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第五話 戦えない敵

パイオニア2の総督の部屋に4人のハンターズが集結していた。そのうちの一人はハンターズではなく、軍隊の将軍である。
鍛え上げられた肉体に、手にもっている斧が印象敵だ。軟弱な軍隊と噂される中で、唯一彼の部隊だけはまともだった。装備に
頼ることなく己を鍛え上げ、最初に送り込まれ、ほぼ全滅した軍隊の中で彼の部隊だけが帰還に成功した。他のハンターズも
能力値としては超一流、各々がそれぞれ独特の雰囲気を持っている。腕に覚えのある者ならここにいる者が口をそろえて最強
だと言うだろう。

「パイオニア2第一部隊将軍ベルドグス、ハンターのアックスウェル、フォニュエールのフェリシア、そしてレイマーの
ハーディス。総督として、いや個人として依頼する。ラーディスから報告のあった忌まわしき元凶、ダークファルスを倒してくれ」
総督の言葉にはとある決意が込められていた。彼の娘、R・R・リコもろともという・・・。
「よろしいのですか?総督、・・・」
「全人類と一人の命、比べるまでもなかろう・・・」
無駄だと思いつつも止めようしたベルドグスの言葉を遮り、悲痛な顔で答えた。救う方法はあるのかも知れないが、それを実行
するだけの時間、戦力、それは何処にも無かった。残された選択、自分の娘もろともダークファルスを滅ぼすか、それとも何も
しないまま滅ぼされるか、どちらかひとつ。

彼は総督として決断を下さねばならなかった。私情を持ち込めば、全滅は必死。たとえ娘であろうと見逃すことはできなかった。
「わかりました・・・・」
その言葉を最後にベルドグスは3人のハンターズを引き連れ、ダークファルスが封印されていた遺跡へと向かっていった。
遺跡にいるモンスターは驚異的な戦闘能力だったが4人の精鋭に次々に倒されていった。そしてついに最深部にたどりつき
ワープホールをくぐった。そこで彼らの見た光景は予想とまったくの光景だった、草花が咲き乱れ、蝶や鳥たちがはばたき、
そこはまさに楽園と言うにふさわしく思えた。しかしその光景の真ん中に古代文字でかかれた巨大な柱が立っていた。誰もが
その柱の中にダークファルスが存在していると思った。しかしベルドグスは迷っていた。ダークファルスに取り込まれ、実の
父親から抹殺命令が下された女性、R・R・リコを助けられないのだろうか、本当に殺す以外に手立てはないのだろうかと・・・。

ベルドグスは彼女を鍛えたこともある、才能に恵まれ、誰もが天才と思わせるほどの知識と戦闘能力を身につけ、しかしそれ
故に結果としてダークファルスに取り込まれた彼女を・・・・・不意にアックスウェルが話しかけてきた。

「ここまで来て悩みがあるなら引き返せ、知り合いが殺される瞬間を見たくないのならな、戦闘に迷いのある奴など足でまといだ」
彼の言葉に抑え切れない怒りを覚えた、彼の胸倉をつかみ怒鳴り散らす。
「貴様のような冷血な者にはわかるまい、親しい者を殺さねばならぬ苦しみがな!」
今にも同士撃ちが始まりそうだった。しかしハーディスとフェリシアが二人を止めた。
「こんなところで争ってどうする、戦うべき敵はそこにいるだろうが!」
「そうですよ、ベルドグスさん、彼女を殺すのではなく、せめて彼女の魂を救うためにここに来たのですから。」
フェリシアの言葉でベルドグスは冷静を取り戻した。

そうだ、ワシはせめて彼女の魂を救うためにここに来たのだ
と・・・・。4人は柱に手を振れた、そしてその瞬間、楽園が地獄に変わった。咲き乱れた草花や鳥や蝶達は跡形もなく
消えさり、代わりに人間の苦しみ悶えるような顔が地面全体に広がり、いつのまにか大量に発生したモンスターに囲まれていた。
「クッ!こんなところで殺られてたまるかぁぁぁぁ!!」
ラーディスは大声を張り上げ、散弾銃を撃ちまくった。ベルドグスは斧を振り回し、次々と凪ぎ払っていく。フェリシアは
強力なラバータを唱え、周りのモンスターを凍らせていく。アレックスウェルも舞うように敵を斬りつけていく。しかし
手応えがない、まるで風とでも戦っているような感覚に捕らわれる。しかし敵の攻撃はなぜか当たる。倒しても倒してきりが
なく永遠にこのままかと思われた。しかし次の瞬間、アレックスウェルが本体を発見した。

