夢幻之星学園
「ふう、ようやく出発か・・・」
出発当日の朝、既にバスに腰掛けたリンがリナに言った。
「ホント、旅行会社のストがこんなに長く続くなんて、ねえ」
「加えて旅行会社の社長が高飛びしてたって噂もあるけど・・・」
かなりの順延期間を経て、ようやく始まったデゾリスツアー、例年は２年生だけの
イベントなのだが、今年はデゾリスで１００年に１度の「星祭り」と呼ばれる
式典があるという事で、全学年合同のイベントという事になっている。返す返すも
「合同イベント」が好きな学校ではある。バスの中では既にガイドがデゾリスの歴史
などについて解説をしているのだが、ほとんどの生徒は聞いちゃいない。その
雑談の内容は様々だが、やはりこの間行われ（色んな意味で）過去最高の盛り上がりを
見せいていた球技大会についての話題が多いようだ。
何はともあれ長い沈黙期間を経て開催されたデゾリスツアー、一体何が起きる事やら。
（ｂｙがりゅー）
さて、出発直前の保健室にて...
生徒の異常事態にいつでも対応できるよう、出発の準備を整えていたアンヌ先生、
でもその表情はちょっと物憂げ。
「アンヌ先生、そろそろ出発の時間ですよ。」
はっとして振り向くと、そこには物理のハインツ先生が呼びに来ていた。
「あ、はい、もうすぐ終わりますので...」
いきなりの訪問に、アンヌ先生ちょっと赤面。
「ティムの事が心配なんですか。」
いきなり核心をつかれ、少しあわてるアンヌ先生。
「え、う、うん。」
「今回の修学旅行、中等部は別々のスケジュールですからね。」
「何事も起こらなければいいのだけど...」
さて、この2人の話しているティムについてだが、
ティムは現在中等部に通っている2年生。ハインツのいとこに当たる。
ただ、彼女の家は母親が早くに亡くなって以来、父親のダラムが男手一本で育ててきたが、
つい最近、ダラムが脳卒中で入院。幸い命は取り留めたものの、
未だ意識が戻らないために長期入院、生活レベルは一挙に低下してしまった。
それはともかく、初等部からこの学園に在籍していた彼女ではあったが、
この事件のために一時期は学園を退学せざるを得ない状況まで追い込まれたこともあった。
何とかハインツの取りなしで退学の事態は免れたものの、それでも生活は苦しく、
学園が終わった後や早朝に生活費を稼ぐためにバイトをしているが、ほとんど焼け石に水。
その影響も手伝って、学園内で卒倒することも多かった。
さて、話は1年前、ティムが中等部1年の新学期の時にさかのぼる....
その日の最後の授業は理科(担当はハインツ)、
ティムはこのところの無理がたたって授業もうわの空。
ハインツの方もティムが最近アルバイトを始めたことは聞いていたので、
かなり心配していたが...
授業終了後、見かねてハインツがティムを呼び止めた。
「ちょっとティム、最近無理しすぎていないか？」
「ううん、平気。何も心配しなくてもいいよ。お兄ちゃん。」
「心配するなってったって、授業中も随分顔色悪かったぞ。
だいたいお兄ちゃんなんて呼び方、学校内ではするなと言ってるだろ。」
「だって、お兄ちゃんはお兄ちゃんでしょ、別に気にかけなくてもいいじゃない。」
「あのなあ... それよりその様子だとまたバイト増やしてるな。
生活が苦しいなら僕に一言言ってくれれば...」
「大丈夫だって、ティムだって一人前な...ん...」
バターン！
「え？」
派手な音を立ててティムが卒倒してしまった。
「ど、どうしたんだティム？」
ハインツがティムの頬を軽くたたく。しかし反応はない。おまけに顔色が青い。
「た、大変だ！」
間の悪いことにあたりには誰もいない。とりあえず保健室へつれていくことにした。
「失礼します...」
保健室は留守だった。
「困ったなあ...あ、そういえば今学期から保健の先生が替わるとか言ってたっけ。」
始業式の時はハインツは出張していたので、新任の先生がどういう人がいるのが分からなかった。
とりあえずベッドがあいていたので、何とか彼女をベッドに乗せると、
校医の先生を呼びにいこうとしたが、ちょうどその時地震が起こった。
「と、とと、地震？...うわ！」
冷凍庫の隣の薬品棚の薬品がいきなり落ちてきた！
とっさに押さえようとするが、
「いてっ！」
薬瓶の1本が薬品棚から落ち、ハインツの頭を直撃！
しかも蓋がゆるんでいたのか、中身まで直撃してしまう。
その中身は...消毒用アルコール！
「ふ、ふにゃあ〜〜〜」
アルコールのたぐいに極度に弱い(そのために専攻が物理)ハインツは、
そのまま卒倒してしまった...
