アファールズ戦記
序章『英雄』
宇宙の彼方にリアンと言う名の惑星があった。この星には、いくつかの大陸と無数の孤島が存在してい
た。この星では７００年前まで大きな戦争があった。その戦争は数千年にも渡り続けられたと言う。その
長い時の流れは戦争が起きた原因さえも忘れさせた。今となっては、なぜ戦争が起きたのかなど誰も
知る由も無い。とは言え戦争が終結した原因くらいははっきりしている。
何処からとも無く現われたとされている『巨大な闇を放つ者』の登場により当時の人々は戦争を止め共
に戦った。その戦いは大陸のほとんどと無数にあった孤島が地図上から姿を消したほど激しい物となっ
ていった。それほど激しい攻防が長く続き人々が敗北を確信した時、何処からか現われた一人の若者の
手により巨大な闇を放つ者は倒された。
その戦いにより残った大陸は２つ。１つはアファールズ大陸。もう１つはデクリーラス大陸。この２つ
の大陸が互いに干渉しなくなったのはそれから間も無くだった。と、言うのもデクリーラス大陸は別名
滅びの地と呼ばれ巨大な闇を放つ者との決戦の地でもあるため生物が住めるような場所では無くなって
いたのだ。とは言えど物好きな者達が住んでいるのだが。
ちなみに若者は、と言うと英雄として称えられたそうだ。しかし、若者は宴にも姿を見せずに何処かへ
姿を消した。その時共に戦っていた者達の話では若者は光りと共に消えたらしい。だが、そんな彼らの
言う事など誰も信用しなかったが。ただ一部の宗教者の間では天が遣わした戦士だ、などと言われてい
る。彼らはとりあえずこの話のみを後世に伝えていく事にした。
それから３００年という時が流れた。デクリーラス大陸では知らないがアファールズ大陸ではこの事を
伝説として語り継いできていた。その伝説とは――
―巨大な闇を放つ者現われし時何処からか魔を操る英雄が現れ邪悪な者を消し去り光の彼方に去らん。
（アファールズ伝説の一説より）
多少屈折している所もあるような気がするが伝説とは所詮そんな物だろう。だが、実際に過去数回に渡
り巨大な闇を放つ者らしき者が現われると決まって英雄が現われた。その英雄が伝説の人と同一人物な
のかは不明だが、目的を果たすと何処かへ消えるので誰も彼を偽者だとは疑わなかったようだ。当然の
如く偽者も居たりする。人々にしてみれば戦ってくれれば誰でも『英雄』のようだが。
不思議な事に『本物の英雄』には一つの共通点がある。どの時代の英雄も皆ライド＝ラグゾルスと言う
名を持つらしい。これだけでは名前が受け継がれているだけかと思われるが、不思議な事に容姿までも
同じと言う。学者達の間では伝説などそう言うモノだろう、と噂され特に気にされてはいないが。
今、アファールズ大陸では小規模な戦闘が行われていた。過去の遺産の１つでもあるモンスターが突然
溢れ出してきた。元は数も少なく無視しても良いような程度だったモンスターが急激に増えてきたので
不安になった人々は政府に申し立てをし駆除を願った。そのための戦闘が１つ。もう１つは秘密結社
セラーゴと名乗る者達の出現。噂ではセラーゴの一員と名乗る者が過去の遺産でもある機械兵を率いて
襲ってくる事。セラーゴの目的が一体何なのかは誰も知らないが大陸征服と考えるのが妥当だろう。
時が進むにつれて人々はそれら全てを１つの事に結びつけて考えるようになりだした。伝説にある『巨
大な闇を放つ者』が現われる予兆では無いかと大陸中に噂が飛び交う程に。
この大陸を支配している国、パフラでは伝説は所詮伝説と軽く笑いつつ民の噂を消そうとしていた。だ
が、実際に増えつづけるモンスターや秘密結社セラーゴの被害を受けている。モンスターが増える原因
と秘密結社の秘密を探らせるためパフラの騎士団の一つ鳳翼騎士団フェトランに調査させた。その報告
によるとモンスターが増えつづける原因は不明で秘密結社の秘密はやはり秘密だった。要するに何も分
からないと言う事だ。ならばせめて何らかの目的があるらしいセラーゴを先に潰そうと思ったらしく、
国王フソールス＝パフラは鳳翼騎士団フェトランに秘密結社セラーゴを壊滅させるよう命令したのだった。
しかし秘密結社と言うだけの事があり基地の場所も構成員さえも一切が不明だった。唯一分かっている
事と言えば時々何処かの町や村を攻撃に現われる事くらいだ。そこで襲ってきた者を捕らえたとしても
何か言う前に自爆するか暗殺されるかで何も聞き出す事はできなかった。そこで調査員を増やし各都市
に兵士を配置し被害が出る前に襲ってきたセラーゴの者を倒す事にしたのだ。とは言え相手は遺産の１
つの機械兵を使っている。兵士の消耗も激しいものがあった。
そこで新兵器の１つでも、と思った国王は学者達を使い遺産の原理を応用して造った槍『火炎槍』で対
抗する事にした。その名の通り槍の先に火炎放射器でも搭載したのか、先端から火炎が吹き出す槍だ。
しかし、この槍には大きな欠点があった。先端が尖っていないので槍として使えないのはまだ良い。そ
れよりも燃料が切れるとただの『鉄の棒』になってしまう事だ！！！
・・・と、そんなこんなで後に『アファールズ戦記』と呼ばれる戦いが始まった。
続く
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