クロスオーバーストーリー（仮）

	少し時をさかのぼる。（こんな事になるなんて、なんで目を離したりしたんだ、俺は）　ルディは目の前の立ち木を剣で一薙ぎした。岩肌の続いていた崖をものともせず駆け降りてきたが、傾斜が緩やかになったかわりに草木が多くなり、やがて木々や茂みが行く手を阻むほどになっていた。「ファルーっ！」「待ってーっ・・・ルディさーん」　声のする方を振り返った。さくらが少し息を切らしながら、それでも十歩ほど後をついてくる。ファルが自分のペースについて来られなかったことを思い出した。「ご、ごめん、急ぎ過ぎたね」「いえ、私は大丈夫です」「でも、その格好じゃ」「これ、普段着なんですよ。昔はこの格好で山の中を飛び歩いてましたから」「へえ・・・」「それよりも、闇雲に歩くだけじゃ私達も迷ってしまいますよ。少し戻ったところに、茂みが折れたところがあったんです、多分ファルちゃんじゃないかしら」　下草や茂みの状態からそこを通る動物などを推測するのは、ライラに叩き込まれたハンターに必須の技術である。（・・・そうだな、落ち着けよ、ルディ）　自分の頬に平手を入れると、さくらの後を追って歩き出した。「ほら、ここ」　崖の中腹ほどに登ったところに低木が茂っており、枝が派手に折れている。「この茂みが衝撃を吸収してくれたんだろう、でも・・・無事では・・・」　屈みこむと、視線を地面に添わせるようにした。ルディはしばらくその格好のまま地面を這い回った。さくらは横でその様子を見ていた。「・・・この足跡は、ファルじゃないぞ？」「分かるんですか？」　ファルより大きく体重も重いらしい足跡は、茂みに近付き、少し周りをうろついた後、相当に重みを増して立ち去っている。「こいつに連れ去られたのか？！」「えっ？！」「くそっ、追いついてやる、絶対に！俺の名に賭けて！」　比較的足跡を追うのは簡単だったが、歩幅と地面の踏みぐあいから推測して、相手はかなりの健脚であるらしかった。追跡は日が落ちるまで続いたが、ついに追いつけず、その場で二人は休むことにした。　ファルを連れ去った謎の人物のこともあり、不馴れな場所でもあったので、火は焚かないことにした。携帯食料と水を軽く腹に入れて、片方は木に寄りかかって座って仮眠し、片方は不寝番をすることにした。さくらが番をかって出たが、ルディはなかなか寝つけない。「寝られませんか？」「・・・番、替わろう」「休んで下さい、疲れてるはずですよ。心配ですか？」「うん」「そんなに心配することはないと思いますよ」「・・・何故？」「その人って、わざわざファルちゃんを担いでこんな道のりを歩いているんでしょ？ちゃんと踏み分け道を選んでるし、多分この辺の人なんですよ。助けるつもりでの事なんじゃないかな、今頃ファルちゃん、私達よりもいいベッドで寝てたりして」「君は、明るいんだな」「だって、くよくよしてても明るくしてても同じなら、明るくしてた方がいいですよ。ね？」　さくらの笑顔が星明かりの中に浮かんだ。少しつくったような笑顔から、行きずりながら心配してくれている事、それをおしてルディを励ましてくれている事がわかった。「ありがとう・・・休むことにするよ」「・・・」　突然、はるか遠くの方で奇妙な音が響いた。ルディは剣をそばに引き寄せ、さくらはルディのそばに歩み寄った。妙な節回しのついた吠え声のような音は、ひとしきり山の中をこだました。「・・・やんだみたい」「何なんだ、いったい」　近くの地面で、枝の折れる音がした。ルディは剣を抱えて跳ね起き、すでに腰の鞘から刀を抜いたさくらと背中をあわせた。「フォイエ！」　地面に積んでおいた枯れ枝に火がともった。奇怪な生物が十数匹ほどで二人を取り囲んでいる。