラムを搭載したミサイルを射出管に装填したランディール号はハッ
チを開きすぐに撃てる体勢で一気に深遠なる闇の身体の側を駆け上がり飛翔する！！
ジョディ「対ナノアセンブラーミサイル、射出位置まで移動・・・最終セーフティロック解除・・・」
タイラー「攪乱のための1番から四番の迎撃ミサイルを対ナノアセンブラーミサイルと同
時に発射後一気に離脱する！」
ミサイル発射管が開き、ナノアセンブラーミサイルを含め４発の大型ミサイルが深遠な
る闇に狙いを定めた。
タイラー「目標敵中枢、ミサイル一斉発射！」
タイラーの号令に従いミサイル発射管から眩い閃光と白煙を放ち射出されるミサイル群！
ドドドドドドドドドド！！
しかし深遠なる闇は先ほどまでと同様素早い手さばきで全てのミサイルを握りつぶすと
そのままその２００ｍの巨腕でランディールを掴まえようと手を伸ばす！
深遠なる闇「愚かな・・・愚かであるが故に愛しき子達よ、我が腕に抱かれ滅びの抱擁
のまどろみの中永久なる眠りにつくとよい。」
だが迫り来る闇の魔手にもタイラーは慌てず不遜な笑みを浮かべる。
タイラー「やっぱり気がつかなかったみたいだな」
期待した反応を示さぬタイラー達に訝しげに見つめる三ッツの紅い瞳、タイラーはわざ
と自分達の方に深遠なる闇の注視を向けさせていた。
シュオオオオオオオオオオオオオオオ
深遠なる闇の背後から神速で近づく物体・・・それは音速の壁を遥かに越えソニック
ウェーブを幾重にも発しながら一気に深遠なる闇の懐に迫った。
先ほど一旦後方に引いたダークランディールから発進したグレートダロスは、白と黒の
二艦が敵を引きつけている間にホログラフィックで透明化し背後へと回りながら時を待
った。そして自らの周囲にレール状に延びた空間が光を展開しレール状の五通りの空
間を互いに共鳴させ高め、瞬間強烈な圧力と共に信じられない速度を得たグレートダ
ロス、その座席の中でハルは圧しかかる強烈なＧに耐えていた。
ハル「うぐううううう・・・・いいい今すぐミサイルを発射します！！だからどいて艦長！！」
タイラー「ハル！わかった、後は任せたぞ！！」
ハルからの通信にすぐに向きを変え離脱するランディール。空気を裂く異様な音に振
り向く深遠なる闇の瞳に白銀の機体が迫る！！
深遠なる闇「なに？」
一気に加速し向かってくるグレートダロスに一瞬、深遠なる闇は驚き反応が遅れた。
急速に近づいてくる暗黒の邪竜の顔、その紅い三眸はハルにとって悪夢として見慣れ
たものだった。今まで自分の精神を蝕み暗黒の精神を植え付けようとした紅い三つ目。
自分が自分でなくなる恐怖に震えた日々、しかし今自分を呆然と見つめる深遠なる闇
を見た時、ハルを捉えていた恐怖心は完全に克服された。
ハル「何度も悪夢の中で見た紅い三つ目・・・・でも今は不思議と怖くないんだ。今まで
ランディール号のみんなと乗り越えてきた様々な記憶が僕に勇気をくれる！！
・・・・・僕は決して逃げないよ！！責任の重さから！自分の弱さから！！」
ハルは意を決し操作パネルを操作するとダロスの胸部パックが開かれ中から鋼鉄の
ドリルが付いたミサイルが装填された。
ハル「貫通君！！出番だよ！！いっけーーーーーー！！」
ハルは手を高く掲げ貫通君の発射ボタンを勢いをつけて押した。最大限の火力でミサ
イルが火を吹き発射されると先端部のドリルが回転しながら
ヴイイイイイイイイイイイイイイ！！
深遠なる闇の身体を貫いていく！！そして貫通君の中には当然のようにナノアセンブ
ラーに対するアンチプログラムが搭載されていたのだ！！
貫通君を最大限の火力で撃った反発で大きく飛ばされるハルのグレートダロス、その
行く手に先行していたダークランディールの後方格納庫のハッチが開きグレートダロス
はハッチの前面に展開されたバリアフィールドにスピードを抑えられ辛うじて着艦した。
ズザザーーー
すぐさま整備室にいたハックがウォーレンと共にグレートダロスに駆け寄る。
ハック「ハル君！！！大丈夫か！！」
ウォーレン「マスター！！」
駆けこんだウォーレンとハックはすぐにグレートダロスの搭乗口のハッチを開き中でぐ
たりと伸びているハルを抱えあげる。
ハル「ふえええええええ・・・・ややっはりやぁ慣性中和システムが上手く作動しなかった
ですぅ」
目を回し朦朧とした意識で呂律のまわらない返答をするハル君。どうやら強烈なＧは
ハルの身体に思った以上に負担をかけたようだ。しかし外傷はなくハックは安堵した
後呆れ果てたようにハルに声をかける。
ハック「まったく・・・君のその無謀なところは誰に似たんだかあんまり無茶をするもん
じゃないぜ」
ハル「・・・・・・はい全くそうですね、だぶんこの無謀っぷりは艦長から勇気と共に伝わ
ったものだと思います。」
ウォーレン「マスターの健康状態、疲労が見られるものの特に異常はなし・・・・無事で
何よりです。」
ウォーレンはほっとした表情でハルを支えて立たせる。ようやく意識がはっきりとした
ハルはハックのさり気のない労わりの言葉に少し気恥ずかしそうに笑顔で返すのだ
った。
