アビスさんよりの投稿小説

スペースクルーザー　ランディール

第７話　海賊どもの晩餐

アレス「使えそうなやつはかたっぱしから
積み込んでおけよー！
このあたりにはコロニーもないし次の補給がいつ
あるかわからんからな！！」
アレスは部下達に激を飛ばしている。
ぼろぼろに破壊された政府軍巡洋艦隊から物資や弾薬
食料などをランディ―ルにつめ込む作業はもう1時間近くも
続いていた。
アベル「まさに智将は努めて敵に食む。敵の一鐘を食むはわが二十鐘
にあたるーだな。敵地で調達する物資は自軍の20倍の価値を持つ。
10年前、宇宙航行が禁止されるまでは死語
になっていたが、輸送の手段が限られてくるとこの言葉は
重みを増してくるということか。」
アベルはブリッジで紅茶を飲みつつ積み込み作業を眺めていた。
ハル「ねえ、いつも不思議に思っているんだけど
アベルが時々呟く歌詞みたいな言葉ってなに？
僕がパルマ政府で習った歴史の中にはそんな言葉は一言も
載ってないけど・・・・」
ハルの当然の疑問にアベルは宇宙の遥か彼方を悲しげに見つめ
「これは遥か遠い昔に消えてしまった故郷に伝わる兵法書の
1節だ。自分に克ち、人生に迷ったときに指針を示してくれる
行動哲学といったところかな。私はこれで幾度も人生の危機を
かわしてきた。・・・・ふ、だがそれも故郷が無くなる事態
までは防げなかったがな。」
ハル「？」
自嘲気味に呟くアベルの態度に頭を傾げるハルであった。
一方タイラーは艦長席で積み込み作業を指示しつつ
頭の中で事の推移を見極めようとしていた。
「俺達がナイトクロウの情報でここに着いた時、目の前にあったのは
政府の艦隊が破壊され尽くした跡だった。このランディ―ルには
劣るとはいえ、政府の軍艦もそれなりの機動性と攻撃力を持っている。
それがここまで？俺達が向かう軍事衛星ヴェルダンディアとは一体
どんな秘密が隠されているというんだ・・」
ジョディ「艦長、政府軍の生存者130名を収容完了しました。」
ジョディの声で我に返るタイラー、ディスプレイには防護服に身を
包んだ政府軍兵士が映っていた。
タイラー「で、有益な情報は聞き出せそうか。」
その問いにしかし、ジョディは首を振り
「例の症候が彼らから出ています。おそらく・・・・・・・・・・・・・・
、何を聞いても無駄でしょう。」
アベル「彼らは人間に必要なある感情が完全に抜き取られている。
恐怖と憎しみだ。一見してこれは完璧な兵士を作リ出せそうだが、
人間からこの二つの感情を抜き取れば、それはもう人間では
なくなる。ロボットと同じだ。予想外の出来事には対処できない。」
ジョディ「こんなことって絶対おかしいですよ！憎しみや恐怖だって
必要な時もあるんです。特に大事なものを奪われた人達にとっては
それを忘れないために・・・・・・・・すいません。
取り乱してしまって。」
しーんと静まるブリッジ内、外の積み込み作業の問い合わせだけが響き渡る。