猿のように腕が長く、長い尻尾を地面に垂らしているが、顔はどんな生物にも似ておらず、強いていえば目の無いなまずの口に頑丈な歯を生やしたようである。全身の皮膚を節くれ立った筋がおおっており、全体がびくびくと脈打っている。背中には蝙蝠の羽のようなものが生えている。青いものが多いが、中には緑や茶色のものも見受けられる。「魔界のものだわ」「闇の手のものか？」　同時に口を開き、ついで顔を見合わせた。　魔のうちの一匹が叫び声をあげ、大きな鉤爪のついた腕をふりまわした。さくらはその動きにそって刀身を跳ね上げて腕を切り落とし、ついで振りおろして頭を断ち割ったが、まだ魔の動きは止まらなかった。「こいつに関しては私の方が詳しいと思う。色違いの奴には飛び道具があるから気をつけて」「わかった」　ルディには二匹ほどが襲いかかった。大きさにしてはかなり身軽だったが、見切れないほどの動きでもなかった。軽く剣で二、三撃を受け流すと、一歩さがって呼吸を整え、口から鋭い気合いを発した。「エアスラッシュ！」　大気がきしみをあげて急激に移動し、真空の刃があたりの木や茂みを切り裂いた。数匹の魔が傷を負ってたじろいだが、致命傷は与えられなかったらしく、前にも増した凶暴さでルディを追う。「・・・タフだな」　それでも、寄せてくる魔を撃退するのにさして苦労はいらなかった。ルディは一見ただの鋼の剣でやすやすと魔の体を断ち切るさくらの技に、さくらは初めて立ち合う敵の動きを見事に読んでいるルディの勘に驚嘆していた。　不意に、青い魔が囲みをゆるめると、茶色の魔がのどの奥で粘液質の音をたて、その直後、緑色の液体を空に向かって大量に吐き出した。「散って！」　別々の方向に飛び退いた二人のいたところに、正確に液体が降ってきた。地面の下草が音をたててちぢれ、黒く変色していく。ルディの肩当てにかかったわずかな飛沫が、嫌な匂いをたてて小さな穴を開けた。　分かれた二人の間に魔が割って入り、形勢は一気に悪化した。徐々に防戦一方になり、追い詰められ、ふたたび互いの背中を護る体勢に戻るまでに二人は消耗しきってしまった。背中ごしにお互いが肩で息をしているのが窺えた。「やばい・・・な」「こんな時・・・」　さくらは唇を噛んだ。「大神さんがいてくれたら、合体必殺技で」（大神一郎：前述、帝国華撃団花組の隊長。最も恋愛度の高い隊員と一緒に強力な必殺技を放てる）「スレイでもいてくれれば・・・コンビネーションで」　ふたりは目をあわせた。魔はふたたび包囲の輪を狭めてきている。「コンビネーション・・・合体必殺技」「まさか」「・・・やりましょう。できると思う、魔と戦っているという、貴方となら」「ぶっつけ本番で、か」「ぶっつけ本番ですくむようじゃ舞台はつとまらないわ。それとも、貴方はリハーサルが無いとだめかしら？」　さくらは殊勝な笑みを浮かべた。ルディは眉を上げ、ついで不敵な笑いでそれに返した。無言で腰をためると、剣を振りかぶり、肩に担いだ。さくらはひとまず鞘に剣をおさめ、柄に手をかけて足を一歩踏み出した。呼吸のひとつごとに二人の気が高まっていく。ただならぬ気配に、外の騒ぎの最中にも巣の中にこもっていた鳥が、けたたましい羽音をたてて飛び去っていった。狭まっていた魔の囲みはふたたび広がっていった。呼吸が少しずつ同調していくのが分かった。（まだだ）（まだ）（まだ）（まだ）（後少し）（もう少し）（もう少し）（今だ！）　裂帛の気合いが、ルディの口からほとばしった。「天に輝くアルゴル星は！」「皆の明日を導く光！」「今、その光を大いなる力にかえて・・・檄！桜花光臨！！」　ルディの降りおろした剣が金色に輝き、鞘から放たれ、薄紅色の光に包まれたさくらの刀と交差した。