Ｐｈａｎｔａｓｙ Ｓｔａｒ 〜時の始まり〜
第１話 全ての始まりに・・・
人々はパルマ星を失い宇宙へと新天地を探し飛び立っていった。
その際に、移動移民船団をいくつか編成したらしいが・・・その船団の
正確な数は誰も知らない・・・。
この宇宙船は一つ一つが円形になっていて、その中ではパルマ星同様の
生活環境が用意されており快適な生活を送れるはずだった・・・。
だが、この船は全部で７つのエリアに別れており全てのエリアが独立し
た国になっていた・・・これが災いしたらしく７つの国はそれぞれが対
立しはじめる事となるが中央にあるエリア４の王は、一番狙われる確立
が高いのは自分の国だと思い他のエリアからの通路をすべて遮断してし
まった。
その為、誰もエリア４へ入る事も出る事もできなくなってしまった。
しかし他のエリアの王達はそのような事は気にする事もなく互いに侵略
しあい戦争をしていた。
ここはエリア２・・・今はエリア１の国に侵攻されていて、もやは落ち
るのは時間の問題となっていた。
「王様！ここは危険です！」
「くっ・・・こうなったら・・・やむ終えん！」
国王は玉座の下から銀色の小箱を取り出した。
国王は、この銀色の小箱は何時の頃からここに有るのかは知らないがこ
の箱が一体何なのかはとても良く知っていた。
兵士は、突然国王が奇麗な銀色の小箱を取り出したのを見て恐らくこれ
を持って逃げるのだろうと思ったが国王がその箱を開けたのを見て驚愕
した。
「お・・・王様！？これは一体何なんですか！」
「全ての・・・ありとあらゆる恐怖と絶望が入った箱だ・・・。」
兵士には国王が何を言っているのか分からなかったが、その箱から黒い
煙・・・いや霧の様な物が出てくるのを見ていると何となくだが国王の
言っている事が理解できた。
箱から出てきた霧の様な物は、次々とバイオモンスターを産み出し始め
た。
「お・・・王様！？」
「どうせ何処にも逃げ場が無いのなら・・・この世に生き残る全ての愚
民共に恐怖と絶望を与えてくれる！」
国王は狂ったように叫びつつ剣を手にとり近くに居た兵士を斬り殺すと
次から次へと無尽蔵に現れるバイオモンスターに向かっていった。
十数匹のバイオモンスターを倒した所で力尽きたらしくバイオモンスタ
ーの餌となってしまった。
この一件によりエリア２の国は滅び・・・そして他のエリアへとバイオ
モンスターを送りだす事となる。
そしてバイオモンスターが無尽蔵に現れるエリア２を自分の国の領土と
する者は居なかった・・・。
・・・数年後。
エリア２からは・・・銀色の小箱からは黒い霧が出なくなっていた。
全ての霧を出しつくしたのか・・・あるいはフェイントか・・・。
それは分からないが、とにかく既にバイオモンスターを出すのを止めて
いた。
その為エリア２はバイオモンスターが荒らし尽くした後の・・・荒野と
廃虚だけが残っていた。
そしてなぜかほとんどのバイオモンスターは、このエリア２からは去り
他のエリアへと向かっていった・・・。
すでに何も無いエリアだが、人は住んでいる・・・それは、戦から逃れ
て来た兵士や住処を追われた者達などが、ここエリア２で暮らしている
のだった。
その中で一人の少年が、城の廃虚を探索していた。
日々の生活の中で使える物はないかと思い、いつもこの少年は廃虚と化
した城を探索していた。
昨日は、まだ使えそうな剣を・・・そして、その前は盾を見つけていた
のでまだ何か使える物は無いかと探索をしにきているのだ。
・・・拾った剣は物騒なので御信用として自分が身につけているが盾の
方は金属製だった為かフライパンの代わりにされているので身につけて
はいなく、本来は拾った剣と盾を持って騎士を気取ろうと思っていた少
年は盾を持つはずだった手を少し寂しそうに動かしていた。
「セレナも無理矢理盾を奪わなくたって・・・。」
少年は自分から盾を奪った張本人である少女の名を言ってふと、近くに