ウォーレン「・・・・・・マスターにも支えてくださる友人が増えて私はとても嬉しいです・・・・」
それを見てウォーレンは少し寂しげな笑顔を浮かべていた・・・・。
グズリュグガガガ
タイラー達の見事な連携により撃ちこまれた断罪の銃弾、その効果はたちどころに
現れ始めた。貫通君に仕込まれたナノマシン自滅プログラムは深遠なる闇の全身を
犯し装甲を腐食させていく。ずぶぶずに崩れていく深遠なる闇の機体を見てアレスは
興奮して喝采をあげた。
アレス「へんやったぜ！！ざまあみろ！！」
タイラー「ハル・・・・・ＧＯＯＤ！ＪＯＢ！だったぜ」
タイラーもハルの健闘を称えサムズアップサインを送る。そして艦橋にいるクルー達
を見渡すと厳しい表情に戻り艦長として命令を下した。
タイラー「よしここはもうすぐ残りの質量弾が到達する。爆発に巻きこまれる前に急速
離脱する！！」
クルー全員「了解！！」
白銀の竜はその場から急速離脱をかけた。もう、後ろを振り返ることはせずそのまま
急加速で山の騎士団が避難している集結場所に向け疾走していく。
崩壊していく自分の腕を見つめ自虐的に静かに見つめる深遠なる闇・・・。
深遠なる闇「ふ・・・・、我が身体が朽ちていくか・・・・我が記憶に繰り返される忌まわし
き過去の残影そのままに・・・・・・・人の闘志には何時の輪廻も感嘆させら
れる・・・・」
そして寂寥感を帯びた虚ろな視線で遠ざかる二つの船を見つめ続ける。
深遠なる闇「・・・・・・そして汝等は何時も我を・・・・・」
しかし遠ざかるランディールを見続ける内に次第にその声は憎悪と狂気を帯びた怨
嗟の声に変わり始めた。
深遠なる闇「何時の輪廻も・・・・・我を時の忘却の彼方に消し去り置いて行くのだな
・・・・置いて・・・・行くのだな！！！！」
空から落ちてくる残りの質量兵器群、コロニーの残骸が大気圏に突入し摩擦熱で発
光する流星の輝きが徐々に大きく明るく照らされる中、
ヒュオオオオオオオオオオオ！
無限の時間の中で繰り返される永劫の時の牢獄の罪苦を想いだし暗黒の機械竜の
相貌は憎悪に醜く歪んでいく。１００ｍほどの大質量のコロニーの残骸が大気圏を抜
けたのは丁度その時、コロニーの残骸はそのまま闇を飲みこみながら地上に衝突し
た！！
ドッカアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンン！！！！
バヤマーレに次々と衝突を続ける質量兵器。その膨大なエネルギーは灼熱の高温と
凄まじいまでの轟音そして衝撃波へと変わり、大爆発と共に周囲に伝播していく。
オハリオ「僕達は結局この星を犠牲にする事でしか生き残れないのか・・・」
ランディールの船窓から大爆発の光景を見つめていたオハリオはそう小さく呟いた。
それに横にいたアイナが寂しそうなそれでいて決意を秘めた強い表情で答える。
アイナ「そうね・・・・でもその犠牲を意味のあるものにするためにも私達は何としてで
も封印術を成功させなければならない・・・・人と星の絆を賭して幾多の輪廻
の中で私達が命をかけたように・・」
ランディールとダークランディール二機の船は全速力で疾走する。質量弾の衝突によ
る爆発そしてそれにより発生した衝撃波は放射状に拡散しながら二艦の後から迫っ
てきていた！！
スタージェーン「やばいよやばいよやばいって・・・・衝撃波が迫ってきているじゃないさ！
ああ、どうして今日はこう厄日なんだろうねえ」
後方から迫る衝撃波に取り乱すスタージェーンの映像を横目にアベルとタイラーは冷
静に事態を俯瞰していた。
ジョディ「安全圏到達まで距離にして５０００・・・・」
そして出来るだけの力を振り絞り衝撃波から遠ざかる。少しでも気を抜き、スピードを
落とせば爆発の衝撃に飲み込まれてしまうほどすぐ後ろまで迫っている。
「距離５００…、４００…、３００…、２００…、１００…、」
読み上げるジョディの声に操縦しているクルー達いやが上でも緊張感が高まっていく。
そして衝撃波がその影を飲みこもうとしたその刹那
ズシャアアアア！！
衝撃波は見えない壁に阻まれたように方向を変え防波堤に止められる波のようにそ
の先に進むことはなかった。
ジョディ「山の騎士団のバリアフィールド圏内に到達、何とか危機は脱したようです！」
タイラー「ふう・・・・・危なかった、今回はさすがにぎりぎりだったな」
アベル「君の場合このような危険は日常茶飯事だと記憶しているが」
タイラー「ちえ・・・・へいへいどうせ俺は猪突猛進の馬鹿ですよ」
スタージェーン「あんた達よく平気だねえ・・・あたしゃあもう金輪際ごめんだよぅ」
タイラーの余裕な態度に揶揄をつけるアベル・・・・いつも見られる光景にようやく艦内
が落着きを取り戻そうとしていた。ジョディも釣られて微笑みを浮かべる。
深遠なる闇「母を謀りどこに逃るるというのだ・・・・我が愛しき童達よ、ふふふ・・・・・だ
が汝等は先刻、面白い戯れを見せてくれた、雷光の戒めにはこのような
用途もあるとはな・・・・」
その時、彼女は暗黒の歪んだ思念を感じた。ハッとしたジョディが振り返ると爆発の衝