瞬間、輝く球形の力場が出現し、凄まじい勢いで膨らんでいった。力場はすべての魔を飲み込み、木々をなぎ、地面を穿ち、その勢いは留まるところを知らなかった。「うおおおおおおお！」「えええええええい！」　突然、ルディの剣が震えだした。さくらの差し料、霊剣荒鷹はともかく、ルディのセラミック刀はごく一般的なものであり、また歴戦の疲労もあり、この未完成の技を中継する媒体としては明らかに不足だった。「うああっ？！」「きゃああああああ！！」　刀身が砕け散った。力場はねじ曲がり、うねり、暴れ狂い、天を突く高さに伸びあがると、巨大な一匹の光る龍の形となった。龍は贄となるべき二人の人間を地上に見つけると、その顎を大きく開いて襲いかかった。　閃光が夜空を青白く染め、地響きが山々を揺るがせた。　ここは、閃光と地響きの源だった場所である。丸く地面がえぐれ、草一本さえ残っていない、その中心に人間がふたり倒れている。ひとりは金髪の男、もうひとりは黒髪の少女である。「おのれの力の制御さえままならんとはな」　星明かりの中、木々の影の間から滲み出るように現れた、闇よりも暗い一つの影があった。全体の輪郭ははっきりとしないが、その中に顔だけが浮かび上がっていた。（以上「サクラ２やってないの」ちゅん）
	（こっからｂｙがりゅー）「なん・・・だ・・・クソ、新手か！？」ルディはよろよろと立ち上がり剣もないまま身構えた。足元はまだおぼつかない。相手は白いスーツに青いシャツ、そして黄色のネクタイをしめ、手には銃のような物を持っている。そして目元は、まるで氷のように冷たかった。「だとしたら、どうする？」男はルディに言った。かなり、強い。ルディはガラにもなく体が震えるのを感じた。さくらはまだ気を失っている。傷ついた体で、彼女を守りながら戦うのは不可能な気がした。しかし、退くことは考えられなかった。けれど瞬間、後ろから人の声がした。「ちょっと！一人で先に行かないでよ！キョウジったら！！」この男の連れなのであろう茶色の服を着たショートカットの女性は男の事を「キョウジ」と呼んだ。（葛葉キョウジ＆レイ・レイホウ：出展、真女神転生デビルサマナー。キョウジは悪魔を従え戦う現代の陰陽師とも言える存在、銃の形をしたコンピュータ「ＧＵＭＰ」を駆使して契約を結んだ悪魔＝「仲魔」を召還する。ゲームでは開始後三十分で黒幕に殺され、魂の抜けたキョウジの肉体に同じく黒幕に殺された一般人のプレイヤーが入り込み、ゲームの主人公になるのだが、ここでのキョウジはいわば初代キョウジ。レイは彼のパートナー。彼女の家は優秀なシャーマンの家系であり、代々葛葉の者を守護してきた。自らの中に神を降臨させ、その魔力を扱う事ができる）「キョウジ、この子は？」ルディをさしてレイがキョウジに尋ねた「さあな。敵じゃなさそうだが、大したヤツでもなさそうだ・・・」「なんだと！」「絶対に勝ち目のない状況で強がり、しかも周囲の敵にも気付かない。だから大したことがないと　言ったまでだ・・・出てきやがれ！」キョウジがそう言うと、さっきと同じ連中が姿を現した。しかもその数はさっきの倍以上である。「ばかな・・・いつの間に！？」「そっちの嬢ちゃんを連れてさがっていろ。お前に本物の力という物をを見せてやる。」キョウジはそう言うや雲霞の如き敵を前に臆しもせずに呪文の詠唱を始めた。ルディは、大地が、そして大気が振動するのを感じた。ルディの額に冷たい汗が走る。「荒ぶる神々よ・・・その浄化の炎の威、我が前に示せ！喰らえ！メギドラオン！！！」それはまばたく暇さえない、一瞬の出来事だった。キョウジの掌から発せられた蒼い炎の前に、敵はその消しかすさえも残してはいなかったのである。「メギド・・・ラオン？蒼い・・・メギド！？あ、あんたは一体！？」（ｂｙがりゅー）
