そして道路を走る事約五時間半、車はニーヤの出口で高速道路を降りた。
今から五十年前、アレンとアリスが旅をした時は列車で片道十二時間以上
かかったのが、今ではその半分以下の時間しか必要としない。
「ニーヤか・・・マトモに来るのは初めてだな。」
窓の外の日没後の町並みを眺めながらマークは言った。首都出身の彼が
ティリアに引っ越した時ニーヤも通りはしたのだが、その時は素通りの上
まだ幼稚園にも入る前の事なので、記憶は何も無い。リビアもニーヤを
訪れるのは初めての事である。だが初めて訪れる町への、そんな感慨に
耽る間もなく、車の前方に大きな門が現れた。
「ここが、ウェンフィールド夫妻の家・・・？」
正面の門が開き、車は屋敷の敷地内へと吸い込まれる。そしてその中で
二人が見たのは広い庭園とその庭園に比べるとややスケール的に見劣り
する、世界有数の大財閥の総帥の家にしてはやや小ぶりな屋敷であった。
門を通ると車は屋敷の方には行かず、庭園を前に左に曲がり真っ直ぐ進み、
駐車場の屋根の下にに車を停めた所で、二人はようやく手足の針を外され
身動きがとれるようになった。しかしずっと身動きが取れなかったので、
体の動きは少し鈍い。
「ニーヤへようこそ」
二人より先に車から降りていたリィズは、二人にそう言い微笑むのだが、
その爽やかな表情は、マーク達を却って憮然とさせる物だった。
「『ようこそ』じゃねぇっての！半分誘拐だぞ、これ！！」
「ま、やってる事だけを見たらそうとも言えるわね。」
「そ、そうとも言えるってアンタ・・・」
マークはそう抗議しかけたのだがリィズはさっさとどこかへ行ってしまう。
そして今度は、彼女が去り際に何か話をしていた男が二人の前に来て
一礼し、二人をゲストルームに案内する旨を伝えた。
「ま、こうなったらなるようになるか。」
完全に諦めモードに入った二人は黙って男について行き、それぞれ別の部屋に
通された。ゲストルームだけあり、さすがに調度品は豪華である。広さも家の
自室とは比べるべくもない。また服も自分のサイズに近い物が一応揃っていた。
そんな部屋の中でマークはキングサイズのベッドにごろりと横になると、今日
一日の疲れが一気に噴き出してそのまま深い眠りについた。
そして翌朝・・・
「お客様、間もなく朝食の用意が調います。御仕度の程を・・・」
自分をそう呼ぶ執事の声でマークは起こされた。寝ぼけていたマークは最初
『お客様』が誰の事を言ってるのか理解できなかったが、間もなく自分の事を
指している事に気付くと目を擦り、頭を数回ボリボリと掻いた。
「ん？あ、ああ、今行く・・・ちょっと待っててくれ。」
「かしこまりました。ただ、ご主人様達もお待ちかねゆえお急ぎいただけ
ればと思います。」
「ん？ご主人って、まさか・・・」
「はい、ギゾ・ウェンフィールド様とテオ・ウェンフィールド様のご夫妻で
ございます。」
「！・・・テオ・ウェンフィールド・・・」
執事の言葉に今更ながらマークは顔をひきつらせ、言葉をなくした。
テオ・ウェンフィールド、世界格闘選手権で前人未踏の三連覇を成し遂げ、
今や世界数百万とも言われるウェンフィールド流格闘術の総師範、その名は
「拳聖」と呼ばれ称えられている人物であり、マークに戦う事の格好良さを
感じさせずにいられなかった人物である。そして更に言うなら彼にとって、
この世で最も会いたくない人物だった。
「格好良く戦う者」は多くの少年にとって、現実非現実を問わず憧れを抱く
対象となる。マークもその例に漏れず、格闘技観戦や格闘ゲームは彼の一番の
趣味である。そして拳の道を語る上でテオ・ウェンフィールドの名前は避けて
通る事のできない物だった。だからマークも、写真やモノクロ映像でテオの