撃波と爆炎がまるで時間が遡るように巻き戻っていくではないか。つられて後方を振り
返るアベルとタイラー達もあまりに不可思議な光景に唖然とする他なかった。
ゴキュゴキュ・・・・・・
爆炎の中で粉砕され蹂躙され陵辱された深遠なる闇の機体・・・・身体はほとんど消失
し、装甲も融解、内部の機械はぼろぼろに破裂し放電を放ちながら銀色の液体を噴出
させている。だが、それでもなお動いているのである。
タイラー「おいおい・・・・嘘だろう」
タイラーが目を見張る中、深遠なる闇の破損個所から大量の金属の触手が溢れ出す。
それらは蠢きながら破損個所を見る見るうちに修復再生させていく。
アベル「自滅ウイルスは効いていたはず・・・・それなのにあの爆発に耐え再生するなど
ありえない・・・」
アベルの表情が恐怖に愕然と歪む。アベルの指摘とおり深遠なる闇の機体はまるで
自滅ウイルスなど撃ちこまれていなかったかのように完全に再生復元されていた。
深遠なる闇は３つの瞳から赤い血涙を滂沱のように浮かべ悲しみにくれた表情で人々
に問いかける・・・。
深遠なる闇「汝等の戯れいかなる痛痒も我に与うべきものでない。それより何故に汝
等は時より開放されし闇の安寧に身を委ねぬ。何故、汝達は生き急ぎ消
滅へと向かうのだ・・・・・。我の御心は今悲しみで満たされている、如何に
しようとも汝らが我より逃るるのであれば我はこの雷光の鎖により汝等を
捕らえねばならぬ・・・・」
ディスプレイ越しに写る深遠なる闇は両手を前に押し出すような構えを取ると両手に周
囲の雷雲から赤い稲妻が絡み付きながら猛烈な勢いで帯電していくのが見て取れる。
バチバチバリバリ！！
そして深遠なる闇は腕に帯電した赤い雷光を拳を打つように解き放った！！
ライトニングシャワー！！
深遠なる闇の手より解き放たれた雷光は幾筋もの紅い稲妻と化し天に、地に駆け巡
りながら巨大な蛇のように執拗にランディールを追いかけてくる。そして本来なら強力
な空間湾曲や電磁波により形成された強力な力場でエネルギー攻撃をある程度弱体
化できるバリアフィールド、しかし迫ってくる稲妻はその力場を易々と通りすぎていく。
ジョディ「闇から放たれた雷光がバリアフィールドを突破していきます！！」
思わぬ事態にジョディが悲鳴じみた報告をあげる。後ろから荒れ狂う毒蛇のように迫
ってくる稲妻の群れ・・・・逼迫する事態に
タイラー「右舷３０度全速回避！！」
タイラーは声をあげ指示を飛ばす！！右舷側のスラスターをフルに噴射し、回避行
動をとるランディール！！その側を赤い稲妻が周囲に微細な放電を放ちながら疾走
していく！！
幾筋にも分かれ次々とバリアフィールドを乗り越える雷光！！稲妻はさらにその前方
の山の騎士団を飲みこむべく激しさを増していく。電気の法則を無視するかのように
上に下にと駆け巡り数億ボルトの電撃の牙で戦艦に食らいつこうとする。
「駄目だ！！迫ってくるぞ！！あんなの避けきれるわけがない！！」
艦橋の外一面に広がり迫り来る雷光にオペレータ達も絶句し恐怖に取り乱すしかない。
ルオン「取り乱すな！！！諦めたらそこで全てが終わる！！各艦各個に回避せよ！
何が何でも避けきれ！」
そこにルオンが声を大にして号令を下した。ルオンの一喝で落着きをとりもどした各
艦がそれぞれの判断で、スラスターを噴射し、バリアフィールドをさらに展開し雷撃の
直撃を交わし、ギリギリの間合で避けながら回避していく！！それでも回避運動が
遅れた何隻かは雷撃に巻きこまれ爆発四散した。
ルオン「ちい！！」
ルオンはその光景を舌打ちしながら見つめる他なかった。
疲労困憊になりながらもダークランディールの整備室で観測していたハルもその特異
な状況に目を見張った。
ハル「・・・・そんな！バリアフィールドをエネルギーポテンシャルを保ったまま通り過ぎ
るなんて理論上ありえないのに・・・」
荒れ狂う雷撃から、モニターが切り替わりアベルが怜悧な表情で、ハルの不安に対し
答える。
アベル「ハル君、今度の敵に常識が通用すると思ってはいけない、我々が用意した自
滅プログラムを書き換えるほどの化け物だ、もしかするとこれを使わねばなら
ない事態が来たのかもしれない」
艦長席の横にあるブラックボックスを見つめるアベル、その静謐な瞳には微かだが峻
巡の色は浮かんでいた。ハルはアベルの苦悩を察しっていた。ブラックボックスの中身
・・・・もし順調にいけばこの危機を乗り越えることができるかもしれない・・・しかし仮に
それが暴走すれば・・・・ハルはそれでもなるべく普段通りに振舞おうと、外の状況をじ
っと観察する。
ハル「・・・・・・そうですね、僕はあの雷光の観測を続けます、通常で考えればより強大
な力場を形成してバリアを突破したと考えるべきでしょうけどあの雷光はどうも
違うような気がするんです。」
ハルは一部の雷撃がバリアフィールドを通り越す時の画像を見て妙な違和感を感じた。
その時、ディスプレイにアリサ３世にいるミラー博士の映像が割りこんできた。彼はハル
の感じた違和感を理論的に説明しようと言葉を重ねていく。
ミラー「ハル君、君の着眼点は正しいのかもしれない。バリアフィールドは基本的には、