	ルディはその圧倒的な力を目の前にして驚きを隠せなかった。「命が惜しければここから立ち去った方が身のためだと思うがな。」キョウジはそう言うと、林の奥へ立ち去った。「ああっ、キョウジ、待ってよ。まったくもう・・・」「一体・・・何者なんだ・・・」ルディの問いにレイは悪戯っぽい笑みを浮かべながら答えた。「・・・彼は悪魔召喚師よ。」「デビルサマナー・・・」「また縁があれば会う事もあるかもね。じゃあね。」唖然とするルディに一瞥をくれるとレイはキョウジの消えた林の奥に姿を消した。「あ、ちょっと待って・・」「ううん・・」我に返ったルディが後を追おうとしたとき、気を失ってたさくらが頭を押さえながら、起き上がった。「うう・・魔物は？」さくらがルディに問いかける。「あ、さくらさん、大丈夫？魔物はもういないよ。」「そう・・・良かった・・・」合体技で力を使い果たしたのか、さくらはかなり疲れている様子だった。「もう魔物は来ないだろうから、朝まで休もう。もう不寝番はいらないだろう」「ええ・・」ルディも疲れ果てていた。だが、念のため、さくらが寝静まった後も起きて不寝番をしていた。（ファル・・・無事でいてくれよ・・・）そして夜が更けていった・・・。
	（ここからはすずしろせり）「・・・て・・ィ・・・起きて・・・起きてってば、ルディ！」聞きなれた、しかし妙に懐かしい声に、ルディは起こされた。「そ、そんなに揺すらなくたって起きて・・・ファル！？」確かに、目の前にはファルがいる。「ファル！良かった、無事だったんだな！」「ええ、何とか・・・時間が惜しいからすぐにでも出発したいけど・・・その前に朝御飯食べよ。安心したら、、おなかすいちゃった・・・」その一言に、くすくすとさくらが笑う。軽く朝食を済ませ、頂上に向かう３人。「あ・・・あれ見て！」さくらが頂上を指差す。なんと、頂上のあたりから光が溢れ出している。「あの光・・・何だ？意志を持っている・・・？」よく見ると、幾筋もの光の糸がそれぞれ操られているかのように動いているのだ。そのうちの一本がこっちに向かってくる。「な、何？・・・きゃぁーーーーっ！！！」光の糸がさくらにくっつくと、引っ張りあげて頂上のほうへ戻っていく。「さくらさん！」慌てて追いかける２人。何とかさくらを見失わずに頂上まで追ってこれたが、頂上の光景は、異様であった。「あれは・・・空間の、歪みって言うのかしら・・・」あたりにはいくつもの空間の歪みとも言うべきものがある。その一つにさくらが放り込まれてしまう。「！！！」そして、光の糸は、さくらが放り込まれた空間の歪みを繕いもののように縫いあわせ・・・何も、なくなった。次々と同じような事が起き、空間の歪みが消えていく。ふと、ルディが光の糸のもとを探ると、一人の少女がいた。白いシャツに深緑のジャンパースカート。真紅の髪。大人びた表情であったが、少し違和感を感じる。しかし一際目を引くのは、額よりもやや上のあたりに角が生えている事である。光の糸は角の先端から発せられていた。（謎の少女の正体：吉沢弓美　登場作品：ゆみみみっくす／ゲームアーツ　本来はちょっと優柔不断で空想癖のある女子高生だが、別の世界から落っこちてきた　ユニコーンと『重なってしまった』ために、騒動に巻き込まれる。異世界同士をつなぐ穴に　近づくとユニコーンに体を支配され、上記の描写のように『穴ふさぎ』をする。　・・・何か説明が違うかも（＾＾；）やがてあたりに何もなくなると光の糸も消える。同時に、少女の角が消え、大人びた表情が失せる。（Ｂｙすずしろせり）