「う、うーん...」
「気がつきましたか？」
「え、こ、ここは...」
気がつくとベッドの上に寝かされていた。頭がずきずき痛む。
気になって手を当てようとすると、
「あ、まださわらない方がいいですよ。」
びっくりして声のする方を向くと、そこには清楚で優しげな瞳を持った美人が立っていた。
こういったことにはとんと疎いハインツ先生、思わず顔が紅潮してしまう。
「あ、ああ、すみません。え、ええっと...」
「アンヌ・サガです。今学期から新しく赴任してきました保健医です。
そういえば見たところあなたもこの学校の先生のようですけど、初めてみる方ですね。」
「あ、ええと、物理担当のハインツです。始業式の日に出張でしたもので。
あ、そういえば、先にベッドに寝ていた生徒はどうしました？」
「ああ、あの子ならもう帰りましたわ。何でも急ぎの用事があるとかで。」
「何だって！ い、いてててて...」
「急に動かない方がいいですよ。まだ直っていませんから。
それより、あの子あなたのことをお兄ちゃんと呼んでいたけど...」
「ああ、そのことですか...」
ハインツは、ティムについてのことをアンヌに話した。
「そうですか、そんなことが...」
「とにかく、あいつにはあまり負担はかけられません。」
「それにしても、大変でしたのよ、ちょっと保健室を留守にしている間に地震が起こったんで、
駆けつけてみたら先生が倒れてて、それで先生の側にお兄ちゃん、お兄ちゃんなんて
ティムちゃんが一生懸命叫んでいたんだから。」
「はは、あいつらしいですね。」
「それで、ティムちゃんと私で、先生をベッドまで運んだんですの。」
「あ、どうもすみません。...って、まさかあいつも手伝っていたんですか。」
「そうよ。それでまあ、ベッドにつれていった後、時計を見てあわてて出ていったんですよ。」
「あいつ、本当に体壊さなきゃいいんだけど...
それにしても、倒れた生徒を保健室につれていって、自分が保健室のお世話になるなんて...
なんだか情けないですね。」
「うふふ。あ、そうそう、もしよろしければ彼女の食事でも作って差し上げましょうか。」
「ええ、そんな、悪いですよ。」
「大丈夫。こう見えても料理には自信がありますし、
それに見たところ彼女あまり料理は得意な方じゃないでしょ。」
「う、まあ、確かに...」
確かにティムは料理が不得手なほうで、
家庭科の授業でも包丁の使い方を間違えて危うく指を切りそうになっていたことが
幾度となくあった(そのたびにクラスメートが止めていたので、幸いにも大惨事に至ったことはない)。
「それなら、決まりね。」
それから数日後、ティムの家でアンヌとハインツのささやかな会食が開かれたが、
それがアンヌとハインツのなれそめになったのだから、人生は分からないものである。
こういった経歴がありながら、この2人の噂があまり広まらなかったのは、
2人ともどちらかというと堅物タイプのうえ、
ティムに対しての情報の対価があまりにも低いため、
シルカもあまり情報源として重要視していなかったと推測される。
近頃は2人の積極的な援助も手伝って、体調を崩すことも少なくなってきたのだが...(By 夢幻紳士)
ここは、スレイのクラスのバスの中。
バスガイドさんの有益だが、生徒にとっては退屈以外の何者でもない、デゾリスの説明が終わった。
ある生徒の「このバスって、カラオケがついてないんですか？」の一言により、バス旅行に
つきもののカラオケタイムが始まった。ここに、ダン先生がいれば、１８番の「兄弟宇宙船」
や「リーク三兄弟」が聞けたかもしれないが、残念・・・いやいや、喜ばしいことに、
彼はライアの代わりのクラス担任として、リナのクラスのバスの中にいる。
したがって、このバスの中では、ダン先生の美（？）声が、真空の宇宙を突き抜けて響いてくる事はない。
そんななか、「５代様」ことスレイ・ウォルシュはフォーレンと一緒の席で、担任と副担任の
先生の真後ろの席に座っていた。スレイ曰く、「ここが一番静かで良い」との理由。
普通に決めたのでは、前後左右、四方八方から女の子達に話しかけられて、落ち着くことが