強力な電磁波でベクトルポテンシャルの差異を増大させ粒子間の力場の交換
を阻害し反撥エネルギーを跳ね返す。エネルギー兵器にはほぼ効果を発揮す
る。しかしまれに例外がおこることがあるんだ。」
アベル「例外・・・・それは量子のトンネル効果の事か」
アベルは自分の知識の中からその例外を口にすると、ミラー博士が待ってましたとば
かりに指差した。
ミラー「そうご名答！電子はエネルギーバリアよりも大きなエネルギーを得ると、絶縁
層を通り抜けることが知られているこのような現象をトンネル効果と呼ぶ。お
そらくあの雷光も量子トンネル効果でバリアを通りすぎたのだろう。しかし通常
ではそれはミクロの領域で僅かな確率でしか発生しえないものだ。」
アベル「だが、それは現実に今おきている。それをどう説明すればいい」
ミラー「僕が類推するに、これはパルマを取り囲むＧＳＣ現象と密接な関係があると睨
んでいる。確率を変位させる巨大なエネルギー・・・・これは量子論的視点から
見るべき問題なのかもしれない。ふむ、データ解析にフレームのリソースの大
部分を使用する事になるが、いいかな」
顎に手を当て考え込むミラー博士はアベルに脱出船団のメインフレーム群の使用許
可を求める。ここまで話を大きくしておきながら今更了承を取るミラー博士に、アベル
はモニター越しに顔を見合わせ、断れまい。という表情を見せると頷いて見せた。
アベル「わかった・・・・戦術観測用に使用するリソース以外は許可しよう。解析を頼む」
その直後、
ゴアアアアアアアアアアアア！！
ダークランディールが大きく揺れた！！
アベル「！！・・・・・状況報告を頼む」
報告を求めるアベルにスタージェーンがやけになり言い返す！！
スタージェーン「どうしたもこうしたもないよ！！この艦全体にバチバチってうわあ！！
あたしの方が聞きたいぐらいだよ！！」
彼女が言う通り、異常負荷があらゆる機構に悲鳴を上げさせ、艦内のシステム全てに
微細な電流が走り放電がコンソールから溢れだしていた。
艦内を駆け巡る電流はアンドロイドであるウォーレンにも襲いかかった。
ウォーレン「うぐああＡ＠！！！」
体内を侵し巡る放電にウォーレンが思わずのけぞり悲鳴をあげる。
ハル「ウォーレン！！どうしたの！！ウォーレン！！」
ウォーレンの痛みがハルには痛いほど伝わってくる。ウォーレンは悶絶しながらもマス
ターを危険から遠ざけようと声をあげた。
ウォーレン「ぐgu・・・・ハ私から離れてくだサイ、今この艦に強力な電磁波gaが・・・・＠」
ハル「そんな！！ウォーレン！！どうしよう！！僕どうしたら！！」
ウォーレンを助けようにもどうしていいかわからず先ほど以上に取り乱すハルにハック
は今度は落着かせるようとゆっくり話しかける。
ハック「ハル君、以前も言ったとおりこういう時こそ、落着いて考えるんだ！大丈夫、君
ならやれるさ」
ハックから諭され落着きを取り戻すハル、今だ興奮状態で頭が錯綜しているがそれで
も深呼吸をして、科学者としての冷静な判断を取り戻そうとする。
ハル「・・・・・・・ハックさん・・・・・・そうですね・・・・・・電磁波・・・・・そうか！！ここは整備
格納庫、それなら！」
必死にウォーレンを助ける方法を考えていた、ハルの脳裏に閃きが思い浮かんだ！
ここは整備格納庫、修理のため電子機器を扱う上で突然電磁波が発生する危険も
考慮し整備工場にはあるものがよく置かれていた。ハルは整備棚を駆けまわしながら
必死にそれを探し出す。
ハル「ええと、これでもない！！あれでもない！！あった！！電磁波シールドフィルム！
さあこれを纏って！！そして念のためにグレートダロスに乗ろう！！ここなら多
少の電磁波なら緩和してくれるし」
ウォーレン「は・・・・はい」
そしてようやく見つけた電磁波シールドフィルムをウォーレンの身体に纏わせ、グレート
ダロスのコックピットに乗せるハル、そのかいもあって放電が収まり、どうにか起き上が
ったウォーレンに、ハルが涙目で声をかけた。
ハル「・・・・どう？ウォーレン」
ウォーレン「ええ・・・記憶中枢に異常無し。ＡＩ各クラスターも・・・・・今のところ正常に機
能を始めました」
目に大粒の涙を浮かべ心配するハルにウォーレンは一瞬ためらいながらも穏やかな笑
顔を向けた。
ハル「そう・・・・・ふう良かった・・・・・・」
ようやく安堵し腰を落着けるハルを優しく見つめるハック。
ハック「良かったな・・・・ハル君・・・・・しかしこの電磁波・・・・人体に直接影響はないみた
いだが・・・・・・だからこそやばいかもな」
しかしいまだ放電を放ち揺れ続ける艦内を見上げると厳しい表情で舌打ちするしかなか
った・・・。
ダークランディールを襲った異常事態はランディールや他の艦にも同様の被害をもたら
していた。
オペレーター「ルオン司令、空母各管制システムが次々と麻痺状態に陥っています！！」
「各艦との交信途絶、状況把握できません！！」
非常事態の報告に、恐慌に陥りかけるクルー達を前にルオンは颯爽と立ち、声を張り
上げた！
