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メディカルセンター、傷ついたハンターズが治療をしにくる病院。一階では回復を、２階では精神的なショックを
受けた者が入院している。３階では苦しい戦いによって、極度の重傷を負った者が入院している。パイオニア２の
ハンターズにとって欠かせない病院である。

「数日前に入院したエレンディラはどこの部屋かな？」
ゼルディがカウンターにいる従業員に自分の妹の部屋を聞く。パイオニア１の謎の爆発に遭い、捜索に来ていた
レイマー、ゼクドによってゼルディ共々助け出され、エレンディラが入院している。
「少々お待ちください。・・・・２階の１３号室ですね。」
「ありがとう。」

ゼルディは疑問に思った。なぜ精神関連の病室にいるのだろう、普通に考えれば３階の病室のハズである。部屋数の
問題だろうか、毎日のように無理をするハンターズがかつぎ込まれている。部屋数が足りなくなっても不思議では
ない。そう考えている内に１３号室にたどり着いた。コンコン、とノックをした。しかし何の反応もない。ゼルディは
不審に思い部屋に入った。

「エレン？」
真っ白に彩られた部屋に少女がベッドの上に座っている。あらぬ方向をぼ〜、っと見ている。ゼルディが部屋に入っても
何の反応も示さない。様子のおかしい妹の顔をのぞき込み、目の前で軽く手を振る。しかし、何の反応もない、目は確かに
開いている、だがその目に光はない。
「オイ！どうしたんだ、エレン」
まるで人形のような妹の体を揺さぶる。しかしそれでも何の反応も示さない。後ろから、ガチャリ、とドアの開く音がした。
ゼルディは後ろを振り替えると、そこに白衣の来た医者が立っていた。

「彼女のお兄さんかな？」
「そうだ」
「わたしは彼女の担当のマークスだ、以後、お見知りおきを」
「そんなことはどうでもいい！妹は一体どうなっているんだ。まるで生きた人形じゃないか」
ゼルディは妹の様子に困惑し、医者につかみかかった。医者はゼルディに今までのことを語った。
ゼクドに連れてこられた時、少し傷を負っていた。しかし、簡単な治療でことは治まるハズだった。治療を終えれば数日の
内に目を覚ますだろう。誰もがそう思い、疑わなかった。しかし少女は目を覚まさなかった。夜になると一晩中悪夢に
苛まれ、呻き声をあげる。朝になれば起き上がり、ひたすらぼ〜としている。検査をしても異状は見あたらない、恐らく
精神的なショックにより物言わぬ人形のようになってしまったのだろう。

「どうすれば戻る、一体に何をすれば元に戻るんだ？」
ゼルディは医者に問い詰める。医者は治療に必要な物はこうなった原因だと告げる。原因がわかれば方法はある。全く
同じショックを与え、起こさせるか、原因の源を破壊する。原因・・・あの爆発だろうか、エレンはあの爆発の中、何
かを見たのだろうか、それのショックでこうなってしまったのだろうか。しかし自分は何も見ていない、爆発の勢いで
気絶していたのだろうか、思い出せる光景は陽炎が起こした爆発と、目覚めた時の人の消えた世界。とにかく原因を
見つけなければどうしようもない。医者のその言葉を聞き、ふらふらと出ていった。

「エレンディラ・・・・・・」
妹のあまりの姿にショックを受け自分のふがいなさに腹を立てた。あの時しっかりしていれば・・・・と・・。
翌日、陽炎の正体を突き止めることにした。ドームほどもある突所として現れた陽炎、まるで悪魔のようにも見える。
ゼルディは古い書物を調べ、既往に残る陽炎の形と同一の物を調べはじめた。しかし、何もわからなかった。ゼルディは
絶望に包み込まれていくような感覚に陥った。

「俺は、一体何をすればいい・・・・」
虚ろな目でつぶやきながらエレンディラの入院費を稼ぎ続けた。

いつから自分の意識があるのかわからない。でもこれだけはわかる、ここは地獄だ・・・。手には木製の手錠をかけられ、
足には鉄球がかけられている。毎日のように鞭で叩かれ、反抗心を奪われていく、体中アザだらけで口の中にはいつも
血の味がする。いつから僕はここにいるんだろう。いつまでここにいるんだろう。毎日誰かがやってきて僕たちを買っていく、
買われた人たちはどうなったのだろう。ここよりマシな生活を送っているのだろうか。僕たちは奴隷、夢をみることは許され
ない、ただ主人に従うだけ・・・。

ある日僕は買われた。購入者は太ったオッサンだ、僕の他に二人の少女を買った。この時点では少しまともな生活が送れる
かも知れない、そう思った。僕たちは荷物と一緒に運ばれる。どこか遠くへ・・・。