戦いはかなり見てきた。その戦いぶりは、流麗で力強く、見る者に震えと感動を
与えずにはいられない物ばかりだった。
だが、だからこそ彼は世界選手権以外のテオを知ろうとはしなかった。
老けたテオは見たくない、力の衰えたテオは見たくない、テオという人物は
彼の脳裏で永遠に強く、流麗なテオでいてほしいのである。だからエヴィンが
テオの直弟子だと知っても、彼にテオの話を聞こうとは一切しなかった。だが
今、その会いたくないテオが、向こうから否応なしにやってきてしまったので
ある。マークは、頭を抱えずにはいられなかった。
「・・・え、えっと、その・・・」
マークは必死になってこの場を切り抜ける策を頭の中で練ろうとする。と、
彼の前に一人の女性が現れ、マークを見てニコ、と微笑んだ。年齢は七十歳
前後であろうか？その女性に対しマークは、直感的に不安を覚えた。
「あなたがマーク君？」
「え？あ、はい・・・」
「ごめんなさいね、こんな所に連れて来ちゃって。私はテオ・ウェンフィールド、
よろしく。」
「・・・！」
マークは目の前の現実に強い落胆を覚えずにはいられなかった。テオは既に
七十近い、社会的にも法的にも「老人」の部類に入る人間である。それでも
心の何処かでテオだけは例外であってほしい、二十代そのままとまでは言わ
なくとも、せめて四十代程度の外見を維持してくれているのではないか、そんな
期待が彼にはあった。しかし目の前のテオは、あまりに年齢通りの姿だった。
しかしテオ本人は、そんなマークの動揺を知ってか知らずか、その事に対し
何の反応も示さず、握手を求めて右腕を差し出し、マークも反射的に右腕を
差し出す。と、そこでテオの目の色が変わった。
「マークさん・・・」
「は、はい・・・」
「世界で一番堅い鉱物は何か知ってますか？」
「え？な、なんで急にそんなクイズを・・・ダイヤモンドだろ？」
マークの答えにテオはコクリと頷いた。
「そう、そしてダイヤモンドは磨けばこの世の何物よりも光り輝くけど、
火の中に入れると炭化してただの脆い炭になってしまう・・・そして
あなたの拳は、今まさに燃え盛る炎の中に入れられようとしている
ダイヤの原石のような物・・・」
言いながらテオはマークの右手を両手で掴み、軽く指で押す。と、マークの
右腕を電気が流れたような衝撃が駆け抜けた。
「ぐわっ！」
突然の衝撃にマークはたまらず声をあげる。だがマークが叫んでいる間も
テオは指でマークの掌のあちこちを押し、その都度彼の右腕には耐え難い
痛みが走り続けた。
「相当、無茶な戦いを続けてきたみたいね、折角の拳を・・・」
ため息をつきながらテオは言った。そしてそれからもまだ言葉を続け
ようとしたのだが朝食の事で執事に急かされたので話の続きは朝食を
とりながらする事になった。
朝食のメニューは至って普通だった。トーストにハムそしてスクランブル
エッグと紅茶、どこにでもあるメニューである。そしてその朝食の席で、
リビアとマークは初めてギゾ・ウェンフィールドという人物も見た。背が
高く背中も全く曲がっていない。髪の毛が豊富で白髪化も進んでない
事も手伝って、とても７０過ぎに見ることはできない人物である。また、
巨額の資産を持つ財団の総帥であるにも関わらず、若い二人を見下
した様子は伺えなかった。
「昨日はよく眠れたか？」
二人の顔を見てギゾは聞いた。
「え？あ、はい。お陰様で・・・」
緊張した面持ちでリビアが答える。
「あなたは確か、リビアさんと言ったかな？エヴィンの部活の部長だとか。」
「は、はい・・・」
「エヴィンはアレンの孫だってだけじゃなくテオの道場の生徒だった事も
あってなぁ、ワシらにとっても孫のような存在じゃった。」
「はぁ・・・」