「アレだ、影のある奴が本体だ!」
「ぬぅぅおおおおあああああああ!!!」
ベルドグス大声で吠え、本体に一直線に向かっていった。しかし大量のモンスターが彼の行く手を遮った。
「任せろ!」
ラーディスはベルドグスを遮る大量のモンスターをマシンガンで一掃する。さらにフェリシアがシフタを唱えた。
--GYIIIIIIIIYAAAAAA
奇妙な悲鳴が聞こえたかと思うと、ソレ、はそこに出現したこの星の元凶、ダークファルスが・・・・
ソレはまさに怪物と呼ぶのにふさわしかった。身長は巨大なビルのも匹敵し、足と呼べるような部分からは人の何倍もある
蛇のような物が生え、体の上の方には人型にも見えるような生えていた。

「お、お嬢様!!」 ベルドグスには一目見て、R・R・リコだと確信した。彼女がいつも身につけていたリング。間違いなくそれは
ダークファルスに取り込まれたリコだった。


戦えない敵(2)

ダークファルスがその巨大な手を振りかざした、それと同時に大爆発が起こった、その威力はラフォイエ十数発分にもおよび、
誰もがラバータを唱え少しでも中和しようとするが、その効果は気休め程度でしかなかった。フェリシアがすぐにレスタを唱え、
可能な限り火傷を治した。あまりに変貌したリコの姿、それでもベルドグス必死に呼びかけた。

「お嬢様、ワシです、ベルドグスですぞ!」
しかしその呼びかけも何の効果ももたなかった。次々に繰り出される驚異的な威力をもった魔法、さらに先ほどまで倒し続けて
いたモンスターを吐き出してくる。誰もがそれぞれ人間離れした戦闘力をもつ者達だったがそれはあくまで、人間として、だった。
後手後手にまわり、徐々に押されはじめた。ベルドグスは最悪の光景を目の当たりにし戦意を失っていた。ラーディスは銃を駆使し
吐き出されるモンスターを倒していくが一人に抑えきれる数ではない。アックスウェルは本体に何度も斬りつけているが、ダーク
ファルスは気にも止めていない。フェリシアは補助、の回復にまわっていたが、驚異的な魔法を打たれ続け全員の回復をするのが
精いっぱいだった。しかももってきたトリフルイドも大量に消費し残りわずか。全く効いていない様子に苛立ちと屈辱感がアックス
ウェルを襲い、判断力を奪っていった。

「クソッ!、俺は強いんだ、俺は負けたことなど無いんだ、俺は、俺は、無敵なんだあああ!!!!」
絶対的な自信を揺さぶられ、吠えながらダークファルスに突功をかけた、しかし強力なラバータで足を止められ、連続して強力な
ラフォイエが直撃し戦闘不能になった。

「お嬢様、もうお止めください」
幾度となく呼びかけたが、応えることなく強力な魔法を与えられ、救えないリコに絶望した。ダークファルスはベルドグスを
高々とつかみ上げ。地面に叩きつけた。
「が・・は・・・」
体中の骨が砕けベルドグスも戦闘不能になった。フェリシアもラーディスもリバーサーを唱えようとするが、次々に繰り出される
魔法とモンスターに阻まれさらに押されていった。

「もう無理です、撤退しましょう!」
「クッ、ここまできて・・・・」
しかし、撤退するか否かは少し状況をみれば一目瞭然である。アックスウェルとベルドグスは戦闘不能、回復する暇すらない。
フェリシアの魔力もほぼ底が尽き、トリフルイドもなくなっている。ラーディスはベルドグスを、フェリシアはアックスウェルの
もとへ向かう。

「オッサン捕まれ、・・・・・やべぇ、先に撤退するぞ!」
ベルドグスはもはや虫の息だった。ラーディスはリューカーを唱え、ベルドグスとかかえ撤退した。
「さ、アックスウェルさんも・・・・きゃあ」
アックスウェルは助けにきたフェリシアを突き飛ばし、戦えるはずのない体で剣を握った。
「俺はアックスウェルだ、敗北など知らない、俺は、俺は最強なんだああああああ!!!!」
アックスウェルは自らを奮い立たせ、ダークファルスに向かっていた。しかしダークファルスは容赦などしない。両手を高々と
上げると空が光輝き、光の雨が振りそそいだ、光の雨はアックスウェルを貫き、声を上げる間も無く一瞬で絶命した。フェリシアも
光の雨を左腕に浴び、左腕が消滅した。

「クッ、リ、リバーサー・・」
フェリシアは二度目の光の雨が降り注ぐ直前に脱出に成功した。そして再びダークファルスは休息に入った、消費した魔力は
ダークファルスにとって微々足るものだったが、より完全体となるために・・・・

比較的怪我の少ないラーディスは報告に戻り、ベルドグスとフェリシアはメディカルセンターの集中治療室に運ばれた。報告を
終えたラーディスはゼクドのもとへと向かい、ゼクドにのみ報告した。しかしドア越しにゼルディは聞いており、内容を聞いた
あとでも引こうとしなかった。

「ゼルディ、武器をもって外へ出ろ。ラーディス、エレンディラを連れてきてくれ」
ゼクドは剣をもって外へ出た。できれば取りたくない方法だったが、事態はより一層深刻だったことを理解し、最後の手段とも
言える行動に移った。

第五話 完

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