その少女が居ないか確認するかのように辺りを見回した。
「い・・・いないよな？」
いつも、この少年がセレナの事で愚痴を言っていると必ず何処からとも
なく現れるのでつい警戒してしまう。
だが、今回は来なかったらしいが・・・。
セレナとは、この少年の幼なじみで何かと一緒に居る人達の一人なのだ
が、少し気が強いらしくいつも気に入った物があると力ずくで奪ったり
するような人なのだ。
本来ならこの少年が持っている剣も包丁の代わりだといって徴収される
所だったのだが、纏め役のダラスという２歳年上の男の説得によって間
逃れたのだった。
少年は瓦礫を退かしつつ奥へと進んでいくと銀色の小箱を見つけた。
その銀色の小箱を持つと一瞬だが不思議な感覚にとらわれた。
この小箱をずっと以前・・・はるか昔から知っているような・・・そん
な感覚になったが、すぐに我に帰った。
「なんだったんだ？今の・・・。」
考えても分からないので考えない事にして、この小箱の中身を確認しよ
うとしたのだが・・・どうやっても開ける事ができなかった。
鍵でもかかっているのかとも思ったが鍵穴は無いので違うらしい。
「とりあえず、持ってかえろうかな？」
そう言って小箱を懐にしまい、ふと思った事を口に出してしまった。
「この小箱・・・セレナに見つかったら徴収されるな・・・。」
「あたしが・・・何？」
声に驚いて振り返ってみると、そこにはなぜかセレナが立っていた。
少年はまた何処から出てきたんだ・・・と考えるが、それこそ無駄な事
だろうと判断し直ぐに考えるのをやめた。
と、セレナが少年の持つ小箱を何時の間にか取り上げていた。
「開かないわね・・・。」
セレナは小箱を無理矢理開けようと手頃な石で思い切り叩いてみたり地
面に叩き付けたり踏んでもみたが、小箱は開く気配すら見せなかった。
「何よこれ！」
怒ったのかセレナは箱を懇親の力で壁に叩き付けると、壁の耐久度が低
くなっていたのかセレナの力が強かったのか・・・壁を貫いて隣の部屋
に落ちていった。
「か・・・壁が壊れかけていたのよ。」
とっさにセレナはそんな事を言い出したので少年は「嘘だぁ！」と叫び
たくなったが恐いので止めた。
しょうがないので帰ろうと思ったその時だった・・・。
隣の部屋・・・先程セレナが小箱を投げ入れた部屋から、低い唸り声の
ような音が聞こえてきた。
どうやらそれはバイオモンスターだったらしい。
寝ていた所をいきなり小箱を投げつけられて相当怒っているのか突然少
年達に襲い掛かってきた。
「ちょ・・・ちょっとアーク！何処へ行く気よ！剣があるんだから戦い
なさい！」
少年・・・アークと呼ばれたがそういう名前らしい・・・は剣をセレナ
に渡すと何も言わずに逃げようとしたのでセレナの得意技でもある居合
い抜きラリアットをまともにくらい思わず倒れ込んだ。
そして倒れているアークに剣を渡すと自分は安全な所へ待避してアーク
を応援しはじめた。
「な・・・なんで僕が・・・。」
そう言いつつもアークは剣を構えて目の前のバイオモンスターを観察し
はじめた。
このバイオモンスターは４足獣・・・なんだかよく分からないけど犬の
ような感じがしたのでとりあえず「お手。」とか言いつつ手を差し伸べ
てみると、そのバイオモンスターはアークの手を噛み付こうとしはじめ
たので慌てて手を引っ込めた。
「なにやってるのよー！早く倒しなさいって！」
「いやぁ、あやせるかなぁって思ってさ・・・。」
「そんな訳ないでしょう！」
アークはどうしても戦いたく無かったので、何とかして戦いを避けよう
と思ったのだが、先程からこちらを観察しているバイオモンスターと後
方に居るセレナのどちらかに・・・確実に殺されると判断したので少し
でも勝率のあるほうに懸けて見る事にした。
「セレナ！ごめん！」
と言ってセレナに斬りかかって速攻で逃げれば・・・。