	少し時をさかのぼる。（こんな事になるなんて、なんで目を離したりしたんだ、俺は）　ルディは目の前の立ち木を剣で一薙ぎした。岩肌の続いていた崖をものともせず駆け降りてきたが、傾斜が緩やかになったかわりに草木が多くなり、やがて木々や茂みが行く手を阻むほどになっていた。「ファルーっ！」「待ってーっ・・・ルディさーん」　声のする方を振り返った。さくらが少し息を切らしながら、それでも十歩ほど後をついてくる。ファルが自分のペースについて来られなかったことを思い出した。「ご、ごめん、急ぎ過ぎたね」「いえ、私は大丈夫です」「でも、その格好じゃ」「これ、普段着なんですよ。昔はこの格好で山の中を飛び歩いてましたから」「へえ・・・」「それよりも、闇雲に歩くだけじゃ私達も迷ってしまいますよ。少し戻ったところに、茂みが折れたところがあったんです、多分ファルちゃんじゃないかしら」　下草や茂みの状態からそこを通る動物などを推測するのは、ライラに叩き込まれたハンターに必須の技術である。（・・・そうだな、落ち着けよ、ルディ）　自分の頬に平手を入れると、さくらの後を追って歩き出した。「ほら、ここ」　崖の中腹ほどに登ったところに低木が茂っており、枝が派手に折れている。「この茂みが衝撃を吸収してくれたんだろう、でも・・・無事では・・・」　屈みこむと、視線を地面に添わせるようにした。ルディはしばらくその格好のまま地面を這い回った。さくらは横でその様子を見ていた。「・・・この足跡は、ファルじゃないぞ？」「分かるんですか？」　ファルより大きく体重も重いらしい足跡は、茂みに近付き、少し周りをうろついた後、相当に重みを増して立ち去っている。「こいつに連れ去られたのか？！」「えっ？！」「くそっ、追いついてやる、絶対に！俺の名に賭けて！」　比較的足跡を追うのは簡単だったが、歩幅と地面の踏みぐあいから推測して、相手はかなりの健脚であるらしかった。追跡は日が落ちるまで続いたが、ついに追いつけず、その場で二人は休むことにした。　ファルを連れ去った謎の人物のこともあり、不馴れな場所でもあったので、火は焚かないことにした。携帯食料と水を軽く腹に入れて、片方は木に寄りかかって座って仮眠し、片方は不寝番をすることにした。さくらが番をかって出たが、ルディはなかなか寝つけない。「寝られませんか？」「・・・番、替わろう」「休んで下さい、疲れてるはずですよ。心配ですか？」「うん」「そんなに心配することはないと思いますよ」「・・・何故？」「その人って、わざわざファルちゃんを担いでこんな道のりを歩いているんでしょ？ちゃんと踏み分け道を選んでるし、多分この辺の人なんですよ。助けるつもりでの事なんじゃないかな、今頃ファルちゃん、私達よりもいいベッドで寝てたりして」「君は、明るいんだな」「だって、くよくよしてても明るくしてても同じなら、明るくしてた方がいいですよ。ね？」　さくらの笑顔が星明かりの中に浮かんだ。少しつくったような笑顔から、行きずりながら心配してくれている事、それをおしてルディを励ましてくれている事がわかった。「ありがとう・・・休むことにするよ」「・・・」　突然、はるか遠くの方で奇妙な音が響いた。ルディは剣をそばに引き寄せ、さくらはルディのそばに歩み寄った。妙な節回しのついた吠え声のような音は、ひとしきり山の中をこだました。「・・・やんだみたい」「何なんだ、いったい」　近くの地面で、枝の折れる音がした。ルディは剣を抱えて跳ね起き、すでに腰の鞘から刀を抜いたさくらと背中をあわせた。「フォイエ！」　地面に積んでおいた枯れ枝に火がともった。奇怪な生物が十数匹ほどで二人を取り囲んでいる。