「丸腰でか？ナメられたものだな、俺も。」
キョウジはそう言うとルディに斬りかかっていった。
「これでも・・・喰らいなっ！！」
「速い！かわしきれないっ！！」
猛スピードでルディとの間合いを詰めるキョウジに対し、武器を持っていないルディはとっさに防御の姿勢
をとった。しかし次の瞬間キョウジの刀身は凄まじい輝きを放ち、ルディは相手が見えなくなった。その上
をキョウジが斬りつける。その衝撃は何重もの熱波となり、ルディは声をあげる事もできず倒れ伏した。
「ルディっ！！」
「死なない程度の手加減はしておいた・・・これが俺の得物、陽皇覇剣（ようおうはけん：同ゲーム最強の武器
一回の斬撃で２〜７回ダメージを与える。農耕民族に見られる太陽信仰の産物と言われる太陽の剣）だ！」
キョウジはそう言うと剣を鞘に収めた。しかしルディも満身創痍ながら立ち上がった。
「まだだ・・・まだ終わっちゃいないぞ・・・」
「無理よルディ！それよりはやく手当を！！」
ルディに駆け寄り、その体を支えながらファルが言った。ルディは無言でその手を振り払うと、再び戦いの
姿勢を取った。しかし息は荒く、膝は笑っている。さらに全身に火傷を負い、とても戦える状態でない事は
誰の目にも明かであった。
「フン、根性だけはいっちょう前か。しかしそれだけじゃ、ましてその甘さを貫こうというのなら、確実に
死ぬことになるな・・・ホラよ。」
キョウジはそう言うとルディに一本の剣を投げ渡した。
「・・・・・・？」
「その甘さを貫こうというのなら、コイツぐらいは使いこなす事だな。」
ルディは剣を抜いてみた。悪くはなさそうな剣である。しかし本当に強力な武器、例えばラコニアソード等に
比べると数段下な気がした。ルディは思わず眉をひそめた。
「偉そうな事言うわりには大したことのないモンよこしやがってってツラだな。確かにそいつはそんなに
強い武器じゃない、その状態ではな。」
「え？”その状態では”って？」
キョウジの言葉の意味が分からず、ルディは聞き返すようにオウム返しに聞き返した。
「いままで無数の人間がその剣を手にしてきた。しかし、その剣の、草薙の剣の真の力を引き出した者は
その剣の長い歴史の中でも二人しかいない。」
「それは・・・誰と誰なんだ？」
「一人は日本武尊（やまとたけるのみこと）草薙の剣の初代所有者だ。あとの一人は・・・知らん。もっとも
知ったからとてどうなるものでもないがな。」
「なら、どうすれば・・・真の力を引き出せるんだ！？コイツの、草薙の剣の！！」
「さあな。所有者の魂に呼応すればとだけは聞いているがな・・・レイ。」
キョウジは自分の後ろにいるレイの方を向いた。
「なに？」
怪訝そうな顔をしながらレイが言う。
「しばらくこのガキどものお守りをしていてくれ。」
突然のキョウジの言葉に驚くレイ、無論驚いたのはルディ達も一緒である。
「え？ちょっと！キョウジは！？」
「俺はしばらく一人でいさせてもらう。じゃあな、あばよ。」
そう言い残すとキョウジはもう後ろも向かず山を降りていってしまった。
「あ！ちょっとキョウジ！！ったく勝手なんだから・・・」
「えっと・・・レイ、さん？」
「そうよ、私の名前はレイ・レイホゥ（麗鈴舫）。麗家は代々葛葉に・・・キョウジの家に仕え、守護して
きたの。まあ、そんな事はあなた達には関係ないし、彼とはビジネスパートナーとでも言っておいた方が
正しいかもしれないわね。」
「それで、どうしてこの山に来ていたんだ？」
「あなた達も見たでしょう？時空の裂け目を。ああいうのは一つだけじゃないわ。この世界のあちこちに
ああいうのがあるみたいなの。その原因の調査ってとこかしら。ま、あとの話は歩きながらしましょうか。
さ、行きましょ？」
「行くって・・・どこへ？」
「まだ私達が行ってない所へ。それでかつ、強い力を感じる所へね。」
「あんたと、一緒に？」
「そうよ、それとも、他に何かアテがあるの？」
そう言われるとルディとファルも心細い。二人とレイが一緒に旅をする事が決まるまで、ものの二分とかか
らなかった。そしてレイはルディの顔をまじまじとのぞき込み、微笑んだ。
「ルディ君って言ったっけ？不思議な子ね・・・今は大したことない力だけど、なんだかすごく強いものを
感じるわ・・・フフ、信用してない？これでも一流のシャーマン（祈祷師）なのよ、私。」
ルディ、ファル、そしてレイはまだ目が醒めぬ少女をかつぎ、歩き始めた。
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