アークはそう思ったのだが確実にカウンターで致命傷を負わせられるの
で考え直し、やはりバイオモンスターに攻撃する事にした。
アークが切りかかろうと構え直すと同時にバイオモンスターは襲い掛か
ってきた。
それも、アークではなくセレナに向かって・・・。
アークはとっさにバイオモンスターに向かって走り出していた。
そして無意識のうちに・・・何をどうやったのかは知らないがバイオモ
ンスターを倒していたのだった。
だが、そのバイオモンスターは死に際に仲間を呼んだらしく変なバイオ
モンスターが空からやってきた。
アークには最初それが鳥だと思ったのだが・・・それは鳥ではなく背中
に羽が生えている人型のバイオモンスターだった。
「ま・・・またでた・・・。」
「さ、アーク。さっきみたいにやっつけて。」
アークには先程自分がどうやって戦ったのか覚えてないのでどうやって
戦おうか考えているとバイオモンスターが先に仕掛けてきた。
アークに向かって急降下し爪の一撃をあてると再び空へと逃げる。
一応攻撃しようとアークは剣を振ってみるが空高くに居るバイオモンス
ターに攻撃ができるわけもなかった。
「アーク・・・一体何をやってるわけ？」
「いや、届くかなぁって。」
「届くわけないでしょう！真面目にやりなさい！」
「わ、分かってるって！」
アークは剣を持ち直し再びバイオモンスターが攻撃を仕掛けてくる時に
タイミングを合わせてカウンターで攻撃しようと思ったのだがバイオモ
ンスターもそれに気がついたらしく、いつまでたっても急降下してこな
かった。
アークも構えているのが疲れてきたので少し休もうかとしたが、それと
同時にセレナの居る辺りから強大な殺気を感じすぐに構え直した。
などとやっているとバイオモンスターが空から何かを放ってきた。
それは、地面に当たると炸裂し辺りに爆風と炎を撒き散らした。
そう、恐らくこれはテクニック”フォイエ”を使ったのだろう・・・。
次々とフォイエを放ってくるバイオモンスターにアークは、とりあえず
投石で対抗してみるが空しいだけだった。
「そうだ！セレナ、あいつに向かって石を投げてみて。」
「なんでそんな事を・・・。」
セレナがバイオモンスターに向かって石を投げてみると、石は一直線に
バイオモンスターの所まで飛んでいき見事羽を貫いて叩き落とした。
「今がチャンスよ！早くとどめをいれなさい！」
「と・・・とどめって・・・もう十分じゃないか！あいつはもう飛べな
いんだ！これ以上は可哀相だろう？」
「か・・・可哀相って・・・あいつはバイオモンスターなのよ？」
「分かってるさ！だけど同じ生き物だろう？」
などとやっているとバイオモンスターは自分にテクニック”サンフォー
ス”をかけて羽の傷を癒した。
だが、アークとセレナはまだその事に気がついていない。
そしてバイオモンスターがアークに向かってフォイエを放った。
セレナにしてみれば突然アークが爆発したように見えた。
「うわぁっ！？」
「ちょ・・・ちょっとアーク！」
「ま・・・まだ大丈夫・・・。」
アークは爆発によって受けた傷から血を流し炎によってできた火傷をか
ばうようにして立っていた。
だが、どう見ても立っているのがやっととしか見えないのだがアークは
再び剣を構えて・・・倒れた。
（・・・意識が・・・遠のいて行く・・・これで・・・死ぬのか・・・
僕は・・・このまま・・・楽に・・・。）
（駄目だ・・・それはまだ早い・・・貴様にはまだやってもらわねばな
らぬ事があるからな。）
突然アークの頭の中に声が響き渡った。
その声は何処かで聞いた事があるようだったが初めて聞いた声という気
もした。
（貴様の手元にある小箱を開けろ・・・そして我を・・・。）
隣の部屋にあるはずの箱は何時の間にかアークの手の中に握られていた
のでアークは声に従い小箱を開けて、その中に手を入れた。
（そうだ・・・それでいい・・・貴様に我が力を貸そう・・・我が名は
ファルスソード・・・。）