ルオン「・・・・・・・不安に囚われるな！・・・・今までの苦難を思い起こせ！諸君は今まで
その苦難を乗り越えた。それを忘れない限り活路はきっと見出せるはずだ。我
々は今、自分達が出来ることをしよう。私にも何か手伝えることはあるか？」
ルオンは、自分も含めて不安に囚われていた、クルー達を鼓舞するように声を張り上げ
る！そして自分も手伝えることはないかと尋ねる姿に普段の高圧な姿勢はなかった。
オペレーター達はその姿に驚きを感じるがその中の一人が前に立ちルオンに提言する。
オペレーター「・・・・・司令、お心遣い感謝します！しかし今は・・・・不甲斐ない私達を叱
咤し戦う勇気を奮い立たせるお言葉をお願いします！！ルオン様のご指示
があれば私達はまだ戦えます！！」
その言葉にはルオンに対する全面的な信頼があった。ルオンは胸が熱くなるの感じつつ
顔には一切出さずに冷徹な表情のまま厳命を下した。
ルオン「そうか・・・そうだな！！ならば指示を伝えるから貴君等も全力を持って奮闘して
くれ！！後で泣き言を言っても文句は言わせないからな！！」
被害は当然ランディールにも及んでいた。ランディール全体を覆う微細な放電によりスパ
ークがあちこちで飛ぶ。回路中継盤の二つから煙が噴き出しコンソールがショートした。
ブリッジ内のあらゆるモニタに、赤などの警告色が一斉に点灯し、あらゆる警報音がクル
ーの不安を煽っている。
アレス「こいつはちっとやばいんじゃないか・・・」
そんな中、整備長のガンツは工具を手に黙々と破損個所の修理を行っていた。
ガンツ「飛行システムだけは被害なしか・・・・くそったれが！！一部のシステムだけを干
渉する電磁波なんて聞いたことがねえぞってんだ！！」
しかし航行システム以外多くがダメージを受けている現状に毒づきながらふと感じた疑問
を口にした。そこにタイラーが屈みながら話し掛けて来た。
タイラー「どうにかなりそうか？ガンツ」
ガンツ「でえじょうぶ！！これぐらいの電磁波で根をあげる程やわには出来てねえっても
んよ！ランディール号も！おいらもな！」
ガンツは胸をポンっと叩きながらクルーに不安をかけまいとガハハと笑った。彼の豪快な
笑い声と熟練した工具さばきにクルー一同が安心した矢先・・・
ゴーン！！ゴゴゴゴゴゴ！！
ランディール艦体が大きく揺れた！！
アレス「何だ、今度は一体どうしたんだ！！」
ジョディ「艦全体が強力な磁場で覆われています！！」
艦を襲う緊急事態にジョディが数少ないダメージを受けていないシステムを駆使し艦内の
状況を再度確認する。モニターに投影された外部状態の映像はノイズがかかりかなりブ
レているが強力な磁場がランディールを球状に覆いながら放電を放っていた。
ピシシシシシシッシ！！
タイラーは磁界の発生と先ほどの雷撃との関連性に今更ながら気付き慄然として顔を上
げた。
タイラー「さっきの雷撃はこの磁界を発生させるためのものか！」
ジョディ「艦が後方に引っ張られています！！それに・・・・・」
タイラー「ジョディ報告を続けてくれ」
ジョディ「はい、ランディールだけではありません、レジスタンスの全艦隊もです！」
タイラーに状況確認を求められコンソールを通して戦況の確認を続けていたジョディの報
告が悲鳴じみたものになる。モニターに映し出されるレジスタンスの艦隊全てが放電を放
つ球体磁場に覆われ、まるでアリ地獄に落ちながらもがく蟻のように深遠なる闇の方角へ
と引き寄せられていた。
オペレーター「ルオン司令、艦隊全体が引き寄せられています！！！」
ルオン「く、！！エンジン出力最大！！この磁界を何としてでも振りきれ！！」
ルオン司令の号令の元、レジスタンス艦隊は一斉にスラスターで逆噴射をかけ制動をか
ける。それは一旦は成功した。しかし・・・
オペレーター「駄目です！！敵の牽引する力の方が大きくエンジン出力が足りません！！」
艦を取り巻く磁界は深遠なる闇が軽く指を動かすとその勢いを増しレジスタンスの戦艦は
さらに闇に引きずられていく。
闇は逃げようとするレジスタンス艦隊をその両手で手繰り寄せ泰然とした嘲笑を浮かべ見
下ろしていた。
深遠なる闇「童よ、むづがり我が腕より逃げると申すのか？いいだろう・・・試して見ると良
い。だが汝等が逃れれば逃れるほど雷の戒めは汝達を縛り付けるというの
に・・・・滑稽なことよ」
指が磁界と通じる紫電を絡ませながらくねくねと動く様はまるでタランテラが獲物が囚われ
た糸を手繰り寄せ今にも食らおうとする様に酷似していた。
状況は悪化するばかりだった。しかしタイラーは何事にも動じる事無くモニターに映る闇を
見据えると手早く決断を下した。
タイラー「・・・・・エンジン出力リミッター解除」
タイラーの突然の命令にガンツが抗議の声を上げた！！
ガンツ「待て！リミッター解除だと！それではエンジンに異常を来す恐れがあるぞ！！」
タイラー「エンジンが壊れるのを恐れてこのまま深遠なる闇の攻撃を待つよりはグングニ
ルの槍で奴の腕を一時的に破壊しこの磁界を壊すことにかける！幸いにして
今俺達は引き寄せられているそのスピードも加算すればあるいはって奴さ」