大きな家に着いた。この太ったオッサンは金持ちのようだ。僕は暗殺者として調教されるらしい。二人の少女はどうなのか
知らない、オッサンにどこかに連れていかれている。僕は地下室へ連れていかれた、そこに待ちうけていたのは威圧感を
もった隻眼の人だった。有無を言わさず叩き込まれる、暗殺術や銃火気類、刀剣類の使い方を・・・。毎日気を失うまで
修行を受ける、水をかけられ目を覚ましたら再会する。あの監獄にいた時よりも苦しい、やはり夢をもってはいけなかった・・・・

夜になると悲鳴が聞こえる。たぶん二人の少女の声だろう。僕と歳の変わらない彼女たちも、毎日が地獄のようだ。毎日
毎日鍛えられる、何年たったのだろう・・・。もう自分の年齢も覚えている気にならない。

ある日、人を殺すようにをするように言われた。ここの主人と同じぐらいの金持ち、僕は館に忍び込んだ。ターゲットは
寝室で眠っている、起きているより遥かに楽だ。僕はターゲットの頭に剣を刺す、頭が割れ、血が吹き出す、僕は少し
帰り血を浴びた。しかし何故だろう、成功したのに気分が悪い。
胸が苦しくなる、目から水が出てくる、声をあげ
てはいけない。誰かに見つかってしまう、しかし部屋に誰かが入ってきた、小さな子供だ、顔を見られた、子供が叫ぶ
前に口を抑える。そして首を斬る。首から血が飛び出し、動かなくなった。まただ、気分が悪くなる、胸が痛くなる。
帰らなきゃ、もう仕事は終わったのだから・・・。

主人が誉めてくれた。ターゲットだけでなくその子供を殺したことがよほど嬉しかったらしい。笑っている、あんなに
胸が痛くなったのに、あんなに苦しくなったのに、あんなことを喜んでいる。僕はポケットの中の銃を握る、主人に
向けて引き金をひく。呻き声をあげた後、糸の斬れた人形のように倒れこむ。見張っていた隻眼の人にも引き金をひく、
頭が弾けて動かなくなった。主人のそばで二人の少女が抱き合って震えている。助けて、殺さないで、と涙でかすれた
声で哀願する。主人はともかくターゲットとその子供、隻眼の人を殺したら苦しくなる。もう殺したくない、でも、放って
おけば二人は誰かに伝え、僕は殺されるかも知れない。銃を向け、引き金をひく、その瞬間、僕は気を失いそうになる
ほど苦しくなった。殺さない方が良かったのかな？、僕は外へ出て歩き出した。どこにもいくアテなんかあるはずがない、
どこに行くのだろう、どこに行けば良いのだろう、真っ暗な夜、僕は歩き続けた。いつのまにか狼に囲まれている。食べ
られて死んだら楽になれるのかな？。ああ、だったら少女二人を殺さないほうが良かったのかな？、どうせ死ぬのなら・・・・

狼たちが僕に向かってくる。これで楽になれる、そう思っていたのに何故か体が勝手に動く、狼たちを殺していく。なんで
だろう、死んだ方が楽なのに・・・。狼の爪が喉を切った。僕から血が流れていく、これで楽になれる、でも何故だろう、
体が震えてくる、恐い・・・。嫌だ・・・・死にたくない、死ぬのは恐い、僕は震えながらも狼たちを殺していく、死んだら
楽なのに、死ぬのは恐いから・・・。狼を全滅させた後、体が動かなくなった。そしてそのまま、意識がなくなっていった。
僕は一体何のために生まれてきたんだろう・・・・わからない・・・・・・

目を覚ますと小さな子供たちが僕の顔をのぞき込んでいる。子供たちは次々に、目を覚ましたよ〜、と走り回った。ここは
どこなのだろう、死ねなかったのかな、そんな思いをよそに一人の大人の女の人が近づいてきた。大丈夫？、と聞いてくる。
体を見ると手当がされていた。もう大丈夫だからね、と僕をやさしく抱きしめた。暖かい、何故こんなに暖かいのだろう、
気持ちが良い、やすらいでいく、人ってこんなに暖かかったんだ。知らなかった。僕の周りにはこんなに暖かい人はいなかった。
僕はそのまま眠ってしまった。再び目が覚めると、もう夜だった。さっきの女性が僕の手をやさしく引っ張り、食卓へ案内した。
そこには見たこともない食べ物があった。僕が食べてきたのは味のしない冷たいスープとカビの生えたパン。見たこともない
食べ物、僕は一口暖かいスープを飲んだ。おいしい・・・温かい・・・。他の料理にも手を伸ばす。おいしい・・・暖かい・・・。
食べ物ってこんなにおいしかったんだ、そういうと女性が僕の今までを聞いてきた。僕は包み隠さず話してみた。女性は涙を流し
ながら僕をやさしく抱きしめた。やっぱり暖かい、ああ、なんだか気持ちがいいな。僕はこの日から彼女の家族になった。