できないからであろう。人気者も楽ではない。
安心して落ち着ける場所を確保したスレイは、出発の前日に届いた父親からの手紙の事を考えていた。
「親愛なる我が子 スレイよ
今度の修学旅行は『星祭り』に合わせて、全学年合同でデゾリスに来るらしいな。デゾリスで技師主任
をやっている私も、また、久しぶりに生のお前の顔を見れる機会があるのではと期待している。
自由行動の時間くらいはあるのだろう？ 出来れば、その時に、父さんの仕事場に来てほしい。
あ、お前の友人達をつれてきても構わんぞ。いい社会見学になるだろう？・・・そんな年でもないか？
さて、本題に入ろう。今まで、仕事と研究で家庭を顧みなかった私だが、ようやく罪滅ぼしができそうだ。
長年の研究課題であった、高純度のラコニアの精製についに成功したのだよ！！ああ、この喜びの
万分の一でもお前に分かってもらえるだろうか？ さらには、高純度ラコニアを加工する技術にも着手
できそうだ。・・・わかっている、私の研究など、お前には何の興味も無いだろう。
いや、デゾリスを穴だらけにして、デゾリアンとパルマ人の不和を呼ぶ原因に私が関わっているくらいの
認識であろう。だが、私は求めるものをより理解したい、それだけなのだよ。ラコニアの開発は
全アルゴル人を幸せにできる、私はそう信じている。・・・・このことは、二人であった時に話そう。
前置きがだいぶ長くなったが、私も今度の事で出世し、立場もより強化され、安定した。
今度こそ、母さんとお前をデゾリスに呼び寄せて、一緒に暮らす事ができそうだ。
夢限之星学園も、いい学校だが、デゾリスにだって、高度な学問を授けてくれる機関はいくらでもある。
お前さえ良ければ、その内のいくつかに、自己推薦入学の手続きをとっても良い。
今度こそ、家族水入らず、三人仲良く生活しよう。お前のいい返事を待っている。
お前を愛する父より」
「・・・・・勝手なんだよ、親父は」
呟く、スレイにフォーレンが話し掛ける。
「？ どうしたんですか、スレイ？」
「いや・・・・何でもないさ・・・」
スレイは窓の外をむいたまま、流れる景色を見つめていた。（ｂｙ Ａｌｅｘ＝Ｌｅｚａｒ）
「ああ・・・ファルさん・・・」
修学旅行のバスの中、お約束通り最後列に陣取った
蟻（アームドアント）、カマキリ（グラスキラー）、
スポンジ（マンカバー）の「不良」三人（？）衆の
中でグラスキラーだけは気もそぞろな感じで妄想に
ふけっていた。
「星祭り」・・・百年に一度、極寒のデゾリスの地
だけで見られる、オーロラと流星の天体ショー、
その美しさは見る者を魅了し続けてきた。その百年に
一度のイベントだが、グラスキラーはほんの数週間前
までは何の興味もなかった・・・そう、ファルに
出会うまでは・・・
「綺麗ね・・・」
「いや・・・君の方が綺麗だよ・・・」
「そんな・・・（ポッ）」
「ファル・・・」
「グラスキラーさん・・・」
ボカッ！！
「い、痛ってぇ〜、なんだよお前ら！」
「さっきっから何度も呼んでるだろうが！それを
お前が顔赤くしてヘラヘラしたツラして気付かな
かっただけだろが！」
アームドアントの後頭部への一撃でグラスキラーは
我に返った。にしてもさすが古典的な不良（勘違い
含む）、妄想も妙に古典的ではある。
「お、おおお前、さ・最近へへへ変だぞぉおおおぉ」
「え、ええい、うるせい！」
グラスキラーは窓の外をむいたまま、流れる景色を見つめていた。
（ｂｙがりゅー、ラスト一文はパクり））
ここは、夢幻之星学園大学部。
「マザーブレインの開発は後少しで終わります」
コンピュータの開発にかけては学園一の天才といわれるシーレン３８６が、ぼそっと言った。
彼が手掛けているコンピュータは学園を維持管理をするために、理事長から依頼されて、開発が続けられている。
「シーレン君。ちょっと」
シーレン３８６がほとんど休息なしで作成し、書いたシステムの系統図をチェックしていたオラキオ教授が、
それでもなおシステムソフトを作っている彼を呼んだ。
「教授。何ですか？」
「ここに書いてある、メモリって何だ？」
