アファールズ戦記
第９話『魔族』
突然闇の地と言われ恐れられている地ホーラグに魔族が現われた。当初、それらは秘密結社セラーゴの
特殊部隊か何かだと思われていた。が、それらは秘密結社セラーゴとは関係が無さそうだった。奴らは
常に機械兵を用いていたが、魔族達は機械兵などは一切使っていなかった。そしてマジックを使い、姿を
変える能力がある。
国王フソールス・パフラは騎士団を迎撃に向かわせた。無論多少のテクニックを使用できる者達を。
だが、戦況はあまり良くない。以前マード・レンファスがワノジス砦と呼ばれる場所から持ちかえった
過去の遺産でもある兵器をホーラグへ向かわせる事にした。その兵器とは攻撃戦闘巡洋艦と呼ばれる空を
飛ぶ事を可能とした戦艦だ。名前は『ランディッシュII』と言うらしい。この名前は船体に書かれていた
文字から来ているらしい。
ランディッシュIIを用いた攻勢により戦況は有利となった。だが、兵隊の数は減っていく一方。この
ままでは勝ち目は無いと思ったフソールス・パフラは兵士を増やすため有志を募った。各都市や村と
町に至るまで全てに張り紙にて。当然戦おうと思うような者は少なかった。だが、ある程度の金は支給
されるのでハンターや渡り鳥と呼ばれる者達が集まってはいる。
それと同時期に秘密結社セラーゴが行動を開始した。各都市に現われる機械兵団。それらに対応する
ため、様々な騎士団をホーラグから撤収させた。特に大陸最強と言われている鳳翼騎士団フェトランを
ダルアまで戻した事が魔族との戦況を一転させた。
徐々に有利となりつつあった戦いは一気に不利となり前線に残されたハンター達は苛立ちと共にホーラグを
去っていく。魔族達はそれらに追撃をかけダルア以外の都市などは全て多大な被害を受ける事となる。
そしてランディッシュIIは鳳翼騎士団が撤退する以前より飛び立つための動力炉が故障しており身動きが
取れなかったので、そのまま前線に置いてあった。まだ戦う意思のある者達が最後の砦として使用して
いた。
--------------------------------------------------------------------------------------------
クラグの中心部にある広場に立て札があった。その立て札には紙切れが一枚張られていた。たった一言
『君も魔族と戦おう！』と。詳しい内容は小さい文字で書かれており、参加者は現地へ向かうだけでいい
らしい。それと給金は五万メセタ、死亡者については一切責任を持たないとも書かれている。
アレルはこの張り紙を見ていた。以前異形の影と対峙した時に感じた刺激を思い出しつつ。
「俺も行こうかな・・・」
ふと気がつくとそんな事を言っていた。あの血が燃えるような感覚。それだけが今、アレルが存在して
いる事を自分に認識させてくれる。戦いの中に身を置く事により新たな目標を発見できるかもしれない
と思う。それとハンターや渡り鳥などの参加もＯＫと書いてあるので、もしかするとキョウカ師匠に会
えるかもしれない、という理由もあった。尚、後者の理由の方が強かったのは言うまでも無いだろう。
「そんな危険な場所にアレルが行っても意味無いんじゃない？」
ルーシュにこの事を言うと、こんな事を言われた。確かにアレル程度の者が行っても意味は無いだろう
し、クラグにだって魔族は来ている。来てはいるが、どう言う訳か村の近くで全滅しているのだが。
そのためクラグはいつも通り至って平和だった。
「俺は・・・今の俺は半分死んでいるようなモンだし。ここへ行くと新たな目標とかが見えてくるかも
しれないんだ」
「へぇ〜・・・。キョウカさんとかオルナさんに会いに行くんじゃ無いんだ」
「オルナさんは戦いに行くとは限らないだろ？ハンターや渡り鳥には見えなかったし」
「じゃぁキョウカさんに会いに行くんだ？」
「・・・・」