ガンツは何か言いたげであったが決断を下し毅然とした表情でこの最悪の事態を乗り越
えようとするタイラーの姿勢に根負けしたように苦笑した。
ガンツ「艦長の命令じゃしゃあねえな、よし整備班、エンジンのリミッターを解除するぞ！！
但し最終リミッターだけは残しておけよ！！」
整備長の指示に従い整備班がエンジンの制御盤を操作し次々とリミッターを解除していく！
まるで動悸を撃つ心臓のようにエンジンの回る音が大きくなっていく。
タイラー「エンジン全開！！」
そして艦長の指示の元ガンツがエンジンの出力レバーを上げていく。白銀の竜は船体を
ひねるようにして向きを変えると急速に反転しスラスターを輝かせる。そして青白いプラズ
マ炎がもの凄い勢いで噴射するとランディール号は全速力で飛び出した！！
ガンツ「ランディ―ル前方にバリアフィールドエネルギー集中開始だ！！」
ミカ「自動追尾レーザー重力特異点に向け一斉発射！！」
ジョディ「レーザー収束率50・・・70・・・90・・・・100％！！」
タイラー「よーし！！！バーニア最大出力！グンニグルの槍発動！！」
磁界を引き裂きランディール号の前に黒い特異点が現れる！！磁界の戒めを解いた白き
竜は光のベールを纏い、先端に黒い重力特異点が渦を巻き光の槍として闇の右手を穿こ
うとスピードを上げた！！。
シュゴオオオオオオオオオオ！！！
だが深遠なる闇は穿こうとする光の槍と化したランディール号など関心がないとばかり天空
を見上げ恍惚とした眼差しで呟いた。まるで何かを待つかのように・・・
深遠なる闇「愚かな事を・・・・待つがよい童たちよ、そうせかさずとも、まもなく・・・・まもなく
なのだ」
そして闇が鋼鉄の手を軽く押し出すとその手に赤い稲妻が集束し凄まじい放電となって光
のベールに絡み付いた。
バチバチバチ！！
放電は特異点ごとベールを無効化すると、ランディール号の動きを完全に圧し止めたのだ。
艦橋でそれを見ていたクルー達の血の気が引いていく。無理もない、これまでアルカディア
の戦艦をことごとく沈めた必殺の一撃が深遠なる闇にはまるで効果がなかったからだ。
ミカ「そんな！！お兄ちゃん前にも進めないよ！！」
ガンツ「機関室、もっと出力はあがらんのかってんだ」
技師「無理です！！これ以上は推進器がもちません！！後は最終リミッターを解除するしか」
ガンツ「なんてこったい！！・・・・最終リミッターか・・・・艦長、それはちょっと待ってもらえね
えかな」
部下からの報告にある通りもし最終リミッターを解除し、エンジンを暴走を覚悟で突撃すれば
この危機を乗り越えられるかもしれない。だが普段は豪快でぶっきらぼうなガンツもそれを指
示する事はできない。何故ならガンツにとってランディール号は大切な子供のようなものだか
らだ。タイラーは闇がそれ以上攻撃してこない事を確認するとガンツの苦悩を汲み取り、リミッ
ターの解除の指示を留めた。
タイラー「・・・・・そうだな、あれは最後の手段、それにこの船は親父にとっても俺達にとっても
大事な家族だもんな。今は様子を窺うしかないのか」
タイラーは自分の甘さにある種のばつの悪さを感じていた。
タイラー”父さんがこれを見たら先ほどの教えをまったく理解していないって呆れるだろうな”
そう思いつつ、彼は再び引き寄せられるランディール号艦橋から闇の一挙手一党投足をし
っかりとした眼差しで見つめていた・・・。
同じ頃ミラー博士達は深遠なる闇を中心とする空間の変化を観測していた。刻々と寄せられ
るデータを眺めミラー博士を中心とする科学者陣が討論をする中観測班が席を切ったように
慌てて駆けこんできた！！
「大変です！！これを見てください！！」
データがモニターに映し出されそのデータを見ていた科学者達の顔がみるみる蒼白となった。
科学者「馬鹿な・・・・こんな事ありえる訳がなかろう」
「空間変動値、急速に拡大だと！？」
「次元偏移、位相差遷移率上昇、しかしこれではまるで・・・・・」
科学者達は目の前に示されるデータの非現実的な数値に当惑の色を隠せない。その中でミ
ラー博士はデータを素直に受け入れ、今おこっている事態を把握しようと思索し声をあげる。
ミラー「・・・・科学者は観測した事象はありのまま受け入れなければならない。そうこれは一般
物理理論では説明がつかない事象だ・・一般物理力学が適応されない空間・・・・それ
はブラックホールの中枢にある重力が無限増大する特異点しかありえない」
科学者「し、しかし・・確かに重力異常はおこってはいるがこの宙域がブラックホールの中とは
あまりにも突拍子もないのではないかね」
ミラー博士「人類は今だ特異点の中を想像することすらできない、だが私も今の現象は特異
点とは違う時間の急速な加速化によって引き起こされたまったく未知の現象だと
思う。その証拠がこれだ、見てもらいたい」
科学者「こ、これは・・・・」
ミラー博士は操作パネルを動かし困惑する科学者たちに観測データが映し出されたモニターを
見せる。
ミラー博士「今このパルマを覆い尽くそうとしている紅い暗雲、そしてこの異常空間にも