猿のように腕が長く、長い尻尾を地面に垂らしているが、顔はどんな生物にも似ておらず、強いていえば目の無いなまずの口に頑丈な歯を生やしたようである。全身の皮膚を節くれ立った筋がおおっており、全体がびくびくと脈打っている。背中には蝙蝠の羽のようなものが生えている。青いものが多いが、中には緑や茶色のものも見受けられる。「魔界のものだわ」「闇の手のものか？」　同時に口を開き、ついで顔を見合わせた。　魔のうちの一匹が叫び声をあげ、大きな鉤爪のついた腕をふりまわした。さくらはその動きにそって刀身を跳ね上げて腕を切り落とし、ついで振りおろして頭を断ち割ったが、まだ魔の動きは止まらなかった。「こいつに関しては私の方が詳しいと思う。色違いの奴には飛び道具があるから気をつけて」「わかった」　ルディには二匹ほどが襲いかかった。大きさにしてはかなり身軽だったが、見切れないほどの動きでもなかった。軽く剣で二、三撃を受け流すと、一歩さがって呼吸を整え、口から鋭い気合いを発した。「エアスラッシュ！」　大気がきしみをあげて急激に移動し、真空の刃があたりの木や茂みを切り裂いた。数匹の魔が傷を負ってたじろいだが、致命傷は与えられなかったらしく、前にも増した凶暴さでルディを追う。「・・・タフだな」　それでも、寄せてくる魔を撃退するのにさして苦労はいらなかった。ルディは一見ただの鋼の剣でやすやすと魔の体を断ち切るさくらの技に、さくらは初めて立ち合う敵の動きを見事に読んでいるルディの勘に驚嘆していた。　不意に、青い魔が囲みをゆるめると、茶色の魔がのどの奥で粘液質の音をたて、その直後、緑色の液体を空に向かって大量に吐き出した。「散って！」　別々の方向に飛び退いた二人のいたところに、正確に液体が降ってきた。地面の下草が音をたててちぢれ、黒く変色していく。ルディの肩当てにかかったわずかな飛沫が、嫌な匂いをたてて小さな穴を開けた。　分かれた二人の間に魔が割って入り、形勢は一気に悪化した。徐々に防戦一方になり、追い詰められ、ふたたび互いの背中を護る体勢に戻るまでに二人は消耗しきってしまった。背中ごしにお互いが肩で息をしているのが窺えた。「やばい・・・な」「こんな時・・・」　さくらは唇を噛んだ。「大神さんがいてくれたら、合体必殺技で」（大神一郎：前述、帝国華撃団花組の隊長。最も恋愛度の高い隊員と一緒に強力な必殺技を放てる）「スレイでもいてくれれば・・・コンビネーションで」　ふたりは目をあわせた。魔はふたたび包囲の輪を狭めてきている。「コンビネーション・・・合体必殺技」「まさか」「・・・やりましょう。できると思う、魔と戦っているという、貴方となら」「ぶっつけ本番で、か」「ぶっつけ本番ですくむようじゃ舞台はつとまらないわ。それとも、貴方はリハーサルが無いとだめかしら？」　さくらは殊勝な笑みを浮かべた。ルディは眉を上げ、ついで不敵な笑いでそれに返した。無言で腰をためると、剣を振りかぶり、肩に担いだ。さくらはひとまず鞘に剣をおさめ、柄に手をかけて足を一歩踏み出した。呼吸のひとつごとに二人の気が高まっていく。ただならぬ気配に、外の騒ぎの最中にも巣の中にこもっていた鳥が、けたたましい羽音をたてて飛び去っていった。狭まっていた魔の囲みはふたたび広がっていった。呼吸が少しずつ同調していくのが分かった。（まだだ）（まだ）（まだ）（まだ）（後少し）（もう少し）（もう少し）（今だ！）　裂帛の気合いが、ルディの口からほとばしった。「天に輝くアルゴル星は！」「皆の明日を導く光！」「今、その光を大いなる力にかえて・・・檄！桜花光臨！！」　ルディの降りおろした剣が金色に輝き、鞘から放たれ、薄紅色の光に包まれたさくらの刀と交差した。