そしてアークが目を覚ますと、アークの手には黒い剣が握られていた。
元々使っていた剣はセレナが持ってバイオモンスターと戦っているらし
い。
（まずは、その傷を癒さねばな・・・。）
再び声が頭の中に響いた。
そして導かれるがままにアークは声に従い行動した。
まるで自分の体が自分の物では無いような感覚がした・・・。
「サンフォース・・・。」
アークが使ったテクニック”サンフォース”の力によってアークの傷が
一瞬にして癒された。
そして、頭の中に響く声が何なのか考え様とも思ったがそれよりも早く
体が勝手に・・・何かに操られるかのように動いた。
「フォイエ！」
空を飛んでいたバイオモンスターに向かって放たれたフォイエは見事命
中し撃墜させた。
そして地面に激突したバイオモンスターはセレナにとどめをいれられ、
死んだらしくそれ以降動く気配を見せなかった。
「セレナ・・・殺さなくたって・・・。」
「そのせいで、さっき殺されかけたのは誰かしら？」
「いや、それは・・・。」
「・・・ところでアーク。なんで怪我が治ってるの？それと、その剣は
一体・・・？」
アークはとりあえず自分が分かっている事をセレナに説明する事にした
のだが・・・分かっている事と言えば剣が何処からとも無く現れた小箱
の中にあって、その剣のおかげでテクニックを使えるようになったとい
う事だけなのだが・・・とりあえず説明するだけしたがセレナは納得し
なかった。
「なんでアークにだけ、あの小箱が開けられるのよ！」
「僕だって知らないよ！」
再びセレナが小箱を開けようと挑戦してみたが結局小箱は何をしても開
く事は無かった。
怒ったセレナがアークにテクニックで破壊させようとしたがアークが嫌
がったので居合い抜きラリアットをアークに炸裂させた。
アークは苦しみながらも自分にサンフォースを使いテクニックって便利
だな・・・と認識したと同時に、テクニックで直ぐに回復できるならと
セレナが本気で技を仕掛け来たのでテクニックって使い方次第では自分
の身を滅ぼすんだ・・・とも思った。
ふと右手を見てみると・・・ファルスソードが消えていた。
ずっと持っていたはずの物が消えたのでアークは辺りを見回して見たが
何処にも無かった。
すると、頭の中にあの声が響いてきた。
（我は貴様と共にある・・・我が刀身を収めるべき鞘が貴様という事だ
必要な時に姿を現そうぞ・・・また、貴様が死ねば我は砕ける・・・我
が砕ければ貴様も死ぬという事を覚えておくがいい・・・もっとも我が
砕け散るという事は無いがな・・・。）
「そうなのか・・・便利かも・・・。」
「なにが？」
アークは少し説明する気が無かったので素直にカーフブランディングを
くらうことにした。
そして、自分達が住み着いている廃虚がある町へやってきた。
廃虚は・・・戦火に巻き込まれていた。
バイオモンスターと何処かのエリアの兵士達が戦っている為らしい。
恐らく自分達のエリアでバイオモンスターの駆除を行っていた所、数匹
のバイオモンスターが逃げ出してエリア２へとやってきたのだろう。
「そ・・・そんな・・・。」
「アーク！ボーッっとしてたってしょうがないわ！皆が生きているかも
知れないし探してみましょう？」
「そうだね・・・。」
「それじゃぁ、二手にわかれましょう。」
そう言うとセレナはすぐに何処かへと走り去っていった。
アークは無駄だとも思いつつも兵士とバイオモンスターの死体が落ちて
いる道を走りまわったが、誰も見つける事はできなかった。
「こんな所にも居たか！」
ふいに後ろから声をかけられたので驚いて振り向いたアークに兵士が剣
を振り下ろした。
だが、アークにはその攻撃はどういう訳かとまってみえていた。
ふざけているのかと思いつつも回避しファルスソードを出して兵士の剣
を弾き飛ばした。
「僕は人間だ！バイオモンスターじゃない！」
「そんなのは見れば分かる！」