赤いもやのような色の変化、赤方偏移が見うけられる、これはドップラー現象や重
力赤方変移、それらは全て時間の加速化による重力の歪みによっておこされる現
象だ。」
ディスプレイに映し出された惑星パルマを取り囲む宙域は全天が真紅のたゆたう鈍い光に覆わ
れていた。夕焼けより赤い血を連想させるような色が見ている間にも次第に濃くなっていく・・・・。
それは見ている者に滅びを黙示させる赤色だった・・・・
モニターに示されたミラー博士の推測と全天が紅く染まる異様な光景に科学者達は完全に言
葉を失った。
ミラー「正直、私も今のこの状況は夢だと思いたい・・・・それも最悪の悪夢だ。もしこのまま空間
変動値が上昇すれば最悪の場合・・・・・」
観測データの解析を続けるミラー博士の表情もこわ張り普段の余裕は完全に失われていた。
緊迫した事態を助長するかのようにホロスクリーンに警告の赤いメッセージが次々と並び出し、
計測不能という文字が全てのホロスクリーンを真っ赤に染めていく。
ついに深遠なる闇の御前に引きずり出されるレジスタンス艦隊と二隻のランディール号。そこ
で彼等は信じられない光景を目撃した・・・。
ルセロ「おい・・・ありえねえだろう・・・・こんなことがあってたまるかよ！！」
そう驚愕と怒気を込めて口にするルセロを始めとするレジスタンス一同が垣間見た光景
それは質量兵器で完全に消滅したと思われていた無数の触手とそれに突き刺され掲げられた
数万にも及ぶ犠牲者の亡骸だった。
ルオン「馬鹿な・・・・深遠なる闇の触手はともかく人間の遺体を再生させ何の徳がある」
アベル「故に善く奇を出す者は、窮まり無きこと天地の如く、竭きざること江河の如し。・・・・・先
手をとられたか」
ルオンですら当惑を隠せない中、アベルとオセロだけが苦渋に満ちた表情でモニター越しに
語り掛ける。
オセロ「Ｍｒ.アベルもう話してもいいよな・・・・今まで黙っていて悪かったが、わし自身それを認
めたくなかったからかもしれん、わしの予想が正しいならもうまもなく始まるはずさ」
彼の脳裏にはパルセポで見た思い出したくもない悪夢の光景が浮かんでいた。オセロは忌々
しげにくわえ煙草をペッと投げ捨てる。
レジスタンスの全員が見ている前で動かないはずの死体がぴくぴくと動き始めていた。
ルセロ「おい・・・・やめろ・・・・・動くなよ」
ルセロのか細い抗議を無視するかのように身体の痙攣は激しくなり
やがて
キャハハハハハ！！
耳障りな甲高い哄笑と共に身体が・・・・捩れ縊れ裂け曲り膨れ異形と化し始めたのだ。
新たに降臨した異形の者たちを深遠なる闇は慈愛に満ちた表情で見下ろした。
深遠なる闇「ふふふ、目覚めたか、時の戒めを超え我と願いを共にする子供達よ・・・・汝等が
降臨した今こそすべての星辰が我が望みの位置に達したというなによりの証、
さあ我が御手により抱こう、愛しき我が子等よ、まもなく万象の御世の宴、時の
呪縛より解放されし永劫の静寂が訪れる」
そして再び天空を見上げると大抑な仕草で腕を左右に広げると歌うように、呪文を詠唱するよ
うに言の葉を続けていく。怖気が走る言の葉に影響されるように周囲の暗雲が震え、黒い球体
が深遠なる闇の回りに大地に天空に次々と顕現していく。無数の球体が現れる光景をレジスタ
ンスの全てのメンバーがただ見続けるほかなかった。それは悪夢のような壮絶で壮大な光景だ
った。
深遠なる闇「あまねく御世に存在せし星辰は今、時の牢獄の鍵を開鍵する位置へと定まれる！
時と星の流れに絡まりし我が力にして愛しき暗黒の魔王達よ、今こそその力を解
放せよ！！さあ剋目してみるが良い、全ての輪廻の彼方にある万象の世にいる
愛しき子等よ、汝等全てが我と繋がる時来り！！今来れり！！！全ての時空の
門よいざ開け！！！アナザーゲート！！！」
無数の漆黒の球体は、虚空を目指し高速に飛び空間に黒い軌跡を描いていく
その内の何個かがレジスタンスの戦艦に向かおうとしていた。飛翔する球体にルオンがハッと
気付き味方に注意を促す
ルオン「各艦散開！！対比せよ！！あの球体に絶対に飲み込まれるな！！」
だがルオンの叱責も虚しく、黒い球体に飲みこまれた戦艦はこの世から跡形もなく消滅し代わ
りに、そこには蜃気楼のような幻が実像を結んでいく。
戦争の光景、惑星が爆発する光景、超大型の紡錘形の船が魔法陣の中から現れる光景、３つ
の惑星が緑色の円陣に包まれる光景、それはどれもアルゴルの光景とはかけ離れた別世界の
光景。さらに中天に巨大な暗黒の渦が渦巻きながら星を食らう姿が投影される。銀河の中枢に
あるという巨大ブラックホール・・・・・・星が砕かれるその絶望的な光景にレジスタンスの全員の
視線が釘付けになる。天空一面に広がる異界の光景はあらゆるものがたゆたい歪み蠢いてい
た。
それはあまりにも混沌とした景色、それを見ている全ての人間を圧倒する末の景観・・・・。
中天に渦巻く巨大なブラックホールを見上げ闇は至上の歓喜に身を震わせていた。
深遠なる闇「ふははははははははははははははは！！ついに時空の輪間は今我が手に握ら
れた！！今こそ我が願いが叶う、全ての存在に滅びの愛を！！時の楔よりの解
