Ｐｈａｎｔａｓｙ Ｓｔａｒ 〜時の始まり〜
第２話 目覚め・・・そして・・・
エリア３へ向かう為にはエリア１を通らなければならなかった
・・・。
他にエリア３へ行く道はエリア５、６、７を通らなくてはいけ
ない。
これが一番近い道のりであり安全なルートだと思っていたのだ
が・・・。
「ようやく来たか・・・。」
「え？」
アーク達の前にはエリア１の兵士達が立ちはだかっていた。
恐らくエリア１と２の間に見張りでも居たのだろうが、それに
気がつかなかったアーク達はエリア１での戦闘を避けられなか
った・・・。
兵士達がアーク達に攻撃を仕掛けるより早くセレナのグラブド
そして空気を切り裂く真空の刃を生み出すテクニック”ザン”
によって大半の兵士を倒したが、それでも兵士達はひるむ事無
くアーク達に攻撃を仕掛けてきた。
この時も、なぜかアークは兵士達の攻撃が止まってみえていた
ので攻撃を食らう事無くだたひたすら回避し続けていた。
「アーク！なぜ戦わない！」
「戦えないよ！戦う理由も無いし・・・。」
「甘いぞアーク！ここを通るだけでも十分に戦う理由になるん
だ！剣を取れ、そして戦え！」
「やっぱりできない！」
アークは戦おうとせずに回避し続けているうちに敵に囲まれる
結果となってしまった。
「アーク！？そのままだと殺られちゃうわ！」
「分かってる！けど・・・。」
「戦う気が無いのなら死んだ方がマシだ！死にたくなかったら
戦え！」
「くそぉっ！」
確かに現状ではアークが邪魔でセレナもテクニックを使えなく
ているうえにロイも囲まれている為アークを助けに行く事が出
来ないでいた。
やむをえずアークはファルスソードを出して応戦をはじめた。
なぜか・・・どうしてもここで死ぬ訳にはいかないという気が
したからだ。
「邪魔だ！」
アークは剣を素早く振り・・・ソードクロスを兵士にかけてい
た。
そして・・・それ以降の戦いはアークの記憶には残っていなか
った。ただ、自分の服が返り血を浴びて赤く染まっていて周り
には死体の山が落ちていただけだった。
「こ・・・これを僕がやったのか・・・。」
「アーク・・・お前って結構強いんだな。テクニックも使わず
に・・・良く分からない剣技を多発してたぞ？」
ロイの話では他にエアスラッシュなどもやっていたそうだが、
どうやって出したかも分からないアークはただ呆然としている
だけだった。
「さて、こんな所さっさと抜けようぜ。」
エリア１を抜ける直前でアークはふと立ち止まった。
何処かで悲鳴が聞こえた様な気がしたからなのだが・・・確認
の為に、その方向へ突然走り出していた。
「お・・・おい、アーク・・・。」
「ちょっとアーク？」
二人もアークの後を追い走った。
ある程度行くとバイオモンスターが暴れていて、その足元には
食い散らかされた原形を止めていない何かが落ちていた。
「何てことを・・・。」
アークはファルスソードを手にとりバイオモンスターに切りか
かろうとしたが、ロイが止めに入った。
「止めておけ。いらん事に関わるとろくな事にならんぞ。」
「でも、まだ生きている人が居るじゃないですか！」
アークはロイを押しのけてバイオモンスターに切りかかってい
た。
「俺は知らんぞ・・・。」
ロイはそんな事を呟きアークに手を貸そうともせず、ただ見て
いた。やがてアークはバイオモンスターを倒して助けた人達の
応急手当てをしようとしていた。
「なんでもっと早く助けに来てくれなかったんですか！」
「ごめん・・・。」
アークには謝る事しかできなかった。他にする事が分からなか
った・・・。応急手当てを終えた時にようやくエリア１の兵士
達が駆けつけてきた。
「あっ！貴様らは！！！」
「そんな事をしている場合じゃないだろう！怪我をしている人
がいるんだぞ！」
戦闘態勢に入った兵士達にアークは怒鳴るが兵士達は聞く耳を
持たないといった感じで攻撃してきた。
「これも全て貴様がやった事だろうが！」
「何！？」
「我々が駆けつけてきたので慌ててそういう素振りを見せても
無駄だ！」
少し離れた所に居るロイとセレナはこのやり取りを黙って見て