何も言えなかった。
と言う訳でアレルはホーラグに向かい旅立つ事にした。給金は現地で、という事なので当然自費で行く
のだが、当然歩いていくのには遠い。
「で、だ。実はルーシュに頼みがあるんだ」
「頼みって？」
「金貸してくれ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
利息付きで何とか金を借りたアレルはホーラグ行きの武装バスに乗りこんだ。バスの中には自分のよう
な少年の姿は無い。全て戦闘経験十分というような剣士風の者達だった。と、言えば聞こえは良いだろ
うが、アレル以外にこのバスに乗っている人は３名しかいない。
ランディッシュIIについたアレルはキョウカの姿が無いか探してみた。すると青い瞳の剣士だけは見つ
かった。
「キョウカさんは？」
「なんだ、アレルか・・・お前も来たのか？」
「別にいいだろ。それで、キョウカさんは？」
「居るぞ。今は別の所に居るけどな」
「そう。で、どこ？」
「まぁ、慌てるなって。その前に俺の名前を教えておこう。結局前は言いそびれたしな」
「あらアレルじゃない」
キョウカが現われた。再び青い瞳の剣士は名を名乗れそうになかった。だが、今回は以前とは違う。
強引にでも名乗る準備があった。
「俺の名はぁー！」
突然青い瞳の剣士が叫んだ。周りに居た他の人の目も集まる。一緒に居るキョウカとアレルは恥ずかしく
なったのか目を逸らし他人のふりをはじめた。
「クラート・ラムセイドだぁぁぁー！！！！」
「えぇぇぇ！！！！！！アナタって、名前あったの！！！！」
驚いたのはキョウカだった。
「キョウカ・・・俺はお前と組んでから５年になるんだぞ。なのに、俺の名前知らなかったのか？」
「えぇ」
はっきりと首を縦に振ったキョウカ。膝を付き頭を抱える青い瞳の剣士改めクラート。
「前に次回予告で名前が出たときのキョウカの対応が何か変だなって思ったら・・・そう言う事だった
のか・・・」
「は？次回予告が、何？」
聞き返したアレルにクラートは答える様子も無く泣きながら走り去ってしまった。
「彼、クラートって名前があったのね」
「僕は名前が無いものだとばかり思っていましたよ」
「私もよ」
「しかし、それならそうと言ってくれれば・・・」
「そうね。私なんて５年も一緒だったのに・・・名前も教えてくれないなんて」
何度も言おうとした度に妨害していたのはキョウカだ。クラートがこの場に居たなら必ずそういって
いただろう。
「それにしても・・・魔族との戦いってどうなっているんですか？」
「あまり良くないわ。今は別の部隊が動いていて私達は休憩中なの」
「つまり、休んでいられる程余裕があるって事ですね・・・」
「そうなるわね」
「結構厳しいって聞いていたのに・・・」
「あぁ、それね。何て言ったかな・・・茶色の髪をした剣士が頑張ってくれたおかげで戦局が変りつつ
あるのよ。そろそろ魔王とか言うのと戦うって作戦立ててたし・・・」
「・・・もしかして、僕が来たのは遅かったですか？」
「そうなるわね」
続く
次回予告
ついに魔王との最終決戦を迎えたアレル達。だが、魔王と戦う前に彼らは最大の敵と戦う事となる！
ジメジメした空気がもたらした最悪の事態。食料にカビが！このままでは魔族と戦う所の話ではない
のでアレルは帰る事にしたのだった。
次回、アファールズ戦記第１０話『カビたパン』
アレル「俺って何しに行ったんだ？ルーシュに借金までして・・・」
キョウカ「結局一度も戦わなかったわね」
クラート「因果応報」
アレル「また変なのが出てきてるし・・・」
キョウカ「温かくなってきたしね・・・仕方の無い事よ」
クラート「お前ら！俺は本編でも名乗ってただろうが！」
アレル「そうだっけ？聞いてなかったし・・・」
キョウカ「そんな昔の事は忘れたわ・・・」
クラート「くっ・・・・」
第１０話を読む
投稿の広場に戻る