放を！！永劫の静寂、そして虚無の安らぎにより我は全ての愛する命と共によう
やく無限の絶望より解き放たれる！！滅びよ！！人を滅びよ！命を滅びよ！そし
て永劫の輪廻を繰り返す時よ、汝の旅路の終りが来た！終局の果て我が運命と
共に滅び去ろうぞ！！ふふふふふ・・・ふっはははははははは！！」
”闇”は待望していた天空を覆う異界の光景を見上げ狂わんばかりの哄笑に身を委ねるのであ
った。
今このパルマにいる全ての命が闇の狂える願いに震えていた・・・。だがそれを恐れぬ者たちが
いる。ランディールの甲板上から遥か遠くで狂笑に委ねる暗黒をオハリオはじっと見据えた。
オハリオ「・・・・全ての時空を繋げ滅ぼす・・・・それが闇よ、お前の願いなのか」
轟音のように響き渡る悪意の哄笑にしかしアイナは哀れみを覚えずにいられなかった。
アイナ「哀しき願い・・・・生きたいと願う生命の本質とは対照的な哀しい願い・・・・」
絶望と憎悪に歪んだ邪悪。その哀れであるが故に恐ろしい願い・・・言の葉からその意を感じ取
り憐憫の情を浮かべるアイナ、オハリオもそれを理解していた。しかしだからこそ許すわけには
いかない。
オハリオ「だが、それを他人に強制することは断じてあってはならない！！・・・・アイナ僕達は護
らなければならない・・・・力を合わせよう、生きようとする人達の願いを滅びから護る
為に」
悲しみを他者に押し付ける闇の傲慢にオハリオとアイナは胸に沸々とした怒り、そして決意を感
じながら闇を見据え続ける。
アイナ「ええ・・・・・そうですわね」
その瞳に悲壮なる覚悟の炎を滾らせながら・・・・。
甲板上で二人が改めて決意を固める一方でタイラー達も恐れずその光景を見据えていた。しか
しこちらはいささか様子が違うようだ、
アレス「・・・・なんか凄い光景だな・・・・・艦橋ごしに見てもビリビリくるぜ」
艦橋の窓ごしにすら響き伝わってくる闇の猛壮なる神気を感じてもアレスは肩をすくめ不敵に笑
っている。その横にミカが寄り添いながら頼もしげにアレスを見上げた。
ミカ「でも不思議ともう怖くないよ・・・だってみんなと一緒なんだもん」
二人のその場に似合わない微笑ましい光景にタイラーも思わず釣られ笑みを零す。
タイラー「みんな余裕だな・・・闇の攻撃を今度食らったらどうなるかわからないんだぜ」
アレス「そういう艦長も随分余裕じゃねえか」
タイラーの問いかけに逆に不適な返答を返すアレス、タイラーはそれを見て安堵したように目を
細め感慨深げに語り始めた。
タイラー「ああ・・・・俺もみんなと同じさ、幾多の困難を越えてここまで来たんだ。ここで敗北したら
父さんに顔向けできないからな・・・。」
ジョディは彼の声とその心情を感じ取りながらも不思議に思わずにはいられなかった。この絶望
的な状況下でどうして落ち着いていられるのか。闇の圧倒的な怨念に当てられた彼女は理解す
る余裕を失っていたのかもしれない。
ジョディ「・・・・・・でも次元の壁を破壊してしまうほどの怨念と妄執に私達は勝てることが本当にで
きるのでしょうか・・・・ここにいてもその怨念の強さに心が押し潰されそうになります。そ
れに・・・・・」
さらに何かを不安げに喋ろうとするジョディの手を取り、ミカは自分の胸に押し当てた。
ミカ「・・・・・ジョディお姉ちゃん不安なのは誰でも同じだよ・・・・でもあたしの鼓動を感じて・・・・この
鼓動の大切さを教えてくれたのはお姉ちゃんなんだよ・・・・・」
ドクン、ドクン、ミカの鼓動がジョディの腕に伝わっていく。その音は彼女がミカに教えた命の歌声。
自分が教えたはずの命の暖かさが彼女の不安を取り除いていく。教えたはずの相手に逆に指摘
され気恥ずかしそうに謝るジョディ。
ジョディ「ミカちゃん・・・・・ごめん、自分の不安を他人に押し付けるなんて・・・・・それは闇と変わら
ないよね。私、間違っていた。もう迷うことはこっれきり・・・・ね。」
ミカ「うん！！」
気恥ずかしそうな笑顔を浮かべるジョディとミカを男たちは優しげな眼差しで見守っていた。
タイラー「ミカ、ジョディの不安を取り除いてくれてありがとうな」
ミカ「えへへ、タイラーお兄ちゃんに誉められちゃった・・・」
タイラーに褒められまんざらでもないミカをアレスがいつもの調子で嗜める。
アレス「調子に乗るな！」
それはここ数日の”闇”との死闘で忘れかけていたいつもの光景だった。
タイラー「みんなの決意は決ったようだな・・・よし！！例えどんな地獄がこの先待っていようと俺達
誰一人欠ける事無くみんなで帰ろう！！平和なアルゴル太陽系に！」
全員「おお！！！」
みんなが本調子になったのを確認したタイラーはいつものように飄然とした口調でこれから待つで
あろう地獄への戦場へと通じる航路を指し示した！！
バヤマーレ時間ＡＭ７：００
征くべきは明日へと通じる航路、だがその前には猛悪なる暗黒の神気が嵐の海となって立ちふさ
がっていた・・・。
第４１話 −終−
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