いた。
「お前達は分からないのか！バイオモンスターの死体だってあ
るだろうが！」
「どうせ近くにあったのを拾ってきたんだろう？」
兵士達はどうしてもアークの言う事を信用しようとはしなかっ
たので助けた人達に聞けば分かると判断し、そうしたのだが・
・・アークに助けられた人達は皆、アークが奇襲をしかけてき
てこうなったと言った。
「なんで！？」
「きっと早く助けに来なかったから怨んでるんだろうぜ？」
「そんな目茶苦茶な・・・。」
ロイとセレナも、このまま見ていたら不味いと思ったのかアー
クの側まできていた。
そして、ロイはまだ何やら言っている兵士に切りかかった。
「こうするのが一番早いんだよ！」
「「ロイさん！？」」
セレナとアークも、これは頂けなかったらしく非難の声をあげ
るがロイは聞いていなかった。
「・・・でも、確かにロイさんの言う通りだよ。僕が余計な事
をしてしまった為に・・・。」
「・・・アーク？」
アークも兵士に切りかかりフォイエを放った。
そしてまた、アークの記憶が飛んだ。
「あれ？」
気がつくと足元には先程アークが助けた人達まで倒れていた。
「アーク・・・それはやりすぎだと思うぞ。」
ロイも流石にこれは・・・と思ったらしくアークを批判するが
アークには本当に自分がそんな事をしたのか分からなかった。
エリア３にやってきたアーク達は早速ロイの手払いで騎士団に
入隊する事になった。
これも全てアークが入りたいと言い出したからなのだが、セレ
ナは余り気乗りしていなかった。
だが、成り行きでこうなってしまったのだ。
そしてバイオモンスターを駆除し人民を助けるという事になっ
たのだがエリア６から侵略が入ったので、そちらにも兵をまわ
す事になった。
アークが兵士をセレナがバイオモンスターを担当する事になり
すぐに持ち場へと向かった。
アークは敵兵士達にテクニック”バータ”をかけて氷ずけにし
てファルスソードでそれらの氷を砕きフォイエで焼き払った。
「まだいるのか・・・。」
続けてファルスソードを振り回しながら敵兵士達と味方の兵士
達が入り交じる所へと飛び込んでいった。
「うぉぉぉぉぉ！」
辺りには誰のだか分からない血が飛びかい、腕などの切れ端も
飛び交っていた。
やがて戦闘が終了した時は入隊時に支給された白い鎧が赤くそ
まっていて、アークが怪我をしたのかどうかさえ分からない状
態になっていた。
「誰かと思ったらアークか・・・別人みたいに見えるぞ。」
ロイにそう言われて自分の体を見てはじめて自分の体が赤く染
まっているという事に気がついた。
だが、ロイが言った台詞の意味は別の所にあった。
アークの顔が狂戦士のようになっていて更に返り血により、ま
さに死神か悪霊のように見えたのだ。
だが、鏡など無いのでアークは自分の顔を確認する事はできな
いのだが・・・。
「ま、とりあえず戻るとするか。」
これ以上ここにいてもしょうが無いので一端城に戻る事にした
のだった。
城に戻ると城下の人達はアークの姿を見て驚愕した。
「なんだあれは・・・。」
「本当に人間なの・・・？」
アークはただ、黙って聞いていた・・・。
しばらくしてセレナが戻ってきたとの報告があったので行って
みるとセレナの方は本当に戦っていたのかと思う様な状態だっ
た。
アークは返り血を浴びて赤く染まっていたというのにセレナは
返り血をまったく浴びてはいなかったからだ。
そして、一緒に行った兵士達はセレナの戦い振りを褒め称え、
そこからセレナが如何に強かったかが伺われる。
「２人ともよくやったな。」
ロイは二人を休ませ次の戦いに備えさせた。
そして、次の日・・・。
今度はエリア１から攻めてきたのでアーク達も出陣する事にな
ったのだが、それを見計らったかの如くエリア６からも侵略者
がやってきた。
それで、アークはエリア１方面へ・・・ロイとセレナはエリア
６方面へと向かった。
「凄い数だな・・・。」
アークは目の前の兵士の数を見て少し怖じ気ずいたがだからと
いって逃げるわけにはいかない。
味方の兵士達がアークに期待をしていたからだ。