　その時だった。急に警戒警報が鳴り出した。敵接近を告げる
ランプが次々と点灯し、艦内に緊張が走る。
タイラー「何が起こった！！各員状況報告を」
先程までの静寂が嘘みたいに慌ただしくなるブリッジ内。
レーダーには多数の艦影が映し出されていた。
ジョディ「所属不明艦、多数こちらに向け接近中、現在距離1000まで
接近、このスピードだと後5分でこちらに着くと思われます。」
ミカ「アレス！！そんな荷物ほっておいて早くいこうよ。ぐずぐず
してたら置いていっちゃうからね！！」
アレス「バカヤロ―後少しで食料を運び終えるんだ！！ちょっとぐらい
待ったていいじゃねえか！」
やかましく怒鳴り散らすアレスを部下たちが押さえ艦内に引き上げさせる。
遠方に黙視でもわかるぐらい機影が迫ってきていた。
アベル「政府軍の増援か？だがそれにしては、送られてくる敵のデータ
に妙なズレがあるが」
ミカ「お兄ちゃん、敵前衛にロックオン完了したよ！！」
タイラー「よし、総員攻撃体勢に取り掛かる、敵接近と同時に
アクティヴレーザーを発射ご最大船速でこの場を切り抜けるみんな
いいな！！」
敵の旗艦らしき大型戦艦が見えてきた。すでに迎え撃つ体勢は
整い、後はレーザーを発射するだけだ。
タイラー「アクティヴレーザー一斉掃・・・・」
？？？「ちょっと、お待ち！！」
急に通信回線が開き、ディスプレイにグラマーな女性が浮かび上がった。
タイラー「おまえは！スタージェーン！？」
見知った相手に思わず顎が開いたままになるタイラー
やがて赤い400ｍ級戦艦がランディ―ルに横付けした。
スタージェーン：タイラーと同じく宇宙海賊であり、服装はまるで
中世の海賊が着るような服を身にまとい肩には巨大な猛禽
スカイティアーラを乗せたグラマーな女海賊である。
タイラーとはライバル関係にあり、これまでなんどとなくお宝を
巡って競いあったこともある。
スター「久しぶりだねぇ、タイラーちゃん。この前は酒場で家の
もんが世話になったよねぇ～。」
タイラー「そんなことはどうでもいい。それよりなんでお前達がここに
きているんだ！！」
スター「そんなのきまってらあね、お宝に決まっているじゃないのさ。」
酒樽を一気に飲み干し、頬を紅色に染めれろれろの口調で答える
スタージェーン。
タイラー「お宝なんてあるものか！俺達がいま向かっているところは
暴走した軍事衛星があるだけだぜ！！」
スター「はあ？あんたにぶいね。懸賞ネットワーク見なかったのかい？
その軍事衛星にあのケン・ミラー博士が作った伝説の機械・・・」
それを聞くとハルの表情が変わり彼は大声でさけんだ。
ハル「あの、それってもしかしてちからもりもりんでは！？」

ちからもりもりん・・・・

妙なエコーが掛かり、一瞬ブリッジにいた全員が目が点になる。
白けモードのクルー達の中でハルだけが熱血状態になっていた。
「そうか、行方不明になっていたあの伝説のパワー増幅装置が
実在していたんだ。」
熱血気味に叫ぶ彼の横でなんとか体勢を立て直したタイラーは
スタージェーンに問いかけた。
「・・・で、そのお宝目当てにここまできたって訳だな。」
スター「まあね。わたしだけじゃないよ。他にもうちらと同じ
海賊や賞金稼ぎがわんさかねらっているはずさ。
あ、横取りしようたって駄目だからね、あれは私のものなんだから」
タイラー「別に俺達はそれが目的じゃないからな。、欲しけりゃ
さっさといきな。」
ハル「僕は猛烈に欲しいです。」
タイラー「・・・・とにかく俺達の邪魔だけはするなよ。」
スタージェーン「じゃ、お言葉に甘えて、先にいかせもらうわよ。」
そういうと、赤い戦艦郡は、軍事衛星にむけ一斉に動き始める
スター「じゃあね、タイラーちゃん、アデュー☆」

遅れること30分、全ての荷物を積み込み収容した兵士達をアイナ達の
所に転送して、ランディ―ルは再び軍事衛星ヴェルダンディアに
進路を取った。
ジョディ「目的地まではあと１時間で到着の予定です。」
食堂からクルー達にランチが配られた。
アレス「くうう、こんな豪勢なランチ、久しぶりだよな。タイラー！！」
タイラー「あ、ああ、そうだな。」
がつがつ食らうアレスを横にタイラーは深く考えこんでいた。
アベル「どうやらおまえも同じことを考えているようだな。」
タイラー「ああ、どう考えてもこの懸賞ネットワークは罠だ。
だがそれがわかってても俺達はいくしかないと思うとな。」
溜息をつきながらもしっかりと、飯だけは食べるタイラ－．
一方アベルは飯も食わず深く考え込んでいる。手には
敵艦のタイムメモリーや時計がしっかりと握られていた。
「確かに罠のことも気になるが、それよりも私が興味を持ったのは
敵の時計がどれもこれもばらばらな時間を指し示しているという事だ。
デジタル、アナログ、果ては原子時計に至るまで、もし、私の
仮説が正しいのならば敵は・・・・。」

１時間後タイラーは克目して見る事になる。時空衛星ヴェルダンディアの
恐るべき真実を。

第７話　-終-

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