「じゃぁなぜ・・・。」
「なぜ？愚問だな。動くもの全てを殺るのが手っ取り早いしそれに、こ
のエリアは廃虚だけだろ？」
「分かるように言ってくれよ！」
「・・・このエリアにいる奴等なんかどうなっても良いって言ってんだ
よ！ただ我々の名誉の為に・・・国王の命令でバイオモンスターの討伐
でこんな所まで来てやってるんだ！それだけでも感謝しろ！」
アークは一瞬この兵士を殺そうと思ったが、ここでこの兵士を殺しても
何の解決にもならないので止めて生存者を探そうと思ったが、兵士はこ
の町の生存者は全て殺したから居ないと説明されたので慌ててセレナを
探しに行くことにした。
するとアークが思っていた通りセレナも兵士に襲われていた。
既に何名か兵士達の方に犠牲者が出ているらしくセレナの足元に倒れて
いた。
「お・・・遅かったか・・・・。」
セレナが兵士の鎧に激しく手のひらを打ち付けて必殺”鎧通し”を使っ
ていた。
これは鎧を通して衝撃を生身の体に叩き込むという危険な技である。
アークは誰にも当たらないようにしてフォイエを放ちセレナの手を引き
逃げていた。
「ちょっと、アーク！何するのよ！皆の仇を討たないと・・・。」
「仇打ちなんかして何になるって言うんだ！」
「そんな事はどうも言いから早く、追ってきている奴等にフォイエとか
放ってよ！」
「嫌だ！」
などと言いながら、ある程度逃げ回っていると自分達が追い込まれてい
る事に気がつきはじめた。
だが、気がつくのが遅すぎたらしくすぐに追いつめられてしまった。
アークがセレナをかばうように立ち・・・いや、立たされて兵士達と睨
みあっていた。
「いい加減にしてくれ！なんで僕達を襲うんだ！」
「俺達の名誉の為さ。要らぬ噂を立てられないようにする為にお前らを
殺すんだよ！」
「なんですって！！！アーク、手加減する必要は無いわ！さっさと殺っ
ちゃって！」
だが、アークはファルスソードを構えるものの戦う気が全く無さそうだ
った。
そして兵士達がアークとセレナに襲い掛かってきた・・・。
アークはただ、自分とセレナへの攻撃を防ぐだけで他には何もしようと
はしなかった。
（あたしにも力が・・・アークみたいな力があればあんな奴等・・。）
兵士の攻撃が躱し切れなかったのかアークがダメージを受けた拍子に懐
から小箱が出てきてセレナの足元へ落ちた。
セレナは迷わず小箱を拾うと・・・小箱を開けた。
「ひ・・・開いた！？」
セレナはアークの言葉を思い出し小箱の中に手を入れてみると手の中に
何かの感触が伝わってきた。
そして手を小箱から引き抜くと手には白く輝く剣が握られていた。
突然セレナの頭に声が響いてきた。
（私の名はネイソード・・・貴方と運命を共にする剣・・・。）
「え？」
一瞬とまどったがこれがアークの言っていた突然頭の中に響いた声なん
だと認識し次の言葉を待った。
（私が貴方に力を貸します。ですが、その力はあまり強いという訳では
ありません・・・貴方が強くなるに従って私が貴方に貸す力も強くなっ
ていきます。）
「なるほどね。」
（それと・・・これだけは覚えておいてください。貴方自身が私の鞘に
なる代わりに私が砕ける時は貴方が死ぬ時・・・また貴方が死ぬと私が
砕けるという事を・・・私はまだそんなに強力な剣という訳ではありま
せん・・・余り無茶な使い方は避けてください・・・。）
「分かったわ！」
「さっきから何一人で言ってるんだよ！」
アークが振り返りもせずにセレナに話し掛けるがセレナはアークの声が
聞こえているのか、いないのか・・・とにかく無視していた。
「そうなの・・・。」
「セレナ恐いって！」
アークにしてみれば、セレナの頭に響く声は聞こえないので一人で目に
みえない何かと会話しているというその姿はとても恐かった。
だが、これは先程のアークとまったく同じ事なのだが・・・。
「グラブド！」
突然セレナが使ったテクニック”グラブド”によって産み出された重力