瞬間、輝く球形の力場が出現し、凄まじい勢いで膨らんでいった。力場はすべての魔を飲み込み、木々をなぎ、地面を穿ち、その勢いは留まるところを知らなかった。「うおおおおおおお！」「えええええええい！」　突然、ルディの剣が震えだした。さくらの差し料、霊剣荒鷹はともかく、ルディのセラミック刀はごく一般的なものであり、また歴戦の疲労もあり、この未完成の技を中継する媒体としては明らかに不足だった。「うああっ？！」「きゃああああああ！！」　刀身が砕け散った。力場はねじ曲がり、うねり、暴れ狂い、天を突く高さに伸びあがると、巨大な一匹の光る龍の形となった。龍は贄となるべき二人の人間を地上に見つけると、その顎を大きく開いて襲いかかった。　閃光が夜空を青白く染め、地響きが山々を揺るがせた。　ここは、閃光と地響きの源だった場所である。丸く地面がえぐれ、草一本さえ残っていない、その中心に人間がふたり倒れている。ひとりは金髪の男、もうひとりは黒髪の少女である。「おのれの力の制御さえままならんとはな」　星明かりの中、木々の影の間から滲み出るように現れた、闇よりも暗い一つの影があった。全体の輪郭ははっきりとしないが、その中に顔だけが浮かび上がっていた。（以上「サクラ２やってないの」ちゅん）
	（こっからｂｙがりゅー）「なん・・・だ・・・クソ、新手か！？」ルディはよろよろと立ち上がり剣もないまま身構えた。足元はまだおぼつかない。相手は白いスーツに青いシャツ、そして黄色のネクタイをしめ、手には銃のような物を持っている。そして目元は、まるで氷のように冷たかった。「だとしたら、どうする？」男はルディに言った。かなり、強い。ルディはガラにもなく体が震えるのを感じた。さくらはまだ気を失っている。傷ついた体で、彼女を守りながら戦うのは不可能な気がした。しかし、退くことは考えられなかった。けれど瞬間、後ろから人の声がした。「ちょっと！一人で先に行かないでよ！キョウジったら！！」この男の連れなのであろう茶色の服を着たショートカットの女性は男の事を「キョウジ」と呼んだ。（葛葉キョウジ＆レイ・レイホウ：出展、真女神転生デビルサマナー。キョウジは悪魔を従え戦う現代の陰陽師とも言える存在、銃の形をしたコンピュータ「ＧＵＭＰ」を駆使して契約を結んだ悪魔＝「仲魔」を召還する。ゲームでは開始後三十分で黒幕に殺され、魂の抜けたキョウジの肉体に同じく黒幕に殺された一般人のプレイヤーが入り込み、ゲームの主人公になるのだが、ここでのキョウジはいわば初代キョウジ。レイは彼のパートナー。彼女の家は優秀なシャーマンの家系であり、代々葛葉の者を守護してきた。自らの中に神を降臨させ、その魔力を扱う事ができる）「キョウジ、この子は？」ルディをさしてレイがキョウジに尋ねた「さあな。敵じゃなさそうだが、大したヤツでもなさそうだ・・・」「なんだと！」「絶対に勝ち目のない状況で強がり、しかも周囲の敵にも気付かない。だから大したことがないと　言ったまでだ・・・出てきやがれ！」キョウジがそう言うと、さっきと同じ連中が姿を現した。しかもその数はさっきの倍以上である。「ばかな・・・いつの間に！？」「そっちの嬢ちゃんを連れてさがっていろ。お前に本物の力という物をを見せてやる。」キョウジはそう言うや雲霞の如き敵を前に臆しもせずに呪文の詠唱を始めた。ルディは、大地が、そして大気が振動するのを感じた。ルディの額に冷たい汗が走る。「荒ぶる神々よ・・・その浄化の炎の威、我が前に示せ！喰らえ！メギドラオン！！！」それはまばたく暇さえない、一瞬の出来事だった。キョウジの掌から発せられた蒼い炎の前に、敵はその消しかすさえも残してはいなかったのである。「メギド・・・ラオン？蒼い・・・メギド！？あ、あんたは一体！？」（ｂｙがりゅー）
