ダークファルスは戦闘によって痛んだリコの体を切り放し、空へと舞い上がった。リコによって作られた体は
奈落の底に沈み、ダークファルス自身とも呼べる思念体となった。その姿は今までとは違い、両腕は巨大な
大剣のように鋭く、そして人間の十倍はあるほどの大きさ。とらえていたリコの体を切り放したせいでポッカリと
開いた腹部、しかしそこにまた誰かが取り込められることも考えられる。リコの体を切り放したといっても
人間に比べれば遥かに巨大である。しかも体全体に光の幕が張ってありどうやら魔法の威力を激減させるようだ。
「人間よ、よくぞ我をここまで追い詰めた、褒美に死をくれてやろう」
ダークファルスの声が聞こえたかと思うと、ダークファルスはロマリオに光輝く数多の光弾を飛ばし、ロマリオは
自慢の大剣で受け止めようとする、しかし光弾は大剣を貫き、ロマリオの体に直撃する。光弾一発一発があまりにも
強力でしかもそれが数え切れないほどの量である。
「ぐがあああああああああ！」
ロマリオは数多の光弾を浴び、遥か後方に吹き飛ばされ仰向けに倒れ動かなくなった。
「ゼルディ、リバーサーを唱えろ！」
ゼクドが激を飛ばし全員の硬直が解けた、すぐさまゼルディはロマリオにリバーサーとレスタを唱える、しかし
魔法の効果が及ばないほどにロマリオの体はボロボロだった。
ゼクドとラーディスは銃で必死に応戦する、しかし銃弾はダークファルスの体に弾かれた。
「クソッ、なんて化け物だ！」
「退け、ラーディス！」
ゼクドの指示通りに後ろに退くと、さっきまでいた場所に光りの矢が突き刺さった。
「さすが我を追い詰めし者達よ、楽しませてくれる」
ダークファルスが一瞬で間合いを詰め、その巨大な大剣のような腕でラーディスを斬りつけた。
「グハッ！！」
ラーディスは肩から腹まで斬り裂かれ、血しぶきとともに仰向けに倒れた。
「ラーディス！、キサマァァ！！」
ダークファルスはラーディスの時と同じようにゼクドを斬りつけようとした、しかし大剣のような腕を降り
下ろす瞬間、ゼクドはダークファルスの腹部に剣を突き刺した、だがそれでもダークファルスは一切怯まず、
ねじ伏せるようにゼクドを斬り裂いた。ゼクドから血しぶきが舞い上がり前のめりに倒れた。
ダークファルスの次の標的、ゼルディに向かった、ゼルディはロマリオの治療をしていたため反応が遅れ、
動けなかった。
「だめぇぇぇぇぇぇ！」
誰かが大声をあげ、ゼルディを庇うように前に立ちはだかった、しかしその声の主も同じように斬り裂かれ、
仰向けにゼルディに倒れこんだ。
ゼルディにとって声の主はあまりにも見覚えがあった、ゼルディにとって最後に残された生きる希望、そして
守り続ける者、彼の妹、エレンディラだった。
「よ・・かった、お兄・・ちゃん・・無事・・だ・・ね・・」
「エ、エレン！」
ーエレンディラは残っていたはず、なぜこんな所にいる、なぜこんなにも血を流している！？
ゼルディは混乱した、おいてきたはずの妹が自分を守り、血を流し倒れる。しかしダークファルスそんな
光景をあざ笑うかのように見ていた。
「人間とはわからぬなぁ。他人を庇って自分の命を落とすなど理解できぬ、滑稽にしか思えぬなぁ」
エレンディラは徐々に、しかし確実に冷たくなっていった。
「お兄・・・ちゃんが・・・・無事なら・・・・私」
その言葉を最後にエレンディラから反応がなくなった。
「オイ？、エレン？、オイ！、しっかりしろ！！」
ゼルディはエレンディラを激しく揺さぶった、しかし何の反応も示さない。ただ冷たくなっていった。
「リ・・ューカー！」
ゼクドとラーディスが瀕死の体に鞭を打って魔法を唱え、全員をパイオニア２まで連れ帰った。パイオニア２へ
戻った直後、全員病院へと運び込まれた。ロマリオは全身ズタズタ、ラーディス、ゼクド、エレンディラは
ダークファルスに斬り裂かれ極度の重傷を負っていた。唯一重傷を負わなかったゼルディはエレンディラに
ずっと付き添っていた。
「俺は・・エレンを守りきれなかった、俺がもっとしっかりしていれば、エレンは・・・」
エレンディラの手を握り締め自分の無力を呪った。何度もリバーサーやレスタを唱えるがあまりにも傷は深く、
魔法の効果も届かなかった。
ーなぜエレンはここに寝ている、こんな姿にした者は誰だ。
ゼルディにダークファルスへの憎悪が高まっていった。大切な妹を傷つけた者、いや、もはや助からないかも
知れない。妹を殺した者、ダークファルス。
「殺してやる・・・・・・・」
その言葉を最後にゼルディはたった一人でダークファルスの元へ向かった。
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