「アークさん！頑張りましょう！」
「そ・・・そうだね。」
などと適当な会話をし戦闘が開始された。
早速アークはファルスソードを手にとり特攻をかける事にした
・・・これは味方の被害を少しでも少なくしようと思っての事
だったのだが、後ろに居た兵士達はアークに続いて特攻をかけ
だした。
（これじゃぁ、何の為に僕が特攻をかけるのか分からないじゃ
ないか・・・。）
アークは一応、後ろに続いてくる兵士達を止めようと思ったが
一人ではどうしても全員を止める事はできない為結局そのまま
敵陣に突っ込んでいった。
（こうなったら・・・速効で終わらせるしかないか・・・。）
そう判断したアークはフォイエを乱射しあらかじめ敵兵の数を
減らしておいてから切りかかっていった、
もはや戦況はどちらが有利でどちらが不利かが全くと言ってい
い程分からなくなっていた。
そんな中ただ生き残り、そして早くかたをつけようとするアー
クの姿があった。
目の前の敵を片っ端から切り捨て続けている内に気がつくと味
方の兵まで切っている事に気がついた。
「あっ・・・・。」
だからといって動きを止めると何処から切り付けられてもおか
しくは無いので走り回らないといけないのだ。
アークは敵か味方かを判断する時間が惜しかった。
そんな事をしていると弓兵や騎兵に攻撃をされる時間を作る事
になるからなのだが、先程から味方ばかりを切っているような
気がしているアークは次第に戦う気力が失せていった。
「逃げれるか・・・！？」
いっそ逃げようと思ったのだが、気がつくとアークはかなりの
数の敵兵に囲まれていた。
だから、アークはフォイエを放ったのだが・・・フォイエで吹
き飛ばした人達の中に味方が居たら・・・という考えがアーク
の頭を過ぎりそれ以上テクニックを使う気にはなれ無かった。
（なんで僕はこんな事をしているのだろう・・・。このままこ
こで戦い続けて一体何になるっているんだ・・・。僕はこのエ
リアの人間でも無いし、戦う事も嫌いなんだ！このまま敵に投
降してしまおうか・・・。）
と言うように考えていると敵兵の一部が消えて代わりに味方の
兵が姿をあらわした。
「アークさん！ここは我々にお任せを！」
「・・・！？」
あらわれた味方の兵士達の数はアークの周りに居る敵兵達の半
数にも満たなかった。
そんな数でアークを助けに来るという無謀な事をやったのだ。
「みんな！僕は何とでもなる！だから逃げるんだ！」
アークは叫んだが、その声は味方の兵士達には届く事は無かっ
た・・・それ以前に、全滅してしまったからなのだが・・・。
「くそっ！一体こっちは後何人居るって言うんだ！」
これ以上犠牲を出さない為に戦況を把握しようと思い味方の兵
士達が自らの命と引き換えに切り開いた道を行き敵兵の中から
出てきたアークを迎えたのはバイオモンスターだった。
そのバイオモンスターは適当に暴れて敵兵も味方の兵も倒して
いた。
「アークさん！こちらへ！撤退しましょう！」
ふと声をかけられたので、その方向を見てみるとまだ数十名の
生き残った兵士達がいた。
アークはすぐにそちらへ向かったのだが、敵兵の攻撃が味方の
兵士達に届いていた。
「止めろ！バイオモンスターが居るんだぞ！人間同士で争って
いる場合じゃないだろ！」
「このエリアの奴等を皆殺しにする為ならバイオモンスターの
力も利用するまでだ！」
誰が言ったのかは知らないがそんな声がアークの耳に入った。
アークは攻撃を回避し続けてなんとか味方兵の所までたどり着
き撤退をしようと思ったのだが後ろには何時の間にかバイオモ
ンスターが立っていた。
「前門の虎・・・後門の狼ってやつですね。」
味方の兵がそんな事を言っているがアークにはその言葉の意味
は分からなかった。
「あのバイオモンスターを倒して逃げようか・・・。」
と考えているとバイオモンスターがもう一匹現れて敵兵に攻撃
を開始した。
だが、敵兵はそれでもアーク達への攻撃を止めようとはしなか
った。
アークも攻撃を回避しつつバイオモンスターに応戦しているの
だが、味方の兵と死体が邪魔で思うように動けないでいた。