	ルディはその圧倒的な力を目の前にして驚きを隠せなかった。「命が惜しければここから立ち去った方が身のためだと思うがな。」キョウジはそう言うと、林の奥へ立ち去った。「ああっ、キョウジ、待ってよ。まったくもう・・・」「一体・・・何者なんだ・・・」ルディの問いにレイは悪戯っぽい笑みを浮かべながら答えた。「・・・彼は悪魔召喚師よ。」「デビルサマナー・・・」「また縁があれば会う事もあるかもね。じゃあね。」唖然とするルディに一瞥をくれるとレイはキョウジの消えた林の奥に姿を消した。「あ、ちょっと待って・・」「ううん・・」我に返ったルディが後を追おうとしたとき、気を失ってたさくらが頭を押さえながら、起き上がった。「うう・・魔物は？」さくらがルディに問いかける。「あ、さくらさん、大丈夫？魔物はもういないよ。」「そう・・・良かった・・・」合体技で力を使い果たしたのか、さくらはかなり疲れている様子だった。「もう魔物は来ないだろうから、朝まで休もう。もう不寝番はいらないだろう」「ええ・・」ルディも疲れ果てていた。だが、念のため、さくらが寝静まった後も起きて不寝番をしていた。（ファル・・・無事でいてくれよ・・・）そして夜が更けていった・・・。
	（ここからはすずしろせり）「・・・て・・ィ・・・起きて・・・起きてってば、ルディ！」聞きなれた、しかし妙に懐かしい声に、ルディは起こされた。「そ、そんなに揺すらなくたって起きて・・・ファル！？」確かに、目の前にはファルがいる。「ファル！良かった、無事だったんだな！」「ええ、何とか・・・時間が惜しいからすぐにでも出発したいけど・・・その前に朝御飯食べよ。安心したら、、おなかすいちゃった・・・」その一言に、くすくすとさくらが笑う。軽く朝食を済ませ、頂上に向かう３人。「あ・・・あれ見て！」さくらが頂上を指差す。なんと、頂上のあたりから光が溢れ出している。「あの光・・・何だ？意志を持っている・・・？」よく見ると、幾筋もの光の糸がそれぞれ操られているかのように動いているのだ。そのうちの一本がこっちに向かってくる。「な、何？・・・きゃぁーーーーっ！！！」光の糸がさくらにくっつくと、引っ張りあげて頂上のほうへ戻っていく。「さくらさん！」慌てて追いかける２人。何とかさくらを見失わずに頂上まで追ってこれたが、頂上の光景は、異様であった。「あれは・・・空間の、歪みって言うのかしら・・・」あたりにはいくつもの空間の歪みとも言うべきものがある。その一つにさくらが放り込まれてしまう。「！！！」そして、光の糸は、さくらが放り込まれた空間の歪みを繕いもののように縫いあわせ・・・何も、なくなった。次々と同じような事が起き、空間の歪みが消えていく。ふと、ルディが光の糸のもとを探ると、一人の少女がいた。白いシャツに深緑のジャンパースカート。真紅の髪。大人びた表情であったが、少し違和感を感じる。しかし一際目を引くのは、額よりもやや上のあたりに角が生えている事である。光の糸は角の先端から発せられていた。（謎の少女の正体：吉沢弓美　登場作品：ゆみみみっくす／ゲームアーツ　本来はちょっと優柔不断で空想癖のある女子高生だが、別の世界から落っこちてきた　ユニコーンと『重なってしまった』ために、騒動に巻き込まれる。異世界同士をつなぐ穴に　近づくとユニコーンに体を支配され、上記の描写のように『穴ふさぎ』をする。　・・・何か説明が違うかも（＾＾；）やがてあたりに何もなくなると光の糸も消える。同時に、少女の角が消え、大人びた表情が失せる。（Ｂｙすずしろせり）