一人の女性と子供達が庭で遊んでいる。楽しそうだ。笑顔で常に笑いの声が聞こえる。知らなかった、こんな世界があることを。
僕の見たことのある子供は、虚ろな目か、鳴きそうになって歪んだ顔以外しているものはいなかった。ここは天国なのだろうか、
毎日そう思えた。この施設をたった一人で経営している女性、セレナは孤児や捨て子の類を見つけたり聞いたりすると、ここに
連れてきて新たな家族として迎え入れる。その数は３０人にも上る。なぜ彼女はこんなことをしているのだろう。３０人以上を
養うのにかかる費用はかなりの額だ、時にはセレナが何も口にしていない日もある。それでも彼女は笑顔を絶やさない、彼女に
とって子供の笑顔は何よりも勝る宝らしい。しばらくして僕の傷は治っていた。僕も何かをしたいのだがなにもできない、僕に
できるのは暗殺術などを教えることぐらいだ。しかし彼女はそれを望まないだろう。この楽園にそんなものは必要無いのだから・・・

みんなを寝かせた後、彼女は家計簿を見ながら頭を悩ませていた。無理もない、これだけの人数を養うのはただ事ではない、僕の
やるべきこと、金を稼ぐことだ。ある日彼女は出かけた、どうやら仕事にいくらしい。残された子供達の面倒は、年上の子供達
だった。慣れた手つきで炊事洗濯をし、暇があれば小さな子供達と遊んでいる。その晩、彼女が帰ってくると子供達は飛びついて
いく、中には泣きながら彼女に飛びついてく子もいた。その晩彼女の仕事は何かを聞いてみた。彼女は言いにくそうにハンターズと
答える。僕もハンターズになって稼ごうとしたが彼女はそれを徹底して拒否した。彼女は僕を抱き締めながら、もう戦う必要は無いと
言う。それではここの維持費は足りないのではないかと聞いてみたが、心配なんかしなくていい、と首を振る。僕にとって彼女の
存在は不思議でしかない。いままで会った人間は自分のことのみに執着し、他人を殺してまで搾取する。まったくの正反対だ。彼女は
自分の身を削ってまで子供達に尽くしている。何の見返りも求めずに。だから彼女はこんなにも暖かいのだろうか・・・・

ある日の夜、だれもが寝静まった後、何物かが施設の前に立っている。僕は一目見て確信した。同じ暗殺者だ。主人を殺した件で
僕を殺しにきたのだろう。僕はナイフをもって外に出る。向こうは剣のようだ、ちょうどいい、銃ならみんなを起こしてしまう。
敵が僕に襲いかかってくる、剣は正確に頭と心臓をねらって突いてくる。暗闇の中、金属音がひびく、なかなか決着がつかない
ことで敵は逆上し、真正面から剣を振り下ろしてくる。振り下ろされる剣を避け、敵の胸にナイフを刺す。鈍い音と感触が手に
伝わってくる、動かない、どうやら正確に心臓を貫いたようだ。僕は死体を始末して血を落とし、音を立てずに施設に戻る。布団に
潜り、眠ろうとしたがなかなか眠れない、気分が悪い、あまり眠れること無く夜が明けた。数日間そんな毎日が続いた。

ここにいてはいつか誰かに危害が及ぶ、そう思い僕はここを出る決心をした。何も恩返しができないのが心残りだが危害が及ぶの
だけは避けたい、僕は彼女に旅に出てみたいと告げた。色々な人を見てみたいというのを理由に、彼女は止めなかったが、いつでも
帰ってきていいと言った。僕は帰ってくることはできない、ここを離れてここにいる人に会ってはいけない、決して誰にも危害が
及ばないように。施設を出てしばらくすると数人の暗殺者が僕を襲う、負けはしなかったが大きな傷を負った。そして死にかけの
暗殺者から最悪の言葉を聞いた。反逆者に対する報復、かかわった者全てを皆殺しにする。僕は施設に走った、ここまでするなんて
考えてなかった、あそこは哀れな子供達の楽園、それが無惨にも切り裂かれそうになっていた。

戻ってきた僕が見た者は最悪の光景だった、施設は焼かれ子供達は誰も生き残っていない、セレナは、セレナはどこだ、せめて彼女
だけでも生き残っていて欲しい、僕は当たりを探し回った。少し離れたところに彼女はいた、胸から血を流しながら・・・・