場は密集していた兵士達を押しつぶした。
「これじゃ、しばらくミートソースは食べれないわね。」
つぶれた兵士達をみてセレナは平然とそんな事をいった。
「何も殺す事ないだろう？そのうち諦めてくれるかもしれないのに！」
「無理よ・・・。交代で次々へと襲ってくるでしょう？全滅させて逃げ
るわよ！」
再びセレナがグラブドを使って兵士達を押しつぶし道を作っていく。
そして出来た道をセレナはアークの手を引き駆け抜けていった。
「うわぁ・・・足元に変な感触が・・・。」
「考えないの！」
アーク達が走っているのは超重力により潰れた兵士の上を走っているの
だから足元に変な感触があるのも確かだろう・・・。
アークは、この事を考えまいとしてセレナを見るとなぜか平然としてい
るセレナが非常に恐かった。
そして無事に脱出した時にアークはセレナが変わった剣を持っている事
に気がついた。
「あれ？セレナ・・・その剣・・・。」
セレナはネイソードについて簡単にアークに説明した。
小箱が開いたからアークの様に剣が取れるんじゃないかと思って手を入
れたら剣が取れた・・・とだけアークに伝えた。
他の事は記憶に残っていないのだ・・・戦う事と逃げる事に夢中で忘れ
てしまったのだろう。
（まぁ、忘れるようなら別に重要な事でもないでしょうね。）
あれからどれくらい走ったのだろう・・・。
既に日は落ち月が空に昇っていた。
周りにはもう、兵士達はいない・・・。
あるとしたら・・・元兵士達だったものくらいか・・・。
すべてセレナが倒したのだ・・・。
アークは途中で気絶したらしく、そのまま眠っていた。
「気楽な物ね・・・こっちは眠れないっていうのに・・・。」
アークに技の一つでもかけてやろうかと思ったその時だった。
突然上からバイオモンスターが降ってきたのは・・・。
そのバイオモンスターは別の場所から打ち上げられただけらしく地面に
叩き付けられてしばらく苦しんだ後セレナに攻撃をしかけようとしたの
だがネイソードで両断されていた。
「凄い切れ味ね・・・。」
「おや？助けに入り損ねたか・・・。」
「誰！」
セレナは素早くネイソードを声のする方に構え直した。
「いや、何もそんなに殺気だたなくとも襲いやせんよ。」
「・・・。」
だが、セレナは警戒を止めようとはしない。
念の為アークを起こそうと思い靴のかかと（金属補強されている）で本
人は軽く踏んだのだがアークは悲鳴を上げて更に深い眠りに落ちた。
「おい・・・今、骨が折れた音がしなかったか？」
「ふ・・・気のせいよ！」
「・・・。」
アークが突然目を覚ましてファルスソードを手に取った。
「う・・・腕が・・・痛い・・・。」
自分の腕を見てみると変な方向に曲がっているのが分かった。
「お・・・折れてるー！！」
「いつもの事でしょう？騒がないの。」
「それでも痛いんだ！」
「しょうがないわね・・・サンフォース！」
アークの折れた腕はセレナのサンフォースによって治療された。
「変わった事が出来るんだな・・・確か・・・テクニックとかいう奴だ
ろ？」
「セレナ・・・誰？この人。」
「さぁ・・・？」
「さっき名前言っただろうが！まぁいい、俺の名はロイ。ロイ＝ダーヴ
ォルスターだ。」
「へー・・・・って、ロイって言えば・・・エリア３の英雄のロイ？」
「そう、そのロイであってると思う。」
別のエリアでも、このロイの名を知らぬ者はいないというほどロイの知
名度は高く、それでいて強かった。
その為に何時の間にかいろんな人から英雄と呼ばれるようになってしま
ったという青年である。
そしてロイは先程のセレナの戦いぶりを見て、ぜひともエリア３へ来て
くれと誘われてアークがどうしても行きたいと言うのでやむをえずセレ
ナはエリア３へと向かうのだった・・・。
続く
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