「ところであんたはエヴィンと付き合ってるとか。」
「！？」
ギゾの突然の言葉に、リビアは飲みかけていた紅茶を気管に詰まらせ、
苦しそうにゲホゲホと咳き込んだ。
「いやぁエヴィンのヤツも相当な奥手だったが、ようやく春が来たようじゃな、
はっはっはっは・・・」
「か、からかわないで下さい！」
「そうですよあなた、昔もアレンさんとアリスさんの事をからかって、顔中
傷だらけにされた事を覚えてないんですか？」
「う・・・昔の事をいつまでも覚えておってからに・・・」
「あなたが、いつまでも進歩が無いからです！何なら他の実例も挙げて
みせましょうか？」
「・・・・・・」
テオに立て続けにツッコミを入れられ、さすがのギゾも黙るしかなくなった。
そして今度はテオが、リビアにフォローを入れた後マークに話しかけた。
「ところでマーク君？」
「え？あ、ああ。」
「ティーズのひ孫さんなんですって？」
「・・・・・・」
テオの言葉にマークは無言のままムッとした表情を見せた。
「あ、ごめんなさい。何か、気に障る事でも・・・？」
マークの表情の変化に慌てたテオがすかさず言う。
「ああ、最近人のことをやれ『ティーズのひ孫』だの、やれ『獅子の血を受け
継ぐ者』だの言う連中が多くてな。オレはそのひい爺さんの事なんて、
これっぽっちも知らねぇってのによ。」
「ティーズを知らない、って・・・もう少し政治や歴史も勉強した方がいいんじゃ
ないのかしら？ネオアリサ近代史の最重要人物の一人なんだし」
「か、関係ないだろ！そんな事！！」
「いいえ、過去を振り返らない者は未来に対しても責任を持てない、古代の
さる偉人の言葉です。これからの未来を担うあなた達だからこそ、昔の事を
知るのは必要な事・・・その辺りも、今日から少しは勉強してもらないと。」
「へ？勉強？」
「あら？まだ言ってませんでしたっけ？」
マークの反応にテオは少し意外そうな顔をしたが、すぐに自分の言葉を続けた。
「夏休みでもないのに学生さんをお預かりして、勉強を遅らせたるワケには
いきませんから、家庭教師はきちんと手配してありますよ。一日六時間、
選り抜きの教師陣によるマンツーマン指導で。」
「げっ・・・」
その言葉を聞くとマークの顔がみるみる青くなっていった。学校の授業なら
サボる方法はいくらでもあるが、屋敷の中で家庭教師、しかも一対一で逃げる
事はかなり困難である。その表情は、勉強の遅れを元から心配していた
リビアとはあまりにも対照的だった。
やがて朝食が終わり、仕度も済むと間もなく家庭教師がやって来て、二人の
勉強が始まった。午前中四時間と午後二時間、科目別に教師が入れ替わる。
教え方は学校の先生よりかなり上手で、リビアにとって六時間はアッと言う間
だったがマークにとってその六時間は拷問に等しかった。
「終わった・・・やっと、一日が・・・」
虚ろな目で、机の上に這いつくばりながらマークは言った。マトモに勉強したの
なんて、高校受験三日前以来である。あの時は三日間不眠不休でやり抜いた。
結果苦戦の末ティリア第一に合格したのだが、普段筋金入りの勉強嫌いの
彼が何故そこまでティリア第一に固執したのかについて、彼は絶対に語ろう
とせず、その理由を感付いているのはメルくらいの物である。そしてまだ脳の
疲れが取れずぐったりしているマークの元に、再びテオがやってきた。
「お疲れさま。マークさん、よかったら後で道場の方に来てみませんか？」
「え？あ、ああ。」
テオの申し出にマークは素直に頷いた。本来は道場とかは好きではないの
だが、暇潰しにはなるだろうし、何より今は少しでも体を動かしたかったので
部屋の洋服ダンスにかけてあったトレーナーにすぐに着替えると屋敷の者に
道場へと案内された。道場は屋敷から相当離れた所にあり、平屋建ての木造