セレナは冷たかった、生きてはいたがもう助からない、彼女が目を覚まし、施設の方を向く、彼女から涙がこぼれた。
「ああ、私の子供達、救えなかった、ごめんなさい」
虚ろな目でつぶやく、そして彼女は息を引き取った。彼女の所為じゃない、僕の所為だ、僕が此処に来なければ、僕が生きていな
ければ、果てしない絶望と憎しみが僕を包み込む、殺したのは僕だ、そして僕を奴隷にしていた彼処の連中だ、僕はセレナや子供
達を埋葬すると向かっていった。こうなった元凶を破壊しに、向かってくる暗殺者達を死なない程度に痛めつけ案内させる。理性が
消えていく、感情が憎しみだけになっていく、意識でさえも薄れていく、意識が戻った時、僕は血塗れで笑っていた。大切な者を
奪われ、何も残っていない。僕は死のうとした、生きる意味を失っていた。彼女が死に子供達も死んだ。しかし死のうとした時、
セレナの声が聞こえた気がした。

「あなたは死なないで、罪を悔いるなら、可哀相な子供達を救ってあげて」
これは彼女の願いだろうか、ならば叶えねば、僕が彼女達を殺したのだから、彼女の夢を奪ったのだから・・・・
僕はハンターズとなり、大金を稼ぎ、小さな施設を何件も立てた、捨て子や孤児を見つける度に施設に送った、僕は子供を育てる
ことができない、人を雇いその人達に育児を任せる。僕は大金を稼ぎ続けた。たとえ体が傷つこうとも、全ては償いのために、
彼女の夢を叶えるために・・・・・

僕の瞳の中で彼女は笑ってくれている、彼女が笑っている限り僕は戦い続けられる。誰から非難されようとも、この体が朽ち果て
ようとも・・・・・

ある日突然、大きな光が私を包み込んだ。目を覚ますとそこは私のいた世界じゃなかった。空間が歪んでいるように見え、恐ろ
しい怪物達が私を追ってくる。どうして？、ここは何処なの？、パパとママ、お兄ちゃんはどこなの？、私は泣きながら家族を
探した、怪物達に追い回されながら。

向こうの方で何か赤く光ったり青く光ったりしている。誰かいるの？誰か助けて！、走り続けるとそこにはパパとママとお兄
ちゃんがいた。パパとママは魔法を使い、お兄ちゃんは慣れない手つきで剣を振り回している。助かった・・・私はそう確信した。
でもそれは一瞬の内に崩れ去った。
「しまった！・・・ぐわあああああああああああああ！！」
パパは魔法力が底をつき、怪物達に食べられていった。
「いやあああああ！！あなたああああ！！」
ママはパパを助けようとする、でも逆に捕まえられママも怪物達に食べられていく。私は泣き叫んだ、これは夢なの？夢なら
早く覚めて、パパとママを返して！。泣き崩れている私を抱え、お兄ちゃんは怪物達から逃れようとする、でも逃げ切れなかった、
私を抱えていたから・・・・

「くっ！逃げろ、エレン」
お兄ちゃんは大きな怪物に捕まり、握られる。グシャ！、ていう鈍い音がした、見上げてみるとお兄ちゃんが大量の血を吐き、
私の前に落ちてきた。
体中の骨が粉々に砕かれ、身動きできない。それでも私に訴える。
「逃・・げ・・・ろ・・・・エ・・レ・・・・ン・・・・・」
そしてお兄ちゃんも怪物に食べられた、パパとママとお兄ちゃんの血が私にかかる。ここはどこ？何故こんなことになるの？
私達が何をしたの？・・・不意に何処からか頭に声が響く。

ー汝等は我が人形なのだ。人形で遊ぶのは当然だろう？
人形？私達が？私は人形なの？・・・・そんな考えが頭に浮かぶ、私は・・・人形？。困惑する私を怪物達が取り囲む。怪物
達に弄ばれ、陵辱されていく、ああそうか・・・私は人形なのか・・・・、私は人形、ただの人形、なにをされてもなにも感じ
ない・・・・・、怪物達が私に何をしても私には何も感じなくなっていった。私は人形なのダカラ・・・・怪物達が私の手足を
引きちぎる。私は人形・・・・タダノ人形・・・タダノ壊れた人形・・・・怪物達が私の首を引きちぎる。

ワタシハ人形・・・タダノ人形・・・タダノコワレタ人形・・・バラバラニナッテモナニモカンジナイ・・・ツブサレテモナニモ
カンジナイ・・・・・ワタシハニンギョウ・・・・タダノ・・ニンギョウ・・・・・・・・

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