そのバイオモンスターをなんとか倒した時には味方の兵士の数
は僅か４名まで減っていた。
敵の攻撃とバイオモンスターの攻撃を回避するのを失敗したの
だろう・・・。
「みんな！撤退だ！」
アークが叫んだ時・・・敵兵達はアーク達に突撃してきた。
撤退が間に合わず直ぐに敵兵に捕まった味方の兵士達はアーク
の盾になるかのようにして死んでいった。
アークが一番生き残る確立が高いので、すべてをアークにかけ
てみようと思ったのだろうか・・・。
（なんで・・・こんな・・・。僕の力が足りなかったばかりに
こんな事に・・・。）
アークの頭の中に声が響いてきた。
（貴様に我が力を・・・最高のテクニックを与えようぞ・・・
その名は・・・。）
アークは声に導かれるがままに体を動かしてテクニックを放っ
た。
「受けよ、神の鉄槌！地獄の炎に焼かれるがいい！メギド！」
アークが放ったテクニック”メギド”は全ての敵兵を巻き込み
辺りを一瞬にして焦土と化した。
「す・・・凄い・・・これが・・・。」
途端にアークの足に力が入らなくなりその場に跪いてしまう。
「あれ・・・？」
（どうやら貴様の力が足りぬようだな・・・メギドは精神力を
大量に消耗する・・・多発は控えよ・・・。）
「そうか・・・。」
メギドを放った時・・・アークは妙な充実感を覚えていた。
つい、もう一度・・・メギドを放ってみたくなるほどに。
だが、それが出来なくなるほどアークの体は重くなっていた。
「とりあえず・・・俺は生き残ったんだな・・・。」
アークの周囲には・・・荒野のみが広がっていた・・・。
城に戻るとアークは非難された。
「なんでお前だけ無事なんだ！」
「何処かに隠れていたか逃げまわっていたんだろう！」
と、言うように・・・。
だが、アークは一々そんな事を聞きはせず無視して凱旋した。
「アーク、一体何があったんだ？」
「別に？敵を全滅させたら味方も全滅してただけだ。」
ロイの問いに対しアークは思った事をそのまま言った。
「ま、俺の邪魔になった味方の連中も倒したかもしれんが。」
「味方まで攻撃したの？」
「勝ったんだ。問題無いだろ？」
セレナは、その時アークがまるで別人の様に思えていた。
だが、それでもアークは生きて帰ってきたのだからそれでよし
としたらしい。
それから次の戦いも・・・その次の戦いもアークは一人だけで
帰ってきた。
その度にアークの性格は変わっていくように思えたセレナはア
ークをこれ以上出陣させようとは思わなかった。
この事をロイに話したセレナは二人でアークの出陣を止めさせ
ようとしたのだが・・・。
それらは全て無駄となってしまった。
そしてアークは適当に数十名の兵を連れエリア１へ侵攻し見事
エリア１を崩壊させた。
その際、生き残ったのはやはりアークだけだったらしい。
これはアークの後を追っていた偵察兵の証言なのだが・・・エ
リア１には人が一人も居なくなっていて荒野のみが広がり廃虚
すら見当たらなかったという・・・。
アークは、そのまま他のエリアにも攻めたようでエリア３には
戻って来なかった。
次にアークがエリア３に姿を見せた時は・・・エリア４と５と
６もエリア１のようになっていた。
「アーク・・・一体何をしたの・・・？」
「・・・すべて俺が殺したんだ。」
「殺したって・・・。」
「これは戦争なんだぞ？一般市民だからといって見逃す訳には
いかないだろうが。大体兵士ってのは元々一般市民を徴兵して
訓練したのもなんだしな。」
アークの言う事は間違ってはいないがそれでもセレナはアーク
が殺りすぎているように思えた。
「おい、アーク。次はエリア４に侵攻するぞ。付いて来い。」
開き直ったのかロイがアークを連れて進入不能のエリア４へ攻
め込もうとしはじめた。
そしてエリア３と４の間にある連絡用通路の隔壁をファルスソ
ードで破壊した時、アークはこのエリアの地下に何か重大な用
事があるような気がした。
続く
第三話を読む
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