である。広さは学校の道場の倍程度で、その中で数十人の生徒達が稽古に
汗を流していた。
「へぇ〜」
マークは道場内で稽古に励む人間達の顔を見た。どの顔も熱心そうに稽古に
打ち込んでいる。突きの練習から受けの練習、そして蹴りの練習を一通り
終えると今度は組み手（実戦稽古）に入り、数分後師範が「止め」の合図を
入れた。
「入門希望者か？」
生徒達の指導を師範代に預けると師範はマークに歩み寄り尋ねた。
「いんや、ただの見学。」
「そうか・・・気が済むまで見て行くといい。」
「いや、見学もいいんだけどよぉオッサン。」
「お、オッサ・・・」
マークの言葉に師範は少し唖然とした。
「オレにも少し体を動かせてくれないか？どうもじっと座って見てるって
いうのは性に合わねぇ。」
「別に構わんが・・・では次の蹴りの練習から入るか？」
「蹴り・・・いや、そういうのじゃなくってさぁ、組み手できない？組み手！」
「組み手・・・」
マークの言葉に師範は眉をしかめた。目の前の、どこの馬の骨とも知らない少年に
いきなり組み手をやらせるのは気が引けたのである。だから師範は即座にそれを
拒否しようとするのだが、彼がそう言う前にマークは道場の中に足を踏み入れた。
「実力が分からない人間にゃ、って顔だな。じゃ、こいつでどうだ？」
言うやマークは一人構え、右ハイキックを放つ。姿勢に寸分の乱れもない、直線的な
蹴り、そして足を降ろし今度は左のミドルキック、と見せかけて途中から上段へと変化
する変幻自在の蹴り、更にブロンコラッシュと披露する。そんな彼の動きは周囲の
人間の、彼を見る目を変えるのには十分だった。
「どうやら、少しは心得があるようだな・・・」
マークの動きを見ていた師範代はそう言うと門下生の練習を一時中断させ、師範の
制止も聞かずマークの前に歩み出た。
「おっ！そう来なくっちゃ！」
「フン・・・」
こうして、マークと師範代の組み手は始まった。そして二人の戦いが始まるのとほぼ
同時に、道場の様子を見にテオがやって来た。
「どうしたのです？何か、騒がしいようですが・・・」
「あ、そ、総師範・・・そ、それが、見学者と師範代が急に組み手を始めまして・・・」
「え？」
師範の言葉にテオは少し唖然とした。そして道場内に目をやると、確かに師範代と
マークが戦っているのである。しかもその戦いはマーク有利に進められていた。
「・・・思っていたより、動きがいい・・・」
マークの動きをほんの数手見ただけで、テオはそれを敏感に感じ取った。
様々な格闘技や、果てはテレビゲームか何かから取ったとしか思えない
技を無節操に取り入れた、一見法則性の無い動きのように見えるが、実は
ほとんどの技が隙間無く、計算されて組み立てられているし、何より彼の
身体能力がそのムチャクチャな考え方に多少ぎこちないながらもついて
来ているのである。
「そらそらそらあっ！」
防戦一方になる師範代相手にマークはさらに追い詰めるように攻め立てる。
そして師範代が苦し紛れにパンチを出してきた所でマークは大きく身体を
仰け反らせた。
「サマーソルトぉ！」
マークの蹴りが顎にクリーンヒットすると師範代の身体は少し浮き、その
まま受け身も取れずに後ろに倒れ込む。マークも着地に失敗し尻餅をついて
いたのだが、もう相手が戦闘不能になっていたので関係の無い話だった。
「悪ぃ悪ぃ、新しい技なモンで手加減できなかった。」
師範代の顔にサンフォースをかけながらマークは言った。場内、そのマークの
声意外音もない。マークは間もなく相手の治療を終え、ズボンの埃を数回
はたくと正座している門下生達の方を向いた。
「さ、次の相手はどいつなんだ？」
マークのその挑戦的な言葉にいきり立った門下生数人が立ち上がりかける。