「は？え？」
教授に指摘された部分を見た彼は、たちまち混乱した。
そこには、システム系統とは関係ない、変な部分に組み込むように指定されていたからだ。
「つ、作り直します」
暴走の手前にきている彼の表情は、アンドロイドのくせに暗かった。
いったいいつになったら、実用化されるのか。
がっくり肩を落として、彼はまた系統図と格闘を始めたのだった。
そして、夜が来て、朝が来た。
「きょーじゅー。直しましたああ」
シーレン３８６が例のシステム系統図を持って、オラキオ教授のもとに来た。
その彼を見た教授はびっくりした。
システム系統図はともかく、持ってきた彼の頭からは煙が立ち上り、おまけに動きも
ぎくしゃくしていまにも壊れそうだったからだ。
（わし、やっていたら、たぶん死んどったな。こりゃ）
そうつくづく思いながら、彼が持ってきた系統図を広げる教授。
と、その時、オーバーヒートして機能停止したシーレン３８６が倒れかかってきた。
「うはーっ」
教授はかわそうとしたが、結局、彼の下敷きになってしまった。
「オラキオ教授！シーレン君！」
教官室はパニックに陥り、倒れた彼の体重３００キロの下敷きとなった教授は運良く助かったが、
２ヶ月の病院生活を送るはめになった。
開発はまたしても、遠くなった。
いったいいつになったら完成するのだろう。
オラキオ教授のシーレン３８６下敷き事件が学園に噂として広まった頃。
「パイク。バイク直してくれ」
旋盤とフライス盤、その他工作機械の音が入り乱れる、学園一の騒音工場とされる機械部の部室
兼工場に、ユーシスが自分のバイクを持ち込んできた。
「何だ？故障か」
工場の片隅で、スライサー部に頼まれたスライサーを作っていたパイクはユーシスに聞いた。
「うん。そこの坂でエンジンが止まってしまった。で、全然かからん」
ユーシスは困った表情で答えた。
パイクは困った。自分が作り、修理できるのは学園の農園で使う鎌、鍬の類いだけだったからだ。
それゆえに、誰からもブラックスミス・マイスターと呼ばれる。だから、バイクを直してと言われても、
彼は修理ができないのだ。
「どうしたんだ？二人とも」
そこへ、機械部顧問のカインズ先生がやって来た。
「なんだ。バイクの修理か。それなら、わしがやっちゃる」
二人の事情を聞いた先生はそう言った。
それを聞いて、ユーシスは安心したが、パイクの方はといえばムンクの叫び状態になっている。
「お、恐ろしい。恐ろしい・・・」
鼻歌混じりに修理作業に入った先生を見ながら、呟くパイク。
「何が、恐ろしいんだ？」
ぶつぶつ呟いているパイクに、ユーシスが聞く。
しかし、パイクは何も答えてくれなかった。
放課後。
ユーシスはパイクがムンク状態になった理由を知った。
「これって、めちゃくちゃヤンキー仕様やないかい」
どノーマルだったバイクにいつのまにやら日の丸がかかれ、ごてごてとしたお飾りがつけられ、
さらに直管マフラーになっていたからだ。
涙もんである。もう恥ずかしくて乗る気がしないユーシスだった。
（オラキオ教授の災難＆ユーシスのバイク修理 by 沖野守船）
例の学園維持管理システム「マザーブレイン」が完成した。
その完成を祝って、学園では完成記念祝典が盛大に行われた。
吹奏楽部のファンファーレに続いて、誰かが作曲した「学園式典序曲」が高らかに講堂に演奏される。
しかし、この学園って本当にイベントが多い。過去の記録を見ても一年のうちほとんどがこの類いである。
理事長の長い長い講演が終わった後、開発に携わった関係者が紹介された。
「しかし、よくやったな。俺の弟は」
式典のさなか、フォーレンが呟いた。その表情はアンドロイドにも拘らず、誇らしげだった。
「で、シーレンは？」
誰かが突っ込む。
「ああ、ちょっとな。暴走が始まったんで、ここにはいないよ」
「ふふふ、いいこと聞いちゃった」
フォーレンはしまったと思った。
突っ込んだ相手が、言わずと知れたシルカだったからだ。
彼女は学園一の情報屋だから、きっとあの事件の真相を探り出すに違いない、と思われた。