だがテオはそんな門下生達を稟とした声で制止した。
「戦時に於いても、平時に於いても、勝敗を分けるのは常に冷静な判断力、
相手の挑発に乗るようでは、武の道を究めるにはまだ遠いですよ・・・」
「そ、総師範・・・しかし、部外者に好き勝手やられては我々の面子も！」
「あなた達の気持ちも分かります・・・マークさん、次は私がお相手します。」
「！オレが・・・テオ・ウェンフィールドと・・・？」
「不満ですか？」
口元にうっすらと笑みを浮かべながらテオは言った。しかしその表情とは
正反対のプレッシャーがマークを強く圧迫する。テオの背後に何か得体の
知れない「オーラ」のような物が見えるような、そんな感じさえした。
そして強烈な圧迫感と恐怖に背中を押され、真っ白な頭でマークはテオに
飛びかかっていった。
「あなたは未知の物を恐れ、恐怖に呑み込まれた・・・勝負は既に決して
いるのですよ！マークさん！！」
・・・
・・
・
「あれ？」
気がついた時、マークの目は道場の天井を見ていた。何が起きたのか、彼には
まるで分からない。分からないままマークは起きあがり、拳を構えなおした。
「オレは・・・テオ・ウェンフィールドは？」
辺りを見回しながらマークがそう言うと、場にただ一人残っていた門下生は
呆れた顔をしてため息をついた。
「ったく・・・何言ってるんだか」
「？？？」
「負けたんだよ、アンタは。アンタの跳び蹴りにあわせて総師範が出した、
両腕を使った掌打一撃で。」
「え？？？」
「覚えてないのか？」
「全然・・・」
「ま、あんな一瞬の事じゃ覚えてないのも無理はないか。あ、そうそう、総師範
からの言づてだ。」
「言づて？」
門下生の言葉にマークは怪訝そうな表情を見せる。そんなマークに、門下生は
封筒と紙袋を手渡した。
「・・・・・・」
マークは無言のまま封を切り、まずは中の手紙に目を通し始めた。
―マーク・フラン君へ―
貴方と立ち会ったのはほんのわずかの時間でしたが、あなたの若く、溢れん
ばかりの才を感じ取れた充実した立ち会いでした
本当ならばすぐにでも私の知っている技術を全て教えたい所なのですが、私の
持つ、正統派のウェンフィールドの型があなたの奔放さを阻害するのではと
恐れます。あなたの拳は、私やエヴィン君のような規則性の下ではなく、私の
夫ギゾのように奔放さの下でこそ活きる物ではないのかと・・・
もしもあなたが今よりも強くなる事を望むのなら、豊かな想像力について
行けるだけの基礎体力を付ける事と、朝にも言いましたが身体を大切に
する事です。今日一日で、私はそれを感じました。
それから先、何か迷う事があれば、どうか遠慮なく聞きに来て下さい。
あなたの功が成りますように。 ―テオ・ウェンフィールド―
「・・・・・・」
手紙を読み終わると、マークは無言のまま紙袋を開ける。と、中には
一対の新品の青色の拳サポーターが入っており、マークはそれを無言の
まま腕にはめた。そして軽く壁を叩いてみるが腕には何の痛みもない。
次にサポーター無しで壁を叩いてみると、マークの腕は軽い痛みを覚えた。
「へぇ・・・」
今更ながらマークはサポーターを便利な物だと思った。技の威力は多少
落ちるかもしれないが、拳に直接かかる負担も確かに減りそうである。
戦闘中のダメージの軽減という意味では、この道具はかなり有用になる。
また以前ケンカした後家に帰って腕をアイシングした事もあったが、これ
ならばそういった事も減るかもしれない。
「身体を大事に、か・・・」
呟くような声でそういうと、サポーターをつけたマークの拳が再び空を切った。
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