もっとも、シーレン３８６はあの事件以来、もともと暴走ぎみだった思考回路が輪をかけてひどくなり、
夜、停止していても、勝手に起き上がり踊っていたりしていたからだ。
だから、兄としてのフォーレンは、この状況を解決すべく、シーレン３８６の思考回路を修正すべく、
あらゆる手を使って修復を試みていた。
それゆえ、シーレンはここにいないのであるが、その真相を彼女にもたらすと、ちょっと厄介なことに
なりそうだったので、いろいろ聞いてくるシルカに適当なことを言ってその場をごまかした。
ただ、それが後程、よくありがちなことだが、フォーレンに降り掛かる災いの原因になった。
だが、彼はそんなことは知るよしもなく、進行して行く式典を見ていた。
（学園式典その１ 沖野守船）
式典が無事終了した後、実際に開発された学園管理システム「マザーブレイン」が公開された。
場所は大学部の空き教室である。
マザーブレインは教室の半分を占領する巨大コンピュータだった。
「すげーな。これ、ほんとにシーレンが作ったのか？」
誰と言わず、見た者はそう感想を漏らす。
大きさといい、性能といい、圧倒されることばかりだった。
そして御多分に漏れず、それを悪用しようと企む奴がいた。
ジオである。
彼はこのコンピュータを乗っ取り、敵対するスレイをこてんぱんにやってしまおうという魂胆があるのだろう。
しかし、読者も知ってのとおり、この男はまったくすることは大きいが、てんで成功したことがない。
例のごとく、暗幕拝借マントをはおってやって来たジオは、早速、五代様打倒の執念を燃やし、コンピュータの
スイッチを入れた。
マザーブレイン非公式起動である。
「セガエンタープライセス万歳！！システム起動失敗。もう一度パスワード入力のうえ、再起動して下さい」
「なんじゃそりゃ！！」
エラーメッセージを見てこけてしまったジオだった。
こうなれば、意地である。
「なんとしてでも起動してやる！」
ジオの執念はさらに膨れ上がった。
（学園式典その２ by沖野守船：すまん．．．。ジオのファンよ許せ。）
それから５時間後。
すでに日が落ちて、外が夜の暗闇に包まれた頃、ようやく、ジオはマザーブレインの起動に成功した。
「ふう、やっと起動したか。これで、生徒会は俺の物だ」
と、ひとりほくそ笑む彼。（暗い、くらいぞ〜。ジオよ）
しかし、ここで彼のささやかな野望はまたしても打ち砕かれた。
「注意！これから先はシステムが使うソフトです。指定しても開くことはできません。（開く時はロックを解除
してください）」
といった、メッセージが出、さらにセキュリテイシステムが働いて、教室のドアが開かなくなってしまったのである。
それには、さしものジオもうろたえた。
「ここから出してくれ〜」
完全密室になってしまった教室の中から、ドアを激しく叩く音と彼の叫びが闇の中にこだましたが、夜間であるため
誰も助けに来てくれない。
そして、朝が来た。
マザーブレインの最終調整に来た、ようやく復帰したばかりのシーレン３８６が、恐怖の夜を過ごし、そのあまり、
髪が真っ白になってぶっ倒れている暗幕拝借マント男を発見した。
彼はすぐその男が誰であるか分かった。
「オ〜イ。起きろ。朝だ」
白目を剥き、泡を吹いているジオに、幾度となく呼び掛けるシーレン３８６。
しかたなく何度か、頬を軽く叩いてみると、ようやくジオが目を覚ました。
目を覚ましたジオは自分が助かったことに気がつくと、安心のあまり腰が抜けて立つことができなかった。
この事件は、かくのごとくシルカによってスクープされ、前代未聞の学園の伝説になった。
そして、その後のジオといえば、職員室に呼び出され、ラ・シーク教頭と理事長に大目玉を食らったのだった。
また、彼に不正使用されそうになったマザーブレインは、後日、シーレン３８６の手によって、適正に運用が
開始されたのはいうまでもない。
（恐怖の閉じ込められ事件 by 沖野守船：すまん・・・。ジオのファンよ。
ファンタシースター全てのファンよ。みんなすまん・・・。悪気はナイ）
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